![]() ●パタン市トルスメヘルユネスコクラブのルドゥラ氏によるとカトマンズには約1,000人のストリートチルドレンが暮らしているということです。 しかし正確な数字は調査されておらず、NGOなどの支援団体によっては、600人〜700人程度という推定もあります。 私が会った中では最年少が7歳、もっとも多い年齢層は11〜14歳というところでした。 噂話ですが、気になるのは、ここ1〜2年で15歳以上のストリートチルドレンが急に減ってきたという話です。戦力として役に立つ彼らは極左ゲリラのマオイストになっている可能性があります。 ●私の見た範囲では、単独で生活するストリートチルドレンは基本的にいません。子供たちはグループを作り、そのなかで助け合いながら生活しています。子供たちは各地のプラスティック回収所や寝床の移動を通じてネットワークを作っています。グループのつながりは緩く、子供たちはいくつものグループの間を常に渡り歩いています。 ●子供たちは安定的な収入を廃物のプラスティックをゴミのなかから集め、プラスティック回収所に持っていくことで得ています。平均すると1回1〜2時間のプラスティック集めで40〜70ルピーの収入になります。これを朝夕・1日2回する子供もいれば、週に数回しか集めない子供もいます。 ●食事はほとんどの子供は外食で済ませています。自炊しているグループはひとつしか見ませんでした。実際、彼らは調理道具どころか、身につけるもの以外ほとんど何も持っていません。鍋などは持っていてもすぐ屑鉄として誰かが売ってしまいそうです。子供たちがよく食べるのは摺り潰したジャガイモに野菜を混ぜ、ギョウザ皮のようなもので巻いた握りこぶし大のサモサ(5ルピー)やミルクティー(3〜5ルピー)、焼きそば(10ルピー)などです。ネパールの主食である豆のカレーをご飯にかけたダルバート・タルカリは配給も含めて週に数回しか食べられないようです。 ●夜は路上や広場で眠りますが、僕がいた2〜4月の夜はまだまだ寒く、気温は4月でも10度を切ることがあります。子供たちは寄り合ってお互いの体温で体を暖めて眠ります。昼間、寝床には毛布を隠してあるのですが、その毛布も大体はどこかから頂戴してきたものです。 ●服や靴などは露店の古着屋で買っています。非常に安く、いいものでも40〜50ルピー、薄いTシャツなどは10ルピー程度で手に入ります。しかし、ちょうどいい服が洗濯して干されていると、それを失敬して着ている子供もいます。また、寝ている間に他の子供の服や靴をこっそり取って、そのまま自分のものにすることもよくあります。 ●ほとんどの子供はタバコを吸っています。また彼らの半数はマリファナなどにも手を出しています。マリファナは非常に安価で手に入り、彼らはそれによって厳しい生活のストレスを発散しているようです。ごく少数ですが、薬物の注射を打つ子供もおり、薬は売人に打ってもらうそうです。私が聞いた情報では、子供の使っている薬はモルヒネでした。 ●プラスティックを集めているストリートチルドレンは「カテ」と呼ばれています。それは彼らへの差別用語で、一般の人から彼らに向かってしばしば使われます。そんなとき、彼らはただじっと堪えているしかないといいます。あるとき、彼らに仕事を聞くと、「カテ!」と大きな声で答えた子供がいました。そのときは私の方がドキッとして何と答えればいいのかとまどいました。 ●子供たちのなかには希に盗みをする者もいます。混雑したバスの中や不用心な女性のバッグを狙って、見事に財布を盗ります。そのお金は仲間の子供たちと分け合って、普段、絶対的に不足している食事や衣類の買い物に使ったり、映画などの娯楽、郊外へのピクニックに使ったりしています。盗みをしない子供も、そのお金がなければ更に生活は厳しいものになりそうです。 ●子供たちは常に暴力の危険にさらされています。無理解で差別的な市民から夜間に襲撃されるという話は何度も聞きました。また夜間にプラスティックを集めているとそのプラスティックを狙ってさらに大人の浮浪者に襲われることもよくあります。そのため子供たちは夜間のプラスティック集めでは必ず数人のグループで行動します。私が同行したときも、別れたあとで2人の少年が集めたすべてのプラスティックを奪われたということがありました。。そのほか、市民との摩擦から敵対や抗争に発展することもあるようです。 ●子供たちはいつもどこかに怪我をしています。素手素足でゴミの中へ入っていくため、常にゴミの中のガラスで手や足を切っています。しかもそれを洗ったり消毒することもなく、そのまま再びゴミの中へ入っていくので、ほとんどの傷は一度化膿して、それから治るという道を辿ります。なかには非常に深い傷もあり、心配なところです。 ●子供たちがカトマンズにやってきた理由は様々ですが、もっとも多いのは親のひどいせっかんです。飲酒後に殴る父親や継母によるいじめ、また子供には過酷な農作業を強制され、耐えられずに逃げてきた子供などもいます。そのほかに、映画などでカトマンズに単身出てきて成功を修める物語を見て、夢を持って出てきたが現実の厳しさにストリートチルドレンになった子供。村から働きに出てきたが、そこをクビになった後、働き口がなくストリートにでてきた子供などがいます。 ●カトマンズでストリートチルドレンのための活動をしているNGOにCWIN(Child Workers in Nepal Concerned Centre)があります。男女のストリートチルドレンのための寮、無料の医療施設、カウンセリング、教育支援、郊外からのバス停での水際補導など、多岐に渡る活動を行っており、その成果として確実にストリートチルドレンは減ってきているということです。 |