91. 平塚沖観測施設見学(計画)

著者:近藤 純正

相模湾の平塚沖に1965年に建設された海洋気象観測塔(正式名称:平塚沖 波浪等観測塔)は、これまで40年余にわたり気象・海象の実験・観測研究 を続けてきた。今回、2009年7月18日(土)、この観測塔と陸上施設の見学会 を行なうことになった。 同日午後には講演会と懇親会が開催される。その案内は付録に示した。
(完成:2009年6月26日)

見学会の結果は「写真の記録」の次の章 「92.平塚沖観測施設の見学」に示されている。

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2009年06月21日:粗筋の作成
2009年06月23日:最後の節「4.見学会の実施状況」を残し、ほぼ完成
2009年06月26日:付録の「講演会と懇親会」を加筆

  	  もくじ
		1.平塚沖観測塔の概要
		2.見学会のタイムスケジュール(2009年7月18日午前))
		3.道案内
		 (1)道程と所要時間
		 (2)写真による案内(平塚駅南口から平塚新港まで)
		 (3)写真による案内(平塚新港から陸上施設まで)
		4.見学会の実施状況
		参考資料

		付録
		    講演会と懇親会(2009年7月18日午後)
		  新企画1
		  新企画2

1.平塚沖観測塔の概要

防災科学技術研究所の所属であった「波浪等観測塔」は、死者・不明約 5,000名の被害を出した1959年の伊勢湾台風を契機として、相模湾平塚沖に 1964年から建設され1965年8月に世界有数の施設として完成した。 塔は海岸から1km余、水深約20mの場所にあり、海面上の高さは20m余 ある。塔の基礎となる支柱は海底下20mほどまで打ち込まれている。 陸上施設から観測塔までは6,600Vの高圧電力とデータ通信回線35対の 複合海底ケーブルが設置されている。直径7mの観測室内には空冷5馬力の 空調機で温度が一定に保たれている。重量機器の搬入などのためにクレーン 付き荷揚用電動ウインチ、気象・海象観測用の電動ウインチが備え付けられ ている。観測塔本体の維持管理は、観測塔を支える海中部の鋼管に直流電流 を流し、腐食を防ぐための電気防食装置がある。海上部分は毎年のように 塗装工事を行ってきた。そのため、本体は特に損傷は認められない。

こうして40余年余にわたり、観測塔は台風による波高8mの大波と暴風にも 耐え、様々な実験・観測研究に利用されてきた。古くは1974~75年の AMTEX(東シナ海における冬季の気団変質実験研究、国際協力研究)の 準備研究として1967~73年の頃、海面近くの大気と水中における輸送過程 など大気と海洋の相互作用の研究が行われた。

その後、3次元超音波風速計による海上風の乱流構造の研究、電磁流速計・ 水圧式波高計・超音波波高計・電気容量式波高計、ブイ式波浪計などによる 海象の研究、マイクロ波散乱計による海上風の広域分布の研究が行われた。 マイクロ波散乱計は陸上施設内敷地にある高さ20mの建物(マイクロ波収納塔) の屋上に設置し、また観測塔や航空機にも搭載された。

無人の観測塔では、陸上施設からの遠隔操作によって観測が行なわれた。 観測塔への通船として観測艇「さがみ」が利用された。観測塔では泊り込み の実験・観測も行なわれた。陸上施設は定員8名によって構成されていた。 現在は定常的には、波浪(超音波波高計)、風向風速(風車形風向風速計)、 潮流(電磁流速計)、水温(測温抵抗温度計)、波浪と海面状況(ライブ カメラ)が自動観測されている。

また、陸上には相模湾海底地震観測施設もある。ここから相模湾に向かって 全長120kmにおよぶケーブルによって海底地震計が約20kmの間隔で合計 6個所に配置されている。この陸上施設で中継されたデータは、つくばの 防災科学技術研究所に送信されている。関東大震災(1923年、M7.9、死者行方不明者10万余) をもたらしたような相模湾を震源とする地震は、リアルタイムで本震の 地震動が陸地に到達する前に検知することができる。

2.見学会のタイムスケジュール

集合時刻と場所:2009年7月18日(土)9時、平塚新港の浮き桟橋の向かって左方の「遊漁船専用桟橋」
釣り船「庄治郎丸」の出港9:30~帰港10:40(乗船が終わりしだい出港)
陸上施設(虹が浜9-2)の見学:11:00~12:00

(参考1)JR平塚駅南口~平塚新港間、平塚新港~陸上施設間は自家用車による送迎もある。
(参考2)出航は波浪の状況により船長の判断で決まる。北風では長い波長の 波は立たないので、やや強風でも出航できる。雨天でも出航できる。
(参考3)13:30~15:30は「八幡山の洋館」 (平塚市浅間町1-1)にて講演会 「温暖化の監視が危うい」が開催される。この講演での主張は、①正しい 観測こそが重要である。②観測資料には種々の誤差(情報)が含まれ ており、資料解析は慎重に行うこと。③最近の気象・気候観測所の 環境が悪化しており、住民の理解と協力が必要となってきたこと。

詳細は参加申込者に別途通知する。午前中の見学会参加者は、 6月18日現在で定員となり、締め切りとなった。

3.道案内

これは、港の近くまではバスを利用し、それ以後は徒歩によって相模川河口、 平塚新港、湘南海岸の風景も楽しむ参加者のための道案内である (ほかに、自家用車による送迎もある)。

(1)道程と所要時間
交通の案内(JR東海道線~平塚駅南口~平塚新港)
①JR東海道線下りにて(後方の10~15号車に乗り、平塚で下車、東口改札を出て、南口の階段を降りる)
 東京6:53~横浜7:19~平塚7:52着
 東京7:02~横浜7:27~平塚8:01着
 東京7:15~横浜7:44~平塚8:19着
 東京7:24~横浜7:52~平塚8:29着
 東京7:33~横浜8:00~平塚8:35着
 東京7:40~横浜8:08~平塚8:42着
 新宿7:36~(湘南新宿ライン)~平塚8:51着
②神奈川中央交通バス
平塚駅南口のバス乗場20番(海に向って左端)から「須賀港」行きに乗車。
8:05、8:15、8:25、8:35の約10分間隔で発車、
約6分で終点の「須賀港」で下車(公衆トイレあり)。

③相模川の右岸堤防に沿って海の方へ歩き、湘南大橋の下を通過すると 右手に釣宿「庄治郎丸」「庄三郎丸」などが並んでいる(ここまで歩いて 約5分)。
さらに釣宿のすぐ前の道路を海に向って100m歩き右折したところに車止めの 鎖(一般車進入禁止)がある。西方に200m歩き三叉路で左折し、南方に 見える新港入り口のガード下をくぐれば新港に入る。新港の左手(東側)に 「遊漁船専用桟橋」ー浮き桟橋ーが5基見える。注意として、右手(西側) に見えるのは「プレジャーボート専用桟橋」である。 (平塚駅南口から、バス6分+徒歩10分=16分)。

④乗船前に乗船者名簿に氏名・住所・電話番号・性別・年齢を記入、救命胴衣 を着衣。浮き桟橋から釣り船「庄治郎丸」(約30人乗り)が9:30までに出港する。
⑤平塚海岸の沖約1.2kmにある観測塔を右回り・左回り数回行い説明を聞き ながら見学(説明は防災科研OBの数名)。
⑥当日の波浪等の関係によるが、余裕があれば、茅ヶ崎沖の「えぼし岩」 の近くまで遊覧することもある。

⑦帰港後、陸上施設までは自家用車によって送迎される。
一方、湘南海岸の風景を楽しみたい方は、陸上施設まで約30分で歩いて行く こともできる。その場合は、平塚新港の入り口ガード下をくぐり 北に100m進み、三叉路(ビーチセンターまで790mの道標あり)で左折、 ビーチセンターを通り過ぎてから右折、松林を通り国道(湘南バイパス134号 線)に架かる「高浜台歩道橋」を渡る。湘南バイパスの陸側歩道を西に向かい、 信号「扇の松入口」、信号「袖が浜」、歩道橋「八軒通入口」を経て、 信号「虹ケ浜」の手前200mで右折する。北へ100m歩くと左手に陸上施設が ある(平塚新港~陸上施設は歩いて約30分)。

平塚新港への地図
図91.1 バス終点「須賀港」から徒歩で平塚新港への案内地図。 赤色の□:釣宿「庄治朗丸」「庄三郎丸」などが並ぶ、赤色の○:道路に 一般車進入禁止の鎖が張られている、赤色の▽:道標「ビーチセンターまで 790m」が立つ三叉路。(Googleマップに基づいて作成)

(2)写真による案内(平塚駅南口から平塚新港まで)、約16分
JR平塚駅の南口の階段を降りると、広場に一般車やタクシーが見える。 南に向って左端にバス乗り場20番がある。「須賀港行き」に乗車して、 終点「須賀港」で下車する(乗車時間は約6分)。
そのまま、相模川の右岸堤防の道路を海の方向に歩く。時間の余裕があれば、 須賀港(平塚漁港)を見ることができる。

平塚駅南口バス乗り場と終点の須賀港
図91.2 (左)平塚駅南口バス乗り場、左端が20番「須賀港行き」(バスが停車中)。
(右)終点「須賀港」(バスが停車中)、道路左手に須賀港(平塚漁港)がある。

須賀港
図91.3(a) (左)須賀港(平塚漁港)に停泊中の庄治郎丸(同じ名の5隻)、 (右)観測艇「さがみ」。

庄次郎丸
図91.3(b) 庄治郎丸の1隻、同型船に乗船する予定(釣宿「庄治郎丸」提供)

須賀港
図91.4 (左)バスの終点「須賀港」から相模川右岸の堤防道路から南を望む、 遠方に「湘南大橋」が架かっている。
(右)「湘南大橋」の橋下から南を望む、前方の右に釣宿が数軒並んでいる。 釣宿の直前の道路を海のほう(南)へ歩く。

一般車進入禁止の鎖
図91.5 (左)釣宿の前に接する道路を南に100m歩き、右折すると「一般車 進入禁止、行き止まり」の看板とともに道路に鎖が張られている。
(右)鎖を越え西向きの道路を200m歩くと、三叉路がある(三叉路の 右手に道標「ビーチセンターまで790m」がある。

平塚新港入口と浮き桟橋
図91.6 (左)三叉路で左折(南向き)すると平塚新港への入口のガードが 見え、これをくぐり平塚新港に入る。
(右)平塚新港の浮き桟橋、左手の「遊漁船専用桟橋」から釣り舟が出航する。

(3)写真による案内(平塚新港から陸上施設まで)、徒歩で約30分
釣り舟「庄治郎丸」による観測塔の見学後は、自家用車による陸上施設まで の送迎はあるが、湘南海岸の風景を楽しむ場合を次に示す。

新港入口のガードを抜け、北に約100m歩くと三叉路があり右折して西向きに、 砂浜内の遊歩道に沿って歩く。三叉路には道標「ビーチセンターまで790m」 がある。

ビューポイントとビーチセンター
図91.7 (左)平塚海岸の「ビューポイント」(新港からビーチセンター までの中間点)。
(右)ビーチセンター、進行方向左手の砂浜にはビーチバレー場がある。 沖合いには観測塔が小さく見える。

ボードウオークの西端
図91.8 (左)ビーチセンターを通り過ぎ、木製歩道「ボードウオーク」の 終端から約30m先で右折、松林をくぐって、湘南バイパスの歩道橋「高浜台 歩道橋」へ。歩道橋を渡り、湘南バイパス(134号線)の北側(陸側)歩道 を西に向って歩く。
(右)信号「扇の松入口」、信号「袖が浜」、歩道橋「八軒通入口」を経て、 信号「虹ケ浜」の手前200mで右折した場所。この写真の前方左手に陸上施設 の入口の門柱が見える。

陸上施設
図91.9 (左)陸上施設入口から西方向を見ると陸上施設がある。 左側の20mの建物が「マイクロ波散乱計収納塔」。
(右)「相模湾海底地震観測施設」(無人)を裏通りから見た写真。

参考資料

(1)AMTEX(気団変質実験・国際協力研究)と平塚沖観測塔に関して、
「5.十和田湖物語」
「M16.海面バルク法物語」
が参考になり、当時の時代背景などもわかる。

(2)防災科学技術研究所(旧称:国立防災科学センター)については、
「防災科学技術研究所 45年のあゆみ」、防災科学技術研究所研究資料、 第327号、223pp.


付録

●講演会と懇親会(2009年7月18日午後)
講演会時間:13:30~16:30
会場:「八幡山の洋館」第1会議室(正式名称:旧横浜ゴム平塚製造所記念館、平塚市浅間町1-1)
題名:温暖化の監視が危うい
講師:近藤純正(東北大学名誉教授)
内容:(1)温暖化の監視が危うい、(2)気候監視は住民の理解と協力に よらなければならなくなった現状、(3)気候変動や温暖化の原理、 (4)日本における正しい温暖化の求め方、など
主張:①正しい観測こそが重要である。②観測資料には種々の誤差(情報) が含まれており、資料解析は慎重に行うこと。③最近の気象・気候観測所の 環境が悪化しており、住民の理解と協力が必要となってきたこと。
参加申込締め切り:7月9日(定員になりしだい締め切り)

JR平塚駅から「八幡山の洋館」への経路、歩いて15分(次の地図と 「八幡山の洋館」の写真を参照)
平塚駅東口の北口(陸側)からほぼ真北、約600mに「八幡山公園」の森が 見える。それを目指して歩く。駅から3つ目の信号「宮の前」の歩道橋を渡る。 進路を西に変え、平塚八幡宮の正面鳥居の前を通り過ぎて約200m歩くと、 右手前方に「八幡山の洋館」(平屋、青屋根の明治時代の洋館の復元) が見える。洋館内へ入るには、左側(西側)へまわり、隣接した管理室 玄関から入る。

懇親会
会場:平塚駅ビル(平塚ラスカ)5階の食堂「いっさい」
時間:16:30~18:00
会費:1,800円+飲み物代
参加申込締切:2009年7月9日(定員になりしだい締め切り)

八幡山の洋館への案内地図
図91.10 平塚駅から「八幡山の洋館」への案内地図 (Googleマップに基づいて作成)。

八幡山の洋館
図91.11 「八幡山の洋館」
(左)平塚八幡宮の鳥居前を過ぎて、洋館の南東側から見た写真、
(右)西側から見た写真、写真中央の左寄りの管理室玄関から入る。


●新企画1
「平塚沖観測塔と茅ヶ崎沖の烏帽子(えぼし)岩を巡るツアー」
おもに一般市民を対象とし、参加希望者が10名程度以上あれば実行できる。 参加費3,000円(児童生徒は半額)、釣り船の規則により乗船資格は小学生 以上。

●新企画2
「平塚沖観測塔を紹介するミニ・シンポジウム」
参加希望者が10名程度あれば実行できる。防災科学研究所(略称:防災科研) OBによる研究観測で苦労したこと、おもしろかったことなどエピソードを 交えた話があり、質問に答える。一般市民・学童生徒・若い研究者などに 研究の楽しさや刺激を与えることを目的とする。

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