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32.朝日のようにさわやかに 33.猫と針 34.不連続の世界 35.きのうの世界 37.六月の夜と昼のあわいに 38.私と踊って 39.蜜蜂と遠雷 40.祝祭と予感 |
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上と外、puzzleパズル、ライオンハート、MAZE、ドミノ、黒と茶の幻想、図書室の海、劫尽童女、ロミオとロミオは永遠に、ねじの回転 |
蛇行する川のほとり、まひるの月を追いかけて、Q&A、夜のピクニック、夏の名残りの薔薇、「恐怖の報酬」日記、小説以外、蒲公英草紙、エンド・ゲーム、チョコレートコスモス |
ドミノin上海、スキマワラシ、なんとかしなくちゃ。青雲編、spring |
●「中庭の出来事」● ★☆ 山本周五郎賞 |
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2009年08月
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「中庭にて」「旅人たち」という2つの現実らしいストーリィと、『中庭の出来事』という作中芝居らしいストーリィの3つが同時に並行して進行していく長篇作品。 冒頭は「中庭にて」にて、作家の毒死事件が2人の女性によって語られるところから始まります。 読み手に謎を仕掛けたような作品ですが、恩田さんの狙いとしては舞台の虚構性、虚構なりの真実性を小説の中で描き出すことにあるのではないか、と感じられます。 ストーリィとして共通するところは全くありませんが、やはり演劇・役者を主題にした「チョコレートコスモス」を思い起こさせる要素は幾つかあります。舞台・演技という共通要素に加え、登場する3人の女優のキャラクターが似ていること。学生演劇出身の女優、俳優一家に生まれてサラブレッドと目されている若手女優、ベテランの大女優と、まるで「チョコレートコスモス」そっくりではないですか! |
●「朝日のようにさわやかに」● ★☆ |
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2010年06月
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恩田さんという作家は長篇小説より短篇小説にこそ持ち味が発揮される、というのが私の考えです。その代表例が初期短篇集の「光の帝国−常野物語−」。 本書収録の14篇は、ショート・ショートから中篇といって良い作品まで様々。内容もお得意の孤島ものから、ファンタジー、ミステリ、ホラー風なものまでと実に多彩。それだけにいろいろな味わいが楽しめるという、チョコやキャンディーの詰め合わせセットを貰ったように楽しめる短篇集。 水晶の夜、翡翠の朝/ご案内/あなたと夜と音楽と/冷凍みかん/赤い毬/深夜の食欲/いいわけ/一千一秒殺人事件/おはなしのつづき/邂逅について/淋しいお城/楽園を追われて/卒業/朝日のようにさわやかに |
●「猫と針」● ★☆ |
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2011年02月
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恩田陸さん、初の戯曲作品。 短い4幕からなる劇。そして、高校のとき友人だった5人(男3人+女2人)が登場人物。 各幕で5人の置かれた局面ががらっと変わり、緊迫感と弛緩が繰り返されるところは、やはり恩田作品らしい。そして最後、なにやらよく判らないまま終わってしまうというのも、やはり恩田さんらしいと言うべきか。 「猫と針」口上/戸惑いと驚きと/猫と針/「猫と針」日記 |
●「不連続の世界」● ★ |
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見送ろうかと思っていたのに結局読んだのは、そこに借りて読める状態の本書があったから。 本書は「月の裏側」に登場した塚崎多聞を狂言回し役とした、現代社会における怪奇的、あるいはミステリアスな現象を描いた連作短篇集。 ただ、面白いかと言えば今ひとつ、というところもまた恩田作品らしいところ。 木守り男/悪魔を憐れむ歌/幻影キネマ/砂丘ピクニック/夜明けのガスパール |
●「きのうの世界 ANOTHER YESTERDAY」● ★ |
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2011年08月
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「不連続の世界」に続いて同じ“世界”と名のついた題名、それと恩田さん自らの「集大成です」という言葉に惹かれて読んだ作品。 舞台は、塔と水路のある、とある町。 この町の秘密を知る人、気づいている人、何らかを感じている人、何も知らない人、調べ歩く人と、いろいろな人物の立場からストーリィは組み立てられ、しかも長い。 |
●「ブラザー・サン シスター・ムーン」● ★★ |
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2012年05月
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本屋大賞を受賞した「夜のピクニック」に連なる青春ストーリィ。 高校時代から仲が良かった楡崎綾音、戸崎衛、箱崎一。彼らの大学生活が、それぞれを主人公にして3章構成で描かれます。 大学1年の時、ある教授が口にした言葉を思い出しました。大学時代の4年間とは、自分が自由にして良い4年間なのだと。 ※「あいつと私」は子供の頃TVで見た石坂洋次郎原作の、眩しいような大学生青春小説。表題の「ブラザー・サン シスター・ムーン」は、やはり昔観たアシジの聖フランシスコを描いた映画。「陽のあたる場所」は観ていないのですが、モンゴメリー・クリフトとエリザベス・テーラー主演のあまりに有名な映画の題名。題名だけ聞いても懐かしい。 あいつと私/青い花/陽のあたる場所 |
●「六月の夜と昼のあわいに」●(序詞:杉本秀太郎) ★☆ |
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2012年09月
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斬新なスタイルの画、序詞、そして様々な趣向の恩田ストーリィとの組み合わせから成る作品集。 イージー・リスニングのPMへの思い出から始まるエッセイ的な篇であったり、時間と場所を軽々と越してみせるいかにも恩田陸さんらしい篇もあれば、夢か現(うつつ)か判然としない篇等々と、まさに様々な趣向がこの一冊の中には連ねられています。 元々恩田さんとは、時間にも場所にも捉われず、ふと湧いた着想を自由に繰り広げるタイプの作家。 私の好みに合った篇は、「Y字路の事件」「翳りゆく部屋」「コンパートメントにて」。 恋はみずいろ/唐草模様/Y字路の事件/約束の地/酒肆ローレライ/窯変・田久保順子/夜を遡る/翳りゆく部屋/コンパートメントにて/Interchange |
38. | |
「私と踊って」 ★★ |
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2015年05月
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ノンシリーズの短編集は「図書室の海」「朝日のようにさわやかに」以来5年ぶりで、本書でまだ三冊目とのこと。 ・冒頭の「心変わり」がお見事。のっけから、ゾクゾクっと背筋が凍るような恐怖感を味わったのですから、流石。 心変わり/骰子の七の目/忠告/弁明/少女界曼荼羅/協力/思い違い/台北小夜曲/理由/火星の運河/死者の季節/劇場を出て/二人でお茶を/聖なる氾濫/海の泡より生まれて/茜さす/私と踊って/あとがき/東京の日記 |
「蜜蜂と遠雷」 ★★☆ 直木賞・本屋大賞 |
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2019年04月
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近年世界的に注目されている“芳ヶ江国際ピアノコンクール”。 そこでの優勝を目指して世界各地から集まった才能ある若者たちが競い、勝ち抜いていく姿を描いた青春群像。 読み応えたっぷり、頁を繰る手が止まらず、といった風。 ストーリィの中心となるのは3人の若者たち+α。 ・かつて天才少女と呼ばれ内外のジュニアコンクールを制覇したものの、指導者であった母親の死によってピアノを弾く目的を見失っていた栄伝亜夜、20歳。彼女の復活は成るのか。 ・突如音楽界に飛び込んできた養蜂家の息子という異能児=風間塵、16歳。彼の登場は審査員たちを畏怖させます。 ・優勝候補とされる米国の名門ジュリアード音楽院のマサル・カルロス・エヴィ・アナトール、19歳。彼は本コンクールで、かつて彼を音楽の道に導くきっかけとなった少女と再会します。 ・そして、音大出身ながら今は楽器店の社員、応募資格年齢ギリギリの高島明石、28歳。彼は何故出場したのか? その4人それぞれに、様々なパターンで絡む周辺人物を配し、彼らの姿を立体的に描き出します。 私の感じる限りでは、演劇を題材にした長編「チョコレートコスモス」のスケールアップ版、という印象。 「チョコレート」での主役は天才と異能児という少女2人でしたが、本作ではコンクールである故に人数が広がり、しかも甲乙付け難しという展開。 そして、主役3人それぞれの演奏ぶりを描く各場面はまさしく圧巻。エントリー・第一次予選・第二次予選・第三次予選・本選と進んでいくにつれ、圧倒感もさらに極まっていきます。 ただし、「チョコレート」の場合は演技でしたからどういう処に凄さがあったのかは明瞭でしたが、本作は音楽であるだけに<言葉>のみに圧倒されたという印象です。 いずれにせよ本作は、コンクールで若者たちが勝ち抜いていくストーリィ。コンテストが進むにつれますます彼らが奏でる音楽を表現する言葉に圧倒され尽くす作品である、といって過言ではないと思います。 ですから本作品については、主役3人の勢いに乗せられるまま、一気に読み上げることをお薦め。 エントリー/第一次予選/第二次予選/第三次予選/本選 |
※映画化 → 「蜜蜂と遠雷」
「祝祭と予感」 ★★ | |
2022年04月
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「蜜蜂と遠雷」のスピンオフ短編集、6篇。 内容は、“芳ヶ江国際ピアノコンクール”の後日談だったり、そのずっと前に遡る出来事だったりと、多彩です。 また、「蜜蜂と遠雷」はコンクールが舞台でしたから、緊迫した雰囲気が常でしたけれど、本作はそれに対して休憩時間とでも言えるような、気楽な雰囲気があります。 そうしたところが気軽に楽しめる、という趣向のスピンオフ短編集です。 ・「祝祭と掃苔」:亜夜とマサル、一緒に綿貫先生の墓参り。何故か風間塵までついて来て。 ・「獅子と芍薬」:ナサニエル・シルヴァーバーグと嵯峨三枝子の、17歳と18歳だった時の出会いから今に至るまでの回想譚。 ・「袈裟と鞦韆」:菱沼忠明が、芳ヶ江国際ピアノコンクールの課題曲として差し出した「春と修羅」の、秘められた経緯。 ・「竪琴と葦笛」:ジュリアード音楽院に入学したマサルがレッスンを受けた相手は、当初ミハルコフスキー。それが何故、ナサニエル・シルヴァーバーグに変わったのか。ちょっと愉快な前日談に、マサルの曲者らしさが顔を見て、楽しい篇です。 ・「鈴蘭と階段」:奏、自分のヴィオラを決めかねている状況。そこに、何とプラハにいる亜夜と風間塵からの電話が・・・。 ・「伝説と予感」:ユウジ・フォン=ホフマンと、風間塵との、偶然の出会い。それこそ、奇跡というべき出来事だったのかも。 祝祭と掃苔/獅子と芍薬/袈裟と鞦韆(ブランコ)/竪琴と葦笛/鈴蘭と階段/伝説と予感 |
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