読書録

シリアル番号 1035

書名

100年予測 世界最強のインテリジェンス企業が示す未来覇権地図

著者

ジョージ・フリードマン

出版社

早川書房

ジャンル

政治学・地政学

発行日

2009/10/15初版

購入日

2009/12/17

評価

原題:The Next 100 Years A Forecast for the 21st Century by George Friedman

久しぶりで山木会に参加するために東京に出かけたとき、神田の東京堂書店で購入。朝日の書評で気になっていたもの。ところで 東京駅から神田まで森永元教授と一緒に散歩したがパレスホテルは建替え中であった。

戦場の未来」の著者が地政学を使って今後100年の世界の動きを予想したもの。米国ではベストセラー入りしたという。著者はハンガリーでホロコーストを生き延びた両親とともに米国に帰化。インテリジェンス会社、ストラトフォーを経営。

エマニュエル・トッドの「帝国以降 アメリカ・システムの崩壊」やという米国の力は落ち目だというフランスの見方はせず、米国はこれから100年間は覇権をにしるだろうという見方をしている。アントニオ・ネグリ、マイケル・ハートの「帝国 グローバル化の世界秩序とマルチチュードの可能性」 は難解だが案外同じことを指摘しているのかもしれない。

著者は将来はだれにも予測できない。しかし地政学が説く人間社会に及ぼす力はあなどれなく、人々はその力に流されてゆくとし、このロジックを使っての今後100年間の展開は意外で驚く。それにしても今の日本のムードでは予想もできないことだ。

ロシアが人口動態が原因で衰退し、中国が内部的に崩壊し、この真空に引き寄せられて日本が再び力を持ち、次第に米国の覇権が目障りとなる。ついに2050年にと 日本とトルコ連合を作って米国の海洋と宇宙覇権に逆らって米国に宇宙戦争で挑戦し、再び負けるという予想は遠い将来ならいざ知らず、近未来すぎて容易には合点できない。現在の日本の戦争を知る世代が死に絶えれば非戦の思いは消えているだろうか。そして米国は日本に勝ったとしても21世紀末にメキシコの挑戦を受けることになる。全ては人口動態のなせる業である という。

著者は地球温暖化に関してはこれが人為的だとしてもカール・マルクスの言葉「人類はすでに解決策を用意していない問題は提起しない」を引用して これが正しいかどうかはわからないが検討を避けたと言明している。著者はアンモニアが地球温暖化の解決策となるということをまだ知らないようだ。不勉強である。ただ温暖化がIPCCの主張のように人為的であるか はたまた自然現象の範囲内なのどうかは未だ検討の余地はあるとしても化石燃料が底をつくと予想される以上、太陽エネルギーを制するものが覇者になるということは 多分間違っていない。

アル・ゴアが人為説普及でノーベル平和賞を受賞したがじつが一族がウラン資源保有者だという指摘もある。しかし著者は原子力は放射性廃棄物を作り出すとしてエネルギー源としては考慮の外に置く。代わりに幅1kmの静止地球軌道上に1年間降り注ぐ太陽エネルギーの量は確認埋蔵量に匹敵するから2050年頃にはエネルギーは宇宙空間に漂うソーラーパネルとマイクロ波送電を使う宇宙発電システムが中心になるという。ただコスト的にどうかなと思う。マイクロ波を地上で受信し送電線につなぎ、人造合成炭化水素にするというのもどうか?

私はソーラーセルが中心という認識は著者と同じだが地上設置でも充分と考えている。アメリカは広大な砂漠を持ち、アンモニアに変換して世界のエネルギー供給センターになり、国富を蓄積でき 、覇権を維持できるというメリットがある。宇宙発電システムなど高価な方法を採用せずとも、未開発の砂漠受光面のおかげで米国の未来は明るいことは確かだ。日本が国力を維持したいなら海洋受光面の開発が必須であろう。


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