|
12.四畳半王国見聞録 13.聖なる怠け者の冒険 14.有頂天家族−二代目の帰朝 15.夜行 17.太陽と乙女 18.熱帯 |
太陽の塔、四畳半神話体系、きつねのはなし、夜は短し歩けよ乙女、【新釈】走れメロス他四篇、有頂天家族、美女と竹林、恋文の技術、宵山万華鏡、奇想と微笑−太宰治傑作選 |
●「ペンギン・ハイウェイ penguin highway」● ★★ 日本SF大賞 |
|
2012年11月
|
本書の主人公は、森見作品で初となる小学生、4年生の「ぼく」=アオヤマ。 何といってもこの主人公がユニーク。日常生活で出会う様々な問題を研究していると言い、常に観察記録をノートにつけ、その言動はこまっしゃくれていて子供らしくないというか、可愛げがないというか。 それでもやはり小学生らしいところはあります。だからこそ、そのアンバランスが面白い。 数々の森見作品に登場してきた、超変わっている主人公たち。彼らを小学生時代に遡らせると、まさにこんなキャラクターだったのではないか、というのが本書主人公のぼく。 街中、突然に一群のペンギンが現れます、南極ではないのに。 ただ、そこは主人公が小学生だけだからでしょうか、これまでの森見作品に比べると、さらりとしています。 |
●「四畳半王国見聞録」● ★☆ |
|
2013年07月
|
古く狭いアパートに住み暮す京都の大学生たちが繰り広げる、妄想、これまた妄想、といった森見ワールド全開の連作風短篇集。 題名からして推測が付くように、「四畳半神話体系」の流れを汲んだ一冊です。 どうでもよいことを妄想的にことさら誇大化し、自らを大物ぶって自己満足、というのが彼らの妄想的行動の真相でしょうか。 すると、その妄想のベールを剥ぎ取ると、そこにいるのは実に地味な大学生活を送る学生たち、金無く、女性との恋愛に縁無く、学問を志そうとすれど一歩も二歩も及ばず、といったような。 そう考えると、自宅通学と下宿生活という大きな違いはあれど、私が送った大学生活と余り変わらないなぁ、と思えてきて、彼らに親近感が湧きます。 そして彼らの奇行、多少の暴走も、愛嬌と思えてきますから、愉快。 本書には幾人もの学生たちが登場し、妄想・奇行を繰り広げます。ストーリィがいろいろと巡るように、読むこちらの思いもいろいろと巡る。それこそ本書の面白みなのか、と思う次第です。 まぁ、あまり難しいことは考えず、ある範囲の妄想的学生編・青春群像と思い切れば、十分楽しめる一冊です。 ※登場人物は「神話体系」と異なりますが、下鴨幽水荘、再び登場します。 四畳半王国建国史/蝸牛の角/真夏のブリーフ/大日本凡人會/四畳半統括委員会/グッド・バイ/四畳半王国開国史 |
13. | |
「聖なる怠け者の冒険」 ★★ |
|
2016年09月
|
夏の祭り=宵山の一日、京都の街を筋金入りの怠け者、助けを求める人に手を差し伸べる“ぽんぽこ仮面”なる怪人、2人をめぐって週末探偵やら奇人、変人、諸々の偏屈団体、変神までもが錯綜する、まさに森見ワールド全開の一冊。下鴨幽水荘もまたまた登場です。 3年ぶりとなる長編小説、たっぷり楽しめます。 まず登場するのが、ぐたーっと怠けているのが大好きという研究所勤めの若者=小和田君。 その小和田君を、現代京都の街で正義の味方という評判を勝ち得た“ぽんぽこ仮面”なる怪人(旧制高校のマントに狸の仮面)が追い回し、後継者になってくれとまとわりつきます。 そのぽんぽこ仮面の正体を暴こうと2人の後を追い回すのが、方向音痴の女子大生=自称“週末探偵”。 さらに小和田君の先輩カップルや、何故かぽんぽこ仮面を捕えようと殺到する集団が入り乱れ、宵山の一日は今回も賑やかです。 本書中もっとも興味を惹かれるのは、当然ながらぽこぽこ仮面なる怪人。こんな怪人が京の街の人々に受け入れられているというのですから、まるで幻想的な裏側京都世界、といった感じです。 「宵山の一日」という限定付ですから、ストーリィ展開がダレルこともなく、夢心地の一日とどこか納得できてしまいますから、気分好く楽しいという次第。そこが森見作品の魅力。 なお、本書は森見作品の中でも淡々と展開していく風ですので、じっくり森見作品に浸りたい方にはぴったりでしょう。 ※同じ宵山を舞台にした森見作品に「宵山万華鏡」がありますが、同書が短篇集であるのに対し本書は長編。両作を合わせ読むのも一興と思います。 プロローグ.土曜日の男/1.ぽんぽこ仮面と週末探偵/2.休暇の王国/3.宵山重来/4.聖なる怠け者の冒険/エピローグ.日曜日の男 |
※ | |
フジモト マサル「聖なる怠け者の冒険【挿絵集】」 ★★ |
|
2013/06/13 |
朝日新聞夕刊に連載された森見登美彦「聖なる怠け者の冒険」の挿絵を一冊にまとめた“挿絵集”。 ストーリィ中の様々な場面、登場人物たちがこの挿絵集にて次々と登場。 小説を読んだ時とはまた違った雰囲気があるうえに、これもまた京都の一面と感じる要素もいっぱいで、挿絵をただ眺めているだけで楽しくなってきます。 各挿絵に添えられたフジモトさんと森見さんの短いコメントも、内幕話的でまた楽しき哉。 原作を気に入られたのなら、ついでに本書もお勧め! 小説とこの挿絵集、ちょうどたい焼きの餡子と皮の関係に喩えられるのではないかと思う次第です。 |
14. | |
「有頂天家族 二代目の帰朝」 ★★☆ |
|
2017年04月
|
天狗、狸、人間どもが複雑に入り組んで大騒動を巻き起こした「有頂天家族」、7年半ぶりの第二幕の開幕です! 始まりは、凄絶な父子喧嘩を繰り広げた末に英国に去っていた、赤玉先生こと如意ヶ嶽薬師坊の天狗二代目が百年ぶりに帰国します。 しかし、僕は天狗にはならないよ、とのたまう英国紳士の二代目と赤玉先生の確執、赤玉先生の後継ぎと公言された弁天と二代目と争い、狸界においても再び夷川早雲が下鴨兄弟に悪計をめぐらし、金曜倶楽部の人間どもは再び忘年会で狸鍋を食そうと狙う、という騒動が、前作にもまして盛大に繰り広げられます。 何と言っても本作品の魅力は、読んでいて楽しい、のひと言に尽きます。 本ストーリィを前に進める原動力は、矢三郎たちが合言葉のように度々口にする「面白きことは良きことなり!」に、「阿呆」であることを自認する矢三郎のとにかく行動、また行動という姿勢にあるのですから、これが面白くない訳がありません。 圧巻は最後を締める「第七章 天狗の血、阿呆の血」。まるでハリウッドの大スペクタクル映画さながらの大迫力。 読み手も矢三郎に倣って阿呆になり切り、難しいことなど一切考えずに気楽に頁をめくるだけ、たっぷり楽しめる 460頁、お薦めです! なお、前巻から謎だった、元許婚者=夷川海星が矢三郎の前に決して姿を見せない理由も本巻で明らかになります。 さらなる続編、是非読みたいですねぇ〜。 1.二代目の帰朝/2.南禅寺王瀾/3.幻術師天満屋/4.大文字納涼船合戦/5.有馬地獄/6.夷川家の跡継ぎ/7.天狗の血、阿呆の血 |
15. | |
「夜 行(やこう)」 ★★ |
|
2019年10月
|
かつて京都の英会話スクールの仲間であった5人が10年ぶりに集まる、というところから本ストーリィは始まります。 実はその10年前、一緒に鞍馬の夜祭り見物に出掛けたところ、長谷川という女子大学生が行方不明になり、今もそのままという痛みを彼らは抱えています。 その日の宿、いつしか一人一人が、それぞれの旅先で体験した不思議な出来事を語り出します。そこに共通するのは、皆が皆、その旅先で岸田道生という画家が描いた「夜行」という連作銅版画と出会っていたということ。 「夜はどこにでも通じているの。世界はつねに夜なのよ」という言葉が、本ストーリィを不思議さを紐解く鍵となっています。 登場人物が語り出す話を聞く、というのは私の好きなストーリィ構成ですが、本書ではどの話も不思議過ぎて、困惑することばかり。 魑魅魍魎が蠢く妖怪世界というのではなく、かといってファンタジーとも言えない。近い感じでは内田百「冥途」辺りを上げたい処ですが、現代日本版ゴシック・ロマンと言うのが一番近いような気がします。 一通り読み終わった後、もう一度お浚いしながら整理してみて、漸く本作の全体像がつかめた、という次第。 ストーリィが複雑で理解するのに難しい本作は、気に入るかどうかは読み手の好み次第と言わざるを得ません。 私としては森見登美彦作品にある独特の可笑し味が好きだっただけに、その味付けのない本作はちょっと魅力不足。 ただし、彼の町の様子を思い出させてくれる「尾道」の章は、嬉しいものでした。 1.尾道/2.奥飛騨/3.津軽/4.天竜峡/最終夜.鞍馬 |
16. | |
「ぐるぐる問答−森見登美彦氏対談集−」 ★★ |
|
|
計14人+α(10年前と現在の森見氏同士)との対談集。 「ぐるぐる問答」という本書題名は、対談が苦手、でたとこ勝負で喋るだけという森見さん、それ故ぐるぐるしてしまうだろうがその責任は自分にある、という意味での命名らしい。 小説と脚本、あるいは漫画といった違いはあっても同じ創作者同士の対談となると中身が濃いですね〜。いずれの対談相手も森見作品が大好きということですから、お互いに相通じる処も多く、濃くなるのも当然のことと思う次第。 なお、「四畳半神話体系」アニメ化の折、意見を上田誠さんから聞かれた森見さんが作品の詳細を忘れていて、「小日向さんって誰でしたっけ?」と聞き返したという逸話は愉快な限り。 一方、TV番組「もやサマ2」を必ず見ているという森見さんの要望で実現したテレビ東京の大江麻理子アナとの対談、あっさりと終わってしまって肩透かしをくらった感じがなくもなし。 個人的に一番楽しかったのは、柴崎友香さんとの対談。 「京都の学生文化を知る柴崎さんと、京都マジックを使い倒す森見氏の話は尽きることなく−」という一文はまさにその通り。 自分がファンである作家同士の対談となると、こうも楽しいものかと感じた次第。 森見さん憧れの本上まなみさんとの対談は、前回ろくに話せなかったということがあり、リベンジだそうです。 「太陽の塔」の自転車「まなみ号」の件がありますから、微笑ましく楽しいという印象です。 本書を通じて感じたことは、森見作品世界の類稀な面白さ。 デビュー作「太陽の塔」の面白さを当時理解できなかった身としては、あの頃に戻って最初から読み直したいと願うばかりです。 ※デビュー当時の森見さんと現在の森見さんによる仮想対談は、森見さんらしい、人を喰ったサービスという処でしょう。 劇団ひとり−"笑い"の中にある"救い"/ 万城目学−対決!三つの公開質問状/ 瀧波ユカリ−漫画と小説の正しい濃度/ 柴崎友香−イマドキ古都の楽しみ方/ うすた京介−脱「○○作家」の挑戦/ 綾辻行人−京都に潜む怪しの闇/ 神山健治@−物語の構造はドリフに学ぶ?/神山健治A−オモチロ成分の考察/ 上田誠@−言葉が作る現実と非現実/上田誠A−鴨川神話が崩れた日/ 羽海野チカ−ダメダメ人間ほど愛おしい/ 大江麻理子−森見ワールドのモヤモヤ歩き/ 萩尾望都−わがままに、好きなように書く/ 飴村 行−一見対極、前世は兄弟?/ 本上まなみ−四畳半に帰るべし!/ 綿矢りさ−暴走させない恐怖と笑い/ 小説−今昔対談 |
17. | |
「太陽と乙女」 ★★ |
|
2020年07月
|
小説のような題名ですが、森見さんの14年間に亘るエッセイ大全集。 なんと 約400頁とボリュームいっぱい、てんこ盛りという一冊です。 題名、森見さんの代表作である「太陽の塔」と「夜は短し歩けよ乙女」からの発想なのでしょう、きっと。 「特別書下ろし「森見登美彦日記」を読む」は、「太陽の塔」が日本ファンタジーノベル大賞を受賞した前後の日記を収録したもの。 懐かしさを覚えますが、今にしてやっと読めたのかという思い。しかし、「太陽の塔」が話題になる度、その面白さを理解できなかった私の不明を恥じらされて辛いです。(苦笑) 冒頭「登美彦氏、読書する」では、まず内田百への思いが充満しているのを感じさせられます。私も百關謳カのファンですから森見さんに共感するところ大です。 しかし、エッセイで 400頁というのは量が多い。一気に読んだのは図書館からの借出し本である故ですが、本来は時間をかけて少しずつ読む方が相応しいと思います。 現に森見さんも「まえがき」で本書について、面白くないわけではないが、読むのが止められないほど面白いわけでもない、読みたいものだけ読めばいいといった、“眠る前に読むべき本”であると語っています。 そんな読み方が向いている、と私もお勧めします。 最後の「空転小説家」にまとめられたエッセイは、台湾の雑誌「総合文学」に2012年から2年間に亘って連載したコラムとの由。ご自身で説明しているとおり堅苦しい文章で、森見さんらしくないと感じます。でもそれが逆に、森見さんらしさとはと改めて感じさせてくれますから、それはそれで一興です。 所々で、森見さんにはこんなところもあった、こんなところがあったんだと知れる処がファンとして楽しいことしきり。 まえがき/1.登美彦氏、読書する/2.登美彦氏、お気に入りを語る/3.登美彦氏、自著とその周辺/4.登美彦氏、ぶらぶらする/5.登美彦氏の日常/6.特別書下ろし「森見登美彦日記」を読む/7.空転小説家/あとがき |
18. | |
「熱 帯」 ★★ |
|
2021年09月
|
作家業が停滞中の森見登美彦氏、「千一夜物語」を読み出したところでふと思い出したのは、学生時代にたまたま古書店で見つけて読んだ佐山尚一著の「熱帯」という小説。ストーリィに熱中したものの、途中で失くしてしまい、結末まで読むに至らず。 東京に出掛けた折、元同僚に誘われて出向いたのが、男女5人の<沈黙読書会>。 そのうちの一人、20代女性の白石珠子が持っていた本こそ、幻の本となっていた「熱帯」。 「この本を最後まで読んだ人間はいないんです」と告げた後、彼女が話し始めたことから、幻の本「熱帯」を探し求める物語の扉が開かれます。 物語は白石さんから池内氏へ等、各章毎に語り手を替え、作中に登場する人物がさらなる物語を語り始める・・・そして物語は途切れることなく、どう結末に辿りつくかまるで見当のつかないまま、当て所もなく続いていきます。 そう書くとこれ、千一夜の間、物語が語り続けられていった「千一夜物語」の構成とよく似ているように感じます。 語られることによって物語はいつまでも続いていく、作中人物まで語り始めればそれこそ物語はきりなく、想像の世界を創り上げていく、それって小説であれば当然のことであり、それこそ小説らしい小説と言えます。 「熱帯」=「小説」と言い換えても良いのかも。 本作、「千夜一夜物語」と同様に物語ることによって創り上げられる世界の広がり、面白さを告げようとした作品ではないのか、そう思います。 ・・・森見さんに、拍手。 1.沈黙読書会/2.学団の男/3.満月の魔女/4.不可視の群島/5.『熱帯』の誕生/後記 |
19. | |
「四畳半タイムマシンブルース」(原案:上田誠) ★★ |
|
2022年06月
|
森見登美彦「四畳半神話体系」と、上田誠の戯曲「サマータイムマシン・ブルース」を合体させたコラボレーション作品。 冒頭はまさに、下鴨幽水荘というボロアパートに住まう京都の大学三回生である「私」、悪人=小津、万年大学生=樋口、恋慕相手である黒髪の乙女=明石さんらが登場する「四畳半神話体系」の世界。 酷暑の夏、奇跡的に 209号に据えられていたエアコンのリモコンが小津の不始末から故障するという問題が発生して大騒ぎ。 その最中、幽水荘でタイムマシンらしきものが発見されます。 そこからは先はまさに上田誠「サマータイムマシン・ブルース」の世界へ。 要は、「サマータイムマシン・ブルース」のストーリィを、「四畳半神話体系」の登場人物らが演じる、という次第。 最初の頃は、森見作品の世界観を理解できずという状況だったのですが、一度その世界に馴染んでしまうと、楽しいの一言。 本作は「四畳半」登場人物たちの自儘勝手な行動ぶりに、「サマータイムマシン」の混乱が重なるという構成で、夏季に相応しく気軽に楽しめました。 また、「田村」と名乗る未来人物が登場、私と明石さんに未来はあつのかも・・・と期待させてくれる処も楽しき哉。 なお「サマータイムマシン・ブルース」、舞台の方は知りませんが、上野樹里出演作として映画は見ています。そのため、本ストーリィにもすんなり入り込めました。 第一章 八月十二日/第二章 八月十一日/第三章 ふたたび八月十二日 |
20. | |
「シャーロック・ホームズの凱旋」 ★★ |
|
|
森見版シャーロック・ホームズの舞台は、ヴィクトリア朝京都。 しかもそのホームズは、泥沼の大スランプ中! 名探偵ホームズに、スランプなどあって良いものか。 ホームズあってのワトソン、おかげでホームズの冒険譚は中断、診療所の経営は苦しく、それでもホームズに振り回されているジョン・H・ワトソンに対し、愛妻メアリの視線は冷たい。 原作でホームズ宿命の強敵であるモリアーティ教授は、寺町通り221Bのひとつ上の階に居住、しかもホームズ同様スランプ。 京都警視庁のレストレイド警部も、ホームズの助言が得られなくなってから成果を上げられず、これまたスランプ中と、スランプ男性ばかり、という状況。 それに対し、ホームズの向かいに事務所を開いた元舞台女優のアイリーン・アドラーは、今やホームズに代わって名探偵という評判がうなぎ上り。 さあ、本作主人公であり、ホームズの相棒でもあるワトソンは、この状況からどうホームズを復活させるのか!? ホームズシリーズの登場人物が何人も登場し、その中でも一番元気なのが家主のハドソン夫人ではないか、という感じ。 ロンドンから京都に舞台を変え、ホームズもののようであって、違うようでもあり、という処が楽しい。 しかし、いつもいつも名探偵という活躍を期待されるのも、大変なのかもしれません。少々のスランプぐらい許してあげたらとつい思ってしまうのですが、状況はそれを許しません。 終盤、ロンドンを舞台にした展開も現れ、京都とロンドン、どちらが実世界でどちらが虚世界なのか。何が何だか分からなくなってきて、頭がクラクラするような思いです。 森見登美彦さんにはいつも振り回されている印象がありますが、それこそが森見作品の楽しさ、面白さでもあります。 とすれば、やはりこれは森見さんの小説世界であることに異はありません。 ホームズの凱旋はあるのか? それはすなわち記録者ワトソンの凱旋でもあり、本作品の作者である森見さんの凱旋にも繋がることかもしれません。 ともあれ、本ストーリイを是非お楽しみください。 プロローグ/1.ジェイムズ・モリアーティの彷徨/2.アイリーン・アドラーの挑戦/3.レイチェル・マスグレーヴの失踪/4.メアリ・モースタンの決意/5.シャーロック・ホームズの凱旋/エピローグ |