■城崎温泉「鴻の湯」(兵庫県豊岡市)
京都府京丹後市から山を越え、いよいよ兵庫県但馬の名湯、豊岡市の城崎温泉に入ります。久美浜より20km、40分。まずは城崎駅前へ。城崎温泉は10年前の学生時代、青春18きっぷの日本一周の途上、城崎で途中下車し、一の湯だけに入浴しました。
城崎駅前には当時はまだなかった「さとの湯」という共同浴場と足湯、駅前飲泉所がありました。足湯に浸かって飲泉所のお湯を飲みます。両方ともカルキ臭なし。やや塩味がして何とも渋くてまろやかな味。足の肌がとたんにサラサラし、なるほど丹後半島の無味無臭のアル単とはずいぶん味や肌触りの違う、さすが古くからの名湯だな〜と感激。
このあと城崎温泉街中央の大谿川に沿って上流へ。川べりに柳並木が続き、旅館の宿泊客が共同浴場巡りに大勢散策する活気ある、風流な温泉街。風情はまさに九州の黒川温泉そっくりで、やっぱり城崎はその雰囲気がたまらなく好きですね。本当は寝る前に共同浴場に入りたかったのですが、久美浜の湯も良かったし、城崎は朝の一番風呂が良かろうと、温泉街の外れで車中泊しました。なお、御所の湯は4ヶ月前の平成17年7月7日に新築されたばかりだとか。
翌朝7時、共同浴場「鴻の湯」へ向います。鴻の湯は温泉街の一番奥にあって、城崎発祥の湯。平成3年4月改築。10年前も入浴候補に上げていたのですが、駅から遠すぎて無理でした。今度は車で行き、鴻の湯前の豊岡市営駐車場に駐車。1時間無料、以後1時間100円。
すでに10人位が開店待。扉が開くとアット言う間に浴場が入浴者でいっぱいになりました。入浴料は500円→600円に値上げしたばかりで領収書も訂正されてました。もはや共同浴場というより、日帰り温泉
センターの水準に達してますね。
脱衣所に服を入れ、脱衣キーを抜き、浴室へ。内湯は窓を下底とする末広がり台形。数十人可。外の裏山を背景にした庭園にはうなぎの寝床のように細長い露天風呂がありました。
やっぱ、鴻の湯はこの露天風呂の風流さ、爽快さが何ともいいんですよね。今は露天風呂なんて珍しくないですが、10年前の時は城崎温泉の外湯唯一の露天風呂として大変気になってましたもの…。
露天風呂の向こうの山の縁には巨大な集湯タンクが見えます。なるほど、ここが城崎温泉の源泉に最も近いのかと納得する眺め。
さて、書くのイヤだな、問題のお湯です。内湯・露天とも朝から頭が痛くなりそうなほど強烈なカルキ臭。内湯・露天とも強烈な吸込と湯面が盛り上がるほどの噴出、数ヶ所。内湯はオーバーフローなし、露天は少しずつ奥から溢れるものの、再利用されてるかも。バリバリの循環。
そもそもあの集配タンクに余った(浴槽排湯でなく)お湯が戻ってしまっているそうで、温泉街・外湯全体ですべて還流・循環されてるらしいです。やっぱり、お湯は松田本にある通りでした。でもでも、やや塩味と渋味があって、湯上がり後は肌サラサラ、強烈な火照り感で汗が止まらず、やはりよくあるアル単温泉とは明らかに違う名湯系かと思われました。
浴後は休憩所で古い鴻の湯の写真や温泉分析書を見ながら一休み。温泉分析書と利用状況は鴻の湯休憩所の壁に掲示されていました。以下の通りです。
温泉分析書
1.申請者:兵庫県城崎郡城崎町湯島448番地
城崎町湯島財産区管理者 城崎町長 ○○ ○○
2.採水地:兵庫県城崎郡城崎町湯島御茶屋ノ上1582番地-1
島7,18,25,26,27,28号泉源※からの温泉水を混合したタンクから採水
3.採水地における調査および試験成績
(イ)調査及び試験者:兵庫県立衛生研究所 2名
(ロ)調査及び試験年月日:平成8年2月28日
(ハ)泉温:62.1℃(気温8.5℃)
(ニ)湧出量(6泉源):混合泉のため測定しない。
(ホ)知覚的試験:無色澄明、無臭、塩味を有す。
(ヘ)PH値:7.30
(ト)ラドン(Rn):70Bq/kg 5.1マッヘ
4.試験室における試験成績
(イ)試験者:兵庫県立衛生研究所 3名
(ロ)分析終了年月日:平成8年3月21日
(ハ)知覚的試験:長時間放置しても変化せず。
(ニ)密度:1.00189(20℃/4℃)
(ホ)PH値:7.22
(ヘ)蒸発残留物:4.689g/kg
5.試料1kg中の成分
Li=0.46 Na=1210 K=37.7 Mg=3.55 Ca=543 Sr=2.94 Ba=0.17 Al=0.37 Mn=0.23
フェロ=0.35 陽計=1800
F=2.70 Cl=2460 Br=8.04 硝酸=1.34 炭酸水素=74.3 硫酸=359 陰計=2910
メタケイ酸=29.4 メタホウ酸=1.38 非解離計=30.8
遊離CO2=6.2 成分総計・溶存物質計=4.74g/kg
亜鉛<0.01 総ヒ素<0.035 総水銀<0.0005 銅<0.015 鉛<0.0005 Cd<0.001
6.泉質名:ナトリウム・カルシウム-塩化物高温泉(Na・Ca-Cl泉)低張性,中性,高温泉
7.療養泉分類の泉質に基づく禁忌症、適応症は次のとおり。
(1)浴用の禁忌症:(省略)
(2)飲用の禁忌症:1)腎臓病 2)高血圧症 3)その他一般にむくみのあるもの
(3)飲用上の注意
フッ素およびヒ素を含有するため飲用許容量は1日につき590ml以内とし、長期にわたり飲用したい場合には
温泉について専門的知識を有する医師の指示を必ず受けること。
なお8才から15才までの飲用の許容量は1日につき290ml以内とし、乳幼児の飲用を避けること。
(4)浴用の適応症(泉質別適応症のみ)
15)きりきず 16)やけど 17)慢性皮膚病 18)虚弱児童 19)慢性婦人病
(5)飲用の適応症
1)慢性消化器病 2)慢性便秘
8.温泉掲示
加水の理由:源泉温度が高いので加水しています。
加温の理由:なし
循環装置等の理由:衛生管理のため、循環ろ過装置を使用しています。
入浴剤使用の理由:使用していない。
消毒剤の理由:塩素系薬剤を使用しています。
平成8年3月22日 兵庫県立衛生研究所長
※各泉源の掘削深度m/掘削年代/泉温℃/湧出量L/分(城崎温泉の集中配湯管理施設より)
7:20.0/明治42年/41.0/(休止)
18:73.8/昭和27年/62.5/100
25:20.8/昭和60年/37.1/150
26:128.0/昭和60年/67.8/100
27:300.0/平成元年/73.0/600
28:500.0/平成6年/75.5/400 (計1350L/分)
鴻の湯
外湯の中で最も古くから開けた湯で舒明天皇の御世(千四百年前)こうのとりが足の傷をいやしたことから発見されたといういわれにもとづいて名づけられた山の湯風をとり入れた素朴な様式の建築で町の奥深く街路から離れた閑静な湯で、散策をかねた入浴に適している。
朝霧や 湯つぼに鴻の 羽ひたす 長國(天明期俳人)
鴻の湯や 親子時雨るる 草のかげ 奇淵(化政期俳人)
※外湯営業時間(17年7月10日現在)閉場30分前までに入場
鴻の湯/御所の湯/地蔵湯/一の湯/さとの湯:7〜23時
柳湯/まんだら湯:15〜23時
※外湯の場所
(下流)→城崎温泉駅・さとの湯(400m)地蔵湯(300m)柳湯(100m)一の湯
(200m)御所の湯(300m)まんだら湯(300m)鴻の湯→(上流)
鴻の湯の外へ出た後は駐車場無料の余った時間を使って大谿川対岸の元湯や温泉寺を散策。川縁には真っ茶色に染まった石のてっぺんから湯が流れる「城崎温泉元湯」・第28号泉源※(ポンプ小屋)・薬師ポケットパーク足湯処(源泉そのまま塩素臭なし)がありました。さらに山を登ると温泉寺の薬師堂があって、境内に「薬師公園飲泉場」がありました。
※城崎温泉 第28号泉
自然湧出量 150L/毎分
揚湯量 400L/毎分
湧出温度 81.0℃
掘さく深度 500メートル
この泉源は、鴻の湯裏の貯湯タンクの
水位変化によって、自動的に揚湯して
タンクに送り込むようになっています。
※城崎温泉元湯のHP http://www.kinosaki-motoyu.com/
他に車に乗って行ったのですが、一の湯前の王橋に湯飲所、一の湯と柳湯の脇それぞれに足湯がありました。皆、独自源泉みたいですね。足湯や飲泉所の源泉そのままの湯に全身を漬けてみたくなりました。
城崎温泉は志賀直哉の「城崎にて」にあるような文学的情緒や風情を求めて行くところであり、外湯や旅館お湯については温泉街全体で集中管理が行われており、あまり見るべきものはありません。
旅館の内湯に無理にお湯を引いてしまって湯量不足に陥った結果、集中管理される前に、なぜ古くから伝わる共同浴場のお湯を守れなかったのかと思わずにいられません。城崎はお湯はともかく風情や情緒のみを楽しむ温泉街と割り切って行かれることをオススメします。
(参考)
NHK「ふだん着の温泉」/山陰アルバム城崎編10枚あり
城崎温泉旅館協同組合HP http://www.kinosaki-web.com/
城崎温泉観光協会HP http://www.kinosaki-spa.gr.jp/
湯島財産区(城崎町役場温泉課)HP http://kinosakionsen-zaisanku.com/
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