マクドナルド・ハリス作品のページ

    
MacDonald Harris
 

 


 

●「ヘミングウェイのスーツケース」● 



1991年09月
新潮社刊

1999年04月
新潮文庫化
(705円+税)

 

1991/11/19

   

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1922年、最初の妻ハドリーがヘミングウェイの小説原稿の入ったスーツケースを盗まれる、という文学史上の大事件を題材にした作品。
「知的でスリリングな小説」というのが宣伝文句でしたが、読んだ限りではミステリー作品という印象。

ニルスという主人公の作家、その息子で著作権代理人のアラン、この2人からは何かしら病的な感じを受けます。また、その印象が作品全体を陰鬱なものにしているのかもしれません。
作中、時々ヘミングウェイの失われた作品らしい短編が挿入されています。ヘムらしい語り口だし、ヘムらしいストーリィです。実際、ヘムに慣れ親しんだ作家がそれらしい作品を書くのは充分可能なことであって、それにもかかわらずアランは簡単に信じ込んでしまうものだなぁと思うのですが、それあってこそのストーリィ展開なのですから、仕方がないところ。

ヘム以外に、チェーホフ、ヘンリ・ジェイムズらしい作品まで登場してくるのには、作者の悪戯心を感じます。
ともかくも題材に興味を惹かれて読んだ作品でした。

 


 

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