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2.鉄の骨 3.下町ロケット 5.ロスジェネの逆襲 6.七つの会議 7.銀翼のイカロス 9.陸王 10.花咲舞が黙ってない |
下町ロケット−ゴースト、下町ロケット−ヤタガラス、ノーサイド・ゲーム、半沢直樹 アルルカンと道化師、ハヤブサ消防団、俺たちの箱根駅伝 |
●「空飛ぶタイヤ」● ★★★ |
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2009年09月 2016年01月
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走行中のトレーラーから外れたタイヤが、通行中の母子を襲い、若い主婦は事故死。 個人対国家権力を描いた高杉良「不撓不屈」、IT企業の雄対一運送会社を描いた楡周平「ラストワンマイル」に優るとも劣らない、迫真的ストーリィ。 なお、大企業対中小企業という主軸ストーリィ以外に、大企業内部の勢力争い、さらに何処を向いて頑張るのか、という部分も描かれているところに、本作品の良さ、魅力を感じます。 ストーリィとしては、ホープ自動車の余りに自分勝手な思考に憤りを覚え、赤松社長の孤軍奮闘に胸熱くなりますが、大企業なんてこうしたものだろうという思いもあります。 |
※映画化 → 「空飛ぶタイヤ」
●「鉄の骨」● ★★ 吉川英治文学新人賞 |
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2011年11月
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題材がゼネコン、談合ということで、私の苦手なドロドロしたストーリィではあるまいかと見送っていたのですが、直木賞候補作に挙がったということで気持ちを切り替え、読書。 主人公は、中堅ゼネコンの一松組に入社して3年という若手社員=富島平太。建設現場で情熱をもって仕事に取り組んでいた平太は突然の人事発令で、本社の業務部に異動する。 どのゼネコンも脱談合宣言をしながら、何故談合あるいは官製談合はなくならないのか。そしてまた、ゼネコン業界にとって談合は是なのか非なのか。 ストーリィ展開に淀みがなく、そのうえ次の展開がどうなるのか全く予想できないというサスペンス性もバッチリ。 |
●「下町ロケット」● ★★☆ 直木賞 |
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2013年12月
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佃航平、43歳。元宇宙科学開発機構のロケットエンジン開発研究員にして、7年後の現在は父親の跡を継いで佃製作所の2代目社長。 しかし、そこで終わらないのが本作品の魅力。 確かにマネーゲーム、アイデアによって、現代では巨額の儲けを手にすることができるのかもしれません。でも、そこに何の夢があるというのか。 |
●「ルーズヴェルト・ゲーム」● ★★ |
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2014年03月
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池井戸さんお得意の企業小説。 そんな苦境の中、監督かつ主力選手2名がライバル企業に移った野球部は、かつての名門とはいえ存続が許されるのか。 青島製作所の逆転は成るのか。そうした企業ストーリィが野球部の逆転勝利有無と絡ませて描かれるところに、本作品の面白さがあります。 後からの理由づけはそれなりにできますが、要は敗北寸前に追い込まれながら、そこから逆転劇があってこそ、野球も、企業小説も興奮する面白があるというもの。本作品はそんな一冊です。 |
5. | |
「ロスジェネの逆襲 The Lost Generation Strikes Back」 ★★ |
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2015年09月
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バブル末期に大手都市銀行に入行した銀行員=半沢直樹を主人公とした企業エンターテインメント、「オレたちバブル入行組」「オレたち花のバブル組」に続くシリーズ第3作目。 コメディ風作品かという題名に騙された(苦笑)恰好で、作品は知りつつも視野外に置いていた本シリーズだったのですが、「倍返し」というセリフで人気沸騰中のTVドラマ“半沢直樹”の原作。おかげで図書館への予約殺到、予約件数は鰻上りらしい。 本書で主人公の半沢は、東京中央銀行から左遷出向させられ、現在子会社の東京セントラル証券の営業企画部長の職にあります。 さてさてサラリーマンとは何ぞや、仕事とは何ぞや、という問いがあり、それに対する半沢の回答がある訳ですが、それはサラリーマンなら何度も自問自答を繰り返してきたことだろうと思います。それに対する答えは学校教育から得られるようなものではなく、結局は社会に出てから自力で学びつつ、自分として何を目的にするのか、その選択に尽きると言えます。 椅子取りゲーム/奇襲攻撃/ホワイトナイト/舞台裏の道化師たち/コンゲーム/電脳人間の憂鬱/ガチンコ対決/伏兵の一撃/ロスジェネの逆襲 |
6. | |
●「七つの会議」● ★★ |
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2016年02月
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めざましい営業成績を上げ続けていた注目の営業課長が、信じ難いことに部下からパワハラで訴えられたうえ、直ぐに人事部付にされてしまう。一体何があったのか。 近時何かと話題になるパワハラ、セクハラを題材にした企業小説かと思えば、徐々にその裏で内部不正のあったことが明らかになっていきます。 リアルかつスリリング、そんな面白さは池井戸作品に共通するものですが、内容としては毎度お馴染みのものかと思いました。しかし、そこでふと考えたことは、もし自分自身が7人の内の誰かであったらどう行動できただろうか、ということ。 終盤、登場人物の一人が「客を大事にせん商売は滅びる」という言葉を思い出しますが、後から後悔しても詮無いこと。 各章、ひとつひとつのドラマにおいて人間の真価を問うているストーリィ。面白さに留まらず、そうした視点から是非本書を読んでみてください。 |
※映画化 → 「七つの会議」
7. | |
「銀翼のイカロス Icarus−Flying on Silver Wings」 ★☆ |
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2017年09月
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「倍返し」という決め台詞がすっかり評判になった“半沢直樹”シリーズ第4弾。 本書の感想を端的に語ってしまうなら、政治・ビジネス界を背景にしたバトル・ゲーム、と言うに尽きます。面白く読めることは読めるのですが、でもそれだけに留まるという印象。 さてストーリィはというと、合併行である東京中央銀行で営業第二部の次長である半沢に、頭取からだという異例の指示がもたらされます。 尽きることなく繰り広げられる、逆転、また逆転というバトルの面白さ。再建の為に何が必要か。信念を賭けた闘いではなく、片や自分の功績作りのため公権力を振ろうとし、片や銀行員として銀行の論理を貫こうする、という対立構図。それに加えて、東京中央銀行の内部における旧行間の対立がストーリィが半沢の状況をより困難なものにします。 |
8. | |
「下町ロケット2−ガウディ計画」 ★★ |
2018年07月
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ベストセラー作品の続編。 “ロケットから人体へ”というのがこの続編でのキャッチフレーズです。 前作から数年後、再び佃製作所に危機到来。 といっても前作のような絶体絶命の危機というまでは感じられず、その分前作程の迫力はなし。ただ、それはやむを得ないところでしょう。そう絶体絶命の危機が繰り返されたら堪ったものではない、というものでしょうから。 まず冒頭、医療機器大手の日本クラインから佃製作所に試作品の依頼がもたらされます。使途を明らかにしないままの一方的な要求でしたが、折角の好機と佃は依頼を引き受けます。しかし、相手の余りに自分勝手なやり方に決別。そしてそこに、NASA出身であることを売り物にする椎名社長率いるサヤマ製作所が登場。 一方、前作で水素エンジン用バルブの納入取引を成功させた帝国重工では、開発グループの財前部長を押しのけ、調達グループの石坂部長が佃の前に立ち塞がります。その石坂、財前とは犬猿の仲のライバル関係という設定。その結果、次期バルブ納入はコンペとされ、佃の競争相手としてまたしてもサヤマ製作所が登場します。 今回は人工心臓、心臓の人工弁という医療機器開発が題材。万が一問題が生じた場合には、多額の損害賠償を請求される可能性のあるリスクの高いビジネス。さて佃製作所は相次ぐ難題に対してどう立ち向かうのか・・・。 題材として医療機器開発に目を向けた点は慧眼。 そしてストーリィとしては、たかが中小企業と見下す、自己あるいは自社の利益優先という大企業らを相手に一旦は押し潰されそうになるものの、最後は自社の高い技術力をもって胸のすく逆転勝利を果たすという展開は前作どおり、すこぶる痛快な面白さを味わえるところは何ら変わりありません。 総じていえば、続編としての面白さ。さて、ここまで来たら、さらなる続々編を期待したいところです。 1.ナゾの依頼/2.ガウディ計画/3.ライバルの流儀/4.権力の構造/5.錯綜/6.事故か事件か/7.誰のために/8.臨戦態勢/9.完璧なデータ/10.スキャンダル/11.夢と挫折/最終章.挑戦の終わり 夢の始まり |
9. | |
「陸 王」 ★★ |
2019年06月
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埼玉県行田になる足袋作り 100年の中小企業“こはぜ屋”。 社長の宮沢紘一は、先細る一方の足袋に代わる新事業をと、ランニングシューズ作りに乗り出します。 ところが、簡単な思いから手を出したものの、新事業を成功させようと思うとその世界は限りなく深く、幾つもの難題が立ち塞がります。その度に宮沢へ協力の手を差し伸べてくれる人物が現れ、共に手を携えて自社シューズ“陸王”を成功させるため奮闘するのですが、やがて日本陸上界に深く食い込む世界的スポーツメーカー=アトランティスの日本支社がこはぜ屋を敵視してその前に大きく立ち塞がる・・・・。 「下町ロケット」に似る、久々の、池井戸さんならではの興奮尽きないビジネスストーリィ。 約600頁と読み応え充分、たっぷり楽しめます。 ただし、登場人物、とくに悪役側は決まりきったようなステレオタイプで、善人側と悪人側にはっきり二分されてしまっているのは何だかなァと思いますが、その分判り易く、ストーリィに乗り易いというのもまた事実だけに、あまり批判もできません。 職人気質のシューズフィッターとしてアスリートたちから信望を集める村野尊彦、新素材開発に熱を上げ本業の会社を倒産させてしまった飯山晴之という曲者たちも、本書の中で存在感をみせています。 本書が描き出そうとしたことは何かと言えば、“仕事”とは何か、仕事で一番大切なことは何なのか、そして自分の道をどう選ぶべきか、ということ。 若い人こそその選択における苦悩は切実でしょう。 本ストーリィでそれを体現しているのが、宮沢の長男で就活苦戦中の大地、故障からの復帰を目指す長距離ランナーの茂木裕人。 まぁ、難しいことを考えなくても十分楽しめる一冊ですが。 プロローグ/1.百年ののれん/2.タラウマラ族の教え/3.後発ランナー/4.決別の夏/5.ソールを巡る旅/6.敗者の事情/7.シルクレイ/8.試行錯誤/9.ニュー「陸王」/10.コペルニクス的展開/11.ピンチヒッター大地/12.公式戦デビュー/13.ニューイヤー決戦/14.アトランティスの一撃/15.こはぜ屋の危機/16.ハリケーンの名は/17.こはぜ屋会議/最終章.ロードレースの熱狂/エピローグ |
10. | |
「花咲舞が黙ってない」 ★☆ |
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「不祥事」「銀行総務特命」に続く、東京第一銀行事務部臨店指導グループに所属する女子行員“花咲舞”シリーズ第3弾。 TVドラマにもなったという本シリーズですが、私が前2作を読んだのは、台風到来で沖縄のホテルに缶詰めになった際、コンビニで購入してのこと。 そんな思い出、懐かしさもあって、この第3弾も購入して読んでみようと思った次第。 前2作と大きく異なるのは、東京第一銀行にて融資先の不良債権化が相次ぎ、銀行存続を図るため産業中央銀行との合併を決意するという状況が背景とされていること。 合併となれば、当事者2行の間で主導権争いが生じるのは当然のこと。そんな状況にもかかわらず、東京第一銀行内では不祥事が相次ぎます。 その目撃者となるのが、事務臨店指導グループの相馬と、その相馬が「狂咲」と呼んでその直截的行動にいつもハラハラしているのが花咲舞という次第。 終盤では、自分たちの権力保持のため隠蔽工作をして恥じない役員・部長たちに、舞が怒りの声を上げるという事態にまで。 なお、合併絡みという事情にて、産業中央銀行企画部の調査役としてあの半沢直樹も顔を見せます。 (※半沢が所属していた東京中央銀行とは、東京第一銀行と産業中央銀行の合併行だったみたいですね) 主人公である花咲舞が上げる声こそ、社会一般が感じる良識というものなのでしょう。 軽快でコミカル、ちょっぴりスリルもあるというビジネス小説、それなりに楽しめました。 1.たそがれ研修/2.汚れた水に棲む魚/3.湯けむりの攻防/4.暴走/5.神保町綺譚/6.エリア51/7.小さき者の戦い |