和歌山県東牟婁郡那智勝浦町。落差約百三十メートルの那智の滝があり、その近くには熊野三山の一つ那智大社、そして青岸渡寺が並ぶ。花山院は那智山で修行したと伝わり、二の滝の上流に行在所跡がある。のち西行はそこを訪ねて「木のもとに住みける跡を見つるかな那智の高嶺の花を尋ねて」と詠んだ。
石走る滝にまがひて那智の山高嶺をみれば花の白雲(花山院)
雲かかる那智の高嶺に風ふけば花ぬきくだす滝の白糸(源仲正)
山深くさぞ高からし都まで音にきこゆる那智の滝つせ(藤原為家)
補陀洛や岸うつ波は三熊野の那智のを山にひびく滝つ瀬(御詠歌)
天の原雲なき空の雪と雨ととはに見せたる那智の大滝(佐伯長穂)
いただきに杣板のせてくだる子がうしろで寒き那智の山風(加納諸平)
三とせ待つまの中の苦しさ
山伏は那智のみ山をすみかにて(後土御門院)
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