M37.連続講座 Q&A(その1)
	著者:近藤純正

	連続講座(M25~M36:2008年春)で出された質問に対する回答(その1)です。
	(完成:2008年5月19日)

	目次
	1.一般的なことに関するQ&A(1問)
	2.基本的なことに関するQ&A(2問)
	3.大気中の水蒸気や雲粒に関するQ&A(1問)
	4.温度や熱に関するQ&A(5問)
	5.降水量、蒸発量、蒸散量、緑化に関するQ&A(3問)
	参考書
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更新記録
2008年3月17日:7つのQ&A(Q1.1~Q5.2)を完成
2008年4月5日:Q4.2を追加
2008年5月19日:Q4.3~4.5、Q5.3を追加



1.一般的なことに関するQ&A

Q1.1 「気候変動と人々の暮らし」の章にあった、花井日記の中で 「毎朝日出赤く・・・」の部分に注目されたのは、中米ニカラグアでの火山 に関連があると思われたからですか? それはなぜですか? (JS)


A1 私は火山学が専門ではないので、この記事を読むまで火山噴火の ことは知りませんでいた。 しかし、「毎日のように日出が赤く見えた」という4月1日付けの記事は 何なのか、もしかして世界のどこかで大規模火山噴火があったことが朝焼け の原因かな? と思い、火山関係の資料から噴火について調べることになりました。 調べて見ると、火山噴火は毎年世界中でいくつも起きているのですが、非常 に大きい噴火はめったに起きていません。非常に大きい噴火とは、多量の 噴煙が10km以上の成層圏に入るような大規模噴火のことです。
1835(天保6)年の1月20日には中米ニカラガのコセグイナ火山が大噴火 しており、その約2ヵ月後の日本の仙台藩涌谷の花井安列が見た毎日の赤い 日出が対応しているのかな? と思ったのです。

そして、数百年間に生じた大飢饉年と大規模火山噴火を拾いあげてみると、 両者がよく対応していることがわかり、花井の記事とコセグイナ火山噴火の 関係を確信するにいたりました。

2.基本的なことに関するQ&A

Q2.1 放射(日射や大気放射)のところで出てくる長さの単位μm(ミクロン またはマイクロメートル)はどれほどの大きさですか?(JS)


A2.1 1μm(ミクロンまたはマイクロメートル)は0.001mmつまり 1/1000mmのことです。1μmは肉眼では見えないほどの大きさです。
長さのメートルは大きいほうから3桁ごと頭に、テラ、ギガ、メガ、キロ がつき、1メートルより小さくなると、3桁小さくなるごとに、

1mm(ミリメートル)=0.001m
1μm(ミクロン)=0.001mm
1nm(ナノメートル)=0.001μm

目安として、次の例があります。
1ナノメートル:分子の大きさ
1ミクロン:大気中に浮遊する微粒子
1ミリメートル:砂粒
1メートル:人間の大きさ
1キロメートル:集落、昔の人が日常生活する空間
1,000キロメートル:国の大きさ(1,000kmは東京~宗谷岬の距離)
10キロメートル:地球を回る月の軌道半径(=0.38×10キロメートル)
10キロメートル:太陽を回る木星の軌道半径(=0.78×10キロメートル)
1012キロメートル:光が1年かかって到達する距離(=9.46×1012キロメートル)

              表37.1 微小物体の大きさ(半径)の目安の表


空気分子(窒素、酸素、炭酸ガスなど) 0.0001~0.001μm エアロゾル(大気中に浮遊する微粒子) 0.01~10μm 凝結核の代表             0.01μm 日射(太陽光)の波長         0.15~3μm・・・・エネルギーの大部分を含む範囲 可視光の波長             0.38~0.77μm(個人差あり) 大気放射(長波放射)の波長      3~100μm・・・・エネルギーの大部分を含む範囲 植物葉面の気孔の大きさ        10μm 雲粒の半径              1~100μm 雲と雨滴の境             100μm 雨滴の半径              100~1,000μm(=1mm) 大粒の雨滴の半径           3,000μm(=3mm)

Q2.2 光の散乱の説明にある空気分子とは窒素、酸素、炭酸ガス(CO) のことですか?(S)


A2.2 はい、その通りです。


3.大気中の水蒸気や雲粒に関するQ&A

Q3.1 空気中の水分とは、雲のことですか?


A3.1 空気中には気体(水蒸気)と液体(氷点下では固体の氷)の状態で 水が含まれている。液体・固体のうち大きいものは落下するが、雲粒 (半径が10μm=0.01mm程度)は落下速度が小さく、上昇気流に乗って いることもあり浮遊しているように見える。

条件にも依存するが、雲層内では水蒸気量が液体・固体量よりも 多めで存在している。
放射に及ぼす影響は、同じ量であっても水蒸気と液体・固体とでは大きく 異なる。

4.温度や熱に関するQ&A

Q4.1 天保時代に仙台・伊達藩涌谷において花井日記に書かれた 「たいへん暑い日」について、「最高気温28℃以上の日」と推定していますが、 現代の私たちが感じる「たいへん暑い」より低めのような気がしますが?


A4.1 東京に住みなれた人と、東北地方に住みなれた人が感じる 「暑い」は多少違うと思う。また、時代によっても暑さの基準は変わって きたと考えられる。

近年の東京近辺では、最高気温が35℃以上の日も珍しくない。 1931年以後について最高気温25℃以上、あるいは30℃以上の年間日数の統計 があるので、実際のデータから調べてみよう。

近年次のように呼ばれている。
最高気温≧25℃・・・・・・夏日
最高気温≧30℃・・・・・・真夏日
最高気温≧35℃・・・・・・極暑日(2007年4月より呼ばれるようになった)

熊谷(赤)、東京(青)、仙台(緑)の3都市における「真夏日」の年間日数 について1931年以後の経年変化を図37.1に示した。最近の熊谷での真夏日の 増加は顕著であることがわかる。

最高気温の日数
図37.1 真夏日(最高気温が30℃以上)の年間日数について熊谷、東京、仙台の 比較。プロットは毎年の日数、線は5年移動平均値である。

                    表37.2 夏日と真夏日の統計

夏日 真夏日 大暑日   真夏日(昔) 真夏日(最近) 真夏日の増加率     1931~2007年平均  1931~60年 1996~2007年  (最近)/(昔) 熊谷 111日 50日 ― 45日 63日 1.4倍 東京 107 46 ― 45 54 1.2 仙台 66 17 ― 16 19 1.2 伊達藩涌谷(夏3ヶ月間の日数) 1934年 34日 1936年(天保7年大飢饉年) 3 1939年 18


図37.1と表37.2によれば、真夏日は昔に比べて最近(1996~2007年の 12年間)は熊谷では1.4倍、東京と仙台で1.2倍に増えている。 感覚からすると、真夏日は統計値よりも、もっと増えているような気がする のだが、どうしてか? その理由を列挙する。

(1)人間や植物は、少しの気候変化に敏感である。
(2)人間は年配になると、暑さに弱くなる?
(3)近年、冷暖房がすすみ、暑さ寒さに弱くなってきているのではないか?
(4)「きょうは最高気温○○が記録された・・・」という報道が多くなり、 そのニュースを知って「やっぱり暑かったのだ」という認識がされるように なった。ある人が新聞記事を調べた結果によれば、暑い寒いなど天候に 関する記事の占める割合が昔に比べて多くなったという。戦後の混乱した 時代には、暑い寒いなど言ってはおれなかったが、近年は暑いことが大 ニュースになる。
(5)器械測定法にも問題があり、昔は百葉箱内で気温が観測されていたが、 1970年代から温度センサーは百葉箱外の通風装置内にセットされるように なり、特に最高気温は昔に比べて低めに観測されるようになった。 昔に比べて、最高気温は年間平均値で0.2℃ほど低め、晴天の微風日には 1℃ほど低めに観測されるようになった。
それゆえ現代を基準にすると、図37.2に示された1970年代以前の真夏日 の日数は、もっと少なかったことになり、人間の”暑い日が増えた気がする” という感覚が正しく、この点では気象資料は正確ではない。


Q4.2 「M35.エネルギーと温度変化(要点)」の章の最後の6節に おいて、内部での温度変化を小さくする方法がよく 理解できないのですが?


A4.2 2つの場合に分けて考えることにしよう。
(1)温度をなるだけ一定に保つにはどうするか?
高温(または低温)の状態をそのまま長時間保つには、熱伝導率の小さい 断熱材を用いて出ていく伝導熱(または外から入ってくる伝導熱)を防ぐ。 断熱材は厚いほどよいが、その断熱材に熱をとられない(または熱をもらわ ない)よう注意すること。

(2)「M35.エネルギーと温度変化(要点)」 の章の最後の6節において説明したのは、外気の温度や放射量が時間的 に変動(日変化や年変化)する場合、表面温度や内部の温度変化を小さく する方法の原理についてでした。

外壁面温度の時間変化の大きさに比べて、壁で取り囲まれた内部(室内)での 温度の時間変化、たとえば日変化や年変化をなるべく小さくする原理は、 壁の厚さを厚くすることと温度拡散係数(a=λ/cρ、λ:熱伝導率、c: 比熱、ρ:密度)を小さくすることである。一般に熱伝導率が小さい物質は 体積熱容量(=比熱×密度)も小さいので、普通の物質では温度拡散係数を 格段に小さくすることはできない。

多層構造にして、全体としては体積熱容量が大きくなるように、薄い熱伝導率 の小さい物質(薄い断熱材)と水に近い物質を交互に重ねる。この際、薄い 断熱材間は金属ではなく木材のような熱伝導の悪い物質でつなぐ。 そうすることで、温度拡散係数を小さくすることができる。

以上は、壁の厚さをなるべく薄くしたい場合である。壁の厚さが厚くても よい場合、たとえば地下室では地中5m以上の深さであれば、年間の温度変化 は±1℃以内となる(「M35.エネルギーと温度変化 (要点)」の図35.2参照)。

経験的に、多層構造にして温度拡散係数が小さくなるように行われている に違いないが、その原理を理解しておくことが大切である。


Q4.3  氷(固体)から水(液体)へ、水から水蒸気(気体)へ 変化するときの潜熱の関係がよくわからないのですが?

A4.3 「M33.水蒸気(要点)」の章の 第2節で示したように、単位質量当たりの潜熱の大きさは温度によってわずか 異なるが、ここでは0℃のときの値を示すと、
水の蒸発の潜熱(0℃)=2.50×10 J kg-1=600 cal g-1
氷の融解の潜熱(0℃)=0.334×10 J kg-1=80 cal g-1
氷の昇華の潜熱(0℃)=(2.50+0.334)×10 J kg-1
J:ジュール、cal:カロリー

1グラムの氷を融かして水にするには80カロリーの熱エネルギーを加える 必要がある。自然に融けた場合も同様に80カロリーの熱がまわりから奪われた ことになる。これと逆に水が凍るときは80カロリーの熱を水は放出する。

次に、1グラムの水を蒸発させるには600カロリーの熱エネルギーを加える必要があり、 自然に蒸発したときでも周辺から600カロリーの熱を奪って気化したこと になる。これと逆に水蒸気が凝結して水になるとき(壁に結露するときも同様)、 水蒸気は周囲に600カロリーを放出しているはずで、周囲は温められる。 温度が下がりつつあるような条件下では、温まり方がはっきりしないが、 温度の下がる割合がこの放出熱のためににぶくなっているはずである。

氷から直接水蒸気になることを昇華という。1グラムの氷が水蒸気に なるには上記の潜熱の和680(=80+600)カロリーが必要である。 この逆の過程、つまり水蒸気が霜になるような場合、水蒸気は降霜する面に 680カロリーの熱を解放する。夜間の地物の温度が放射冷却で下がって いるとき、降霜が生じる場合、この熱のために地物の温度低下は鈍くなる。


Q4.4  顕熱と潜熱の区別がよくわからないのですが?

A4.4 顕は”あきらか、あらわれる”の意味であるように、顕熱が 与えられるとあきらかに温度が上がる。潜は”ひそむ”の意味であるように 潜熱は潜んでいる熱で、これが与えられたからといって、温度が上がるわけでは ない。水蒸気が移動していることを潜熱が運ばれているという呼び名である と考えてください。

そのため、「顕熱輸送」「水蒸気輸送」というほうが正しくて、混乱しない のです。この場合、熱の単位カロリー(またはワット)と水蒸気量の単位 グラム(またはキログラム)で呼ぶことになり、困らないのです。

しかし、放射や蒸発、温度上昇などを一括して熱エネルギーの流れの立場から 計算する場合、単位を揃えておかないと混乱するので、水蒸気輸送 も熱の単位(カロリーやワットやジュールのどれか)に換算して考えるわけ です。


Q4.5  潜熱と顕熱へのエネルギー配分比(ボーエン比)が気温に よって変わるという原理がよくわからないのですが?

A4.5 気象現象では、熱や水蒸気が移動したり、相(固体、液体、気体) 変化したり、放射があったりします。諸現象は熱移動を伴ったり、熱エネルギー が元で生じています。地表面に太陽熱や大気放射が注がれ、温度が上昇・下降 し、蒸発・凝結の現象が生じています。

地面や植生からどれだけの蒸発量があり湿ってくるか、あるいは、それらから 大気はどれだけの熱をもらって温まるかを考えたり計算したりする場合、 エネルギーの流れの原理(エネルギーの配分原理)を知っていると、 現象の理解や応用に役立ちます。

「ボーエン比の気温依存性」の原理は熱収支の節で説明してきたように、 地面(地物や一般の物体、人体でも同じ)に熱エネルギーが与えられたとき、 エネルギー保存の法則により、そのエネルギーは何らかの他のエネルギーに 変換されて他所(大気中や地中)へ流れ出て行かねばなりません。

大気中に向かって風で運ばれて出て行くエネルギーは顕熱や潜熱である。 顕熱と潜熱(蒸発に費やされる熱)は1対1になるわけではなくて、その ときの気温に大きく依存し、高温時は大部分が潜熱に変換され、低温時は 大部分が顕熱に変換される。潜熱に変換されるということは、大気の湿度は 多くなることであり、顕熱が与えられれば直接的に大気の温度が上昇する ことになる。

「ボーエン比の気温依存性」がなぜできるか? それは、空気が含むうる 水蒸気量(飽和水蒸気量)は、気温とともに級数的に大きくなることから でてきた関係です。

5.降水量、蒸発量、蒸散量、緑化に関するQ&A

Q5.1 森林での蒸発散量(蒸発量と葉面の気孔からの蒸散量の和)はどれ くらいありますか?


A5.1 降雨条件などによって変わってくるので、ここでは日本の 代表的な森林について目安を示す。
年間の降水量P・・・・・・・・1800mm(800~4000mm)
年間の蒸発散量E・・・・・・ 800mm(北海道500~南日本1100mm)
河川流出量(P-E)・・・・・1000mm

年間の蒸発散量のうち、日降水量5mm以上の降水日(年間50~120日間)に 濡れた樹体(葉・枝・幹)からの蒸発が30~40%を占めている。残りの60~ 70%がその他の日(年間240~310日間:晴天日、曇天日、微雨日)に気孔から 蒸散する分である。

うっそうとした森林では、日降水量がおおよそ5mm未満だと、雨滴は葉など 樹体をぬらすだけで、地中には浸透せず、大部分の水は樹体表面から蒸発し 水蒸気となって上空へ運ばれてしまう。これを”速い水循環”と呼ぶことに している。

森林は葉面積が多く(標準的な森林の葉面積指数=6程度、下記の注1参照)、 降雨日に樹体は濡れる。樹体が支えきれない余分の水は地中へ浸透する。 浸透した水は根から吸い上げられて、気孔を通じて蒸散する。これを”遅い水 循環”の過程と呼ぶ。

降雨日の樹体からの蒸発が多くなる。年間の蒸発散量は内陸の湖沼からの 蒸発量よりも多くなる。

年間を通じて凍結する日数が少ない南日本の年間蒸発量または蒸発散量の目安は、
森林・・・・・・850mm
水面・・・・・・700mm
芝地・・・・・・500mm

注1:葉面積指数
葉の総面積が単位地表面積に占める割合をいう。葉面積指数=1は、すべての 葉を地面に広げたとき、地面をぴったりと重複なく被いつくす場合である。 日本の標準的な森林では、葉面積指数は6ほどあるので、地面を6層になって 被うことになる。葉面積指数の例を下に示す。
  
          葉面積指数   状  態
           6             日本の標準的な森林
           0.6           草丈が20cmほどに伸びた水田のイネ
           7             十分に生長した水田のイネ
           0.35          シベリヤ永久凍土地のタイガ林(夏)*
           1.5           シベリヤ永久凍土地の草地(夏)*
     * 「研究の指針」の「6.気象学夏の学校(2004年)」の表6.3を参照

注2: 気候と植生
仮に毎日5mmの降雨が降るとすれば、年間雨量は約1800mmで日本の 平均的な年間降水量に相当します。うっそうとした森林では、毎日平均 5mmほどの蒸発が樹体表面で生じ、地中に浸透する水分はほとんどゼロと なり、根から吸い上げる水が無く、樹木は生存することができません。
ところが時々集中的に雨が降れば、その日は樹体に保持できない余分の 水が地中に染み込むことができるので森林は育ちます。こうした 気候条件(降水量、雨の降り方、集中豪雨もある)によって、植生の分布が 決まってくるわけです。植生はその地域の気候を反映することになります。


Q5.2 森林の蒸発散量を知る方法として、水蒸気量の変動を測る方法が あると聞いたことがありますが、その原理は?


A5.2 はい、そのような方法も、他の方法もあります。おもな 方法の原理は次の通りです。
(1)水蒸気量の時間的変動に基づく方向:
蒸発散(蒸散と蒸発)は地面や葉面などから蒸発・蒸散した水蒸気が上空へ 運ばれる現象のことです。上空への運ばれ方は、風の乱れ(強弱、上下流) による。湿った空気が上空へ、乾いた空気が下層へ動く結果として、差引き 水蒸気が上空へ運ばれたことになる。したがって、湿度と鉛直流(上向き・ 下向き)を瞬間ごと1秒ごとに測る器械で蒸発散量を観測することができます。

(2)降水量と流出量の差から求める方法:
流域単位で考える場合、流域(尾根で取り囲まれたような流域)の 最下端に堰を作り、そこで連続して流量を測る方法があります。
(流量の総量+地中水分量の変化)=(降水量-蒸発散量)
の関係が成り立ちます。1年間以上の長期間を想定すると、地中水分量の 変化は他の量に比べて無視できるほどに小さくなるので、蒸発散量を知る ことができます。
この方式に、モデルを組み込むなど工夫を加えると1ヶ月単位、1週間単位、 あるいは1日単位の蒸発散量を知ることも可能になってきます。

(3)熱エネルギーの収支に基づく方法:
蒸発散は、熱エネルギーをもらって液体水から気体の水(水蒸気)に変化 することなので、放射量(熱エネルギー)などを観測して蒸発散量を知る 方法もあります。

(4)大気中の水蒸気量の鉛直勾配に基づく方法:
水蒸気は水蒸気量の多いほうから少ないほうへ流れます。それゆえ、水蒸気量 の鉛直分布や風速の鉛直分布を観測して蒸発散量を求める方法もあります。 この場合、あらかじめ実験的に係数を求めておけば、この方法を簡易化した 方法でも蒸発散量を知ることも可能です。


Q5.3 緑(植栽)によって住環境をよくするには? 家では緑化して夏 の日差しを遮り涼しくするなど工夫していますが注意すべきことは?(I)


A5.3 夏の暑さをしのぐには、日差しを遮り、また緑化により 蒸散を盛んにし太陽熱を蒸散の潜熱に変えることで周辺の気温上昇を抑える ことを皆さん実行していますね。

この際、注意すべきは、自分の家を緑化により涼しくする場合、風通りを 悪化させて隣近所に迷惑かけないようにする心がけが大切です。風と 温度は密接に関係しており、風通りが悪化すると気温は上昇します。

最近、川べりの見晴らしのよいところに高層マンションが立ち並ぶ風景を 見かけます。海からの涼しい風は摩擦の少ない川に沿って吹いてくるのですが、 それ以前に建てられていた平屋や2階建て住宅に吹き込んでいた風が高層マンション群 によって遮蔽されることになります。

川のある都市全体を快適にするには個人の力だけではどうすることもできません。 市役所など行政の指導によって、居住空間がよい配置になっていれば よいのです。それには市役所などに務める職員が高い教養・知識をもち、 自然についての深い理解力が必要です。

参考書

近藤純正、1987:身近な気象の科学.東京大学出版会、pp.189.

近藤純正(編著)、1994:水環境の気象学.朝倉書店、pp.350.

近藤純正、2000:地表面に近い大気の科学.東京大学出版会、pp.324.

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