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霧島周辺と人吉の湯巡り byやませみ

 

【霧島山麓の温泉-2】

 

■妙見温泉「妙見石原荘」

  鹿児島県姶良郡隼人町嘉例川4376 77-2111 9-15時 1200円
  http://www.m-ishiharaso.com/

<掲示> 浴場には簡易掲示のみ
  休憩所パンフにS60の分析表
  石原貫一朗源泉 S60.05
  炭酸水素塩泉(Na・Mg・Ca−HCO3) 56.6℃ pH=6.6 総計=2272

分析は2年毎に更新でフロントにコピーあり(もらい忘れた!)下は以前に送って頂いたもの

  川端露天風呂(湯口) H12.03
  Na・Ca・Mg−HCO3 45.4℃ pH=6.3 200 L/min・掘削自噴
  総計=2847 TSM=2112
  Na=211(37.3) K=44.4 Mg=82.8(27.7) Ca=144(29.2) Fe(II)=1.5
  Cl=148(16.8) SO4=101 HCO3=1130(74.7)
  H2SiO3=221 HBO2=24.3 CO2=735 mg/kg (mval%)

超有名な高級旅館ながら、清水の舞台から跳んでみようかと決心させるような魅力にあふれた宿です。旅館サービスの批評は苦手ですが、アート感にみちた館内の造作、若い従業員のきびきびした接客、素材の良さをよく活かした料理などなど、華美に過ぎずに控えめな上品さが随所に感じられます。

渓流に面した部屋からは対岸の「雅叙苑」の茅葺きがよい借景になり風情ある眺めです。また、この川沿いは野鳥の往来がとても多く、鳥好きの私にとって思いがけない楽しみでした。


椿の間で贅沢させてもらいました

対岸の借景も絵になる

研究熱心な社長はお風呂をとくに大事にしており、渓流沿いに狭長な敷地の大半は浴場施設が占めています。ふつうは敷地いっぱいに建て増して部屋数をなるたけ稼ごうとするでしょうが、まったく逆の方向をめざしたところに優れた先見の明があったといえるでしょう。源泉は敷地内に3カ所あり(ほか低温で未利用のも1カ所)、それぞれに接近して浴場が設けられています。

全体の湧出量は500 L/minほどもあるそうですが、源泉の泉温がやや高すぎるので熱交換により冷却して使用されています。社長にお願いして熱交換設備を見学させてもらいましたが、当初はとくに源泉100%を意識したというわけではなく、析出を抑制する目的で導入したものだそうです。熱交換器じたいは意外にコンパクトな装置で値段もさほど高価ではなく、メンテもあまり必要ないそうですから広く普及すると良いだろうと思います。ただし悩みは冷却水の確保にあり、水源の選定にはだいぶ苦労されたようです。)


青いのが熱交換器 意外にコンパクト


浴場は源泉ごとに分かれているので、宿に近い順に記載していきます。

<貸し切り露天風呂> 
ガイド誌の写真でよく見る露天です。渓流ばたの大きな転石を利用して作られた浴槽は以前は2槽ありましたが、湯口から遠いほうの浴槽は湯の劣化が進むのと大雨で冠水しやすいので撤去したそうです。1.5x3mほどの浴槽に奥手のパイプ湯口から45℃の源泉が100 L/minほど投入され、川になって流れ込んできて湯温はちょい熱めの42℃。排水はそのまま渓流へ落ちていきます。

湯口付近はぼ無色澄明で微炭酸がよく残っていますが、浴槽のはじっこではさすがに緑白色に濁ってきて炭酸は抜け気味です。サラサラと冷涼感のある肌触りが心地よく、それでいて体内はけっこう温もるので、脇のテラスで涼みながら出たり入ったりすると30分の持ち時間はすぐに過ぎてしまいます。日帰り時間は女性専用となります。


渓流の一部のような巧みなつくり
 

<大浴場・天降殿>
大きな湯気抜きが望楼のように乗った立派な寄せ棟つくりの湯殿で、ゆったりと広い休憩ラウンジもついています。サウナの付いた大浴場は広大で、タタキの向こうに三角形5mほどの大浴槽がどーんとあるだけです。みごとなレリーフで飾られた壁面の湯口から滝になってどんどこ投入される豪快な掛け流しで、湯量は300 L/minほどもありそうに見えます(多量すぎて桶式測定は不能)。

せっかくなのでちょっと打たれてみましたが、熱いのと湯圧に押されてすぐに降参してしまいました。淡緑色のささ濁り湯はヒスイ色で美しいです。これだけ大きい浴槽なのに周辺部でもしっかり微炭酸が残り、新鮮な金気が香ばしくてサビ臭く劣化していないのはお見事というしかありません。ややキシキシした浴感で肌馴染みのとても心地よい湯です。

深め浴槽に42℃はやや熱いのであまり長湯はできません。誰もいなかったので溢流に浸ってかけ湯しつつ、久しぶりにトドを堪能しました。タタキが広いのでトド専用の寝湯スペースを設けても面白そうです。


伝統とモダンが融合したみごとな建築

あっぱれなほど豪快な湯量 霞んでますが・・(^.^;

<飲泉所>
天降殿へ向かう渡り廊下の途中に立派な岩組みの飲泉所があります。源泉は天降殿と同じですが炭酸味が明瞭でピリピリと辛口に感じ、まるで違う泉質に思えるほどの差があります。少し空気に触れたほうが重曹のまろやかな甘みが出て濃く感じるようです。舌先での濃度判定はあまりあてにならないかなと少し反省させられました。


辛口の炭酸湯は焼酎割りもおいしい



<もみの木露天風呂>
敷地のいちばん上手奥につくられた混浴の渓流露天です。河原の転石の隙間をコンクリで埋めた4x5mくらいの浅め浴槽の上を、大きな樅の木が覆いかぶさるように立っています。貸し切り露天よりも周囲が開け、川面がより近いので野湯気分が高まります。5mくらい離れた独立の源泉から熱交換を経て46℃に調整され、湯面下から150 L/minほど流入。寒い朝だったので浴槽では41℃前後の適温です。

淡緑色澄明の湯は、飲泉所の源泉より重曹味が少ないように感じますが、炭酸が多く残っており辛口の清涼感があります。少々の泡付きがみられ、じっとしていると小豆大になって皮膚をころころ上っていくのがなんとも心地よいです。日帰り時間は男性専用になります。


野湯気分が満点です

このほか、敷地内には低温で使われていない源泉の自然湧出もあり、川に垂れ流しとなっています。ぬる湯好きな小生にはいささかもったいなく思われました。小さい湯小屋でも作っていただけると有り難い。

余談ですが、帰りぎわに女将さんにいただいた「ふくれ」がとても美味でした。よくみる山崎の「フークレー」と同系の蒸しパンですが、ふわふわ感や黒糖の風味がまるで違います。空港の売店でもみかけたので、普及しているお菓子なのでしょうか。こういうさりげないモノが妙に美味しいのが鹿児島の良さですね。
(204.02.17-18)


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