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ENNA Ennalyt 100mm F2.8の味

汚く目立つぼけが魅力

 独ENNA社のEnnalyt 100mm F2.8は、かなり古いレンズです。価格はあまり高くなく、1万円ぐらいで買えるみたい。私は、中古カメラの某フェアで、エキザクタ・マウントのものを入手しました。

 実物を見て最初に感じたのは、軽いことです。あるサイトに掲載されてた資料によると、175gだとか。これだけ軽ければ、気軽に持ち歩けますね。最短撮影距離が0.9mと、少し短めなのも嬉しい点です。フォーサーズ機に付けると35mm版換算で200mm相当の画角になりますから、0.9mだとかなり近づけます。近寄って撮ることが多い私にとっては、かなり魅力的に感じました。

 写りの特徴は、何と言っても、開放での汚いぼけです。前ぼけも後ぼけも汚いですが、後ぼけの強烈な二線ぼけ傾向が目立ちます。ぼけの美しさを評価基準にしたら、最悪に近いレンズでしょう。でも、これだけ汚いと、それが特別な魅力となって、このレンズの味に昇格します。

 当然ですが、ぼけが汚くなるのは、大きくぼけてない領域だけです。その範囲に背景が入るように、被写体との距離を選ばなければなりません。

汚い後ぼけを利用して、背景の形を強調する

 普通に考えたら、ぼけの汚いレンズを避けるでしょう。でも、汚いぼけが役立つ場面や表現意図もあるのです。汚くなることで、ぼけた部分が力強く目立ちます。それを、表現に上手く利用すればいいのです。

 考え方は、大きく分けて2つあります。汚くぼけた部分を、主役にする方法と、目立つ脇役にする方法です。主役にする方法では、汚くぼかして目立たせるとともに、主役だと分からせるために、少しでも広い面積として入れます。脇役にする方法では、主役との組み合わせで何かを表します。主役と対比させるなど、表現意図に合わせた組み合わせを選びます。

 正直、汚いぼけを利用できる被写体は、それほど多くありません(本当は多いのに、まだ見付けてないだけかも知れませんが)。ですから、持ち歩く機会が減ってしまいます。たまに見付けても、このレンズを持っていないことが多いです。再び行ける場所で、被写体の状態が変わりそうもないなら、あとで撮影に出かけることもありますけど、実際には少ないですね。

作例:緑の孔雀(くじゃく)

 汚くぼけた部分を、主役にする方法の例です。ヌマスギの枝を、孔雀に見立てて切り取ってみました。ぼけた背景を、孔雀の広げた羽に見せてます。汚くぼけることで、より力強く目立つように仕上がりました。

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(作成:2005年8月20日)
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