105. 初島へ金環食の観察に
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金環日食が九州から関東地方まで広い範囲で見られるという。二〇一二年五月
二一日の朝、私の住む湘南地方では完全に近い金環が見えるとの予測である。
創作の折り紙作家の姉・川井淑子
(「折り紙作品」を参照)
が熱海沖の初島へ休養をかねて金環食を観に行きたいというので二泊三日の予定で
初島のホテルにお伴、費用は現役の姉持ちである。
五月一九日午後、熱海港から高速船にて二五分で初島に着く。静岡県熱海市に属し、
周囲四km、最高地点の標高は五一mの小さなリゾートの島である。
写真105.1 熱海港沖から見た熱海。
写真105.2 初島港沖から見た初島の全景。
日食の前日、薄雲が広がり、天気は下降気味。空には日暈(ひがさ)が現れた。
日暈が出ると翌日は雨のことわざがある。金環食はおそらく見えないので、せめて
記念に日暈でも写真に撮っておこうと庭に出て、街灯で太陽の直射光を隠して日暈
をカメラに収めた。
写真105.3 太陽にかかった日暈(ひがさ)、視半径は約22度。太陽直射光
が強いので街灯で太陽を隠して撮影。
金環と同じく太陽光がつくる日暈は光の環である。上層の氷晶からできた薄雲の巻雲
(けんうん)や巻層雲(けんそううん)でできる現象である。視半径は約二二度、
直径は約四五度、カメラの画面に入りきれない大きさである。
金環食の当日、天空は雲いっぱいとなる。ホテルに泊っていた多数の人々は、屋上に、
あるいは庭に出て雲の晴れる奇跡を待つ。
写真105.4 ホテル屋上から見下ろした庭の風景。
金環の予定時刻には周囲は少し暗くなった。厚い雲と日食の影響が重なった
ものだ。予定時刻を過ぎると、みんなは食堂で朝食を始めていた。一〇人ほどの人々
だけ、ホテルの玄関先で日食観察用のメガネをかけて熱心に太陽を観ていた。
すでに時間は過ぎて部分日食ながら、満足げな顔をしていた。私たちも「まずは
よかった」と。
予定より早めに初島港から帰途につけば、空は明るくなる。雲が晴れるのが一時間でも
ずれていれば、日食は見えたのだが、自然現象は仕方がないものだ。
金環食の日から数日後、近くに住む内藤玄一さんから金環食の写真が添付された
次の内容のメールがきた。
「二一日の六時過ぎまで降っていた雨が上がり、六時三〇分ごろ薄雲から太陽が透けて
見える状態が時々出てきました。金環食のピークのころ、ちらちらと日食が見え始めて、
はっきりと金環が見える状態も出現しました。急いで一眼レフカメラを取出し、
通常では特殊なフィルター無しでは撮影できない太陽を捕らえました。
千載一遇の好機をものにしたとは、このことでしょうか。」
写真105.5 金環食(左)と部分食(右)(内藤玄一氏提供)。
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