『使える』福祉の情報システム
対談「福祉情報が元年を迎えて」
1996年郵政省「高齢化社会における情報通信のあり方に関する研究会」
厚生省「保健医療福祉サービスの情報化に関する懇談会」
厚生省「保健医療福祉分野における情報化実施指針」
郵政省「高齢者・身体障害者の社会参加支援のための情報通信のあり方に関する調査研究会」報告
OA化の進展としての情報化
- 自治体による福祉行政事務の情報化−汎用コンピューターを使う。生活保護業務や様々な福祉施策の受給者台帳処理といった業務的な面の情報化
- 福祉施設管理事務に関わる情報化−措置費に関わる事務や、献立の管理システム
市民向けの情報提供サービス
WHIS NET「社会医療事業団が国の事業として実施している保険福祉分野にまたがる情報提供事業。当初各県に設置されている高齢者総合相談センターの相談支援のための情報システムとして出発したが、現在WHIS NET21として県レベルの保険福祉情報システムの地方標準システムを提供し、全国地方をリンクする総合的なシステム構築を目指している」
ケアマネイジメントにつながる情報化
CANPS(COMPUTER AIDED NURSING PLANNNING SYSTEM)「老人ホームなどで要介護老人の情報をコンピュータの機能を活用して処理し、ケアの向上や科学化を図るシステム」
需給調整のための情報化
社会福祉協議会とかのボランティア活動の需給調整のための情報システム
情報機器、情報技術を活用した情報化
緊急通報サービスなど
生き甲斐につながる情報化
メロウソサエティ「通産相の提唱する高齢化社会に対応した情報基盤整備構想。情報技術を高齢者の生きがい作りなどに活用する各種モデル事業を実施すると共に高齢者向けのパソコン通信ネットワークを構築して高齢者参加による情報化推進を図っている」
福祉情報化は「処遇の向上」を目的に始まった
情報がきちんと処理されていない、書くために書いている記録というもにに終始している。それは個人の貴重な現場や臨床体験というものがほとんど個人に埋没して、職員同士とか、あるいは異職種の間に、共有化する道筋が開かれていなかったことが原因。そこで、情報機器を使って福祉情報をシステム化しようと考えた。
なぜ福祉情報化が遅れたか
- 措置という福祉体系の中で、決められたもののサービスを提供することで終わりがちであったから、情報化も必然とならなかった。
- 福祉の情報化の場合、サービスが増えてしまうことになりがちで、省力化になかなか結びつかない。
- 福祉情報はプライバシーと結びつき、ときに共有化とプライバシーの尊重という狭間で揺れていた
- メリットが利用者からわかりにくかった。自分にふさわしいサービスがどこにあるのか。時間と空間を越えて他の人とコミュニケーションができるというメリットがあるのだが。
トピック「福祉情報化を巡る調査研究の現状」
福祉情報化に関する調査研究
平成4年度厚生省補助事業である「老人保健健康増進など事業補助金」によって「要介護老人の処遇方針判断のコンピュータか開発研究」が実施されている。これは「介護を中心とした高齢者の幅広い相談ニーズに対応する保健・福祉・医療・生き甲斐などの分野にまたがる豊富なデータベースを備えた検索システムのあり方及び要介護老人の処遇方針診断をコンピュータがどのくらいなで担い得るのか評価した。
平成6年には「老人保健健康増進など事業補助金」によって、「老人保健福祉情報システムのあり方に関する調査研究」が行われている。今後の地域福祉情報システムは「ケアマネイジメント」「計画策定」「利用促進」「参加・交流」の機能を必要とし、特に利用者本位の視点から見たとき「ケアマネイジメント」と「利用促進」が重要な機能となることが指摘されている。
平成7年度には社会福祉・医療事業団体が「長寿社会福祉基金」によって、「高度情報化の高齢者福祉への活用に関する調査研究」を行っている。この調査研究は、現段階における福祉情報化の実態を把握することを目的にしている。
ケアマネイジメントに関わる福祉情報システムのあり方に関する調査研究の概要
ケアマネイジメントとは、介護サービスを有効に機能させるという目的に添って組み立てられた情報活動の体系であり、各プロセスにおいて要介護者本人やその家族も含めた関係者の中で、必要な情報のやりとりがいかに円滑・適切に行われるかによって、有効性・実効性が左右されることである。
地域においてケアマネイジメント業務を担当していく機関としての設置が進められている在宅介護支援センターの存在。標準的な使用を具体化したケアマネイジメント・モデルシステムは、インテーク〜ケアマネイジメントの過程で使用すべき各種の書式様式及びそこの収めるべきサービス対象者の情報を蓄積する「ケース台帳データベース」と、提供する社会資源やサービスの実施状況に関する情報を蓄積する「サービス提供台帳データベース」を軸に構成され、これらをリンクさせることによってケアマネイジメントの各プロセスで必要となる書類を自動作成し表示・出力することが基本的な機能となる。
論文「地域福祉が変える情報化」
福祉情報化が求められる背景
- ニーズに関わる情報の伝達−地域福祉におけるサービス提供者と利用者の双方向のコミュニケーションが重要で、様々なニーズに対応できるような情報流通の仕組みを考える必要がある。
- サービス提供主体の多元化と他分野との連携−ケアマネイジメントとは、情報論的にいえば、利用者のニーズや状態についての情報と提供されるサービス内容についての情報を複数の機関、組織間で共有し合うプロセスということができる。
- 在宅生活の質とサービス資源情報の役割−今後、要援護者自身がサービスを選択的に利用できるようになると、サービスについての情報量の差がそのまま生活の質の差につながる可能性がでてくる。従って、要援護者は各種のサービスについての情報を得られるような仕組みが求められる。
- 利用者の増加に伴う業務量の増加−円滑な業務処理を行う必要性が出てくる。
福祉情報化の展開
メリットとして
- 情報の検索、書こう、並び替えなどが容易である
- 通信システムを利用して双方向性、ネットワークの拡張性、データ通信が可能であること
- 処理が迅速であることなどを活用し、より高度な福祉情報化を達成させることができる。
福祉情報化の課題
- 福祉情報化の認識とコンピュータ利用能力の向上
- ハード、ソフトの向上−ユーザーライクな環境作り
- 情報ネットワークの構築−各種の事業社の独自のデータベースによって、共有化がうまくいっていない。
- キーワードとコードの標準化−ADLのランクや施設。機関の種別など数値化できるもののコード体系の必要性
- サービス資源情報システムの未発達
- 公的介護保険とケアマネイジメント−双方で密接に結びつきあっている。また、業務の迅速性、フォーマットの共通化が課題になる。