ダニエル・ネイサン作品のページ


Daniel Nathan  1905年米国ニューヨーク市ブルックリン生。後にフレデリック・ダネイと改名、1982年死去。
高校卒業後コピーライター兼アートディレクターとして働く傍ら、従兄弟のマンフレッド・B・リー(1905−1971)と共に「ローマ帽子の謎」を執筆して長篇ミステリのコンテストに応募。それを契機に米国の代表的推理作家:エラリー・クィーンが誕生。

 


   

●「ゴールデン・サマー」●  
 
原題:"The Golden Summer"   訳:谷口年史

  

 
1953年発表

2004年8月
東京創元社刊

(1500円+税)

 

2004/11/07

エラリー・クィーンの一人、フレデリック・ダネイの単独執筆による少年ダニーの物語。
「エラリー・クィーンがトム・ソーヤーだった頃」という腹帯宣伝文句を読めば、少年冒険物語+ミステリ風味と予想するのは当然でしょう。しかし、実際に読んだ印象はかなり異なるもの。

アメリカ田舎町の10歳の少年・ダニーの、ひと夏の体験を描いたストーリィ。
このダニー、小柄で身体つきは華奢のうえ大きなメガネと、英雄像からは程遠い。おまけに、かなり金銭に固執するのです。
自分の利害、小遣い稼ぎにはすこぶる執念を燃やすのです。自分に損が生じるような危機、金儲けの絶好の機会ともなると、ダニー少年の脳細胞は急速に回転しだすのです。
このお金絡み故というところが、もうひとつダニーに感情移入できないところ。
しかし、この転んでもただでは起きない、最後まで起死回生を図ろうとする執念ぶりは、呆れる程です。その辺りが、本書ダニー少年・冒険物語のミソ。
でも、さすがのダニーに乱暴者のガキ大将には手も足もでない。智恵だけでは太刀打ちできない子供の世界の現実もちゃんと描かれています。
第22章まで幾つもの活躍ストーリィが書かれていますが、圧巻なのは「第6章 少年と書物」。ホームズものの最新刊「恐怖の谷」を本屋さんの主人から好意で貸してもらったものの、その本を汚してしまう。買い取らざるを得ないという窮地に立たされたダニーの起死回生策は?
「第10章サイフが消えた」でのダニーの裁判長ぶりもお見事。「ドン・キホーテ」サンチョ・パンサによる名裁判官ぶりに充分拮抗するものです。
読み終えた後、各章、ミステリに共通する要素がたっぷり含まれていることに漸く気付きます。

 


   

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