byやませみ


7 関東周辺の温泉

この章では、関東地方と周辺の代表的な温泉について、温泉地の発展の歴史と、温泉の泉質や成因について判っている範囲内でご紹介します。

その前に、まずは下の図で、関東周辺の温泉分布をご覧下さい。この図には、登録されている温泉のうちで、分析表を入手できた1429箇所の温泉地が泉質による分類で表示されています。富士五湖などの最新の温泉地のデータはまだ入っていません。複数の異なった泉質の源泉をもつ温泉地では、もっとも利用されている源泉の泉質で代表させました。単純温泉のうち、溶存成分がかなり多いものについては泉質の区分に含めました。また、硫酸塩・塩化物泉というような中間的な泉質は、どちらの含有量が多いかでちょっと強引に分けてしまいましたので、おや?という箇所があるかと思いますが、ご容赦下さい。


関東周辺の温泉分布図


一見したところでは、無秩序に雑然といろんな泉質の温泉が分布しているようですが、しげしげと眺めているうちに、いくつかのまとまりがあることに気付かれるはずです? 

1) 海沿いの塩化物泉
関東平野南東部と房総半島、常磐の海岸、伊豆半島東岸、新潟平野、富山平野などにまとまっています。これらには海岸温泉と化石海水型の両方が存在しています。

2) 内陸の塩化物泉
群馬県西部から上越地域、それと新潟−会津に塩化物泉がまとまっています。おもにグリーンタフ型の温泉です。箱根、塩原、吾妻には火山性の塩化物泉があります。

3) 炭酸水素塩泉
南関東のとくに東京湾西部に集中しているのはいわゆる黒湯で、化石海水型に含められています。群馬県南部にもやや似た泉質の温泉が分布しています。内陸の炭酸水素塩泉は、白馬−小谷にまとまっていて、アルカリ性が強いのが特徴ですが、成因はよくわかっていません。南アルプスや奥飛騨の山岳地の温泉は表層の地下水です。

4) 硫酸塩泉
硫酸塩泉の分布は遍在しています。箱根、蓼科、那須、吾妻にあるのは火山性のものですが、分布範囲は広くありません。それよりも、伊豆半島、群馬県北西部、新潟−会津に広いまとまりがあり、グリーンタフ型の温泉です。山梨県にも散在していますが、その成因はわかっていません。

5) 単純イオウ泉
とくに長野県北部にまとまって分布していて、有名な温泉が多数あります。グリーンタフに関係しているとも、花崗岩に関係しているともいわれますが、成因はいまいち解明できていません。奥多摩地域、南アルプスにも散在しています。吾妻周辺のものは火山性の硫化水素型です。

6) アルカリ性単純泉
関東山地周辺の、東丹沢、山梨県北東ぶ、秩父地方などにまとまりがあります。この他にも、群馬県片品川流域、栃木県那珂川から茨城県奥久慈に広く散在しています。成因的なことはほとんどわかっていません。

7) 放射能泉
岐阜県の東濃地区に集中しています。放射性元素に富む花崗岩の分布と一致しています。関東周辺ではまとまった分布はありませんが、山梨県増富や、新潟県栃尾又はなかなか良い泉質で有名です。


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