ミス・リード作品のページ


Miss Read 
1913年英国ロンドン生、本名:ドーラ・セイント。英国を代表する田園作家。第二次大戦後にエッセイをパンチ誌等に寄稿し文筆活動を開始。1955年出版した「村の学校」が出世作となる。英国の初等教育や田園生活に題材をとった小説を数多く発表。BBCの脚本家としても活躍。

 
1.
村の学校

2.村の日記

 


 

1.

●「村の学校」● ★★
 原題:"VILLAGE SCHOOL"     訳:中村妙子

  


1955年発表

2000年08月
日向房刊

(2400円+税)

 

2007/07/08

 

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ミス・リードという作家も本作品のことも、掲示板で教えていただくまでまるで知りませんでした。
何故かなぁ・・・、文学全集や文庫本でも全く見かけなかった所為でしょうか。
ともあれ“フェアエーカー物語”の第一作になる本書、漸く読めました。

南イングランドの丘陵地帯にある辺鄙な村、フェアエーカー。
本書は、その村の学校の校長、ミス・リードの目を通して語られる学校と子供たち、村の人々の姿を描いた田園小説。
2クラス、生徒数40人程という小さな学校。そこには「トム」のような悪ガキも、「アン」のような空想好きといった風変わりな子供はいません。いたって普通、家計が苦しいためちょっと悲哀をこうむる生徒がいるくらい。
学校の様子にも村の様子にも、こじんまりとした落ち着きが感じられます。
特別な事件も騒動も起きることはなく、のんびりとした、それなりに色々とある日常の日々が語られていきます。

校長のミス・リードの視線は優しい。ことに、教師と生徒たちの気持ちが通い合っている、温かな雰囲気には心和みます。
平凡な日々を描いたストーリィとは言っても、多分本書に登場する人物は相当な数に登っているのではないか。
その中には、老教師のミス・クレア、朴訥なパートリッジ牧師といった好人物もいれば、学校の掃除婦ミセス・プリングルのような癖のある人物もいます。でもミス・リードは、どの人物も愛情をもって眺めていると感じます。
こんな温かな目線を持つことが出来るなら、田舎の生活も悪くないかもしれない。
そんな気持ちが自然と浮かぶところが本書の魅力でしょう。
このシリーズ、少しずつ読んでいこうと思います。

クリスマス学期/春学期/夏学期

  

2.

●「村の日記」● ★★
 原題:"VILLAGE DIARY"     訳:中村妙子

  


1957年発表

2000年12月
日向房刊

(2400円+税)

 

2007/08/02

 

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初期三部作“フェアエーカー村の年代記”の2冊目。
表題に「日記」とあるように、1月から12月まで、フェアエーカー村での日常を村の校長ミス・リードが日記に書き留めたという形式でのフェアエーカー物語です。
終始ミス・リードが一貫した語り手になっていますので、その分村の学校よりすんなりと胸に入ってきた気がします。

平穏なフェアエーカー村ですが、それでもそれなりにいろいろな出来事が起きる、というストーリィ。
今回の目玉は、村に越してきた独身の紳士、モーン氏
ミス・リードに会う誰も彼も、なんとミセス・プリングルさえ、2人はくっつくのが当然とばかりにモーン氏のことをこれでもかとばかりに話題に載せます。こうしたところを平然とやり過ごせるかどうかが、村で暮らせる条件のひとつなのでしょうね。(笑)
もうひとりは、ミス・リードの昔の教師仲間で、今や裕福な都会人主婦のエイミー。村の住民と比べるととかくエイミーの行動は慌しく忙しない。フェアエーカー村の住民たちののんびりとした良さを引き立ててくれているようです。

この第2巻では「村の学校」に増して主要な登場人物のことがつっこんで描かれています。
校長ミス・リードは当然のこととして、牧師夫人のミセス・パートリッジ、ミス・クレア、ウイレット氏、そしてドクター・マーティン等々といった住民たち。
村の婦人たちを臨機応変に巧みにまとめてみせるミセス・パートリッジの手腕はお見事ですし、ドクター・マーティンのミス・リードを説得するしたたかさといったら、もう笑い出したくなるくらいです。
そのうえで素直じゃない曲者ミセス・プリングルがいて、新たに若くて小生意気な教師ミス・ジャクソンも登場。
「村の学校」ではもうひとつでしたが、本書の真ん中辺りでようやく私もどっぷりとフェアエーカー村に浸かれたようです。そうなって初めて楽しめるのが、このフェアエーカー物語であると実感。おかげで、読みながら実に楽しい心持ちでした。
また、生徒達が驚いて毎度目を丸くする様子も可愛らしい。子供たちの素直さが感じられていつも楽しい部分です。

※本巻でのエピソードをひとつ。
「わたしたちはみな、お互いの鍵の隠し場所を承知している」
ですから、誰かの家に泥棒が入ったら「よそ者の仕業よ。そうに決まっているわ!」という声が最初に挙がる筈という。
いいですよねぇ、こんなところは。

      


 

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