Nuforce Icon HDP

ニューフォース DAC プリアンプ

まことに困ったほどの高音質

2012年10月18日

 

 

HDP導入の経緯

 最近、地方への出張が増え、出張先にアパートを借りました。二階建の二階の端部屋で、かつ、別室の6畳間の下は倉庫なので、少々大きな音でオーディオを聴いてもOK。

 で、このアパート用のシステムを組もうと思ったわけです。プレーヤはHDDレコーダ、CDR-HD1500 を持っていけばいいし、パワーアンプはLINN LK-140がある。しかし、今となっては、DEQ2496なしでシステムを組むわけにはいきません。つまり、DACとプリアンプが新たに必要、ということです。DEQ2496は安いからもう一台買うのは問題ないけど。

小声ではっきり言えば、DEQ2496の内蔵DACは、使いたくないのです。正直言いまして。

 

 あまりお金もかけられないし、まあ、いわゆるボリューム付DACがいいか、と思いまして、いろいろと考えました。候補はいくつもありましたが、ハイエンド・オーディオの思想が流れていそうかな、とか思って入手したのが、デジタルアンプでおなじみのNuforceのミニDAC、「Icon HDP」。

 パワーアンプまで入っているUSB−DACの「Icon2」というのもありますが、HDPはUSB入力以外に通常のPCMデジタル入力(RCAと光)があり、パワーアンプはなく、出力はヘッドフォンとプリ出力だけです。でも、Icon2より価格は高いので、Iconシリーズでは、高級DAC・プリという位置づけ。HDPは、同社の高級CDプレーヤと同等のDAC内蔵、と豪語しています。本当だといいなあ・・・。

 外付けの電源も、小さなACアダプタではなく、なかなか高級な電源ボックスが付いてきて、好印象です。こんなにパワーがいるかな、という大きさ。ACケーブルだって、交換式だし。

 

HDPの音を説明する前の長い言い訳

 私が、「音が変わりました」と書くのは、スイッチ切替でシビアな聴き比べをして、少なくとも差が出やすいソースを聴けば、毎回、確実に聞き分けられる差がある、と確信したときだけ、と決めています。

 たとえばデジタルケーブルの差は、非常に安い光ケーブル(端面の処理が荒らい安物)を使った例(ブログで報告)以外は、音の違いが私にはまったく聞き分けられません。No.36SLはデジタル入力をリモコンで切り替えられますから、違うケーブルでつないだ音を、瞬時切替で聞き比べるシビアな比較が可能ですが、私にはどうしてもケーブルの差がわかりませんでした。

 といっても、デジタルケーブルの差を聞き分ける人もいるのを決して否定するつもりはなく、しょせん私の聞き分ける能力は、その程度に限られている、と考えます。

 とはいうものの、DAC-64とマークレビンソンNo.36SLの差や、DEQ2496によるわずかな特性変更は、私にだって明快に聞き分けられます。試聴などしても、DACやCDプレーヤの音の差は「微妙」ではなく、切り替え比較なら、極めて明瞭、簡単にわかる大きな差です。なんども経験してきました。

 

Nuforce HDPの音

 さて、そんな言い訳から入った理由を言いましょう。

このHDPは、コストも考えれば、驚くべき高性能DACだと思います。DAC-64との音の差が、私には聞き分けられません。

 

試聴方法

 HDPをNo.36SLの配線と入れ替えてつなぎ、一応、一晩電源を入れたままにして、翌日に試聴を開始しました(HDPは結構熱くなります)。 マッキントッシュC46の入力切替(リモコン)で、DAC-64とHDPを切替えて比較できます。

 

 HDPにはボリュームがあるので、切替で音量感が変わらなくなるまで、まず音量を調整。(C46の入力トリマーでも入力別に調整ができますが、No.36SL用の設定を変えるのが嫌だったので)。

 音量感が一致したところで、真剣に聴き比べを始めました。

オラクルCDドライブから、DEQ2496も経由し、HDPでDA変換して、マッキントッシュC46、ナグラPMA、JBL4344のフルシステムで聴くわけです。まあ、こんな使い方はNuforceも想定していないだろうから、さすがに粗を見せるのであろうな・・・、と自称マニアの私は思い込んで、試聴開始です。

 

 「あれ、そっくりだね。なかなかいいんじゃないの、価格の割に。」・・・と余裕こいていた私は、だんだん、焦ってきました。なにを聴いても差がわからない!

 DAC-64の音は、割と特徴のある音だと思っていましたが、それとそっくりというのは、解せないなあ、と、さまざまなCDの、微妙な聴き比べ所を聴き比べるも、まったく差が分からず。

 声楽曲でさえわからない(つまり欠点も似ていて、DAC-64で私が好きになれないハスキーなキリテ・カナワの声がする、ということでもある)。

 ときに、「あれ、HDPのほうがいいじゃないの・・・まさかね」と、正直ドキッとして、DAC-64にもどり、「いや、同じだな」と安心する、なんてこともたびたびです。

 音がいいのは単純に感心するとしても、差が聞き分けられないってのは不思議。なぜこんなに似てるのでしょうねえ。DAC-64はDACチップを使わない汎用DSPでの独自の処理のDACなのだけど。

 

結論

 これは仕方がない! 
「私には値引きありの5万円台で買ったHDPと、その10倍近い価格のDAC-64-IIの音の差は聞き分けられませんでした」
と書くしかありません。

 ま、そういうわけで、このページは、先ほどの言い訳から始まったわけです。このページだけを読んだ方に、「馬鹿じゃないの、こいつ」と思われないように・・・。

 しいて差を探すなら、CD停止のデジタル入力信号ゼロ状態でC46のボリュームをいっぱいに上げ、スピーカーに耳をつけてノイズを聴くと、若干、HDPのほうがS/Nが悪いです。まあ、それくらいの差はないとなあ・・・。しかし、試聴位置では、この差も聞き分けられないですねえ。私の耳では。だって、S/N比はそうは言っても100dBですからねえ。

 

アパート用はHDPで決定

 そんなわけで、私のアパートのDAC&プリは、なんの疑問もなく、HDPに決まりです。新しいサブシステムの音がどうなったかは、別途報告しますが、すくなくともDACは完ぺきなわけです。こりゃ投資のしがいもあります。

 実はもう完成しているので、システムの写真だけ、ちょっとお見せしておきましょう。これを書いている今も、アパートにいます。あれ、ELAC-310があるじゃん、と気がつかれましたでしょうか。はい、買っちゃいました。これについてはまた。

 

自宅のDAC-64はどうするの

 まったく差が聴き分けられないなら、DAC-64を売っちゃえば、HDPをもう一個買ってもお金が余ります。

 でもね、私は、まったく迷いません。音だけでDAC-64を持っているわけじゃなくて、この存在感も私の大事な宝なのです。それでいいのです。それがオーディオじゃありませんか。HDPには大変失礼ながら、オラクルとC46の間にHDPってわけにはいかんでしょう(笑)。

 

Nuforceの思想について

 最後に付け加えると、HDPに限らず、NuforceのDACは、いまや常識の「非同期のアップサンプリング」をしていません。「音にプラスはない」と考えているからだと、同社のサイトには書いてあります。また、「高いDACチップを使えば音がいいわけじゃない」とも書いてあります。私がこの思想に共感したのが、HDPを選んだ背景にあります。

 そして、それは本当らしいと、いま、わかったわけです。困りましたね・・・・。

 

以下、小声で・・・

 昨今のビット数、サンプル周波数争いは、デジカメの画素数競争に似ている気がしています。実は、画素数も多けりゃいいわけじゃない。カメラメーカーもよく知っているけれど、結局大きな数字のほうが売れる・・・。アナログ時代にもありました。やたらと細い針で超軽針圧にして、f特の上限が2万kHzをはるかに超えるのを誇るカートリッジとか。それより低域が重要じゃないの、針圧が低すぎるといろいろとまずいんじゃないの、とかに気がついたのは、オーディオに入門してずいぶんたってからでした。まあ、高スペックの追求も趣味としては楽しかったのですが、当時は。

 はじめて「スペックで音がいいかどうかは決まらない」と知らしめてくれたのは、1970年前後に一世を風靡していたTEACのテープデッキ、A-4010Sでした。カタログ上は実に平凡なスペックでしたが、音は無敵でした。いまは引退してもらっていますが、まだ大切に持っています。

さらに小さな声で・・・、その後継のESOTERICは、35ビットとか、192kHzとか、数字を前面に出した製品つくりをしてくるのが、ちょっと複雑。音が嫌いというわけではなく、数字じゃないんだ、と私に教えてくれたのはTEACだったのになあ。

 

2012年10月18日

 

 

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