【 三崎港を背景にした白秋の詩碑 】

雨はふるふる、城ヶ島の磯に、
利休鼠の雨がふる。
雨は真珠か、夜明けの霧か、
それともわたしの忍び泣き。
舟はゆくゆく、通り矢のはなを、
濡れて帆あげた・・・
(パンフレット「三浦三崎の白秋碑」より)
 
 城ヶ島と聞いてまず最初に思いつくのはやはり北原白秋の詩「城ヶ島の雨」であろう。詩とはおよそ縁のない私でも一応はそらんじているほど。 三崎港を望む磯の一部が白秋詩苑となっていて、白秋自筆の詩の一節が刻まれた碑と白秋記念館がある。

 しかし、白秋の詩が城ヶ島のすべてではない。洋式灯台としては日本で四番目につくられたという城ヶ島灯台(明治四年に完成したが関東大震災で倒壊、 現在のものは二代目)にはぜひ立ち寄りたいし、神奈川県立城ヶ島公園とそこから見る周囲の景観もなかなかのものだ。

 海岸に降りれば安房崎の灯台、海鵜が生息する切り立った断崖、自然が創り出した奇岩・馬の背洞門など、素晴らしい眺めには事欠かない。 そして砂浜や岩場には海浜でしか見られない様々な野草が自生しており、四季折々の花を咲かせる。加えて島の対岸はマグロの陸揚げ港として知られている三崎港。 うまいマグロを食わせる店もあって、それを目当てに訪れる人も少なくないようだ。

【 城ヶ島で見かけた野草 】
 
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アカネ(茜)
アカネ科アカネ属
花期:8〜10月
分布:本、四、九
山や野原に生えるつる性の多年草。葉は4枚が輪生しているように見えるが、本当の葉は2枚で残りは托葉が大きくなったものだそうだ。花序は葉腋から出る。
ソナレムグラ(磯馴葎)
アカネ科フタバムグラ属
花期:8〜9月
分布:本(関東地方以西)、四、九
海岸の岩場などに生える常緑性の多年草。背丈は5〜20cm。葉は多肉質で対生し、表面はすべすべして光沢がある。磯馴葎の名は海岸に生えるところから牧野富太郎が命名したものだそうだ。
ハマダイコン(浜大根)
アブラナ科ダイコン属
花期:4〜6月
分布:日本全土
海岸の砂地などに生える二年草。野菜の大根が野生化したものと考えられているそうで、たしかに大根に似ている。しかし根は細くて硬く、とても食用にはならない。
ラセイタソウ(羅背板草)
イラクサ科カラムシ属
花期:7〜9月
分布:北海道南部〜紀伊半島の太平洋岸
海岸の岩場などに生える多年草。高さは30〜70cm。葉は対生し、花は先端より少し下の葉腋につく。表面に細かいしわのあるのが特徴的。雌雄異株。
イガアザミ(毬薊)
キク科アザミ属
花期:8〜10月
分布:本(関東地方)
関東地方の海岸近くに生える多年草。南部アザミの変種。総包片や葉の刺が長くて鋭く、全体に刺々しい感じをあたえる。
ワダン
キク科アゼトウナ属
花期:9〜11月
分布:本(千葉県、神奈川県、静岡県)、伊豆諸島
海岸の崖や岩場、砂地などに生える多年草。高さは30〜60cm。太くて短い茎の先端についた根性葉の葉腋から側枝が出て、その先に花がつく。
イソギク(磯菊)
キク科キク属
花期:9〜12月
分布:本(千葉県〜静岡県の太平洋岸)、伊豆諸島
海岸の砂地や崖に生える多年草。高さは20〜40cm。頭花は筒状花だけで舌状花がなく、茎の先に密集してつく。菊人形に使われるので栽培もされている。
ツワブキ(石蕗、艶蕗)
キク科ツワブキ属
花期:10〜12月
分布:本(福島県・石川県以西)、四、九、沖
海岸の岩場や崖に生える多年草。高さは50cm程度。晩秋から初冬にかけて、海岸近くで鮮やかな黄色の花を咲かせる。伽羅蕗はこのツワブキの若い葉柄を使うのが本物だそうである。
ネコノシタ(猫の舌)
キク科ハマグルマ属
花期:7〜10月
分布:本(関東・北陸地方以西)、四、九、沖
海岸の砂地に生える多年草。分岐した茎が地を這って横に広がる。頭花の直径は2cmくらいで、舌状花の不揃いな感じのものが多い。別名がハマグルマ(浜車)。
イワダレソウ(岩垂れ草)
クマツヅラ科イワダレソウ属
花期:7〜10月
分布:本(関東地方以西)、四、九、沖
海岸に生える多年草。日当たりの良いところを好む。茎は寝て地上を這い、葉は対生する。葉腋から出る花序は円柱形の独特な形をしている。花は最初は白だが後に赤みを帯びる。
ハマゴウ(浜栲)
クマツヅラ科ハマゴウ属
花期:7〜9月
分布:本、四、九、沖
海岸の砂地などに生える常緑の小低木。高さは20〜60cm。茎は長く地中を這い、枝が立ち上がる。葉は広卵形ないしは楕円形で対生。花は淡青紫色で枝先の円錐花序に多数つく。
ハマボッス(浜払子)
サクラソウ科オカトラノオ属
花期:5〜6月
分布:日本全土
海岸の砂地や岩場に生える二年草、高さは10〜40cm。花は白色で茎が赤みを帯びることが多い。名前は全体の様子を仏具の払子に見立てたものだそうである。
ボタンボウフウ(牡丹防風)
セリ科カワラボウフウ属
花期:7〜9月
分布:本、四、九、沖
海岸に生える多年草で、条件がよければ1メートくらいの高さになる。標準的な花期は7〜9月だが、南の暖かい地方ではほとんど一年中花が見られる。
アシタバ(明日葉)
セリ科シシウド属
花期:8〜10月
分布:本(関東地方南部、東海地方、紀伊半島)
                      伊豆・小笠原諸島
海岸に生える多年草で、高さは0.5〜1.5m。生育が極めて早く、葉を切り取っても次の日にはもう新しい芽が出ているほどというので「明日葉」と名付けられたそうである。
ツボクサ(壺草)
セリ科ツボクサ属
花期:5〜8月
分布:本(関東地方以西)、四、九、沖
ハマゼリ(浜芹)
セリ科ハマゼリ属
花期:8〜10月
分布:北、本、四、九
海岸の砂地に生える二年草。高さは5〜10cm。茎は寝て地を這う感じになるが、直立することもあるそうだ。花は白色。
イワタイゲキ(岩大戟)
トウダイグサ科トウダイグサ属
花期:4〜6月
分布:本(関東地方以西)、四、九
海岸の岩場などに生える多年草。背丈は30〜50cm。茎の先に輪生した葉の腋から枝を出し、その先に花序がつく。群生することが多い。
タカトウダイ(高燈台)
トウダイグサ科トウダイグサ属
花期:6〜7月
分布:本、四、九
山や丘陵に生える多年草。背丈は30〜80cm。茎葉は長楕円形で互生し、秋になると紅葉する。茎頂にはやや小さい葉が5個輪生する。苞葉は2〜3個。腺体は円形ないしは楕円形、子房の表面には突起がある。
ナツトウダイ(夏燈台)
トウダイグサ科トウダイグサ属
花期:4〜5月
分布:北、本、四、九
山地に生える多年草。背丈は20〜40cm。名前に夏がついているが花は春に咲く。
ハマツメクサ(浜爪草)
ナデシコ科ツメクサ属
花期:4〜8月
分布:日本全土
海岸で多く見られる多年草。高さは5〜20cm。茎が寝て地を這うような感じになる。花は白色で直径4mm程度。
ハエドクソウ(蝿毒草)
ハエドクソウ科ハエドクソウ属
花期:7〜8月
分布:北、本、四、九
林の中などに生える多年草。高さは30〜70cm。葉は対生し、花は長く伸びた茎の上の方に穂状につく。
ハマオモト(浜万年青)
ヒガンバナ科ハマオモト属
花期:7〜9月
分布:本(関東地方以西)、四、九
海岸に咲く夏の花。高さは30〜70cm。花は夕方に開く。種子が海流によって運ばれるので海岸に広く分布するが、温暖なところを好むので日本では房総半島が北限。別名がハマユウ(浜木綿)。
ハマヒルガオ(浜昼顔)
ヒルガオ科ヒルガオ属
花期:5〜6月
分布:日本全土
海岸の砂地に生える蔓性の多年草。地下茎が砂の中で伸びて広がり、茎は地を這う。葉は互生で花は昼顔に似ていて淡紅色。
タイトゴメ(大唐米)
ベンケイソウ科キリンソウ属
花期:6〜7月
分布:本(関東地方以西)、四、九
海岸の岩場などに生える多年草。背丈は5〜10cm程度。葉に水を蓄えるので乾燥には極めて強く、水なしでも半年くらいは耐えられるそうだ。
ミヤコグサ(都草)
マメ科ミヤコグサ属
花期:5〜6月
分布:日本全土
草地などに生えるが海岸でも見かける多年草。昔から日本に自生しているミヤコグサはこの一種だけだが、戦後になってヨーロッパ原産のセイヨウミヤコグサが入り込み、各地に広がっているそうだ。
ニシキミヤコグサ(錦都草)
マメ科ミヤコグサ属
花期:5〜6月
分布:日本全土
ミヤコグサの中には花の色が黄色から朱赤色へ変化するものがあり、これをニシキミヤコグサと呼ぶ。
ヒロハクサフジ(広葉草藤)
マメ科ソラマメ属
花期:6〜10月
分布:北、本
海岸やその近くに生える蔓性の多年草。花の色は青紫色。草地などに生える同属のツルフジバカマやクサフジによく似ているが、小葉の大きさや花の色などに違いがある。
ハマエンドウ(浜豌豆)
マメ科レンリソウ属
花期:4〜7月
分布:日本全土
海岸の砂地に生える蔓性の多年草。花の色ははじめ赤紫色でのちに青紫色に変わる。まれに白色のものもあるそうである。
コマツナギ(駒繋ぎ)
マメ科コマツナギ属
花期:7〜9月
分布:本、四、九
日当たりの良い草地で見かける小低木。茎が強靱で馬を繋いでおけるほどだというので駒繋ぎの名になったという。花序は円錐状で花は淡紅紫色。
ママコノシリヌグイ(継子の尻拭)
タデ科タデ属
花期:5〜10月
分布:日本全土
海岸でもよく見かける草。名前はユニークだが、ピンクの花は小さいながらも結構可愛い。ただし茎にトゲがあり、うっかり皮膚を引っ掻くとぴりぴりするほど痛い。
ツルボ(蔓穂)
ユリ科ツルボ属
花期:8〜9月
分布:日本全土
陽当たりの好いところを好む多年草。群生する性質があり、ピンク色の花が群れている姿はなかなか綺麗である。別名がサンダイガサ(参内傘)。
ヤマユリ(山百合)
ユリ科ユリ属
花期:7〜8月
分布:本(中部地方以北)
高さが1〜1.5mの多年草。野や山に生えるが、鑑賞価値が高いので栽培もされている。日本固有の種で19世紀にカノコユリとともにヨーロッパに紹介され、人々を驚嘆させたそうである。
スカシユリ(透し百合)
ユリ科ユリ属
花期:6〜8月
分布:本(静岡県御前崎・新潟県以北)
海岸の岩場やその近くに生える多年草。背丈は30〜50cm。花の大きさは直径8〜12cmで上向きに咲き、花被片の基部が細くなっていて隙間がある。別名がイワトユリ。鱗茎は食用になる。
ハマカンゾウ(浜萱草)
ユリ科ワスレグサ属
花期:7〜9月
分布:本(関東地方南部以西)、四、九
海岸近くの岩場や草地に生えるユリ科の多年草。高さは60〜70cm。花は橙赤色。花被片の幅は同属のノカンゾウより広く、ヤブカンゾウより狭い。葉は冬でも枯れない。
コケリンドウ(苔竜胆)
リンドウ科リンドウ属
花期:3〜5月
分布:本、四、九
日当たりのよい草地に生える二年草。高さが3〜10cmの小さい草だが、よく見ればすぐにリンドウの仲間とわかる姿をしている。
イソヤマテンツキ(磯山点突)
カヤツリグサ科テンツキ属
花期:8〜10月
分布:本(千葉県・石川県以西)、四、九、沖
海岸の砂地や岩場などに生える多年草。高さは15〜40cm。茎の先から数個の枝を出し、その先に茶褐色の穂を1個つける。葉は細くてかたい。
ハチジョウススキ(八丈薄)
イネ科ススキ属
花期:9〜10月
分布:本(関東地方以西)、四、九、沖、小笠原
海岸に生える多年草。高さは1.5〜2m。ススキに似ているが、ハチジョウススキは葉裏が白粉を帯び、葉の縁の鋸歯がまばらで、花序の枝が太くて数が多いなどの違いがある。
ハマエノコロ(浜狗尾草)
イネ科エノコログサ属
花期:8〜10月
分布:日本全土
海岸やその近くに生える一年草で、背丈は5〜20cm。基部で分岐した茎が寝てロゼット状になることが多い。花序は短く、ずんぐりとしている。
ムギクサ(麦草)
イネ科オオムギ属
花期:5〜8月
分布:ヨーロッパ原産
高さが10〜50cmの1〜二年草でオオムギに似ている。ヨーロッパ原産の帰化植物で、1868年に横浜で帰化が確認されたことから日本に入ってきたのは江戸時代末期といわれている。