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南紀熊野古道の湯巡り byやませみ


【第5回】 白浜温泉

みんな知ってる南紀最大の温泉地です。海辺のリゾートとしても超人気ですが、泉源総数78箇所(うち利用43箇所)15000L/min強という湧出量も全国第7位の実力を誇っています(昭和58年の資料)。

ところが、こんな大温泉地になったのは比較的近年で、大正14年の調査では泉源は湯崎近辺の自然湧出泉が7箇所と動力揚湯が1箇所のみで、湧出量も全部で80L/min弱というたいへん小さな温泉でした。昭和になって製塩事業の熱源として多数の高温源泉が掘削され、昭和16年にはすでに総湧出量は13000L/minに達しました。

過剰揚湯の結果、古来の自然湧出泉(湯崎七湯)は湧出を停止し、泉質も本来の重曹泉から海水の侵入による塩化物泉に変化する源泉が海岸部で多くなりました。とくに白良浜付近では著しく塩分が増えて強塩泉になっています。崎の湯露天に注がれる行幸(みゆき)源泉は本来の泉質に比較的近いそうですが、高台にある源泉がより良いというので、それらしい所にもあたりをつけて行ってみました。

白浜温泉の外湯巡りは6湯がコースになっており、パンフに50円割引券がついています。
白浜観光協会
http://www.nanki-shirahama.com/



松乃湯・共同浴場 A/

  白浜町743 TEL/0739-43-0988 火曜休 13-22時 200円
  生絹(すずし)湯 S.34.9分析 玄関に掲示
  Na-Cl(含ボウ硝重曹−食塩泉) 59℃ pH=6.7
  溶存計=15750mg/kg Na=5006 K=215 Ca=225.5 Mg=302.7
  Cl=7645 HCO3=1237 SO4=943.2 Br=26.5 HS=0.23 H2S=0.48 CO2=594.9
  パンフではS-Na-Cl強塩泉66℃となっている

浜通りを散歩しつつ北上し、バスセンターを過ぎてやや町並みが淋しくなったあたり。落ち着いた雰囲気の瀬戸湾が見えはじめる道の曲がりのところに、老人憩いの家の1階が共同浴場になっている。まったく浴場には見えない外観だが、ザー、カコーンという音が外に響いてくる。最近こんな音が聴ける温泉銭湯も少なくなったな、と思う。

夕暮れ時だったので常連さんたちがたくさん出入りしている。ちょっと浸かってはお馴染みさんに声をかけてさっさと出ていくという風。お風呂というよりはご挨拶の集会所という雰囲気で、いたってほのぼのしている。

2畳ぶんくらいの浴槽は70cmくらいで深め。湯口で6:1に少量加水され浴槽では43℃くらいのやや熱め調整。少量ながら掛け流しである。淡く緑白のささ濁りの湯は、弱い海水臭があるが硫黄風味は感じない。強塩泉のぴりぴりというよりは、ボウ硝重曹系のサラサラとした柔らかい浴感が前面に出ていると思う。複雑な個性の湯。

湯口では飲泉もでき、コップに注ぐとシュワシュワとサイダーのように泡立つ。炭酸も多い湯なのだ。苦味のある濃いめのお茶漬け味といったところでわりと美味しい。なお、カランは水しか出ないので身体を洗うのにはむかない。女湯ではスーパーの袋に入れた水を浴槽につけて温めて使っているらしい。(2002.2.25)


公民館みたいな外観



牟婁(むろ)の湯・共同浴場 A/

  白浜町1665 TEL/0739-43-0686 無休 7-23時(木曜12-23時) 300円
  鑛(まぶ)湯 純食塩泉 分析表掲示無し
  パンフでは Na-Cl 75℃
  行幸(みゆき)源泉 S.44.7分析 脱衣所に掲示
  Na-Cl・HCO3(含重曹−食塩泉) 82℃ pH=7.5
  溶存計=6459mg/kg Na=1599 K=195.5 Ca=41.92
  Cl=1862 HCO3=2200 CO3=14.7 HS=4.17 H2S=1.0 CO2=60.1

浜通りにあって湯崎方向から来ると目立つが、まぶ湯方向からだとトンネル出口すぐでわりと気付きにくい。帰り施設といってよいほどの大きな共同湯。浴室はスーパー銭湯風に改装されており、暗めの色調の内装であまり雰囲気は好きではない。

行幸源泉は導水溝から30L/minの投入。まぶ湯は打たせ湯で20L/min。どちらも湯口ですでに加水調整されているように思う。浴槽(70cm)ではおおむね43℃の熱めなので、あまりどっぷり浸かっている人はいない。

まぶ湯は、泉源ではわりと強い焦げた硫黄臭を発散しているが、こちらでは感じない。微緑ささ濁りで小つるすべ(1.5)、まろやかな強塩味・微炭酸味。そこそこ良いが湯の新鮮さにちょっと欠けるか。行幸湯は崎の湯と同じだがやはりなまっている感じ。

2種の源泉を同時に浸かれるのはやっぱりお値打ち感が高い。(2002.2.26)

写真はありません


崎の湯・無料露天 AA/

  白浜町1668 TEL/0739-42-3016 第4水曜休 8-17時(水曜13-)夏季延長
  行幸源泉1・2・3号混合 簡易掲示のみ

超有名な海岸露天風呂なので詳細は省きます。石灰華でクリーム白にコーティングされた岩浴槽に、淡青緑色の湯が満ちているのはとても美しい眺め。湯口の石灰華も壮観。

明瞭な塩味をともなう濃い重曹薬味でキャベツ臭がある、飲んだらいかにも胃に良さそう。つるすべ(1.5)はやや弱いが、湯の重量感があるので撫で廻しているのが気持ちよい。適当に温まったら、海に向かっておきまりの仁王立ちといきたいが、海中展望台からまる見えなのでちょっと気が引ける。

無料ですが、管理のおじさんにお礼を言うと、とっても良い笑顔が返ってきます。 (2002.2.26)

人工とは思えないほど美しい眺め



民宿・望海 (泊) AA/

  http://www.aikis.or.jp/~boukai/
  白浜町湯崎 TEL/0739-42-2673 立ち寄りたぶん可能 素泊まり4000円〜
  甘露の湯 S43.4分析 脱衣所に掲示
  S-Na-Cl・HCO3(含重曹−食塩硫化水素泉) 85.5℃ pH=7.6 581L/min(自然湧出)
  溶存計=4161mg/kg Na=1143 K=1195.5 Ca=41.92
  Cl=1050 HCO3=1552 CO3=13.24 HS=38.78 H2S=0.92 CO2=56.97

まぶ湯から少し高台に上ったところにあるわりと大きな温泉民宿。崖地にへばりつくように建つ変形3階。部屋も大きくて清潔なので、へたな旅館・ホテルよりずっと快適。今回は朝食のみ5500円で利用し、夕食は外湯巡りがてら温泉街でとりました。

小旅館サイズの男女別の内風呂があるだけだが、岩風呂風でけっこう凝っている。なぜか黒い石を多用しているので、白い析出が付いて汚く見えるのは損かなと思う。源泉と水のカランがあって、利用客がバルブの開け閉めで好きに調整するタイプ。湯口70℃と高温なので大量掛け流しとはいかないが、それに近い状況で浸かれるのは嬉しい。

甘露の湯は白浜でもっとも良いと、宿HPで自慢しているのはまんざら誇張でもなく、弱い塩味の濃い重曹味で、明らかなつるすべ(3)は肌触りがとても良く行幸源泉に優る。数値から期待される硫黄風味はほとんどなく、蒸し饅頭のような匂いがあるのみが残念。泉源はどこかと聞いたらもっと高台のほうで、湯処むろべでも使用しているとのこと。(2002.2.25-26)


白い析出が汚く見えるが湯はとても良い


グランパス「千畳の湯」 B/

  白浜町瓜切2927 TEL/0739-82-2065 火曜休 10-22時 600円
  千畳の湯 (H10.6分析) 簡易掲示のみ
  単純温泉 45.6℃ pH=6.7
  おそらくNa・Ca-HCO3・Cl型

白浜ではほぼ南端にできた新しい温泉。南千畳バス停前をちょっと登ってすぐ。オートキャンプ場併設のこじんまりした施設で、おばちゃんが一人で管理している。共同湯と日帰り温泉の中間といった感じで、休憩所はあるが食堂はない。石板張りの内装の浴室は外観よりずっと広い。シャワーも多いので海で遊んだ帰りに汗を流すには好適。高台にあって窓が大きくとってあるのでとても明るく、海が一望で眺めがとても良い。

木枠縁取りの5x2m中型浴槽には湯口から10L/minくらい投入でぬるめ。底に吸入口が設けられているが作動していないので掛け流しとなっている。露天は眺めの良い岩風呂だが、こちらは半循環のようだ。単純温泉ではあるが、はっきりと苦塩味と重曹味があるので、もう少しで塩類泉なのだろう。べつに特徴ある湯ではないが、熱い濃い湯の多い白浜ではホッと一息つける感じで長湯してしまった。(2002.2.25)

窓を開けると太平洋 風が心地よい

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