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目次 はじめに 44.1 温暖化の監視と住民の協力 (a) 気候観測では、なぜ高精度のデータが必要か? (b) 管理不十分になると、なぜ観測がだめになるか? (c) 樹木の成長が樹高より上の風をなぜ弱めるか? (d) 気候観測は、なぜ住民の協力が必要か? (e) 観測所の環境悪化と対応の例(飯田、宮古、津山、深浦) 44.2 地球の気候、温暖化とは? 44.3 日本のバックグラウンド温暖化量 (注意)気候統計表は複数種類あり 44.4 都市化による気温上昇(熱汚染) 要約 あとがき (1)アースデイでも訴える (2)不正確な報道もある 参考書
○地球温暖化は100年につき、わずか0.7℃程度の温度上昇である。 → そのため、温暖化など気候変動の観測では、精度の高い観測が要求 される。 ○観測所の管理を十分に行い、周辺(特に100m以内)の環境を維持しなければ ならない! |
(0.2~1℃程度の誤差がでる→下記にその原因) ○都市化など土地利用変化の影響 観測所の100m~数km範囲の環境が変わり、0.5℃以上の誤差が生じると、 地球温暖化など広域気候の観測に不適となる → →地球温暖化と区別される ”都市気候を知るに必要な観測所” となる (これは多くの都市にある気象台などの観測所) ◎日だまり効果 周辺10m~100m程度の範囲に家が建ったり樹木が成長して風通りが悪くなり、 平均気温や地温が局所的に上がることをいう。 → → ”風が弱い日は気温上昇が大きい” に類似(図44.2参照) 注1:気候観測所:田舎で、周囲100m以内の環境変化が少ない所 注2:観測方法の時代による変更によっても誤差が生じる |
(1)年平均風速が1966年に7%減少し、2001年に7%増加した。 → →風が無線塔から測風塔方向へ吹く時 ・・・・・風速は15%も弱く観測される・・・・・無線塔の影響 (2)1960年代から年平均風速はしだいに弱くなった。1970年頃は庁舎の 窓から海岸に設置した波高観測の標識が見えたが、現在は樹木が茂り海は 見えない。 → →1960年前後:6.2 m/s → →2005年前後:4.7 m/s ・・・・・風速は24%も減少・・・・・樹木の成長による影響 (3)日だまり効果により、年平均気温が0.25℃上昇した。 注:風が弱くなると、特に日中の気温上昇が大きくなる(図44.3参照)。 |
気温の上昇傾向は今後ますます大きくなることが予想される。気候の現状 把握と、将来予測のためには正しい観測が不可欠である。正しい観測値を 得るには観測所の周辺環境が保たれなければならない。 しかし、観測所の周辺環境はますます悪化し、また敷地は切り売りされており、 気候監視が危うくなっている。 ○住民の理解と協力により観測所の周辺環境を保全し、気候監視を続けて 行こう! |
日本各地を巡回してみると、雨量計に生い茂った雑草が被さっていたり、樹木 の枝が伸び気象測器の邪魔になっている所などがある。 (例)露場周辺に成長した樹木があり、それを指摘すると ○「枝切り予算がない」という(地方気象台) この現状を気象庁本庁に伝えると、「現地気象台には枝切りする程度の予算は ある」という。 ○「住民が切らせてくれない」(地方気象台)という。 筆者が住民に気象・気候観測の重要性を説明すると、住民は理解して くれる。 ●気象庁職員の多くは、気候研究・観測が仕事と思っていない(アンケート 調査による)。さらに、観測の基本が分かる専門家がほとんどいない。 そのためデータ異常に気づかず、気づいたとしても、その原因が何による のか検討する者はほとんどいない。 ○国民は気象・気候の実態を知りたい。そのため住民は、観測所の環境悪化 とデータの品質低下について指摘し、また観測所敷地外の環境は自分たちで 守ろう! |
(1)植樹後の昭和50(1975)年ころから年平均風速が弱くなった。 → →1970年以前:2.3m/s → →2000年代:1.65m/s ・・・・・平均風速は33%も弱くなった (2)植樹前の時代の強風は、最近ほとんどなくなった。 10m/s以上の強風日数は、 → →1961~65年:51日(32~71日) → →2002~06年:2日(0~4日) (3)日だまり効果により、年平均気温が周辺観測所に比べて0.4℃上昇し、 正しい気候変化が観測できなくなった。 注:植樹した桜200本余のうち、10本余が観測の邪魔になっている。 |
公園と周辺 1.南側の一帯:笹の刈り取り(毎年) 2.公園内の桜の大部分は移植、残す桜は大木にならぬよう剪定(3年ごと) 3.間引き桜の移転先:坂下の道路脇へ 4.乱雑に伸びた松の枝の剪定(3年ごと) 5.露場周辺に植樹するとしても密植せず、樹高は1m以下に管理 |
(1)二酸化炭素CO2などの増加による地球温暖化 → →今日の温暖化問題 (2)地球が受ける太陽放射量の変化による気候変動 *太陽放射量の変化(10年周期、10万年周期、・・・・・) *地球の反射能の変化(海洋汚染や地表面の改変など) (3)エネルギー使用量の増加による直接的温暖化(都市の熱汚染が地球規模 に広がる状態) *広大な太陽光パネル群は地表の人為的改変 → →”第2の地球温暖化問題(近藤純正による命名)・・・50年ほど 先に問題化? |
地球(大気と地表面)の平均温度は、-19℃(地上の気温は15℃、上空の 気温はマイナス50℃程度)である。 ○問題:地球の温度は何によって決まるか? ○回答:①太陽放射、②地球の反射 |
(正しい温暖化量はどうやってわかったか?→下記の要素を補正して得られる) 気温に影響する3つの要素 (1)観測方法の変更 観測時刻、器械、1日の区切り(日界)の変更 (2)都市化の影響 緑地の減少、人工排熱の増加、・・・・・・ (3)日だまり効果(新しい造語) 周辺に家が建てられたり、樹木が成長して風通りが悪くなり、平均気温や 地温が上がる |
(温暖化→農林水産物に影響) (1)気温は100年間あたり0.67℃の割合で上昇している (2)気温は単調に上昇しているわけではない (3)数十年のサイクルの変動も混ざっている (4)気温の変動幅は高緯度(北海道)ほど大きい(下記の注) (5)1988(昭和63)年以降の気温上昇が大きい ○今後も気温の急上昇が続くか、下降をともなう変動なのか?・・・・・ 気候監視が重要 |
(都市設計上の問題点) (1)戦後復興により1950年頃から都市昇温が顕著になる ただし、東京と横浜は大震災(1923年)の復興から (2)経済の高度成長期(1960~80年)に上昇率が大きい (3)2000年代も、各都市で上昇傾向が続いている (4)過半数の都市で、熱汚染量は地球温暖化量を超えている (5)広い面積の舗装化は昇温量を大きくする 都市の熱汚染の緩和策 → 大規模よりも小緑地を多数つくること(下記の注) |
1.温暖化の監視が危うい!: 観測所の周辺環境が悪化している。住民の理解と協力により、気象観測の 環境を守っていこう。 2.地球の気候、温暖化とは?: 太陽がエネルギー源であり、地表面付近は温室効果によって適温に保たれて いる。温室効果が急激に強まり気候が急変することが危惧されている。 これが地球温暖化問題である。 3.日本のバックグラウンド温暖化量: 気温変化は、100年間当たり0.67℃の割合で上昇しているが、最近の30年間 の上昇がとくに大きい。今後の監視が重要となる。 4.都市化による気温の上昇: 二酸化炭素の増加による地球温暖化と異なる原因で生じる熱汚染である。 過半数の都市の熱汚染量は、100年間当たりの地球温暖化量よりも大きく、 生活環境を良くする都市設計が必要である。 |
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