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常磐の湯巡り [5] byうつぼ



■いわき湯本温泉「さはこの湯」

(福島県いわき市、8:00〜22:00、220円、0246-43-0385)
http://www.iwakiyumoto.or.jp/

いわき湯本温泉は「三箱(函)の御湯」と呼ばれ、道後、有馬とともに日本三古泉に数えられてきた古湯で、開湯は奈良時代にまで遡るといわれています。温泉に乏しい浜通りでは唯一ともいえる一大温泉街を形成し、多くの湯客を集めています。今は、街なかに旅館が点在している感じで、少し猥雑なイメージがあるのが残念。

「さはこの湯」は、このいわき湯本温泉を代表する共同浴場というか日帰り施設で、古くからある共同浴場を建て替えたもの。Pは少しはなれて3ケ所ほどありますが、入れにくく台数も少ないです。連休中につきPには他県ナンバーが目立ちました。

唐破風門を備えた湯屋建築四層の風格ある建屋ですが、大がかりな外観のわりに館内(1階)は狭くて混み合っています。浴室は男女別で1階にあり、他に身障者用風呂もあり。2階には温泉資料展示コーナーやマッサージ室、3階には大広間があり、料金220円のわりに施設は充実しています。

浴室は、石貼多角形10人の大浴槽と石貼2人の熱湯槽。窓開け禁止なのでもうもうにこもっています。場内には人があふれ返り、当然洗い場も待ち状態。居場所がなくみな浴槽フチに腰掛けているので、よけいに狭苦しい感じがします。カラン8、シャワー・ドライヤーあり、シャンプーなし。土曜20時で20人以上と大盛況。

大浴槽はみかげ石の湯口から大量投入。熱湯槽もみかげ石の湯口から投入で、ともにゲキ混みにつき槽内注排湯は未確認ですが、ザコザコのオーバーフローがあったので、かけ流しでは?(加水はあると思う) 玄関前にも「さはこの湯の温泉については、循環方式ではなく、流し放しの方法で営業をさせて頂いております」との掲示がありました。

やや懸濁したお湯はかなりの熱湯でしぶ焦げイオウ臭にたまご味+微塩味。弱いヌルすべがあり浴後はしっとりつるつるとなります。

とにかくあまりに混んでいるのには閉口、夕方以降の混雑時を避けていくのが正解かと。イオウ臭と浴感もあり、なかなかのお湯だとは思いましたが、いわき湯本温泉の底力はこんなものではなかったのです。

温泉分析表の掲示がないのは疑問です。
泉質:硫黄水(??) 59.7℃、pH=7.6 他不明


「さはこの湯」の外観

「さはこの湯」の浴場入口

「さはこの湯」の貼り紙
 


■いわき湯本温泉「東湯」

(福島県いわき市、15:00〜22:00、70円、TEL不明)

玉山からいわき湯本に向かい、南のはずれにあってお湯のよさに定評がある「ホテルみちのく」に突入しましたが、15時前だったのに本日満室とのことで断られました。「10分でもいいから」と粘りましたがやはり不可、無念 (TT) で、早いですが、本日の泊まりの「岩惣」にチェックインし、すぐに温泉街に繰り出しました。

市磐城支所の横に温泉タンクと温泉神社があって一見源泉地風ですが、ここは源泉ではないそうです。温泉神社の参道脇には地元青年会が建てた「神泉の碑」があって、碑面に温泉が流され、白黄色をしたイオウの析出に彩られています。こういうちょっとしたものでも温泉情緒が高まっていいですね。

いわき湯本の中心は「さはこの湯」がある温泉通りで、「東湯」は「さはこの湯」のすぐそばにありますが、一本裏手の路地に入っていて看板もないので判りにくいです。旅館などでもらえる「いわき湯本温泉郷マップ」に場所がのっています。

路地の一角に、いかにも共同浴場風のモルタル造瓦屋根の小さなかわいい建物。番台のおじさんに70円を払います。浴場の扉をあけるとこちら向きにタイル貼3.4人の浴槽がひとつ。なんとなく新潟新津の佇まいに似ています。カラン4、シャワー・シャンプー・ドライヤーなし。日曜16時で7〜9人と混雑。地元客指数は95%か。

浴槽へはライオンの口から30L/min程度の熱湯を投入、別に水カランから冷水が少量さされています。槽内注排湯はなく、全面オーバーフローの文句なしの源泉かけ流し。

かなり熱めのお湯は緑灰色透明度50cmの絶妙な色味のにごり湯。むせぶようなしぶ焦げイオウ臭がただよい、弱塩味+たまご味+酸っぱ味で、味臭とも「さはこの湯」より全然強いです。弱いヌルすべのある熱くてビシッとくるお湯は浴感充分で、浴後は肌がさらさらになります。

「さはこの湯」のそばにありますが、あきらかに異質のお湯に感じました。これが配湯ルートのちがいによるものか、湯づかいの差によるものかははっきりしません。それにしてもやはり歴史ある温泉地の共同湯おそるべし、温泉ファンならば見逃せないお湯かと思います。

こちらはしっかりと分析表が掲示されていました。
含硫黄-Na-硫酸塩・塩化物温泉 59.5℃、pH=8.0、湧出量不明、成分総計=1.782g/kg、Na^+=540.4mg/kg、F^-=4.2、Cl^-=584.1、HS^-=13.2、チオ硫酸イオン=1.2、SO_4^2-=379.4、CO_3^2-=30.1、陽イオン計=608.1、陰イオン計=1075、メタけい酸=80.7、メタほう酸=17.0、硫化水素=1.5 <H9.9.16分析>


「東湯」の外観

温泉神社よこの温泉タンク

温泉神社
 


■いわき湯本温泉「岩惣」−泊

>(福島県いわき市、時間要問合せ、1,000円、0246-42-2135)
http://www.iwaso.co.jp/welcome.stm

いわき湯本温泉にある客室29室の中規模旅館「岩惣」に泊まりました。建物はさほど新しくも鄙びでもありませんが、スタッフの接客がしっかりとしています。料理は刺身の量がもうすこし欲しかった(さかな好きです ^^ )ですが、味は良く量も充分で満足できました。

風呂は、最上階にある展望大浴場と3つの貸し切り風呂(和風古代檜風呂、アジアン風呂、ヨーロピアン風呂)があり、貸し切り風呂はHPでは有料制となっていますが無料で入れました。

まずは、和風古代檜風呂に入りました。40分入浴でお湯は毎回張り替えるようです。用意ができましたとの連絡を受けて行くと、源泉とともにかなりの量の水を投入。お湯はとみると、うっ、これがぬるい。すぐに水を止めて、熱い源泉をドボドボと投入開始。

浴槽投入用のカランは冷温混合栓と源泉栓があり、どちらもまっ黒に硫化しています。源泉栓からはしぶ焦げイオウ臭香る熱湯が出てきます。総檜造りの湯船は2人がゆったりと入れるもので、源泉栓全開ザンザコオーバーフローの贅沢なひとときを楽しみました。

お湯は多少懸濁し、「さはこの湯」に似た感じのお湯。最初の大量水希釈がたたって、最後まで源泉濃度が回復せずに終わったのは残念でした (TT)

展望大浴場は最上階にあり、いわき湯本駅方面の展望が開けています。黒みかげ石枠タイル貼20人位の浴槽がひとつとシンプル。ふたつある湯口のひとつは止まっていました。かなり熱めのお湯を投入で槽内注排湯はみあたらず相当量のオーバーフローがあるので、かけ流しかと思います。カラン10位、シャワー、シャンプー、ドライヤーあり。

お湯は、緑青灰色で透明度45cmくらいのにごり湯。しぶ焦げイオウ臭に微塩味+たまご味があり、とくにしぶ焦げイオウ臭は湯口付近で相当強く香ります。湯口のお湯は「東湯」「上の湯」ほどは熱くないので加水しているかも。湯口付近はかなり熱いですが、浴槽が広いので端のほうはけっこうぬるめになっています。もう少し加水を少なくして投入温度を上げてもいいような気がしました。

展望風呂ながらお湯はけっこう優れモノで、「東湯」「上の湯」には及びませんが、「さはこの湯」は凌いでいるかと思います。食事も部屋出しで美味しいし、(たぶん)源泉かけ流しだし、接客も良く、料金もそこそこ手頃なので、満足度の高いお宿かと思います。

含硫黄-Na-塩化物・硫酸塩温泉 59.7℃、pH=7.6、5,000L/min、成分総計=1.7932g/kg、Na^+=499.2mg/kg (84.63mval%)、Fe^2+=0.6、F^-=4.7、Cl^-=577.2 (59.68)、HS^-=4.2、チオ硫酸イオン=0.8、SO_4^2-=412.2 (31.45)、HCO_3^-=122.2 (7.32)、陽イオン計=579.6 (25.64mval)、陰イオン計=1123.9 (27.31mval)、メタほう酸=11.5、硫化水素=16.3 <H2.6.5決定>


「岩惣」の外観

「岩惣」の男湯

いい色です

貸し切り檜風呂


■いわき湯本温泉「上の湯」

(福島県いわき市、15:00〜22:00、70円、TEL不明)

夕食のあと、街はずれにある共同浴場「上の湯」に繰り出しました。住宅地の路地にあってわかりにくいですが、ここも「いわき湯本温泉郷マップ」に場所が載っています。「さはこの湯」からだと7.8分といったところでしょうか。温泉街からわざわざ歩いてくる観光客はほとんどいないと思うので地元指数99%か (^^

「こんな所に!」とびっくりするような路地の奥にあり、2階は住民の集会場です。ここも番台のある銭湯仕様で、小銭の用意が必要かと。

扉をあけると湯気がもうもうと立ちこめる場内にタイル貼4.5人の浴槽がひとつ。茶色の鴨の湯口からゲキ熱の源泉を30L/minほど投入し、別に白い鳩の口から水が出て、水の量はカランで調整できます。浴槽の端(脱衣所寄り)からのオーバーフローで、当然槽内注排湯はなく源泉かけ流し。カラン4(お湯は源泉)、シャワー、シャンプー、ドライヤーなし。日曜20時で5〜7人と盛況。

ちょうど行ったときには水の投入が絞られていたので、ゲキ熱たぶん46℃くらい。それでも平気で入っている常連さんがいるのには脱帽。緑灰色で透明度30cmのにごり湯には白い湯の花多数。強いしぶ焦げイオウ臭に弱塩味+たまご味+すっぱ味があり、鮮度感あふれるお湯は、ビシっとくるイメージのすばらしく力のあるもの。

弱いヌルすべがあって浴後は肌がさらさらになり、しぶ焦げイオウ臭が肌に残ります。ただならぬ爽快感が出ますが、なかなか冷めないという面白い浴後感。

ここも分析表の掲示がありました。分析表は一番新しいデータのものかと思います。
含硫黄-Na-塩化物・硫酸塩温泉 59.0℃、pH=8.1、4,750L/min、成分総計=1.743g/kg、Na^+=523.0mg/kg (86.66mval%)、F^-=5.3、Cl^-=556.6 (59.37)、HS^-=9.5、チオ硫酸イオン=0.6、SO_4^2-=390.3 (30.78)、HCO_3^-=106.9 (6.63)、陽イオン計=600.6 (26.24mval)、陰イオン計=1079 (26.41mval)、メタほう酸=15.2、硫化水素=0.8 <H12.11.24分析>


「上の湯」の外観

「上の湯」の男湯


今回入ったいわき湯本のお湯に敢えて順位をつけると、
上の湯 > 東湯 > 岩惣大浴場 > 岩惣貸切 > さはこの湯 の順になるでしょうか。

いわき湯本温泉の源泉は坑内温泉で地下630mまで温泉揚湯斜坑が延び、抗底からさらにボーリングをして花崗岩中の温泉湧出場所から汲み上げをしています。源泉地は「石炭化石館」の北側(常磐湯本町台山20番1)で、そこから温泉街に引湯されており、「温泉通り」北側に分岐ポンプがあるようです。

推測ですが「上の湯」は源泉地に一番近く、しかも分岐ポンプの手前なのでお湯の鮮度がすばらしいのではないでしょうか。共同配湯放流式と思われるいわき湯本のお湯の良し悪しは、源泉からの引湯距離(&ルート)と加水の多寡でほとんど決まってしまうような気がしました。

なお、いわき湯本温泉は、明治から始まった石炭採掘にともなう坑内出水により温泉面の低下を来たし、大正8年にはついに温泉が枯渇してしまったようです。昭和17年に二十数年ぶりに温泉が復活し、昭和51年に炭鉱閉山にともない新源泉(旧坑内)からの供給が開始され、安定供給がなったようです。従って、現在の源泉は古来の”さはこの湯”とは異なるものとなっています。

「常磐ハワイアンセンター(スパリゾートハワイアンズ)」のイメージがとかく強烈ないわき湯本温泉ですが、予想以上の良質なお湯に認識を新たにしました。


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