小島達矢作品のページ


1987年東京都生、東京電機大学工学部第二部卒。2009年「ベンハムの独楽」にて第五回新潮エンターテイメント大賞を受賞。


1.
ベンハムの独楽

2.
ジューン・プライド

  


 

1.

●「ベンハムの独楽(こま)」● ★☆     新潮エンターテイメント大賞


ベンハムの独楽画像

2010年01月
新潮社刊

(1300円+税)

2016年03月
双葉文庫化

 

2010/02/16

 

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様々に趣向を凝らした、9つの物語からなる短篇集。

ホラー的な物語があるかと思えば、5分先の未来が見えるという男の話、祖母の思い出&微笑ましい友情物語、幼稚園に通う少女の日記風もあり。
さらに、コンビニ強盗を扱ったハードボイルド、宇宙の果てを目指して飛立った宇宙船のこと、物語を読んで栄養は取れるのか?といったファンタジー、大学時代の恋物語もあれば、タクシー・ジャックの話まで。
ホラー、SF、青春、ファンタジー、恋愛小説まで、てんこ盛りな短篇集。その意味で、まさに短編小説のおもちゃ箱というに相応しい。
一冊でいろいろな趣向を味わえるからこそ、本書の楽しさあり。

冒頭、双子なのに魂は一つ、しかももう一人の姿を見ることが出来ないという奇想天外な少女の物語「アニュージュアル・ジェミニ」には、思わず身震いさせられました。
そして一転、5分後の未来を見ることが出来るという友人のことを描いた「スモール・プレシェンス」は、ユーモラスでちょっぴり悲哀あるオチが楽しい。
本好きの人なら(特にエンデがお好きなら)、「ピーチ・フレーバー」は楽しい筈。きっと騙されてしまうことでしょう。

なお、文学賞で、短篇集が選ばれるというのは珍しいことでしょう。今回の新潮エンターテイメント大賞の選者は荻原浩さん。

アニュージュアル・ジェミニ/スモール・プレシェンス/チョコレートチップ・シースター/ストロベリードリームズ/ザ・マリッジ・オヴ・ピエレット/スペース・アクアリウム/ピーチ・フレーバー/コットン・キャンディー/クレイジー・タクシー

       

2.
「ジューン・プライド」 


ジューン・プライド画像

2013年10月
文芸春秋刊
(1400円+税)

   

2013/11/01

   

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ごく普通の家族物語と思いきや、ちょっと違う。どこがどう違うのか?というところが本作品の面白味。
まず冒頭飛び出してくるのは、閏年ならぬ“逆閏年”で、今年は6月がそっくり省かれるということ。そこで慌てたのは本章の主人公=女子大生の
時田ムツミ。せっかく付き合うようになった彼氏に誕生日を祝ってもらうつもりでいたのに、その誕生日が消えてしまうなんてとんでもない、と。そこからのムツミの行動が愉快。何でそこまで?と思うのと、そんなことまでしてしまったら・・・と。
SFファンタジー的連作ストーリィであると同時に、かなりドタバタ劇なのかもしれません。あえて例えれば、チョコパフェというよりチョコサンデーという味わい。
なお、冒頭
「ジューン・プライド」の最後に紹介される時田一家各々の名前の所以、そこがストーリィの鍵を握っていますので、どうぞお見過ごしなく。

「ミルク・ロード」の主人公はムツミの妹=フミの同級生である井上シズカ「スペース・トラブル」は転じて時田一家の飼い猫となった元野良猫、「プレジャー・ハンター」の主人公は幼女時代のムツミ。
そして最後の
「ウィッシュ・ストーリィ」では、それまでの登場人物が混乱したままに登場し、パラレル・ワールドの仕掛けが漸く明らかにされる、という展開。
キャラクターとしては計2篇で主人公となる時田ムツミがやはり爆笑もの。ただ、読んでいて感じる面白さは残念ながら今一つ、という印象でした

ジューン・プライド/ミルク・ロード/スペース・トラブル/プレジャー・ハンター/ウイッシュ・ストーリー

    


  

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