A13.室戸岬観測所、2011年10月23日

報告者:廣幡泰治
高知県東部にある室戸岬気象観測所を2011年10月23日に見学した。 これは気象予報士会山陰支部の例会が高知市で行われたとき、室戸岬まで足をのばして 行ったものである。 (完成:2011年11月26日)

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更新記録
2011年11月26日:作成・完成


      目次
        はしがき         
        13.1 予報士会例会と高知市内見学
        13.2 室戸岬観測所の見学
        あとがき     


はしがき

見学者:津山地区メンバー 気象予報士 廣幡泰治
観測所見学日:2011年10月23日(日)

10月初旬に気象予報士会山陰支部から例会開催の案内メールが届いた。驚いたことに 開催地は高知市とのことだった。

元鳥取気象台長が高知市に在住であることや、支部活動方針として他支部との連携を 謳っていることなどが開催理由らしい。私は岡山支部所属だが、県北部に実家がある ことから山陰の気象に関心があり、山陰支部例会に時々お邪魔している。そんな ご縁で高知例会に参加させていただくことになった。

13.1 予報士会例会と高知市内見学

例会当日の10月22日(土)は、低気圧通過に伴って雨が激しく降り、期せずして土佐の 大粒の雨を体験できた(図13.1)。高知地方気象台は100年以上の歴史があるそうだが、10月の1時間降水量としては 歴代7位だった(1時間降水量の記録は75年間)。

降雨分布図
図13.1 西日本域のレーダー降雨分布図、2011年10月22日13時 (NPO法人「WEED」提供の描画ソフトを使用)

例会では、若林台長より高知の気象(気候)について講義いただいた。 高知は日本有数の多雨地域で、特に台風接近時には猛烈な雨が降る。年間雨量は 沿岸部より山岳部の方が多いが、短時間降水量としては沿岸部の方が多いところがある。 これは、台風が遠いときの暖湿気による降水は沿岸前線により局地的な強雨となるが、 風が強くなると沿岸前線は風下に押しやられ、主な降水は四国山地の南向き斜面に 広く分布するうようになるためらしい。図13.1は恐らく沿岸前線に沿って線状に組織化 した降水系と思われる。

翌日の10月23日は好天となり南国の日差しも感じられ、わずか2日間で高知の気象の 両極を堪能することができた。 休日にもかかわらず気象台の方が市内を案内してくださった。この場を借りてお礼申し 上げる。

・県立五台山公園(写真13.1)の展望台からは高知市内が一望できた(写真13.2)。 写真の右手方向は海抜0m地帯が広がり、南海地震への対策はどうなっているのだろうな どと案ずる声が上った。

・公園内にある四国霊場31番札所の竹林寺にも参拝した。

・浦戸にある検潮所を案内していただき、大津波の時でも測定できる水圧式の潮位計 があることを知った(写真13.3)。 そこは桂浜のすぐ近くだったが、時間の都合で坂本竜馬には会わず解散となった。

五台山公園
写真13.1 高知県立五台山公園に建立されている記念碑「南国土佐をあとにして」。 武政英策による作詞作曲「南国土佐を後にして」は1959年にペギー葉山が歌い大ヒット、 それを元にした映画もつくられた。

高知市街
写真13.2 五台山公園展望台から見下ろした高知市街。写真の中央の水面は鏡川の浦戸 湾に注ぐ河口部、右よりに見える鏡川に架かる橋の手前から右に分岐した堀川は 「はりまや橋」を経て堀詰まで通じていた昭和初期までの重要な運輸交通の水路。

検潮所
写真13.3 浦戸湾入り口にある検潮所。左方上部は浦戸湾入り口の両岸(浦戸、種崎) を結ぶ浦戸大橋(1972年完成、全体延長1480m)、写真背後の山の反対側には太平洋 土佐湾に面した桂浜、坂本龍馬の銅像がある。

その後、私は気象台の許可をいただいて室戸岬特別地域観測所を見学すべく室戸へと 向かった。

13.2 室戸岬観測所の見学

観測所の場所をろくに確認せずに来てしまったが、室戸岬は観光名所であり24番札所 最御崎寺もあるためか、道路わきに大きな観光地図が立ててあり(写真13.4)、 そこには観測所の場所がしっかり記されていた。

我が津山特別地域観測所の場合、案内看板などは一切なく、初めての人は必ず道に 迷うだろう。 津山地区メンバーとしては室戸が大変羨ましい。

室戸観光地図
写真13.4 室戸岬周辺観光地図。

室戸スカイラインにある観測所入口の門扉脇から入ると、観測所への道はうっそうと していたが、敷地内に入ると広々とした良好な立地であることが分かった(写真13.5)。

北側(旧宿舎跡地)は緩やかな下り斜面となっているため雑木林は気にならない。 しかし、南側はフェンスから10m程度のところから樹高の高い木々が生い茂っている (写真13.6)。

この樹木による日だまり効果が気になる。我々は日だまり効果をこの世から排除する 活動をしているのではない。地域を代表する気候を観測できるよう、環境を長期に わたって維持することだ。

室戸岬観測所の露場の南側の森林は24番札所最御崎寺所有の敷地である。強風地で あるため台風等によって倒木もあり、ほぼ平衡状態に保たれた昔からの自然林である とみなされる。日だまり効果は、建物などがあっても環境に大きな変化がなければ、 気象観測特に気温観測の誤差が生じたとは考えない。

観測所の無人化後に注意すべきは、露場フェンスのすぐ外側に雑草が成長し露場の風速 を弱めるようになったとき刈り取ることと、敷地境界の外側の樹木が敷地内まで生えて きたとき伐採・枝切りを行うよう、担当気象台に進言することである。

室戸岬観測所の敷地と南側隣地の境界には境界を示す杭がある。

室戸岬観測所入り口から
写真13.5 室戸岬観測所、東側の入り口から入ってすぐの場所から撮影 (2011年10月23日)。

室戸岬観測所南側
写真13.6 観測所露場の南東側から西方向を撮影(2011年10月23日)。

室戸岬観測所南側
写真13.7 観測所露場の南東側から北西方向を撮影(2011年10月23日)。

別の章「A10.室戸岬観測所見学、2011年10月2日」 に、少し前の10月2日に開催された見学会の様子が紹介されている。比べてみると、 フェンス内の露場の状態は非常に良いが、周辺の雑草は見学会の時よりも少し 伸びていたように思う(写真13.7)。

年内にはフェンス外側も一度草刈りが必要だろう。冬場は雑草の成長も遅いので、 ここで刈っておけば春までは大きく伸びることはないだろう。気象台には既に 連絡がされているとのことだ。

あとがき

観測所の見学報告というより私の小旅行記のようになってしまったが、気象予報士 としての活動を通じて観測環境の維持に少しでも貢献できればと思い報告させて いただいた。

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