筆者=野村 仁
掲載=『Free Fan』No.30(2000年9月)
 
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「鳳来問題」の経過 2000年8月まで=

●駐車場問題とBBS論争
 栃ノ木沢の入山禁止は現実のものになってしまったが、乳岩峡方面まで波及するのはなんとしてでも避けなくてはならなかった。そこで、クライマーは鳳来町との交渉に取り組み始めた。アクセス維持のための活動が精力的に行なわれ、BBS(電子掲示板)上では緊迫した情報や意見の交換が行なわれていた。

乳岩峡の駐車スペース (photo: Hoshina)

保科雅則氏サイト「鳳来湖情報 旧版」より (一部変更)
・6月16日:斎藤が川合区長を訪ねる(注:乳岩峡は川合区内にある)。乳岩の駐車場の件で役場に相談しようと思っていた、と言われる。
・6月19日:保科が鳳来町商工観光課に電話。川合区長から駐車場の件で相談がきたとのこと。
・6月20日:保科、鳳来町商工観光課の課長、副課長と話し合う。町としては、地元とトラブルのないようにやってくれればとくに問題はないらしい。
・6月21日:小山田大、単独で、影の大物、ハイカラ岩のフィックスと残置を回収。
・6月22日:保科からの依頼を受けて、日本フリークライミング協会から岡崎市に電話してもらう。岡崎市の回答は前回と同じで進展なし。
・7月1日:鈴木邦治、単独で小屋裏、影の大物の残置物を回収。
・7月2日:斎藤、保科、若林が、駐車場問題の解決策について川合区長と話し合い、駐車場売店の主人とも駐車場や看板設置などについて話した。同日、ガンコ岩で一斗缶に入った糞便を処理し、残置ヌンチャクを回収した。
・7月9日:栃ノ木沢方面、女郎岩、鬼石、亀淵沢の残置物の回収を、約20名で行なった。ガンコ岩の終了点整備&ボルト打ち替えを行なった。
・7月10日:小粥康正、保科で、鳳来町役場と森林組合を訪ねた。教育委員会では鳳来の岩場がクライマーにとって大変貴重だと説明。また、8月の鳳来町親子クライミング教室で、参加者が多い場合はクライマーが協力する約束をした。商工観光課で、乳岩駐車場に設置する看板の許可をもらった。

 もうひとつ、クライマーたちの行動を方向づける出来事があった。7月5日、「やくたあもにゃあ掲示版」に、ロクスノの一編集者から発言があった。内容はごく穏便なものだったが、それに対するクライマーたちの反応は、きわめて激しいものだった。

「やくたあもにゃあ掲示版」より
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[ごあいさつ] Nom(7/5)
はじめまして。Nomという者です。
ホシナさん、関係者の皆さん、入山禁止の件では本当にご苦労さまです。
私の職業は出版物の編集と原稿書きで、ヤマケイ Rock&Snow の仕事もやっております。
昨年(1999年)の秋号で、ロクスノは軍艦、パラダイス、まねき猫などのクライミングガイドを掲載しました。そのとき編集を担当したのが私です。
今回、鳳来が大変なことになってしまい、記事掲載にかかわったことから責任を感じておりました。
皆さんの活動には感謝しており、またずっと注目しています。そして何より、鳳来を登りたい一クライマーとして、鳳来がふたたび自由に登れるようになってほしいと切に願っています。−以下略−
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[ロクスノについて] 親方(7/5)
私は今回の鳳来の問題であらためてメデイアの影響力の大きさ痛感させられました。
というのも、ロクスノに鳳来の記事が掲載されたから以前の倍ちかく入山者(特に軍艦、パラダイス方面)が増え週末には林道の駐車スペースにはいつも車がいっぱいでした。時にはUターンもできないこともしばしばありました。今回の入山禁止にロクスノの記事が直接の原因ではいにしても禁止のなる要素は大いにあったとおもいます。
はっきりいって現地の状況を調べもせず記事のネタにしたいというだけで掲載されるのは迷惑です。
今後こういうことのないよう、責任ある行動をとっていただきたい。
載せるだけで責任とれんへんなら載せるな。
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[ロクスノについての素朴な疑問] 登る看板屋(7/5)
・どうして小川山の記事があれほど多いのか?
・どうして「チッピング容認」をする人の意見しか載らないのか?
・どうして東京近辺に情報が偏っているのか?
・どうして値段の割に内容が希薄なのか?
・どうして記事の内容に無責任なのか?
・もうかればいいのか? (No Attitude?)
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[ロクスノよりも“人”が問題なのでは] Mono(7/5)
東北のあるクライマーの一説です。
「そして開拓という行為を通して知った事は、訪れたクライマーから「面白いルートだ」「楽しいルートだ」等々お褒めの言葉を頂戴した時のこの上もない嬉しさである。費やした金銭、労力の比ではないのです。他の岩場に遠征すればゴミ、吸殻一つも落とす気になりませんし、ルートを粗末に扱えません。ましてやルートに対してケチ言葉の一言も出てこなくなります」
この想いを見て、有名人だろうが、いくら5.13をオンサイト、5.14をレッドポイントしようが、岩場やルートに対して何ら敬意を表さない人は、岩場に来て欲しくないものだと思う。
山形の山寺では糞害は無いものの、やたらとハンガーにスリングの掛けっぱなしが多いのがとても気になる。初登時はそんなものないのに再登者がそのままにしてしまう。RPしたら即座に撤去してほしいものだ。そんなにランナアウトが怖かったらリードするなと言いたい。
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[専門誌がないのは寂しい] わかばやし(7/5)
私のロクスノ誌に対する希望はただひとつ
クライミングの専門誌に戻って欲しい。
たったこれだけのことです。岩と雪の123号から読みだしてそれからクライミングを始めた私は、雑誌の影響力とそこから得るものの大きさ理解しているつもりです。当然商業誌ですから利益が出なければしょうがないですし、岩雪がだめで、ロクスノOKっていう読者もたくさんいることでしょう。しかし雑誌がいま1誌しかない現状で、ロクスノがクライマーを育てないでどこがやるというのでしょうか? さまざまなクライミングのスタイルを紹介して啓蒙してゆく責任があると思います。
よく仲間内では言ってますが、今のロクスノは情報誌であって専門誌ではないですね。「社説のない新聞」みたいなものです。

 ロクスノと鳳来問題をめぐって、ネット掲示板とは思えない(?)質の高い論争が数日間続いた。そして、7月9日に駐車場・残置問題が緊迫すると論点もそちらに移り、なおも鳳来問題解決のためのさまざまな提案や意見交換がなされていった。掲示板上の論戦はほぼ2週間、7月20日の「鳳来会議」直前まで続くが、ここに参加した人の多くが鳳来会議に出席し、以後の活動に積極的にかかわっている。

 


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