読書録

シリアル番号 1280

書名

ロボットの脅威 人の仕事がなくなる日

著者

マーティン・フォード

出版社

日本経済新聞出版社

ジャンル

コンピュータ

発行日

2015/10/21第1刷
2015/12/4第2刷

購入日

2016/06/18

評価



原題:Rise of the Robots Technology and the Thereat of a Jobless Future by Martin Ford C2015

喫茶店「オリーブの木」で借りる。目下、読破中。

遺伝的アルゴリズム思考する機械 コンピュータ考える脳 考えるコンピュータアルゴリズムが世界を支配する等を読み、シンギュラリティ、自動運転技術AI碁などついて知ってはいたが、これほどまでに社会に影響を与えており、今後ますますそうなると知り、大変なことになると知った。

著者はシリコンバレーを拠点とするソフトウエア開発会社のファウンダーのためテクノロジー発展の成果を喧伝するのかと思って読み始めたら、全く逆であっ た。

ミルトン・フリードマンら正統的経済学者は機械が多くの職を奪うなどという考えは一顧だにしない。その根拠は農業の機械化は何百万人もの職を奪った、この軋轢の中で「ラダイット運動」と呼ばれるような
「機械取壊し襲撃」も起こったが、失業した農業労働者は都会に移って工場で働くことができたからである。やがてオートメーションとグローバリゼーションが労働者を製造部門からサービス業へと押し やったが新しい職が生まれたからである。この状態が第二次大戦後25年間継続した。機械が労働者の生産性を押し上げ、彼らの収入は、消費を喚起して経済に好循環が生じたからである。(日本の高度成長期と同じ現象)

しかるに、この現象はオーストラリアへの植民がゴルディロックスの時期だったのがその後干上がったと同じで、その後の状況には当てはまらない。オーストラリア の気候が変わったように、米国では21世紀の最初に経済規模は生産高で42%伸びたにも拘わらず10年に新しい仕事は生み出されず
総労働時間は増えていない。こうして生産性の向上分は事業主と投資家の懐にのみ入るよ うになった。ゴルディロックスの時期は終わったのである。原因は労働者の生産性を高める機械が労働者に変わったという質的変化のためである。コンピュータ と一体となった機械が人間の労働者に置き換わったたためである。こうして機械からの収入は事業主と投資家のみに入り、結果として所得格差が広がりつつあ る。こうして労働からの収入を得て消費することはむずかしくなり、経済システムは停止する。(日本では石油ショック以降エネルギー価格がこうとうしたためと原因が誤認されている)

機械が人間になったのはムーアの法則のおかげである。1958年に集積回路が発明されてから27回、速度が2倍になったからである。

よくグローバリゼーションで格差が広がったと誤認されているが、本当の理由はあまり教育をうけず低スキルの労働者が自動機械(自動運転車)に置き換えられ るというだけでなく、今後は技術者、大学教官、弁護士、銀行家すらAIに置き換えられる職を失う可能性が大きいのだ。英国民は選挙による審判を経ないエ リートが牛耳るEUからの独立を選んだが、機械化に投資する企業家と資本家から税を集めて再配分することをしなかったEUの政治家と官僚を捨てたと解釈できる。

低スキルの労働者が行う比較的ルーティーンな仕事の自動機械の実例

安川電機の
Indstrial Perceptionのロボット居合い切りするロボットGoogleはロボットで何をしたいのか?、インダストリアル・パーセプションはグーグルに買収されたスタートアップ企業で視覚、空間認識、器用さを特徴としている。

リショアリング

アメリカの織物工業は1990年に壊滅して中国、インド、メキシコに移った。しかしロボットが使えるようになって、製品の輸送コストを節約するためと早期に市場に投入するために工場を米国に里帰りさせるようになった。これを
リショアリングという。

ただ中国では投資資本の金利が安く、元本の償還がな場合も多く、ロボットへの投資額は大きく、リショアリングが困難。Foxconnなどはこの制度をつかっている。

サービス部門の雇用の動向

最も多くの雇用の場としてのサービス部門はATM、セルフサービスによるチェックアウト、モメンタムマシンンズ社のハンバーガー完全自動化フランス料理の自動シェフ、日本の回転寿司チェーン、アマゾンの自動倉庫Kiva Systems、イーベイ、オンラインDVDレンタルのネットフリックスなどのオンライン小売業者、スーパーマーケットのクローガー社(Kroger)の配送センター、AVT Inc. の自動販売機、など。

クラウドロボティックス

個々のロボットがインターネットでデータセンターのコンピュータを使って制御するやり方。ただセキュリティーの確保がむずかしい。

農業ロボット

穀物、家畜の管理は限りなく機械化されているが野菜・果物は難しい。Vision Robotics Corp.のオレンジ収穫機、Harvest Automationの苗木畑や温室での作業ロボット、カルフォルニアでは果物より農業機械と相性のよいアーモンド栽培に移行し、雇用は減少。

三重革命

マーチン・ルーサー・キングが言及した三重革命@科学技術革命、A兵器革命、B自由化と人権革命のうち、経済に大きなインパクトを与えたのは科学技術革命である。

七つのトレンド

20世紀初頭アーサー・ボーリーは国民所得にしめる資本と労働の比率は長期的に安定しているとして「ボーリーの法則」を提唱した。@1973年以降、この法則は崩れ始め
、65%程度だった労働分配率は低下しはじめる。A21世紀に入 ると労働分配率は急速に低下し、2011年には58%に下がった。一方企業収益は増大、B就業者-調査週間中,賃金,給料,諸手当,営業収益,手数料,内職収入など収入(現物収入を含む。)になる仕 事を少しでもした人の率=労働力率は21世紀にはいって低下し始める。C雇用創出の減少、D1970年以降、格差の拡大、E大卒者の所得低下と失業、F分 極化とパートタイム職、Gテクノロジーの進歩によるルーティーンな仕事の自動化化が製造業での雇用を消滅させた。Hグローバリゼーションは貿易に関わる物 の生産に影響するが政府や教育、医療、飲食物提供サービス業には何ら影響しない。I金 融部門の活動が増えたことと格差、労働分配率には強い相関がある。J1970年以降労働組合の力は衰えた、そして中流階級も消滅。Kロビー活動の結果、富 裕層にかかる税率を下げた。L機械化のおかげで工場のオフショアリング圧力は下がったが、機械が職場をうばって雇用は生まれていない。

このようなトレンドは全て科学技術革命による機械化(情報テクノロジー)が雇用の機会を縮小し、収入はこのような機械に投資する、事業家や投資家に集中するようになったためである。しかるに政治は事業家や投資家のロビー活動で、再配分にまじめに取り組んでいない。

情報テクノロジー

科学技術革命による機械化のうち情報テクノロジー(IT)が断絶的破壊をもたらすのは指数関数的にコストパーフォーマンスが向上するというムーアの法則ゆえである。

ホワイトカラーに迫る危機

ノースウェスタン大の
人工知能研究者がNarrative Science Inc.というベンチャーを設立し自然言語で記事を書くアルゴリズムQuillを開発した。CIA、フォーブズ誌が使っている。

WorkFusinはMITのAI研究から生まれたベンチャーでクラウドソーシングと自動化を組み合わせ

ビッグデータと機械学習

機械学習の例としてはeメールのスパムフィルター、グーグルの検索エンジン、グーグルのオンライン翻訳ツールアップルのSiriなどがある。

機械学習のツールはニューラルネットワークとディープラーニング。NVIDIAのGPUをつかったディープラーニング・ツールは行列演算

グーグルの自動運転車は膨大な量の詳細地図に頼って走行する。この技術はルーティーン労働者の職場を減らすだけだが、手法は経営陣の意思決定に活用できる。

株の売買は1980年代から、コンピュータ・アルゴリズムが 担ってきたが、いよいよビッグデータをつかったAIがすべてを仕切る時代が来た。2012年IBMの人工知能ワトソンを開発したデヴィッド・フェルッチは IBMを退職してウォールストリートのヘッジファンドに移籍し自社のトレーディングアルゴリズムの開発をしていると推察される。先行者優位、Winner Take Allで富はますます、一極集中する。

アルゴリズムの最前線

松尾豊東京大学准教授セッションによれば初期の人工知能のアルゴリズムは基本的にはツリーを使う探索であった。総当たりでルートを決めるので腕力にすぎない。探索法として遺伝的アルゴリズムも考案された。

1970年代にエキスパートシステムができたが、人間にとって当たり前のことをアルゴリズムで書くのに時間がかかって完成しなかった。やむをえずオントロジー(概念体系)の問題が出てきて手に負えなくなった。

「フレーム問題」、「シンボルグラウンディング問題」、の打破も難しいし、
知識を書ききれないためAI研究は下火になった

最後はカナダのトロント大学のジェフリー・ヒントン(現グーグル)らの開発したディープラーニングはニューラルネットワークの接続の重み係数をウェブにあるビッグデータを機械学習で取り込んで決める。その手法としては誤差逆伝 搬(Back Propagation)というものである。機械学習に入力するデータの素性(Feature)を人間がしている以上、使い物にならない。結局、2006年 にAuto-encoderに任せると中間にある隠れ層の抽象化度があがるので2011年に中間層を上に持っていって学ばせたらうまくいったのでdeep をつけてdeep learningとよばれるようになった。このときノイズを入れた方が抽象度が上がる。問題は計算速度がはやくないと不可能。定期的にデータをかき回して 調べ、統計的な関係を明らかにしたり、自らのアルゴリズムもかくこともできるようになる。

そして人間の精神 だけに残された領分である好奇心、創造性にまで入り込みつつある。絵画、音楽などの芸術分野まで可能と予測されている。これはフォン・ノイマンが予想した シンギュラリティの達成である。


高スキル職のオフショアリング

インドのプログラマーや米国法を専門とする弁護士がインドにいながらにして米国にサービスを提供して働くことが可能となった。これはバーチャルな移民だ。

インドなどで英語の使える学卒を雇い、電話で相談に乗る仕事させるを仕組みである。

教育

テクノロジーと教育の競争にテクノロジーは勝ちそうだ。大規模公開オンライン講座(MOOC)などが出てきたが、履修証明をもらえないのでうまくいっていない。

インドと中国の総人口は米国の8倍。頭のいい上位5%は米国の40%に相当する。中国人は英語が話せないが、自動翻訳機が使えるようになる。

ますますコストがかかる大学の現実と無償教育の失敗で米国の教育は崩壊する可能性がある。

米国では教育に金がかかるため若者は前借りで高等教育をうけるが知的産業の自動化で就職口がみつからず、困窮している。

医療分野の人工知能

人工知能による診断が一段と有効になる。高齢者介護ロボットは移民に門戸を閉ざしたがゆえに高齢化の速度が速い日本が進んでいる。

3Dプリンティング

建築物への適用されると建設業の機械化が容易となる。

自動運転車

自動運転車の社会への影響は精々タクシーとトラックの運転手の職を奪い程度で大きなことではないが運転するという喜びが無くなるため自動車を個人的に所有する意味がなくなり、社会の共有物になる。したがって自動車産業は縮小するだろう。

機械は消費しない

機械化すると労働で収入をえている人々が貧困化し、税も支払わず、社会保障のお荷物になり、社会は崩壊する。

ヘンリー・フォード2世 「ウォルター、ここのロボットからどうやって組合費を取り立てるのかな?」
全米自動車労働組合委員長 「ヘンリー、ここのロボットにどうやってあなたの車を買わせるんです?」


時代遅れのエコノミスト

スティングリッツは格差による需要の不足は経済成長をそこなうとするがノーベル賞受賞の経済学者ポール・クルーグマンはその証拠はないと頑張っている。エコノミストは事実よりイデオロギーに捕らわれているのだ。

経済学者の数値モデルは20世紀のデータに準拠している。しかし情報技術は指数関数的に進歩している。この進歩が経済を破壊しているのだ。


生産性は実際の生産高(=消費)を労働時間で割ったものだ。機械化で労働者が職場を失って購買力を失えば生産高は下がる。したがって機械化の影響の測定はサービス産業が主体の米国経済では計測不能である。

米国の消費者はすでに追い込まれて借金で生活していた、これが破綻したのが2008年のサブプライムローンの破綻だ。

シンギュラリティ

アラン・チューリングが提案した人工知能の能力が人間の脳の能力を超える時をシンギュラリティ(特異点)と定義したフォン・ノイマン以降、おおく の人がシ ンギュラリティの到来を予測してきた。ノーム・チョムスキー、スティーブン・ホキンスもその一人だが、OCRを開発したレイ・カールワイツは「ポスト・ ヒューマン誕生」(The Singularity Is Near: When Humans Transcend Biology)が名著とされる。レイ・カールワイツ自身は現在グーグルにいる1000仁のAIの研究者の一人。シンギュラリティはブラックホールのよう なもので人知ではどの ようなものか予測つかない。

シンギュラリティを可能にしているのは半導体技術だが、
1959年に原子レベルの微細構造を人工的につくるというナノテクノロジーの可能性をカルフォルニア大の講演で言及したのはリチャード・ファインマンだ。

古代ギリシアの演劇において、劇の内容が錯綜してもつれた糸のように解決困難な局面に陥った時、絶対的な力を持つ存在(神)が現れ、混乱した状況に一石を投じて解決に導き、物語を収束させるという手法がとられた。この機械仕掛けの神(人工知能)という意味をもつ「デウス・エクス・マキナ」から名をとった20015年の英国映画「エクス・マキナ」を観た。人工知能を搭載した人型ロボットが研究者をだまして、施 設から逃亡するというストーリーだが、この本では人工知能がインターネット経由で研究施設のコンピュータを抜け出し外のコンピューターに逃げてしまうというもっと怖い話が出てくる。

雇用の喪失

テクノロジー中心の自動化は200年前に始まったのだが、半導体の利用が始まってからの指数関数的進歩が人の職場をうばい、労働からの収入が絶たれる事態になりつつあることが経済学者にはわからない。

航空機パイロットもいまではほとんど実際には操縦していない。乗客を安心させるために操縦席に座っているだけだ。

対処法

テクノロジー主導の格差は消費を脅かすため、リバタリアンのフリードリッヒ・ハイエクの唱えたベーシック・インカム(最低限所得保証)が一つの解決策。

ただ「共有地(コモンズ)の悲劇」や「ペルツマン効果」を防ぐ工夫は必要。

ベーシック・インカムの財源としては法人税の累進課税化であろう。

事業税、金融取引税、
VAT、消費税も企業からなら有効。ただ個人からの消費税はベーシック・インカムの効果を阻害するので注意が必要。

公共インフラへの投資は有効だが、教育をしたところで、就職先が少ない問題は解決しない。

勤労所得控除は失業者救済になっていない。


一読後の感想

日 本では1970年代半ば以降のGDPのスローダウンはエネルギー価格の高騰やオフショアリングのため製造業が海外に移転したためと理解される。日本の製造 業は工場を海外に移して工場労働者の職場を奪った。筆者の居たエンジニアリング企業は日本市場の建設プロジェクトはゼロになったため、海外の工場建設に乗 り出し、機械・資材は海外調達、建設現場の労働者はオフショア労働者をつかって日本のメーカーと建設労働者を捨てた。あまつさえ配管設計さえ、日本人エンジニア不足を理由にインド、フィリピンのエンジニアにアウトソーシングし生き残ったのである。CADがこれを可能とした。これからはAI CADを開発して設計は完全自動化が可能となる日も来よう。

本著では消費Cの低迷はGDPの スローダウンの原因とする。そして消費は労働による収入がなければ不可能。そして労働による収入は職場の数と賃金レートの積だ。だからオフショアリングでもCは減るのだが、
機械化(日本ではIT化という)でも雇用の伸びが止まり、賃金レートが下がることが消費を減らし、経済不調の原因ともなるとする

GDP=PQ

Q=C+I+G+TB

消費C=労働による収入=雇用x賃金レート


荻林教授は生産性の上昇は労働分配率を下げるという。国が生産性向上分を税で吸い上げれば分配率の不公平は減らすことができる。これをしないで法人税を下げて金融政策で円を増やして円安にして価格指数Pや貿易収支TBを増やそうというアベノミックスの発想は完全にエンジンの逆噴射で騒音が大きく派手なだけで、すぐ燃料切れになるということになる。諸国が 企業に逃げられないように法人税逓減競争を繰り広げているため、法人税減税競争をしつつ日銀に札を刷らせて為替レートを変えて貿易収支TBを増やそうとする。し かし雇用と賃金が増えない以上、消費Cは増えず、GDPは上向かない。ポール・クルーグマンという20世紀の経済学者を免罪符として円高で雇用が失わた10年後になってから財政ファイナンスで円高にしているのはアナクロに見える。事実誤認のイデオロギー経済学者の空説を利用して私服を肥やす企業経営者、政治家、官僚のエリート層の高笑いがみえる。

本書は最低限所得保証など消費を維持する対処法が提案されているが、これはGを効率の悪いインフラ整備から最低限所得保証にまわしてCを維持するという意味だ。ただその財源は労働分配率の低下で企業に溜まる利益を
政府が税金でめしあげればならない。ところが社会のエスタブリッシュメントである企業経営者は政治家と国家官僚(EU官僚含む)に働きかけて抵抗する。こうして現在の世界の政治状況では全く不可能だということだ。一旦権力 を握ったエリート層は決してその権益を手放さない。そうして社会の中間層が消えて社会は少数の富裕層と多数の貧困層に分裂する。これが英国や米国の現状だ。

本書読破中に英国のEUからの離脱か否かという国民投票の結果、EUをでるという投票結果が出た。これはマグナカルタをジョン王か ら勝ち取った英国民の伝統にかなう動きだ。これは選挙という洗礼を受けないEU官僚という支配階層に対する怒りが噴き出したということだろう。オバマ米大統領から北大西洋条約機構(NATO)や国際 通貨基金(IMF)のトップまで、世界のリーダーが英国にEUにとどまるよう訴えたが国の繁栄の分配にあずかれなかった多くの英国の有権者は「専門家」という支配階層を否定した。

2016/11の米国の大統領選挙で既成の政治家でないトランプが選ばれるかどうか?世界に広がった法人税逓減化競争をやめ、累進性の所得税に戻すかどうかが米国、ひいては世界がより良いところになるかの分かれ目であろう。資本主義が作り出す貧富の差などは社会主義でも共産主義でも解決できない。今のところ民主主義だけがこれを解決できるわけだ。英国人は脱EUで主権を行使 し、米国人は目下トランプがまともリーダーなのかと連日議論している最中だ。米国人はどういう判断を下すのだろうか?

貧富の差は日本でも例外なく進んでいる。それでもドイツや米国、英国は財政バランスを厳格に守ろうとするが、日本政府は節操がなく、次世代からの借金を回す度合が最もたかいため、貧富の差に加え、借金という2重の困難を抱えている。
この7月の参院選で安倍政権が再び支持されるようならば日本経済は壊滅するのではないか。こういう激動時に危ないといわれる円が買われるのも不思議な症候群だ。どうも日本政府の愚かさを利用しようと虎視眈々とねらっているオフショアの仕手筋がいるんではないかと思われる。それくら安倍政権は足元を見透かされているのではないか?

しかし日本では固定電話に電話をかけるというNHKのいかがわしい与論調査で早々と 自民党支持率は横ばいなどと宣伝して有権者の洗脳をしている。残念ながら日本ではいまだ政治家は地縁血縁的絆を大切にする政治家に投票する傾向があるため、民意は反映されない。

成長のために最も重要なものは投資 I を増やす新しいビジネスを生む企業化率を高めることだ。しかし日本は企業の指導者はため込むばかりで、投資がもっとも低い国だ。インターネットの検索の覇者と なったグーグルはラリー・ペイジとロシア系移民のセルゲイ・ブリンが創業したが2015年からインドのチェンナイ出身の40才代のスンダル・ビチャイに譲 り、自分達はProject Loonという成層圏20kmにあげる気球をつかった無線LANや自動運転車に取り組むと宣言。しかし日本ではベンチャー企業を起こす企業家になるにはあまりにリスクが高 い社会だ。まず労働移動型社会になっていない。労働法体制が企業側であり、失業保険がよわく、労働基準監督署が機能していない。税制は退職金を優遇 しているため、退職金の額が大きく、ポータブルでないため、退職しないでだらだらと過ごす人が多い。
松 尾豊東京大学准教授もなぜ東大を辞職してベンチャー企業家にならないのかと聞かれ、東大の教授を選ぶと回答した。なにもベンチャーをたちあげても日本では 資金はあつまらないことを知っているからだ。といったって政府の役人が配分する予算の制約下ではなにも出来ないことを彼は知っている。これで日本のAIは 死んだと思う。先行す るグーグルなどの企業に追いつける成算があるのかと聞かれ、「頑張る」と回答したとき、最後の特攻機が帰りの燃料を持たず飛び立つときのシーンが脳裏をよ ぎった。

松尾豊東京大学准教授はUtubeを使ってディープラーニングさせるとき、見ている人がストップボタンを押して巻き戻す情報が大切だという。人間の脳の学 習過程でもこういう情報が大切となる。人の脳の能力には大きな差はないのだが、数学などはロジックできっちりかためられた体系を学んでいるとき、ある点で わからないまま進むと以後全部わからなくなる。そのまま進んだ人が数学嫌いになり、数学(特に指数関数)を知らなくて済む文系になったというだけのことか もしれないとつぶやきました。これは学校教育の欠陥だ。これだけのことで数学を完全にオミットした文系という資格をつくることは詐欺のようなものだ。これ からは生脳とAIという分類だけになるのだろう。


Rev. June 28, 2016


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