膳王 かしわでのおおきみ 生年未詳〜神亀六(?-729)

膳夫王・膳部王とも書く。長屋王と吉備内親王の間の長男。初叙の年から、生まれは大宝四年(704)以前と推測される。和銅八年(715)二月、吉備内親王(草壁皇子元明天皇の子)の男女を皇孫(二世王)の扱いとする詔が発せられ、これにより、神亀元年(724)、従四位下に初叙される。神亀六年(729)二月二十二日、父長屋王の罪に連座して、母・同母弟三名と共に自縊せしめられる。万葉集に歌一首を残す。

膳王の歌一首

(あした)には海辺に(あさ)りし夕されば大和へ越ゆる雁し(とも)しも(万6-954)

【通釈】朝には難波潟の海辺で餌をあさり、夕方になると大和へと山を飛び越えて帰ってゆく雁が羨ましい。

【補記】海を越え山を越えて異郷との間を自由に往還する雁に、望郷の思いを託す。左注には「作歌之年不審」とあるが、万葉集の目録によれば、神亀五年(728)の難波宮行幸の時の作。死の前年である。

【参考歌】作者未詳「万葉集」巻十
秋風に大和へ越ゆる雁がねはいや遠ざかる雲隠りつつ

【主な派生歌】
夕されば倭(やまと)へこゆる雁がねのきこゆるからに秋ぞかなしき(加納諸平)


最終更新日:平成15年11月14日