L06 感想文 「黒球温度の風速に対する敏感度は小さい」
(KM)
2006年4月26日
実はこの話題「新雪の日が暖かく感じる」
について、私も大変興味を持っておりました.
自分自身も雪国で雪(新雪)がある時の方が暖かく感じることを思い出したから
です.
実際の計算で風速による敏感度が意外に小さいことに驚きました.
というのは日射の役割の他,降雪後に日が照って外に出るとき風が弱い穏やか
な条件のとき(風が吹いていれば降雪がなくとも地吹雪になりますからね)が
多くなるので,この風速の小ささが体感気温として重要なのかな?と予想して
いたからです。
昔,日本気象学会誌「天気」に「札幌の冬のほうが仙台の
冬より体感的に暖かい」という文章をどなたかが書いていたときは,冬場の
平均風速が一番違うことを指摘していたと思います.
[編者のメモ]
お気づきの通り、黒球温度は風速に対してそれほど敏感ではないですね。
「研究の指針」の「17. 暑熱環境と
黒球温度」の式(5)、すなわち近似の理論式で考えると、
黒球の温度上昇は有効入力放射量に比例するとともに、
分母に表現されている(定数項+風速の関数)に逆比例しますね。
風速が大(レイノルズ数が大)の条件では、定数項と自然対流の影響が
無視できて、結果として風速の平方根に逆比例することなりますね。
式(5)の分母には複雑なヌッセル数が入っており難しくなっています。
より見やすい形式は「水環境の気象学」p.135の式(6.33)、あるいは
「地表面に近い大気の科学」p.145の式(5.17)(5.22)にあり、分母の
定数項は4σT3です。この定数項は熱収支の解法ではいつも
出てくるパラメータなので、「水環境の気象学」p.131の表6.2にも掲載した
のです。これが微風時に重要になってきます。