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肝焼ける、田村はまだか、タイム屋文庫、ロコモーション、ともしびマーケット、深夜零時に鐘が鳴る、感応連鎖、声出していこう、とうへんぼくでばかったれ、幸福な日々があります |
少しだけおともだち、てらさふ、遊佐家の四週間、乙女の家、植物たち、たそがれどきに見つけたもの、少女奇譚、満潮、ぼくは朝日、平場の月 |
「にぎやかな落日」 ★★ | |
2023年11月
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「おもち」こと島谷もち子さん、83歳。 2人の子供は既に独立し、長年連れ添った夫の勇さんは特養老人ホーム入所済とあって、北海道の石狩で一人暮らし。 そんなおもちさんの、年老いた日々をリアルに綴った長編。 病気、実娘の心配、入院、シルバー向けケアマンション入所、行動の不自由、新型コロナ感染対策により外出禁止、歳を取れば誰もが辿っても何ら不思議ないコースと言えます。 83歳の一年間が順々に語られていきますので、実にリアル。 自分自身もまたそうした老境が近づいていると思うと、読んでいて複雑な気持ちです。 多少ボケてきたかもしれませんが、まだ元気なおもちさん、むしろ羨ましいと思うべきなのでしょうか。 度々様子を見に来てくれる嫁のトモちゃん、東京から世話をしに来てくれる娘のちひろ、という存在も有難いことなのでは、と思う次第です。 人の世話にならずに生きていけたら、足腰しっかりし、頭もボケずにいられたら。もちろん病気をせずに、ですが。 「にぎやかな落日」という題名、元気で明るい性格のおもちさんの老いた日々を如実に表しています。 たんす、おべんと、クリスマス/コスモス、虎の子、仲よしさん/口紅、コート、ユニクロの細いズボン/煤、まぶた、おもちの部屋/お手紙、不良、赤い絨毯/テレビ、プリン、オートバイ/目方、寸法、帳面 |
「よむよむかたる」 ★★ | |
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舞台は北海道の小樽市。 主人公の安田松生(28歳)が叔母の美智留から引き継いだばかりの古民家カフェ<喫茶シトロン>では、毎月一回、高齢老人たちの読書会が開かれている。 名称は「坂の途中で本を読む会」で、最高齢は92歳、最年少は78歳。 そこに松生もメンバーとして迎え入れられ、役職は“名誉顧問兼書記”。さらに、読書会発足20周年の記念イベント責任者にも任じられます。 2023年 3月から10月まで、読書会の例会を軸に、その活動とメンバー老人たちのことが綴られていきます。 読書会に集まる老人たち、生き生きとして実に楽しそうです。 気の置けない仲間たちとの月一回の集まりが生き甲斐になっている、そんな雰囲気がありあます。 また同時に、ここまで生きてきたという強さみたいなものも、メンバーの老人たちからは感じられます。 しかし、老人たちだけの集まりだけでは面白くない。 松生という若いメンバーも加わったことで、20年前に遡って、忘れていた思い出が蘇り、また秘められていた事実がようやく明らかになる、という魅力的な展開も加わります。 なお、20周年記念の公開読書会開催場所探しに、松生が市立文学館を訪ねたことから、その事務職員女性がストーリーに加わってくるのですが、彼女のキャラクターが愉快。丁寧だけど自虐的なお喋りについつい笑ってしまいます。 年をとってもこんな楽しい時間が得られるのなら、満足して死んでいける筈、と思ってしまうのですが、如何でしょう? 1.老人たちの読書会/2.いつかの手紙/3.ご返事ご無用/4.恋はいいぞ/5.冷麦の赤いの/6.一瞬、微かに/7.おぅい、おぅい |
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