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Meyer-Optik Trioplan 100mm F2.8の味

柔らかい写りが魅力

 独Meyer-Optik社のTrioplan 100mm F2.8は、1950年代に作られた、かなり古いレンズです。筐体が銀色のため、撮影会に参加するとかなり目立ち、レンズに関して質問を受けることが多いです。静かに撮影したい方なので、目立つと困るんですけど……。写りが気に入ってるので使っています。

 開放での写りは、とても柔らかです。全体的にコントラストが低く、明るい部分周囲に軽くフレアーが発生します、このおかげで、優しい柔らかさの写真が得られます。この柔らかさは、現代のレンズにはないもので、独特の雰囲気の写真に仕上がってくれます。

 古いレンズだと、このような描写が多いと思われがちですが、そうではありません。とくに同年代の日本製のレンズは、古くても描写が良くて、ここまで柔らかい感じにはなりません。また、古くて柔らかい描写のレンズでも、雰囲気がそれぞれ異なっています。私が使った中では、このレンズの雰囲気が一番好きです。

 古いレンズの開放描写には、大きく分けると2種類あります。周囲がグルグルになって中央だけ良いタイプと、全体が柔らかいタイプです。このレンズは、後者の全体が柔らかいタイプに属します。こちらの方が使いやすいですね。ちなみに、前者の中央だけ良いタイプに属するレンズには、独Carl Zeiss JenaのBiotar 75mm F1.5があります。

独特のぼけも魅力

 古いレンズの多くは、今のレンズに比べると、少し変わったぼけになります。理想的な良い写りをレンズに求めるなら、汚いぼけと評価されるでしょう。つまり、ぼけが悪いレンズ、ぼけに欠点のあるレンズなのです。

 でも、私にとっては「欠点 = 味」ですから、魅力的なレンズに見えます。その味を積極的に生かそうと考えてしまいます。変わったぼけを持つということは、変わった写真が撮れるということです。どう考えても素晴らしいレンズですね。

 このレンズの独特なぼけは、後ぼけに現れます。ピント面から少しではなく、ある程度まで離れた箇所で発生しやすいようです。さらに離れると、ぼけすぎて欠点が消えてしまいます。ほどよく離れた箇所だけで発生するようです。ここら辺の感覚は、実際に使って覚えるしかないでしょう。

 独特なぼけを最大にするため、開放でしか使っていません。そのため、少し絞ったときのぼけ味は、よく分かりません。独特なぼけを生かすときは、今後も開放で撮るでしょうから、ずっと分からないままだと思います。

柔らかさと独特なぼけのどちらかを生かす

 このレンズの味は、柔らかさと独特のぼけですから、どちらかを生かさないと使う意味がありません。両方を生かしても構いませんけど、柔らかさと独特なぼけでは、適する表現意図が異なります。その意味で、両方の味を一緒に使うことは難しいでしょう。通常は、片方の味を生かすことになります。

 柔らかさを生かす場合には、明暗差のある被写体とか、凄く明るい部分が含まれている被写体を選びます。そうすると、明るい箇所の周囲にフレアーが発生して、より柔らかい感じに写るようになります。ただし、あまりにも強すぎる光だと、逆光と同じようにフレアーが大量発生して、まともに写りません。ほどほどの明るさを選んでください。

 独特なぼけを生かす場合には、変な感じが適する被写体を選びます。ぼけを生かすわけですから、ぼけた状態が大事な要素となります。ぼけた被写体に、どのような役割を持たせるのか、事前によく考えることが大切です。変な感じに写るわけですから、写真の雰囲気を重視した写真も1つの方向でしょう。

 ぼけを生かした撮影では、ある程度の仕上りを予想しながら使います。ぼけ方は、一眼レフだとファインダーで確認できると思いがちですけど、今はそうでなくなりつつあります。AF時代のスクリーンは、暗いレンズでも明るく見えるようにと、ぼけ具合が適切でないスクリーンを採用しています。つまり、最近のスクリーンの見え方は、実際の写りとの差が広がりつつあるのです。低価格の機種ほど、その傾向が強いようです。自分が使っているスクリーンの特性を理解し、ある程度まで仕上りを予想できるようになりましょう。

作例1:ツツジの女王様

 1つの花が少し飛び出しているツツジを、柔らかく写してみました。日光が強く当たっている状態を、ハイキー気味に写したため、花びらの周囲にフレアーが発生して、柔らかさが強調できました。背景が大きくぼけたので、変な感じにならずに済んでいます。

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作例2:バックミラーと階段

 独特のぼけを生かした良い写真が撮れてないので、とりあえずの作例として選んでいます。バックミラーにピントを合わせ、背景の階段をぼかしてみました。ぼけた階段が変な感じに写るのを狙って。期待どおりに、ぼけた階段が変な感じに仕上がりました。

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(作成:2005年7月11日)
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