ノースウエスト・アース・フォーラム

原子力空母

ジョージ・ワシントン

2009年11月28日横須賀の米第7艦隊所属のジョージワシントンの見学をした。NEWフォーラムの西沢氏がジョージワシントン兵器管理部士官の息 子さんに1年以上毎日、日本語を教えていたおかげであった。お礼にと10名を限度に案内を申し出てくれたのだ。多分奥さんの依頼に応じたものと思うが、空 母のメンテナンス期間中の本国での幹部研修に出かける前日に休暇をとって我々を案内してくれるという。

12月5日に数万人の市民対象の恒例の一般公開が予定されているが艦内の戦闘機格納庫と飛行甲板位しか見学できない。この特別見学は2時間にわたって原子 力機関とプライ・フライという航空管制室以外は艦橋も含め、くまなく艦内を案内するというものだ。

NEWフォーラムのメンバーの元朝日記者、NHKの職員、電力会社元社員とその夫人、ソニーの元研究者といった面々がそ ろってでかけた。

基地正門前で参加者の一人がキャノンの一眼レフデジカメでゲート周辺を撮影したところ、たちまち歩哨に検閲され、1枚消去することを求められた。正面ゲー トの写真撮影はなぜか禁止されているのだ。しかし内部の撮影は全く自由。事前に申請書と身分証明書の番号を登録しておき、ゲートで一人一人顔写真を撮影さ れてEscorted Visitorとしての入門証をもらった。かって出入り業者としてここを訪問したときより、手続きは面倒だ。

在日8年という奥さんと息子も同行した。夫が職場に招いてくれたのはこれが初めてということだった。基地内部は広大だ。空母の岸壁まで士官の車と奥さんの 車でピストン輸送してもらう。岸壁のセキュリティー・ゲートで身分証明書を取り上げられてようやく岸壁に入れる。

岸壁から見上げる空母は巨大だ。全長333m。空母は甲板を広くするためにハルより上部構造物が両脇に張り出している。(sponsonまたはpaddle wingという)そのため岸壁と艦体の間には10m以上のポンツーンがスペーサーとして数個配置されている。2008年に退役したキティー・ホークは重 油燃料の蒸気機関だったため艦橋の半分は煙突であった。しかし原子力艦は排気を出さないため、艦橋は随分と細身である。

岸壁に繋留された原子力空母ジョージ・ワシントン

岸壁から艦にわたるキャットウォークの手摺に紺色白字で横断幕が張ってあってGWSTRIKEGRUとある。川上が略語にしては長すぎる。インディアン語 かなとつぶやく。GW STRIKE GRUとすれば誘導兵器打撃群と読める。

空母は言わずもがな、防衛のためにあるわけでなく、米国の覇権の主力となる攻撃兵器システムである。35機の攻撃戦闘機を必要な地点まで運びそれを空中に 送り出す船だ。空母自身は 防衛用に配備する40機で守るのだ。合計75機の艦載機を搭載し、必要な兵器と航空燃料を積んでいる。

入り口を管理する士官に挙手の礼で迎えられ、下甲板の艦載機格納庫(ハンガー)に入る。このフロアから艦載機は4基の360m2の床面積のエレベータで一 階上の飛行甲板に持ち上げられる構造になっている。乗艦前に3基のエレベーターが右舷に見えていた。このエレベータを引き上げるケーブルが見える。もう一 基は左舷後方にあるが閉じていた。一般公開のときはこのエレベーターで見学者を何百人まとめて飛行甲板に上げているようだ。格納庫内には工事業者用の2階 建てコンテナ室がいくつも運び込まれていた。

ハンガー内部

向こうの明るい部分が艦尾エレベーター開口部で左側上部に艦橋が乗っている

士官は我々を連れてハンガーを艦首方向に歩く。突き当たりで急な階段を下って、ハンガーより1階下の自分のオフィスに連れていった。ここはちょうど水面よ り5mばかり高い位置だろう。窓もない部屋でデスクの上にはパソコンが置いてあった。これから弾薬庫に入るのでタバコのみはライターとタバコをデスクの上 に置いてゆけと言う。更に何階か急な階段を下って多分水面下と推察される弾薬庫に入ると中は空であった。

入港する前に弾薬やミサイルは全て甲板に上げ、大型ヘリで別の船に移すのだそうである。これは米海軍の規則によって決められていることで、港に入る時は兵 器庫は空にする決まりだそうである。ベルリンの壁が崩壊してからは原爆は空母に載せないと大統領が決めている。そういえば鈴木善幸首相のころ、ライシャワー駐日大使が核を搭載した米軍艦艇が日本に寄港していると発言した内閣がひっくり返る事件があったことをい思い出す。

これから来春まで定期修理に入るわけで、爆 発物はあってはならないわけだ。天井にはスプリンクラーがあり、フォークリフトはバッテリー駆動車である。左側のドアは更に下層の兵器庫やハンガーとを縦 に連結するリフトであろうか?

兵器庫の艦尾側にはジェット燃料タンク(7,800トン)、放射能物質を閉じ込める原子炉格納容器、蒸気タービン室と順に続くと考えるのだ常識的だろう。

居室はのぞかなかったが伝統的には艦首は水兵、艦尾は士官と決まっている。原子炉の真上に6,000名の乗組員の士官、下士官のオフィスと食堂と75機の 艦載機のハンガーが広がっていることになる。食堂の床は岸壁とほぼ同じ高さに見えた。岸壁は海面上5m位、ドラフトは12.5mだから居住区から艦底まで の空間は17mということになる。全長333m、ビーム76.8m、排水量104,178トンである。


推定内部構造

陸上の兵器庫なら地下に厚いコンクリートで構築するが船の場合はそうともゆかず、ただの貨物室である。もし爆発したらそれでおしまい。空母は高速で動くた め水面下の船殻も装甲は施してない。自衛武器としては船尾に2対のシー・スパロウ発射器を備えているだけである。したがってイージス艦のミサイルで護衛し てもらうしかない。

原子力を原潜の動力源にしたいと考えたリッコーバー大佐がチェスター・ニ ミッツ提督に直訴して認められたのが今日の軍用・民用原子動力の端緒となった。開発に協力したのがウェスティングハウス社とGEであった。GEはナトリウ ム減速の中速中性子金属炉の開発を担当し、シーウルフ号に搭載したが、ほどなくナトリウム漏れ事故を起こし、加圧水炉(PWR)に換装されてしまった。 PWRを担当したウェスティングハウスは成功した。S1Wというコード名のSはサブマリン、2は第二世代、Wはウエスティングハウスの意味である。中性子 の減速と冷却を循環する150気圧に加圧した一次冷却水で行い、この加圧水の熱を使って逆U字型蒸気発生器で二次冷却水を気化してタービンを回す仕組みで あった。一次冷却水系統と二次冷却水系統が分離されているため、2次系にある蒸気タービンや復水器といった補機類は放射線の危険から離れた位置で点検整備 が可能となる。1次系から2次系へと熱を伝える蒸気発生器は逆U字型の脆弱な細管を使うため損傷を受けやすく、一次冷却水損失を起こすため、アルゴンヌ国立研究所のIdaho Fallsでの実機試験で確立した標準設計が採 用された。潜水艦用として直径9メートル40センチ長さ40メートルの水平円筒形の格納容器中心内に圧力容器1基と面対称に両側に配置される複数の蒸気発生器と一次水循環ポンプが収納されてい る。原子力空母ジョージ・ワシントンには標準設計のA4Wが2基搭載されている。AはAircraft carrierの略である。

艦用炉はステンレス被覆内に密閉封入された金属製燃料棒をつかっている。燃料交換頻度を下げるため20%から95%とい う高濃度濃縮のウラン・モリブデン金属合金とハフニウム製の制御棒を使っていると推定される。モリブデン合金とするのは核分裂生成物の一つがモリブデンで あるため、使用中の金属結晶の損傷を減ずる目的なのだろうか?

横須賀港をみただけでも日本の海上自衛隊はイージス艦を第7艦隊より沢山保有している。だが肝心の空母はない。何を守るのか分からないところがある。 多分第7艦隊の空母を守っているのだろう。セットとしてようやく一人前になる。集団的自衛権行使にもう一歩である。内閣法務局役人の集団的自衛権はこれを 行使しないという答弁はすでに破綻しているのではないか?

兵器

再度階段を登り、士官の部屋にもどりライターを返してもらう。各階毎に隔壁のハッチがある。ハンガーより1階下のフロアは全て士官と兵員の居住区になって おり、多数の食堂とキッチンがある。3,184名の空母乗組員+第5航空団2,800名、合計6,000名に一日に18,000食提供できるという。

士官、下士官のオフィスと食堂を縦に連結する通路

2,240kmの長さに達するケーブルが天井や壁にむき出しの長い通路を歩いていると士官や下士官のオフィスが並びそれぞれのドアにたとえばCMDCM (AW/SW)とあって名前が書いてある。CMDCMとは米海軍の階級でCommand Master Chief Petty Officer(部隊専任伍長)という下士官である。ちなみに艦長は佐官のキャプテンが勤め、横須賀にある第7艦隊の司令長官は将官のアドミラルだ。アド ミラルは船には乗らない。士官はとある大きな部屋のドアを開け彼の部下達に我々と家族を紹介した。士官ラウンジで休憩。

階段を上がって 艦首まで歩き、30トンの錨2個の巻上げ室に入る。巻上げウインチには地球儀がえがかれ、日米の国旗が描かれている。艦首の開口部から海面を見ると、テロ リストのボートが突入できないように海面に浮き柵が設置されているのがみえた。

錨巻上げ室

再びハンガーにもどり仲間の喫煙につきあう。特定の場所でしか喫煙はみとめられていない。昨年ジョージ・ワシントンの日 本配属航海の途上、禁煙地区でタバコを飲んだ乗組員が捨てた吸殻が原因でロープ類が燃えた事故があった。艦長更迭の憂き目にあっているから案内士官は付 きっ切りで監視していた。ところでジョージ・ワシントンが選ばれたいきさつはハリー・トルーマン、ニミッツ、ジョージH・W・ブッシュはいずれも日本と 戦った人物だからという。

階段を登ってようやく飛行甲板に出る。かって艦載機として使われ、いまではエンジンをはずされたF-14が一般公開にむけて艦尾に見本として陳列されてい る。艦載機はワイヤーで甲板上に一定の間隔でならんでいるクロスの鉄のバーが凹んだところについている固定ポイントにつながれている。

F-14戦闘機

次に蒸気カタパルトを見た。カタパルトとはローマ時代には投石器を意味したが、今では重いジェット戦闘機を打ち出す装置だ。目的は同じ、敵をぶち負かすこ とにある。これが米国の覇権を決定づけた技術である。日本海軍もソ連も英国も遂にこれを実用化できなかった。日本は結局、米国に負け、英国はハリヤー戦 闘機を開発したが戦闘能力は低い。ソ連は冷戦下で開発しようと頑張りようやくカタパルト空母を完成しかかったとき国家体制が崩壊してしまった。

空母が30ノット(54km/h)以上の速度で風上に向かって航行している。このとき100mの距離でゼロから260km/hまで2秒で加速できる。こう してテイクオフの最低速度に達するという計算になる。無論ジェットエンジンは全開である。乗員がそのジェット噴流に凪ぎ倒されないようにジェット・ブラス ト・ディフレクターが甲板上に油圧で立ち上がる仕掛けとなっている。これは着艦時は邪魔にならないようにヒンジを中心にして甲板とフラットにする。ジェッ ト・ブラスト・ディフレクターに近よってはいけないと注意される。突然閉じて死亡事故がおきているという。

カタパルト

シャトルが通る隙間はゴムでシールされている。

ローマ時代は梃子の原理を使ったが現代は蒸気を使う。 蒸気カタパルトは100mの長いシリンダーの上面にスリットが入っていてその割れ目はゴムシールで塞がれている。シリンダーの中を蒸気に押されて動くフ リーピストンにシャトルという突起が ついていてこの隙間を貫通してシリンダー外にでている。蒸気溜めタンクから水蒸気が一気に注入されるとピストンに溶接されているシャトルという突起がゴム シールを押しのけて艦載機を引っ張って艦首に突進するという仕掛けだ。蒸気がゴムシールから若干漏れるのはやむをえない。このゴムシールが技術のミソであ ると感ずる。 多分熱に強い合成ゴムを使っているのだろう。この蒸気は無論原子炉の二次蒸気であるはずである。BWR炉の一次蒸気は放射性希ガスで汚染されているため、 このような目的には使えないわけだ。カタパルトは船首に2基、中央部に2基の合計4基ある。これらを同時に2基使い 、昼なら37秒毎に夜なら60秒毎に2機発艦させることができるという。

甲板に直径4センチの鋼鉄製のワイヤーがとぐろを巻いている。何かと聞くとアレスティング・ワイヤーだという。このワイヤーを7m間隔で4本、甲板上に平 行に張っておき、240km/hで着艦する艦載機はテールフックをこれに引っ掛けて止めてもらうのだという。昼なら37秒毎に、夜なら60秒毎に1機の着 艦ができるという。 艦載機は特別に強度を持たせた設計となっている。

アレスティング・ワイヤー

ついで艦橋に登る。甲板上にはカーキ色の戦闘服を着て銃を持った海兵隊員が警備している。艦橋の最上階の進行方向(左側)にあるガラス張りの場所は艦橋で ある。同じ階の艦尾側で窓の無い部屋がプライ・フライという空母の飛行業務の管制塔である。ここでエア・ボスが発艦・着艦、空母上空や甲板上の艦載機の動 き全てを指揮する。

艦橋の上のマストには信号旗がいくつも掲揚されている。右舷の最右翼の掲揚線の信号旗は5、二番目の掲揚線には1文字信号旗KにNATO数字旗1が掲揚さ れている。このような使い方は意味不明。左舷にはそれぞれ別の掲揚線に第2代表旗と第3代表旗が右から順に掲揚されている。右舷から読むということだから 「右同じ」というこにになるのか?艦橋にはUSS CVN-73の73という艦籍番号だけが 大書されている。イルミネーションつきだから夜間でもよくみえるだろう。米海軍は2桁であるが海上自衛隊は3桁である。

艦橋

艦橋の進行方向に向かって左端にCommanding Officer即ち艦長の席が、右端にNavigatorすなわちナンバー・ツーたる航海士の席があり、中央に操舵手が木製の蛇輪を握って立つ。

艦長席

操舵輪

Naval-technology.comに よれば4個のプロペラを動かスチーム・タービンは194MWが4基。8MWの緊急デイーゼル発電機が4基とのことなので4%が所内動力ということになる。 したがって原子炉の総出力は808MWになる。ほぼ原発に匹敵する大きさだ。これに蒸気を供給する原子炉はA4WというWH製のPWR炉2基という。負荷調整型運転を するためと狭い空間に収納するために2基に分割したのだろう。リッコーバー提督のこだわりのデザインだ。

ウラン235が95%以上という高濃縮度のウランとジルコニウム合金の燃料棒を使う炉で18年間燃料棒の交換は不要である。濃縮度2%-5%程度の商業用 原子炉と比べて 非常に高い。濃縮度が90%以上なら原爆にできる。ただジルコニウムで希釈されているためか、バーナブル・ポイズン、高濃度ホウ酸水などの併用で核爆発を 起こさないようだ。 不足の事態で臨界に達してかつ冷却できないかまたスクラム不能による暴走と炉の溶融(酸化物ではなく合金のため融点は低い)、それにともなう水蒸気爆発や 核物質の拡散による汚染は想定されているだろう。炉心冷却水の濃度も商業炉と比べてかなり高いというがその時は艦放棄ということになるのだろうか。港に 入っているときは大問題でそのとき早急に外洋に曳航放棄ということができるのだろうか?ウラン濃縮度が高いということはウラン238がプルトニウム239 に変換される量が少ないから処分がむずかしい放射性廃棄物は少なくなるのかなど興味は尽きない。

核燃料の交換時期になるとチェサピーク湾のノーフォーク米海軍基地の対岸にあるバージニア州ニューポートニューズ市のノースロップ・グラマンのドックに長 期間収容されて、飛行甲板、ハンガーの床、食堂の床、遮蔽壁をはずして交換作業が行われる。今後就航する新世代の原子力空母が原子力潜水艦と同じく、就役 後は一度も核燃料の交換を必要としなくなる予定であるといわれている。

原子炉の遮蔽壁は当然鉄コンクリート製で重いため、艦中央に設置されているはずである。この遮蔽壁は皮肉にも上部構造物が大きな空母を転覆から回復させる バラストとして役立っているように思われる。

士官オフィスと食堂の床から艦底までの深さ17mだから艦底厚さ2m、下部遮蔽壁1m、上部遮蔽壁1mをのぞけば士官オフィスと食堂下に収まる水平円筒型 と推定される格納容器の内径は13mになる。アイスコンデンサ型格納容器として小型化しているはずだ。圧力容器上下半球殻高さ合計4mをとれば垂直に設置 される燃料集合体、制御棒抜きだし空間、ロッドトラベルハウジング合計で9mしかない。従って燃料集合体高は3mということになる。原発の4.5mに比べ れば短い。加圧器はロッドトラベルハウジングと同じ高さに設置してあるのだろう。通常の原発と同じく 、蒸気発生器は縦型とすればこれも格納容器径の13mにおさめなければならない。この円筒状の格納容器が2本並んでビーム40.8mに収まる計算である。

今年2月に按針塚を訪れたとき、塚から原子力空母ジョージ・ ワシントンが見えた。甲板にテントを張ってカタパルト を修理中であった。

甲板にテントを張ってカタパルトをメンテナンス中のジョージ・ワシントン 2009/2/11

核燃料交換時でなければ定期修理といえども圧力容器は開放しない。というか設計上想定していない。従って定期検査は漏洩試験だけとなろう。ただ循環ポンプ の部品交換などはどうするのだろう?圧力容器や格納容器の350人の要員がやってきて一次、二次冷却系のメンテナンスをしていると新聞は報道していた。今 回の訪問でもバージに搭載した修理工場がフェンスで囲まれた岸壁に接岸していた。内部は工作機を搭載した修理工場という。バージニア州ニューポートニュー ズ市も住宅地の目と鼻の先に造船所があるが、横須賀基地も住宅地が接近している。できれば人口希薄な地方に基地があればいいのだが、狭い日本にはそのよう な場所はなさそうだ。

原子炉からは燃料被覆管壁を貫通して漏れ出るキセノン、クリプトンなどの放射性希ガスとトリチウムがでてくる。しずれも半減期が短いためと生物に吸収され ない不活性ガスのため、希釈して大気放散すれば、放射線被爆は低いとされている。どの原発でも希釈ガスを大気に放散させるためベントスタックが空高く立っ ている。このベントスタックがどこかにあるはずと探したが マストの一番高いところにはレーダードームが設置されている。結局分からなかった。横須賀港内にも設置されているモニタリング・ステーションが対象にして いるのはマンガン54、コバルト60、ジルコニウム95、ニオブ95、ルテニウム106、セシウム137、セリウム144、プルトニウムなど固形物核種だ けであるはず。いつもキーホルダーとして持ち歩いている放射能検出警報器はガンマ線に観応するもの だが鳴らなかった。

総使用鋼材6万トンの空母建造費は1983年当時で68億ドルであったという。インフレ率毎年2%とすれば26年間で1.67倍の114億ドルになる。今 私が担当している某国のLNGプラントの建設費は70億ドル、消費動力230MWである。これと比較すれば建設費あたりの動力はLNGプラントのほぼ2倍 となる。

訪問記念にと艦長帽を25ドルで購入したがメイド・イン・チャイナであった。もしかしたら軍服もメイドインチャイナなの かなと勘ぐる。 ジョージ・ワシントンの隣には空母護衛のイージス艦と丸腰の貨物船のような船がある。こののっぺりした丸腰の船はなにかと聞くとコミュニケーション・シッ プだという。指揮命令系統の要となる船ということになる。

22隻の米空母が世界の海洋に君臨し、ユーラシア大陸を封鎖してきたのはその優れた攻撃力故であった。しかし安価な地対艦ミサイルの普及で空母は次第に脆 弱性を増し、これを守るために巡洋艦や駆逐艦に高度なレーダー⇒コンピュータ⇒地対艦ミサイル 対抗ミサイル誘導というイージスシステムを開発して搭載し、時代遅れの空母を延命させて覇権を維持しているのが実情であろう。 かっての戦艦と空母機動部隊での戦艦の立場になったのではないかと危惧される。いわば張子のトラと化していることが見学させてもらってヒシヒシと分かる。 空母護衛のために開発されたイージス艦が海上自衛隊に多数配備されているのは日米一体で張子のトラと化した空母を守って米国の覇権を維持していることをう かがわせる。

岡崎久彦氏によ れば現時点では日本の海軍力は中国に勝り、空軍力はちょうど中国と見合っているそうだが、近々中国が凌駕する。そのとき真空地帯をつくらないためにも横須 賀に米海軍の空母に居てもらう必要はあるのだろう。

しかし米国は金のかかる空母艦隊はいずれ放棄して安上がりな宇宙からの攻撃システムを構築することになるというのがジョージとメレディス・フリードマンの 「戦場の未来」が予 言していることだ。そして2050年には世界経済の中に組み込まれてしまった中国 沿海部と内陸部は分裂崩壊し、人口動態でロシアが疲弊して再び力をつけた日本が米国の宇宙軍事基地を攻撃して再び負けるというのが「100年予測」に描 かれている。でも宇宙での監視は可能としてもそれは防衛目的 にしかならず宇宙のどこに多量の攻撃ミサイルを隠しもつというのだろうか。見えなければ覇権を維持できないのだ。見えれば簡単に攻撃されてしまう。?絵空 事に思える。

横須賀の町で昼食後、戦 艦三笠を見学。ミズーリー号上で日本が敗戦合意書にサインした後、三笠を訪れたニミッツ 提督がその荒れように驚き、即歩哨を立てたという美談を思い出して話していると川上が「アナポリス米陸軍士官学校付属博物館を訪れたとき、展示品で一番多 かったのは日本との戦争であった。米軍にとってそれだけ日本軍は手ごわかったのだろう」という。よくマッカーサーが日本人を平和ボケにしたというが、これ は日本人の責任のがれで本当は日本人の大部分にえん戦気分が強いというのが本当の理由だろう。しかし中国の勃興とともに米国は経済的に弱体化してきてい る。いつまでも依存しているわけにも行かないのだろうなどと話しながらドブ板通りを散策した。意外にも我が持ち舟と同じROCAという名の居酒 屋をみつけた。

米 国は覇権国家を維持するために原爆のインフラである原発はすてないだろう。ドイツは原爆はフランスにまかせておけるから気軽に脱原発して再生可能エネル ギーを採用できるし、ネットワークが充実しているから多様な電源でのバックアップが可能。民生用に使えるウェスティングハウスの原発技術はいま日本が引き 受けているし、チョンボなGEのBWRなど買う人間はいないだろう。日本が脱原発してウェスティングハウスを捨てると米国は困るというがこれはウソ。軍事 用ウェスティングハウスの技術はGEとベクテルが引きうけている。中国などが独自原発技術を売りだせば、核拡散防止ができないから日本が邪魔しろというこ とに過ぎない。邪魔してもコストで太刀打ちできないからピエロのような無駄な努力。

日本の原発村は独自設計の原発すら生み出していない。ただただ米国が開発したいささかボロな技術を押し頂いてあがめている姿は悲しくなる。腐ってしまった 彼らに何ができる?私は人を入れ替えないと無理だと思う。いま独自の熔融塩炉を開発しようとしている電中研の木下さんらは例外中の例外。

TPP加入と原発継続は米国の核の傘の下にとどまるしかない日本にとっては税金のようなもの。仮に脱原発したところで横須賀には原子炉2基が鎮座してい る。無論PWRだから幾分安心だが、17年間燃料交換していないから溜まった核分裂物質の量は超ド級。私の家から10km東京。東京だってたったの 40kmだ。もしジョージワシントンが事故れば首都圏全滅です。何のための空母かということになる。米国に限らず日本でも宇宙からの攻撃システムを構築 して原子力空母を退役させなければ。



国は2004年に原子力艦の原子力災害対策マニュアルで100μSv/hを感知したら艦から半径1km以内は避難、1-3km以内は屋内待機。それ以前は500μSv/hだった。

しかし福島一事故以降5μSv/h感知したら半径5km以内は退避と変わった。半径5km以内は横須賀市内だけで20万人が住む。要援護者は5,000人。とても避難できる数ではない。

December 1, 2009

Rev. June 16, 2018


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