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カナダの温泉事情2 カナダの温泉文化 2007年1月



マイク佐藤さんに次の質問をしました。カナダの温泉事情第2信はカナダの温泉文化についてです。(本文の小見出しはクマオがつけています。)

(1)カナダの温泉は成分分析をする習慣はあるのでしょうか。
(2)日本の湯治場やヨーロッパの温泉保養地のような温泉で療養するような習慣はあるのでしょうか。
(3)カナダ人はどういう温泉の楽しみ方をしているのでしょうか。
(4)アメリカの著名温泉サイトでは源泉の位置を地名ではなく緯度経度で示していますがどういう事情でしょうか。


カナダの温泉の泉質と成分分析

カナダの温泉ではあまり成分分析をする習慣はありません。どちらかと言うと単純泉が好まれます。カナダの温泉の特徴は 泉質は飲料水の法律「Drinking Water Act」、管理や建設はスイミングプールの法律「Swimming Pool ,Spray Pool and Wading Pool Regulation BC REG289/72」によって運営されていることです。この法律は州法ですが他州もほとんど同じで、アメリカも同様です。

これによるとプールに供給できる温水は、飲料水に準ずるのが基準ですので、ある温泉リゾートなどはわざわざ硫黄臭や鉄分を濾過しているのが実情です。何故ならばプール法では、使用できる水の条件として、水の透明度(Water Clarity)が要求されるからです。

BCやワシントン州ではプールの一番深い底に5cmの黒いディスクを置いて、それが見えないような透明度なら、プールの使用を禁止しなければなりません。そうするときれいな単純泉のほうが好都合なのです。たぶん草津温泉や有馬温泉の泉質では、カナダでは営業許可は下りないでしょう。アメリカでは2〜3の州でこの条件が必要ないところもあります。

温泉の成分分析表は、商業化された温泉施設などでたまに掲げてあります。ただプール法ができる前の古い分析表を気休めに掲げてるいるという感じです。こちらの野天風ファンにとって、温泉探しはアドベンチャーですから、温泉の成分分析など、どうでもよい事だと思います。


温泉での療養

北米では温泉が「体に効く」と、メディカル効果をうたうことは「薬事衛生法」で禁止されています。もちろん温泉の飲泉は通常は認められません。こちらは訴訟社会ですので神経痛や高血圧の効能を宣伝して、もし効かなかったら訴えられる可能性もあります。BCやワシントン州の厚生省では、温泉の効能が科学的には完全に証明されていないと言う立場です。ただしインディアンの伝承を説明したり、入浴客がかってに「体に効く」と喧伝することは自由です。


カナダ人の温泉の利用の仕方

日本の雑誌などでよく海外の温泉は「治療、療養が主体」と記されていますが、ヨーロッパはともかく、北米の場合は医療効果を求めて温泉に行く人はほとんどいません。基本的には温泉旅行の転地効果、つまり旅行による気分のリフレッシュが中心です。ストレスの多い日常生活から開放されて、雄大な自然の中の温泉でリラックスする転地効果が大きいと思います。

カナダ人が温泉に求めるのは、“くつろぎ”や温泉そのもので、便利さや施設の充実を問題にする人はいません。北米の温泉ファンのほうが、日本人よりもはるかに、温泉に到達するまでの自然環境にこだわります。ただハードルの高いワイルド温泉が大半なので、温泉を発見するまでが大変で、温泉巡りはどうしても一種の冒険旅行となってしまいます。

温泉ファンにとっては黒熊などの野生動物と道中で遭遇するリスクは感動になります。そのため北米の温泉ファンには、若者が多いのが特徴です。さらに彼らは体力があるので、天真爛漫なリラックス方法で、心配になるほど長時間入浴しています。もちろん混浴です。

商業化されてない山奥の原始温泉に行けば、ほとんどの人が裸で入浴しています。大半が混浴でそのヌードビーチのような温泉の楽しみ方に圧倒されます。混浴に別にワイセツな意味があるわけではなく、大自然と温泉が複合した開放感の効用です。


水着着用で混浴が原則

ただプール法では原則混浴で男性、女性用と分離できませんので、水着着用を義務づけています。温泉に行く時は、家族連れやカップルで行くので、それが別れて入浴するのは慣習に反するからです。ですからプール法にも慣習に配慮した利点があるのです。水着の入浴になると、混浴でもリラックスできます。恋人や老夫婦などのカップルが、肩を寄せて談笑しながら温泉を楽しむ光景は、本当に微笑ましいものです。

カナダでは日本のような湯治場はありません。しかし退職後、キャンピングカーなどで何ヶ月も、温泉巡りや観光を楽しんでいる人達がたくさんいます。これは日本の温泉地では、あまり見られない光景だと思います。日本と比較して風情など不満もあるが、本物の大自然と極上の原始温泉など、カナダでしか味わいない魅力も大きいのです。


源泉の位置が緯度、経度の理由

アメリカの温泉サイトで、源泉の位置を地名ではなく、緯度、経度で示しているのが多いのは、緯度、経度でしか示せないような山奥にあるからです。アメリカ地質調査所のデータにあるだけで、ここ何十年も入湯記録のない幻の温泉が多いのです。カナダでは温泉の本は地質学者が書いた”Hot Springs of Western Canada”一冊しかありませんが、この本を読んで入湯できる温泉は,たぶん半分もないと思います。

この本の著者は私の友人で、私達が来週に予定している,1927年以来ここ80年間は入湯記録のない、幻の温泉のヘリコプター探査に参加します。もしこの本(第二版)をお持ちでしたら調査する温泉は69ページのAUGUST JACOS HOT SPRINGSの最後の一行にあるGLACIER CREEK HOT SPRINGSです。

AUGUST JACOBS HOT SPRINGSは10年前に私と友人が70数年ぶりに再発見しました。友人が情報を公開するのを嫌がったので、温度を除いて少しずつ事実と異なる記事になっています。ですからこの本を参考にしても温泉には到達できません。これは著者も了解しています。

カナダ政府と土地交渉をしている原住民が、祖先伝承と主張して、この二つの温泉を払い下げるには、温度や湯量、場所などが正確でないと、カナダ政府も交渉のテーブルに着きません。酋長に頼まれて、AUGUST JACOBS HOT SPRINGSの正確な場所を教えたら、GLACIER CREEK HOT SPRINGSの調査を頼まれたのです。今回は発見できなくても、次回の現地調査の役に立ちます。

源泉の位置を地名ではなく、緯度、経度で示しているのはそのような事情あるからで、北米の温泉探査にはロマンがあります。


終わりに

日本から来た人がスパは温泉施設と連想する事から来る誤解など、いろいろありますので、時間を見て説明していきたいと思っています。質問や疑問がありましたらいつでもご連絡願います。


マイク佐藤 (Mike Sato, Scenic Hot Springs)


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