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1.肝、焼ける 2.田村はまだか 3.タイム屋文庫 4.ロコモーション 7.感応連鎖 8.声出していこう 9.とうへんぼくで、ばかったれ (文庫改題:恋に焦がれて吉田の上京) 10.幸福な日々があります |
少しだけおともだち、てらさふ、遊佐家の四週間、乙女の家、植物たち、たそがれどきに見つけたもの、少女奇譚、満潮、ぼくは朝日、平場の月 |
にぎやかな落日、よむよむかたる |
●「肝、焼ける」● ★★ 小説現代新人賞 |
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2009年05月
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北海道新聞文学賞を受賞した「コマドリさんのこと」、小説現代新人賞を受賞した「肝、焼ける」の2篇を含む短篇集。 表題作「肝、焼ける」は、稚内に転勤した7歳年下の恋人・御堂くんを真穂子が訪ねていく話。途中の銭湯や寿司屋での地元の人たちとの触れ合いがミソになっています。 「コマドリさんのこと」は、恋人として選ばれることはなかったが、「きっといい奥さんになれるよ」と言われ自分でもそれを信じて優等生を通してきたのに、いつのまにかオールドミスになってしまった駒鳥紀美子を主人公にした作品。 いずれもささやかなストーリィばかりですが、普遍的な内容とともに、軽やかさと切実感が絶妙のバランス感覚の上にのっているところに捨て難い味わいがあります。 肝、焼ける/一番下の妹/春季カタル/コマドリさんのこと/一入(ひとしお) |
●「田村はまだか」● ★★☆ 吉川英治文学新人賞 |
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2010年11月
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札幌はススキのとあるスナックに夜遅く流れてきた男女5人。小学校のクラス会の三次会だという。 第1章の「田村はまだか」が文句なく秀逸、素晴らしい。 本作品、小説ではありますが、かなり戯曲的。現れぬ一人を5人+マスターがいろいろ語り合いながら待ちわびる、そして最後にドンデン返しが用意されている、という処がまさにそう。 1.田村はまだか/2.パンダ全速力/3.グッナイ・ベイビー/4.きみとぼくとかれの/5.ミドリ同盟/最終話:話は明日にしてくれないか |
「タイム屋文庫」 ★☆ | |
2019年01月
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本作品の刊行時、題名を見て読もうかどうか迷ったのですが、結局読まずじまいになりました。 今回、「深夜零時に鐘が鳴る」の前編となる物語と聞き、読もうと思った次第。 一度すれ違った相手にまた再会したような気分で、楽しき哉。 主人公の市居柊子(しゅうこ)は31歳、祖母の死去、浮気されて離婚した姉が子連れで実家に戻ってきたことを契機に、上司との不倫関係に終止符を打って退社、小樽の亡き祖母の家で貸本屋&カフェ<タイム屋文庫>を開業します。 貸すのは15年間に亘って蒐集してきたタイムトラベル小説、お客に提供する場所はレトロ感あふれた祖母の居間。 とはいえ、そんな商売で生活していける訳もなく、新聞配達、そして修業も兼ねたレストランでのバイトがまずは主体。 それでも、祖母のことを知る老人軍団やレストランの主人、行き先のないまま居候となった少女「リス」等々、いつの間にか柊子の行動は広がりをもっていきます。 しかし、柊子が貸本屋を始めた本当の理由は、高校時代の初恋相手であり、タイムトラベルものSFが大好きだった吉成和久と再会。果たして柊子は吉成に再会できるのか。そして・・・。 なんとなくフワフワした小説だなぁという印象。 柊子が貸本屋を始めた理由も、採算が取れるのかという疑問も、吉成との再会も本当にあり得るのか等、非現実的。 それでも、いつの間にか<タイム屋文庫>に人が集まるようになり、柊子の手中には新たな幸せが・・・。 深い考えもなしに始めた仕事が、柊子の未来、幸せをもたらすことになる・・・その辺りが、フワフワと感じた理由です。 最後の展開はあっという間でした。 1.黒猫のひとまたぎ/2.龍の舌の先には/3.ツボミと柊子/4.プラスマイナス・ゼロ/5.時間旅行の本、貸します/6.ふりだしに戻る/7.いつかどこかで/8.夢のつづき/9.スイッチオン/10.たんぽぽ娘の末裔/11.永遠への扉/12.ラ・ヴィ・アン・ローズ |
●「ロコモーション」● ☆ |
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2012年01月 2009/04/01 |
男の目を引き付けずにはおかない、“いいからだ”を持って生まれたアカリ。 読み始めた1頁目から、「これは合う!」と感じる本もあれば、「これは合わない!」と思う本もありますが、本書は後者。 どういう意味があるのか、その良し悪しを越えて、判らなかったし、判りたいとも思わなかったストーリィ。 |
●「ともしびマーケット」● ★★ |
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札幌のとあるスーパー、ともしびスーパーマーケット鳥居前店をキーにした、ほのぼのした味わいの連作短篇集。 スーパーが共通の舞台かというと、それ程でもありません。むしろ、各篇の主人公たちが通り過ぎる場所、と言う方が相応しい。 ※なお、同じようにスーパーを共通舞台にした連作短篇集に野中柊「マルシェ・アンジュール」がありますが、こちらは高級スーパーであって、内容もそれに相応しく夢に絡むストーリィ。 いい日/冬至/平河/ピッタ・パット/232号線/流星/私/その夜がきて/土下座 |
「深夜零時に鐘が鳴る」 ★☆ | |
2019年12月
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匂坂展子、29歳、独身、繊維商社勤務。舞台は札幌。 年の瀬、展子は街中で偶然、6年前に姿を消したままの松本リコ、その元カレである根上茂と遭遇します。 それが何故か契機となり、展子はリコの行方を探し始めるというストーリィ。 するとどういう成り行きか、根上とその新妻である「そら豆さん」(何故か展子を敵視)、根上との同棲前後にルームシェアをしていた<ミヤコちゃん>も加わり、あたかもリコの捜査チームが出来上がったという風。 そして<えぐっちゃん>の正体がつかめたところから、リコの意外な面も明らかになっていくのですが・・・。 本ストーリィの前編となる物語が「タイム屋文庫」とのこと。 主人公も、同じ北海道とはいえ札幌と小樽という違いがあるのにどこで繋がるのかと思っていたら、途中から登場してきました。 柊子が結婚した後「タイム屋文庫」を任されていたみっちゃん、その繋がりで柊子、そして「リス」の話題も。 本来の目的とは違いながらも、その過程で偶発的に生まれたロマンス、幸せを手に入れるという展開は、「タイム屋文庫」と共通するものです。 サスペンスでも探偵業でもないのに、素人が人探しを始める、そこには相手への想い、友情が感じられます。 果たしてリコは見つかるのか?が興味どころですが、読み終えた後は何やらこれからの未来が明るくなったように感じられます。 1.吹雪のあと/2.ミツバチ・ベーカリー/3.喫茶「喫茶去」/4.チェブラーシカ/5.小鳥のハンカチ/6.タイム屋文庫/7.リコリスの法則/8.虹の化石/9.集合写真/10.黒い箱のなか/11.約束/12.深夜零時に鐘が鳴る |
●「感応連鎖」● ★☆ |
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2013年02月 2010/03/30 |
どこか歪なところある、4人の女性を描いた連作短編集。 地方で名門といわれる私立の女子高校。その1年の時同じクラスになった3人、デブの墨川節子、ヤセの佐藤絵里香、美少女の島田由季子が中心。 この4人の歪さ、ウ〜ン、何と言ったらいいのか。 墨川節子/秋澤初美/佐藤絵里香/新村由季子 |
●「声出していこう」● ★☆ |
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2013年08月
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通り魔事件の発生を背景に、その街に住む中学生から中年女性まで、6人の人生における状況を描いた連作短篇集。 6篇のストーリィから共通して感じるテーマは、人生において自分は主役になれるのか、ということ。 ・中1の茂森正則、まだまだこれから。夢が描ける年代。 現実を直視し、心の持ち様を切り替える、というのが幸せになるための近道であると思うのですが、年代によってそれは様々であるようです。 声出していこう/シクシク/みんな嘘なんじゃないのか/お先にどうぞ、アルフォンス/大きくなったら/就中−なかんずく− |
●「とうへんぼくで、ばかったれ」● ★☆ |
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2015年10月
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主人公は、札幌居住の23歳、生娘の吉田苑美。 まぁ、恋に不慣れな23歳が突拍子もない行動に出る、という本ストーリィは、コミカルにして軽妙な味わいです。 恋愛小説かと思えば、むしろ一方的な熱愛小説、と言う方が相応しいストーリィ。 金瓜/寝よだれ/あらかさま/じゃばら/ばかたれ/けだし君かと/すごろく/はしばしの/麝香 |
10. | |
●「幸福な日々があります」● ★★ |
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2015年08月 2012/08/21 |
熟年離婚を選んだ女性の心の内を、10年前新婚の頃の1年間と別居後の1年間を対比しながら描いた作品。 今や熟年離婚と聞いても驚くことはなくなった現在ですが、離婚したいと突然言われた夫の身となれば、やはり信じ難い思いがするのは当然でしょう。 この夫婦の場合は子供という枷が無かったことも一因でしょうけれど、10年前の様子と現在を比較してみると、何となく主人公の決意の理由が判るような気がします。おそらく、一方の当人である夫側は全く気づかず、妻側において急に我慢できなくなった、というものなのではないでしょうか。 |
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