■郷緑温泉「郷緑館」(岡山県真庭市)
岡山県美作の湯2湯目は真庭市(旧湯原町)の湯原温泉郷の一つで一軒家の郷緑温泉郷緑館をレポします。“新境地の中国岩盤湯めぐりシリーズ”は三朝大橋・奥津荘鍵湯に次ぎ、第3段となりますが、ここが一番感動したところです。
奥津温泉を一旦南下し、県道56号を湯原方面に右折。しかーし、工事中で通行止め。看板に従って迂回するも中国山地の深い山の中を行ったり来たり。その迂回路もものすごく狭い林道で対向車が来ようものならアウト、すれ違い不可。ずうっとこんな道ばっかでドキドキでした(^_^;)でも運のいいことに対向車はなかったです。
それにしても中国山地の山深さにはヘキヘキとしました。通常ですと、大阪方面からは中国道落合JCT経由米子道湯原IC下車。湯原方面へ下りた次の信号を美甘方面に左折、約2km行ったら左手に左折。ICより車で5分とアクセス最良。山すその石垣の上に農家風の素朴な一軒家である郷緑館がありました。
郷緑館の石垣の下に駐車場があって玄関へ通じる石段を登っていきます。玄関はまさに素朴で鄙びた感じの宿。東日本で言えば、新潟松之山の植木屋旅館とそっくりです。日帰り入浴は16時で終了みたいでしたが、中国山中の山道に悪戦苦闘してたら15:30に…。気さくな女将さんにダメモトで聞いてみると、快くOKとなりました。入浴料500円を払います。
まずは女将さんから、浴場の場所を案内しながら、入浴方法の説明を受けます。女将さん曰く「ここは必ず岩盤の方のぬるい湯から入って下さい。最初に加熱の方に入ってしまうと、ぬるい方が冷たく感じてしまい入れなくなってしまいますから…」 私:「ここは確か天然の岩盤から湧き出す湯ですよね?」と言うと、女将さん、うれしそうに自信たっぷりにうなずきます。これは楽しみ(^^)
浴場は男女共用1ヵ所のみで貸切で使います。浴場ではザーザーと滝のような音が響き渡っています。期待しながら行ってみると、何のことはない、加熱湯の循環湯の投入音でした(^_^;)。
浴室の中はこじんまりしていて少し薄暗い感じですが、手前に爆音を発する御影石の加熱湯、奥が見せ所の岩盤湯。岩盤湯の浴槽の縁こそ御影石になってますが、浴槽内は深いデコボコの岩盤になっています。岩盤の割れ目の至る所から気泡を上げながらお湯が大量に湧き出しています。
まず指示に従い岩盤湯に入ります。何と首元まで浸かりそうなほどの深さ。下は凹凸が激しく、転倒や岩で足を切らないよう注意。お湯は熱かった三朝やぬるかった奥津よりもさらにぬるく、もはや冷たい感じ。しかし20〜30分浸かっているうちにホカホカしてきて、結局、加熱には入りませんでした。湯上り後は脱衣所では震える程寒かったですが、服を着るとすぐにポカポカしてきます。無味無臭無色透明で澄んでいて自分の肌が青みがかったようにきれいに見えます。
オーバーフローも床がせせらぎができるほどの量で、岩盤の底の至るところから気泡が上がっていることからも本当に岩盤全体からお湯が湧出しているようです。三朝や奥津、後で行く真賀の岩盤は一部分からしか湯が湧いてませんでしたが、郷緑の岩盤湯の足元湧出はホンモノだと確信しました。中国岩盤湯シリーズで最も感動したのが、ここ郷緑です。このお湯は未来永劫いつまでも守っていってほしいようなまさに温泉遺産級の湯だと思います。ここはオススメします。
温泉分析書と手書きの利用状況、舌代が脱衣所に掲示されていました。以下の通りです。
第166号 温泉分析書
1.申請者:岡山県真庭郡湯原町大字豊栄1515番地 湯原町長 ○○○○
2.源泉名:郷緑温泉(No.1)
湧出地:岡山県真庭郡湯原町大字本庄字湯ノ段714番地(郷緑館:本庄712)
3.湧出地における調査及び試験成績
(イ)調査および試験者:岡山県環境保健センター 2名
(ロ)調査および試験年月日:平成元年2月2日
(ハ)泉温:34.2℃(気温4.0℃)
(ニ)湧出量:30.5L/min(自然湧出)※
(ホ)知覚的試験:無色 澄明 無味 無臭
(ヘ)pH値9.1
(ト)ラドン(Rn):3.0×10^-10Ci/kg
4.試験室における試験成績
(イ)試験者:岡山県環境保健センター
(ロ)分析終了年月日:平成元年2月18日
(ハ)知覚的試験:無色 澄明 無味 無臭
(ニ)密度:0.9984(20℃/4℃)
(ホ)pH値:9.1
(ヘ)蒸発物残留物:0.12g/kg(180℃)
5.試料1kg中の成分
Na=31.3 K=0.8 Ca=0.5 Mg=0.2 陽計=32.8
Cl=8.9 硫酸=29.3 F=0.8 炭酸水素=6.1 炭酸=12.0 陰計=57.1
メタケイ酸=35.1 メタホウ酸=5.7 非解離計=40.8
溶存物質・成分総計=0.13g/kg
その他微量成分:総水銀<0.0005 総ヒ素・銅・鉛<0.005
6.泉質:アルカリ性単純温泉(低張性アルカリ性温泉)
平成元年2月20日 岡山県環境保健センター所長
※郷緑温泉全体では123.6L/m(湯原温泉郷のHPより)
大風呂は自然湧出かけ流しです
上がり湯は
加水 無し
加温 上がり湯に利用
循環ろ過 衛生管理の為
入浴剤 無し
消毒 オゾン
※舌代(一部)
一、身体に熱のある時は必ず入湯しないで下さい。其の他身体のわるいお方は入湯前にお知らせ下さい。
一、当温泉は寛永ニ年(西暦1625年)からの歴史ある名湯であります。
一、泉質は弱アルカリ性で飲まれて胃腸、肝臓病に良く皮膚病には特効あり
一、温度は摂氏35度の低温ですが決してカゼやヒヱ等の心配はありません。皮膚病の重い人軽い人の
ちがいはありますが大体三日目五日目七日目に効果があらはれる
注)実は私、この時、湯当たりしたのか、風邪(発熱)のような症状が出てましたが、この掲示には気付きませんでした。結果は翌日にはすっかり良くなってました(^_^;)
(浴室内水槽跡に掲示)
※郷緑温泉歴史
当温泉ハ今ヲ去ル事凡ソ二百有余年前
未ダ本庄ニ温泉ノ開ケズソノ頃温泉ハ
総テ薬師如来ノ御恵ナルガ如ク称ヘ
居リタル時本庄村ノ其農夫之ヲ発見シ
是レ薬師如来ノ御恵ナラント其以来
諸病症所皮膚病等ニ患スル者此温泉ヲ
患部ニ注クニ暫クニシテ全癒セザル
ハナシ寛永ニ年備後ノ住金十郎ト称
スル人当温泉ヲ堀リ諸人ニ入浴スルノ
便ヲ与ヘタリ其後明治十七年始メテ
温泉ノ許可ヲ得テ郷六ト字名ヲ付ケ後
郷緑温泉ト名付ケタリ
泉質効能
(イ)皮膚病 (ロ)痔ノ類 (ハ)切傷
(ニ)毛虫ノ刺傷 (ホ)リュウマチス
(ヘ)神経痛 (ト)打身 (チ)草マケ
(参考)All
About郡司さんレポ/秘境温泉神秘の湯
山陰温泉めぐりアルバム郷緑編4枚
厚生労働省指定国民保養温泉
スッポン温泉養殖場
郷緑館
岡山県真庭市本庄712
TEL.0867-62-2261(代) FAX.0867-62-3961
(付録)茅森温泉・下湯原温泉
岡山県美作湯巡り3湯目、新境地岩盤湯巡り4湯目で、真庭市湯原温泉郷の真賀温泉をレポしますが、その前にちょっと箸(タオル?)休め。湯原のナゾの温泉シリーズをちょっと入れます。大原利雄氏の「最後の聖(泉)」(小学館文庫)の本によると湯原町内にはナゾの温泉の宝庫で、3ヶ所も載っています。そのうち2つは見つけることができましたので、紹介してみます。
郷緑温泉前を通る県道湯原美甘線。R313から県道を郷緑温泉に向う途中に「茅森」という集落があり、すぐにピンときました。県道沿いを流れる鉄山川の対岸の墓地の川原に何と茅森温泉を発見。立派な岩風呂です。しーかし、お湯がぬる過ぎるのか、浴槽は空。上流から黒いホースが伸び、そのホースの先からお湯が排水口へ捨てられていました。お湯は郷緑同様、無色透明無味無臭のアル単で大変ぬるいです。夏季限定の露天風呂かと思われます。いつか温かい時期に入ってみたいなと思いました。マナーにはくれぐれも注意。
R313バイパスを湯原温泉方面へ左折。山を越え旭川を渡ったらすぐ右折、下流方向へ。旧国道沿いに下湯原温泉「ひまわり館」があって、その手前、畑の真っ只中、真っ白なコンクリの円柱の中に妖しい湯溜まりあり。丁寧に洗面器まで置いてある(笑)。おいおい、大原氏じゃないですが、ここに入れっていうこと?(爆)どう見ても野菜洗い場か洗濯場としか思えん。さすがに夕暮れとは言え、まだ明るいので遠慮しました。ここも無味無臭無色透明で生温かく湯気がたっています。湯原温泉近くになったせいか泉温も上がってきました。ちなみにペットも入浴できるというひまわり館(200円)は加熱循環ろ過ありらしいです(ぶらり温泉レポ)。
※山陰温泉めぐりアルバム@茅森・下湯原・真賀
http://www.net626.co.jp/himawari/
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