K38.気温の日だまり効果の補正(1)


著者:近藤 純正
地球温暖化量の正しい値は、都市化や日だまり効果を含まない気温の長期的な 変化量である。この章では、周辺の田舎観測所のデータとの比較から得た 日だまり効果の補正を示す。(完成:2008年3月9日)


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  目次
	38.1 はじめに
	38.2 日だまり効果の補正
		多度津、津山、伏木、境、勝浦、日光、深浦
	38.3 庁舎移転に伴う補正
		浦河、屋久島
	38.3 関東大震災に伴う横浜の補正
	まとめ


38.1 はじめに

風速や気温など気象観測値には、観測所の周辺環境の変化が敏感に反映される。 そのため、より正しい地球温暖化量を見積もるには、観測所のごく近くの10m ~数100mの範囲に樹木が繁茂していないか、大きな建築物ができていないか等 の環境変化を知り、それらによる気象要素に及ぼす補正を施さなければなら ない。

注: 建物等が存在しても長期間にわたり一定であれば気候変化の観測に差し 支えない。建物等の位置や大きさが変化し、観測露場の風通しが変化すること で気温が変わることが問題である。これを日だまり効果という。現実には、 周辺の道路が広く舗装されるなど都市化の影響を含むこともある。

これまで各地を見てきた経験から、次の方針で日だまり効果の補正を行う。
(1)年平均気温の精度として、±0.05~0.1℃程度で評価する。ただし、 1800年代~1950年ころまでの期間、露場の周辺環境の情報が不足する場合、 補正した結果の精度が0.1℃より悪い場合もありうるが、数地点の結果を平均 したときの精度は0.05℃程度である。
(2)年平均風速に変化が生じた期間に注目する。ただし、風速の観測高度は 10~20m(おもに旧測候所)あり、比較的広い範囲の環境変化を表すのに 対し、気温の観測高度は1~2mと低いために、風速変化の期間と日だまり効果 が変化する期間は厳密には一致しない。
(3)気温センサーが設置されている露場の風を弱めるように障害物 (樹木や建物など)ができた場合、日だまり効果は大きくなり年平均気温が 上昇する。逆に、建物が解体されたような場合には、年平均気温は低下する。 現地における聞き取り調査により、昔からの周辺環境の変化を考慮して日だまり 効果(正確には日だまり効果の変化)が生じた期間を推測する。

この章では、近傍に適当な基準となる観測所が存在する場合について、 日だまり効果を補正する。

この際、観測法の変更と社会情勢の変化がほぼ同じ時期に生じており、 補正は簡単ではない。 つまり、観測の面では、区内観測所の時代からアメダスに 切り替わったのが1970年代後半であり、アメダスでは1982年ころまでトラブル が多く観測精度が多少劣る。区内観測所時代には毎日の最高・最低気温の 日界(1日の区切り)として9時を用いる時代が長かったのだが、アメダスの 時代になってから日界は24時となる。また、気温は百葉箱内で観測されて きたが、1970年代後半以後には百葉箱外で通風式電気抵抗温度計が用い られるようになった。

社会情勢の面では、日本のほとんどの観測所周辺では、1950年以後とくに 1960年~1980年の経済高度成長期に都市化が進んだり、燃料革命により薪炭 生産が衰退し里山の樹木の伐採が行われなくなった所もある (例:伊豆の石廊崎)。

観測法の変更のうち、日界の変更による最高・最低気温の平均値に対する 補正と、百葉箱内での観測から百葉箱外通風筒への変更に伴う補正は 「K23.観測法変更による気温の不連続」に、 また1日数回観測の平均値と24回観測の平均値の差は 「K20.1日数回観測の平均と平均気温」に、 最高・最低気温平均と平均気温の差については 「K19.最高・最低気温平均と平均気温」に 掲載してある。

近傍観測所との比較から日だまり効果による気温上昇の補正を見積もるのだが、 上述の事情により、補正値は必ずしも正確には求められない。

そこで、日だまり効果がゼロの寿都、浦河、宮古、室戸岬、屋久島と微小な 深浦の6地点と、本章で補正を行う6地点(津山、多度津、伏木、境、 勝浦、日光)の合計12地点平均の年平均気温(日だまり効果補正済み、 A群12地点と呼ぶ)と日だまり効果を補正していない各地点の気温を 比較することによって、近傍観測所との比較から求めた日だまり効果を チェックする。

38.2 日だまり効果の補正

(1)多度津(香川県瀬戸内海沿岸)
旧多度津測候所(現在は無人の特別地域気象観測所)では1965~1982年に かけて、北側の海水浴場が埋め立てられ住宅地となった。この事業にとも なって、年ごとに年平均風速が単調に減少した。この風速減少期とほぼ 一致するように年平均気温が周辺の田舎の観測所に比べて上昇した。このこと は、すでに「K14.温暖化問題(専門向け講演)」の 図19~20に示したが、その図では観測法の変更に伴う補正は施していなかった。 今回は時代による観測回数の変更、最高最低気温を測る日界の変更、百葉箱内 から外部通風筒への変更に伴う補正を施してある。

図38.1(a)は多度津と滝宮の気温差の経年変化である、ただし、滝宮では 周囲の樹木が繁茂し周辺環境が悪化してきたので、1993年以後は 財田のデータと接続してある。

多度津日だまり
図38.1(a) 多度津の日だまり効果の図、多度津と滝宮の年平均気温の差の 経年変化。プロットは毎年の値、青線は5年移動平均、赤線は長期的な傾向 を表す。気温差が急激に増加する時代は、多度津の年平均風速が単調に 減少している。

図より、多度津の日だまり効果(実際には都市化の影響も含む)は0.68℃と みなすことができる。

このようにして日だまり効果が評価され、それに基づいて気温上昇を補正した 観測所12地点(A群12地点)の平均気温が後ほど揃うことになる。 さらに次の章「気温の日だまり効果の補正(2)」 では14地点の結果がもとまることになり、あわせて26地点(AB26地点 と呼ぶ)が揃うことになる。これらA群12地点、AB26地点はいずれも日本全域の 平均値を代表できるので、これらとの気温差から図38.1(a) で求めた日だまり効果を後でチェックすることができる。

図38.1(b)はそのチェックであり、日だまり効果は上図では0.55℃、 下図では0.55℃となる。これらを参考にして、最終的な多度津の日だまり 効果による昇温は0.6℃を用いることになる。

多度津日だまり2
図38.1(b) 多度津の日だまり効果の図、上:A群12地点との差、下: AB26地点との差。

(2)津山(岡山県内陸)
津山についての予備解析は、すでに「K35. 基準5地点 の温暖化量と都市昇温(2)」の図35.6に示したが、比較すべきアメダス を厳選した結果を図28.2(a)に示した。この図から、日だまり効果による 津山の昇温は0.4℃と見積もることができる。

この日だまり効果は津山の主風向(西~北西)の風上に桜並木が生長し、 ほぼ風速計高度の高さまで伸びたことによるものである。「写真の記録」の 「66. 岡山県の津山測候所」を参照 のこと。

津山日だまり
図38.2(a) 津山の日だまり効果の図、津山と周辺6アメダスの年平均気温 の差の経年変化。

これをチェックした図28.2(b)では、10地点との比較では日だまり効果は 0.3℃となる。

津山日だまり2
図38.2(b) 津山の日だまり効果の図、津山と周辺10観測所平均(室戸岬、 屋久島、多度津、伏木、境、清水、潮岬、彦根、平戸、浜田)の気温差の 経年変化。

さらにA群12地点との比較、およびAB26地点との比較では、津山の日だまり効果 は0.34℃となる。以上の結果から、最終的な値として0.35℃を用いることに なる。

(3)伏木(富山県沿岸)
伏木の日だまり効果は砺波との比較から評価し、図38.3(a)に示した。

伏木日だまり
図38.3(a) 伏木の日だまり効果の図、伏木と砺波の年平均気温 の差の経年変化。

図では30年程度の周期的変動がみられ、日だまり効果の値が正確でないように 思う。そこで、図38.2(b)によってチェックした。この結果、図(a)と(b)の 間で矛盾していないことが確認できる。

伏木日だまり2
図38.3(b) 伏木の日だまり効果の図、上:伏木とA群12地点の年平均気温 の差、下:伏木とAB26地点の年平均気温の差。

(4)境(鳥取県沿岸)
図38.4(a)は境の日だまり効果を評価するための図であるが、伏木と同様に 1960年代の変動が大きいので、図38.4(b)によってチェックした。いずれも 大きな矛盾はないことがわかる。

境日だまり
図38.4(a) 境の日だまり効果の図、境と塩津の年平均気温 の差の経年変化。

境日だまり2
図38.4(b) 境の日だまり効果の図、上:境とA群12地点の年平均気温 の差、下:境とAB26地点の年平均気温の差。

(5)勝浦(房総半島南部沿岸)
勝浦についての予備解析の一部は「写真の記録」の 「65. 千葉県の勝浦測候所」の 図65.1と65.9に示した。ここでは年平均風速の経年変化を参照すれば、 1960~75年頃に日だまり効果が生じたと考えられる。

図38.5(a)はごく近傍にある東京大学千葉演習林(清澄)の最高最低気温の 平均値との比較から勝浦の日だまり効果(0.2℃)を見積もった図である。

なお、図示した期間の前の1967年には移転があり(移転の記事が不明であるが、 気温が不連続になっている)、また、後の1988年には観測場所の移転 があったので1947~1987年についてのみの比較である。詳細は、 「68. 東大千葉演習林、清澄」 を参照のこと。

勝浦日だまり
図38.5(a) 勝浦の日だまり効果の図、勝浦と清澄の年平均気温 の差の経年変化。

勝浦測候所では、1996年7月31日に新宿舎が落成しており、また2001年4月1日 からウインドプロファイラが設置されて、露場の周辺環境が変化した。それに ともなって、年平均気温に変化がなかったかどうかを図38.5(b)によって 見ることにした。プロットのばらつきは大きいが(±0.1℃)、1997年に0.2℃ 程度(=1.04-0.82℃)の下降、2002年に0.1℃程度(=0.82-0.96℃) の上昇があるように見える。

環境変化があったことは明確であるので、気温の下降・上昇量は不正確だが、 一応これらの値の補正は行う。

このことは「写真の記録」の 「65. 千葉県の勝浦測候所」の 図65.9にも示した。

勝浦日だまり2
図38.5(b) 勝浦の新宿舎建築とウインドプロファイラー設置にともなう 年平均気温の不連続、勝浦と周辺9観測所(銚子、鎌田、鹿嶋、龍ヶ崎、 横芝光、茂原、坂畑、館山、鴨川)の気温差。

次の図38.5(c)は日だまり効果のチェックの図であり、図38.5(a)と矛盾して いないことがわかる。

なお、この図では、1890年代~1910年代に気温差に大きな変動があるのは、 勝浦測候所開設(1906年)以前について、銚子と東京のデータを接続してあり、 銚子の広い風向範囲が海に囲まれ、海水温度の影響を受けたことによる と見なされる(「写真の記録」の「65.千 葉県の勝浦測候所」を参照のこと)。本研究では、銚子を気候変動観測所 から除外したのは、このことにある。

勝浦日だまり3
図38.5(c) 勝浦の日だまり効果の図、上:勝浦とA群12地点の年平均気温 の差、下:勝浦とAB26地点の年平均気温の差。

(6)日光(栃木県中禅寺湖の近く)
「写真の記録」の「75. 日光と宇都宮の観測所」 で示したように、日光では戦後、少しずつ観光化が進み風速の減少と 若干の日だまり効果をもつようになった。

日光では1943年10月1日から気象観測が行われるようになった。それ以前に ついては、次の順序で宇都宮と接続する。
(1)~1899年以前:福島、長野、東京、石巻、新潟の平均気温と接続。
(2)宇都宮では1934/35の移転にともない不連続(0.18℃の下降)を補正。
(3)~1943年以前は宇都宮と接続させる。
(4)1950~1999年(48年間)、風速の単調な減少にともない日だまり効果 が増加した。図38.6(a)を参考にして0.43℃の上昇(=0.009℃/y×48年)を 推算した。
(5)1999年の庁舎・宿舎の解体にともない(露場の移転も含む)、 風通りがよくなり0.11℃の気温下降がある。

風速の時代変遷については、 「75. 日光と宇都宮の観測所」の図75.2に示してある。

日光日だまり
図38.6(a) 日光の日だまり効果の図、日光と周辺4観測所平均(那須、烏山、 真岡、今市)の気温差の経年変化。

以上のようにして見積もった気温上昇(1950~1999年に0.43℃)と気温下降 (2000年に0.11℃)のチェックを図38.6(b)に示し、矛盾していないことが わかる。

日光日だまり2
図38.6(b) 日光の日だまり効果の図、日光とA群12地点の年平均気温 の差。

(7)深浦(青森県日本海沿岸)
深浦では年平均風速が1970~2000年にかけて34%も減少している (「64. 青森県の深浦測候所」の図64.1 を参照)。

そのため、日だまり効果が大きいのではないかと考え、近傍にアメダスデータ のある1980~2006年について7アメダスと比較したところ、0.1℃以上の 明らかな日だまり効果は認められない。そのことは 「K35. 基準5地点の温暖化量と都市昇温(2)」の図35.5(d)に示した 通りである。

現地における聞き取り調査によれば、測候所開設当時(1940年)から終戦後 の頃にかけて、測候所の南側に江戸時代からあった松並木の根元には笹が 生えていたが、現在のように繁茂していなく(多分手入れされていたのだろう)、 南方の深浦港と海岸線が見通せたという。現在は笹が3mほどに伸び、 まったく見ることはできない。「写真の記録」の 「64. 青森県の深浦測候所」に掲げた 現地の写真を参照のこと。

風速の減少は松が風速計高度以上の高さまで伸びたことが原因である。しかし、 昔からあった松の梢の成長は露場面付近の風速に大きな影響はなく、 1970年以後には日だまり効果に変化が生じなかったと解釈される。いっぽう、 笹の繁茂は終戦後の1950年以後と推定されるので、日だまり効果が生じる のは1950~1980年の間と推論する。

次の図38.7は深浦とAB26地点の年平均気温の差である。1945~1970年の期間 の変動が大きくて確実ではないが、0.06℃程度の小さい日だまり効果が あるように見える。

深浦日だまり
図38.7 深浦の日だまり効果の図、深浦とAB26地点の年平均気温の差。

以上、7地点について日だまり効果を評価した。評価誤差は 0.05~0.1℃程度と見積もることができよう。

日だまり効果の評価は予備解析、第1次解析、第2次解析、と数回繰り返す ことで最終的な結果を得ることができた。この節では、見やすくする都合上、 近傍観測所から評価した日だまり効果と、A群12地点、AB26地点との比較を 並べて示した。

38.3 庁舎移転に伴う補正

浦河(北海道中部太平洋沿岸)
浦河では1996年2月1日に庁舎の新築移転があったので、これに伴う気温の 不連続を見積もってみよう。

次の図38.8は浦河と周辺の6アメダスの気温差の経年変化である。プロット のばらつきが大きく、確実ではないが0.11℃の気温上昇が認められる。

浦河庁舎移転
図38.8 浦河の庁舎移転にともなう気温の不連続の図、浦河と周辺6アメダス 平均(えりも岬、中杵臼、三石、静内、新和、日高門別)の年平均気温の差。

屋久島(鹿児島県の南方)
屋久島測候所は1975年4月1日に、島の北端から東側の空港に移転している。 図38.9(a)に示したように、この移転にとまなう気温の不連続は認められない。

屋久島移転
図38.9(a) 屋久島の観測所移転にともなう気温の不連続の図、屋久島と周辺3 観測所平均(鹿児島、宮崎、枕崎)の年平均気温の差。気温差が時代とともに 小さくなっているのは、3地点(鹿児島、宮崎、枕崎)が屋久島に比べて 都市化によって昇温しているためである。

屋久島測候所の開設は1937年10月28日なので、それ以前は宮崎と接続させる。 そこで、1937年以前の宮崎に不連続がないかどうかを調べたのが図38.9(b) である。宮崎は1906年12月26日に新築移転しており、図に示すように年平均 気温は0.28℃の下降がある。これは補正する。

注:
補正はいずれの場合でも、最近のデータがそのまま利用できるように、最近 の値を基準にして補正する。

宮崎移転
図38.9(b) 宮崎の移転(1906年12月)にともなう気温の不連続の図、宮崎と 周辺3観測所平均(鹿児島、松山、高知)の年平均気温の差。

38.4 関東大震災に伴う横浜の補正

横浜はバックグラウンド温暖化量の評価に用いる観測所ではないが、 この章では、いろいろな場合について日だまり効果の大きさを知ることが 目的の一つである。多くの場合、露場の風速の減少にともなって日だまり効果 が生じ、年平均気温が上昇する。しかし、火災で周辺が焼失したような場合は逆で、 風通りがよくなり年平均気温は下降する。この例が横浜で見られる。

1923年9月1日に関東大震災で横浜や東京は大火災にみまわれた。とくに 横浜は震災前、露場が狭い場所で観測されており、火災後周辺の 風通りがよくなり日だまり効果が一気に減少した。なお東京では、露場は 現在の気象庁の場所よりお濠に近い広い場所にあり、もともと風通りが よかったので、神田方面が焼失しても露場の日だまり効果には大きな影響は 及ばなかったと考えられる。

「写真の記録」の「39. 関東大震災と横浜 の気温」に掲載したように、この火災で横浜の市街域の大半が焼失した。

横浜測候所(現・横浜地方気象台の前身)の位置は、
1897~1922年:現在の大桟橋埠頭のつけ元(標高2.9m)
1924~1927年:焼失前の位置から南東方向、仮庁舎・露場(東波止場)
1927年11月1日~:現在地の山手町99番地(標高39m、港の見える丘公園)

図38.10の上図は横浜と東京、横浜と熊谷の気温差であり、日だまり効果は 東京との比較から0.48℃の低下、熊谷との比較から0.32℃の低下と見積もる ことができる。平均して0.4℃の低下である。

横浜1923年
図38.10 関東大震災(1923年9月1日)による周辺の焼失による気温の不連続 の図、上:横浜と東京の差、および横浜と熊谷の差、下:横浜とA群12地点の 気温差、いずれも観測法の変更による補正前の生データによる。

この低下量を後で求められたA群12地点との比較(下図)によれば、0.43℃ (=2.23-1.79℃)であり、ほぼ一致する。

観測所が海岸から丘の上へ移転したことによる不連続は、1928~1939年の A群12地点との比較(下図)から0.11℃(=1.79-1.68℃)と見積もることが できる。将来別章で評価する横浜の都市昇温は、震災によって生じた、 この補正をほどこした気温について評価する。

まとめ

気候変動の実態を知るために、日だまり効果による気温上昇を近傍の 観測所における気温観測データと比較する方法で見積もった。このように して見積もった日だまり効果を地点ごとに補正し、12地点平均(A群12地点) の気温経年変化を求めた。

12地点のうち6地点(寿都、浦河、宮古、深浦、室戸岬、屋久島)は日だまり 効果による昇温はゼロまたは0.1℃以下(深浦)と判断される。

12地点平均の気温と比較する方法でも各地点の日だまり効果の見積りをチェック したところ、0.05℃程度(0.1℃以内)の違いで一致した。さらに、次章で求める 26地点平均(AB26地点)の気温と比較しても日だまり効果の見積値は0.05℃ 程度の違いで一致した。

このことから、日本全域を代表する10地点以上の基準観測所データ (バックグラウンド温暖化量を表すデータ)の平均値を用いるならば、 各地の日だまり効果を0.05℃ないし0.1℃程度の精度で見積もることが できそうである。ただし、日だまり効果は周辺環境の変化によって生じる ものなので、短周期変動を除外できる10~20年間以上の期間について、 年平均気温の比較から評価すべきである。

次章の「K39. 気温の日だまり効果の補正(2)」 ではこの方法も利用して、延べ26地点の日だまり効果を評価する。

ここでは、観測法の変更による年平均気温の補正を行っているのだが、その 補正は0.1~0.5℃程度である。この0.1~0.5℃を補正するか否かによる違いは 大きく、バックグラウンド温暖化量の結果に100%程度の影響を及ぼす。 つまり、未補正の生データを羅列した温暖化量と、ちゃんと補正して得られる 温暖化量は2倍ほども異なる。さらに、補正したデータからは10~30年程度の 周期的変動や地域的特徴など興味ある現象も見えてくる。

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