各種ソーラーエネルギー発電比較

グリーンウッド

 

再生可能エネルギーである ソーラーセル発電、太陽熱で対流風を発生させ発電する人工台風発電、バイオマス発電の3種のソーラーエネルギー発電を同一のEC60904-1 AM1.5放射照度基準で比較してみたので紹介する。通常の風力発電は水力発電と同様ソーラーエネルギーの直接的利用ではないが、地球規模の大気の対流から電力を取り出すため間接的利用であろう。発電単価 で比較する。

項目 単位 ソーラーセル 人工台風発電 バイオマス 風力(平均風速5m/sec) 風力(平均風速6m/sec)
IEC60904-1 AM1.5放射照度 kW/m2 1 1 1 - -
日照時間 h 12 12 12 - -
日照時間内平均放射度/AM1.5放射照度 % 50 50 50 - -
天候ファクタ % 45.5 80 45.5 - -
時間平均実受光量/AM1.5放射照度=(日照時間/24)*(照時間内平均放射度/AM1.5放射照度)*(天候ファクタ) % 11.4 20 11.4 - -
年間運転日数 d/year 365 333 320 365 365
公称出力 kW 最大出力 3.3 最大出力 200,000 一定出力2,380 1,500x10 1,500x10
受光面積 m2 31.1 19,630,000 71,180,000 - -
AM1.5放射照度基準ソーラーエネルギー変換効率=(公称出力)/(受光面積)/(AM1.5放射照度) % 10.6 1.1 0.00334 - -
時間平均実受光量基準ソーラーエネルギー変換効率=(AM1.5放射照度基準ソーラーエネルギー変換効率)/(時間平均実受光量/AM1.5放射照度) % - - 0.0293 - -
バイオマス光合成効率(時間平均実受光量基準) % - - 0.105 - -
受光面積当たりの年間総発電量=(AM1.5放射照度)*(時間平均実受光量/AM1.5放射照度)*(ソーラーエネルギー変換効率)*(年間運転日数)*24 kWh/m2/year

106

8.3

0.26

-

-

年間総発電量=(受光面積当たりの年間総発電量)*(受光面積) kWh/year

3,289

319,600,000

18,280,000 29,500,000 41,000,000
利用率=(年間総発電量)/(公称出力*25*365) % 11.4

18.2

88 22.5 32.2
運転要員数 persons 0 5 6 3 3
初期投資額 million yen 2.2 56,700 732 3,300 3,300
建設単価 yen/kW 666,666 283,500 307,563 220,000 220,000
受光面積当たりの初期投資額 yen/m2 70,740

2,888

10.3

-

-

資本費/初期投資額 % 11.18 11.18 14.08 11.18 11.18
必要年収 million yen/year 0.244 6,339 103 369 369
人件費(6million yen/year/person) million yen/year 0 30 36 18 18
山林賃貸料 million yen/year 0 0 30 0 0
伐採・搬出・チップ化費 million yen/year 0 0 59 0 0
チップ輸送費 million yen/year 0 0 27 0 0
潤滑油代 million yen/year 0 0 6 0 0
キャッシュ・フロー million yen/year 0.244 6,369 260 387 387
資本費 yen/kWh 74 19.0 5.6 12.5 9.0
燃料費・人件費・経費費 yen/kWh 0 0 8.6 0.6 0.4
発電単価 yen/kWh 74 19.9 14.2 13.1 9.4
年間の炭酸ガス排出量削減量 t/year 8 750,000 43 69,000 96,000

資本費/初期投資額は未来収入から未来コストを差し引いた正味キャッシフロー NCFi を割引率 rで割り引いて n 年合計したものが、イニシャル・コストEに見合わなければならないとして複利計算した。

    n
E = NCFi/(1+r)i
    i=1

  ソーラセル・風力発電 バイオマス発電
NCFの割引率 r (%) 8 8
資本金/投資額 (%) 40 40
借入金返済期限 (年) 10 10
借入金金利 (%) 4 4
借入金返済法 元利合計均等払 元利合計均等払
法定償却期限 (年) 17 17
償却法 定額 定額
税率 (%) 40 40
運転期間 (年) 30 30
固定資産税 (%) 1.4 1.4
保険料/投資額 (%) 0.5 0.5
保守費/投資額 (%) 0.1 2.0
管理費/投資額 (%) 0.0 1.0
資本費/投資額 (%) 11.18 14.08

ソーラーセル発電は2004年時点で市販されている家庭用の仕様と価格を使った。タタミ大のセル30枚使って売電する本格的なものだ。ソーラーセルコストは506yen/Wに付帯機器分としてセル・コストの30%相当分を含めた。ソーラーセルコストは506yen/Wは量産化によりまだまだ下がると予想されるのでいずれ風力、バイオマス相当に匹敵するものになろう。そのときは主力の電力エネルギーとなるときであろう。

人工台風発電は豪州のエンバイロン・ミッション社がソーラー・ミッション・テクノロジーズ社の技術を使って計画しているソーラータワー技術に関し、彼らが公表した公称出力、受光面積、建設費等から推算したものである。

solartower.gif (8319 バイト)

人工台風発電の概念図

ソーラーセルと人工台風発電とのハイブリッドも考えられるが、せいぜい7kWh/m2/year余計発電できるだけで総合発電単単価は71yen.kWhと3yen/kWh下がるだけである。ドラフト・タワーを自立型でなく、山の急な斜面などに設置すれば、コストは下がると考えられる。

バイオマス発電は本HP掲載の広葉樹発電そのものである。この試算では伐採コストの低減のために欧米式の森林機械を導入することと、原子力並に常時フル稼働させることにしてようやく14.2yen/kWhを維持できた。日本特有の急斜面に欧米流の森林機械を導入するには転倒防止用のテンダー等を付加しなければならない。このコストは既存の2倍と仮定しても0.4yen/kWh上昇するだけである。

バイオマス発電の受光面当たりの効率は森林生成速度を2 dry ton/ha/year(生木換算3.2green ton/ha/year)としたときの森林面積7,118ha(71.2km2)基準の値である。鎌倉広町緑地で測定した雑木林の成長速度5.9green ton/ha/yearを基準にすれば、受光面積は3,860ha(38.6km2)となる。したがって受光面積当たりの効率は本表の値の1.84倍になる。

バイオガスタービン排気を60倍に希釈し、気温より10oC温まった空気を直径5メートル、高さ1,000のドラフト・スタック中を25m/secで吹き上がる中に翼効率76%、発電機効率95%の風力発電機を設置すれば、ベッツ係数は1であるので134kWの追加発電が可能となる。このときの入り口風速は50m/secである。ガスタービン出力の5.6%に相当する。ドラフト・スタックは自立させるのでなく 、山の急斜面にそって建設可能であるが、得られる電力は少なすぎて経済的には意味がないであろう。バイオマスの初期投資に対するキャッシュフローが多いのは保守費と管理費が2.9%余計にかかるためである。

風力発電はハブ高68m、公称出力1,500kWのウィンドタービンを10基建設するシナリオで建設費は220,000yen/kWとした。発電単価は年間平均風速5m/sec、設備利用率22%の立地ケースと年間平均風速6m/sec、設備利用率31%の立地ケースにつき別に試算した。

家庭用風力・太陽電池ハイブリッド発電の発電コストはタタミ1枚分のセルを使う小型のためとバッテリー蓄電して夜自家消費するタイプゆえ、発電単価は バッテリー別総発電量ベースで157yen/kWh、低負荷のインバーター効率が低く、バッテリー別の8W正味出力単価は1,882yen/kWhと上がる。バッテリー更新費上乗せ分は543yen/kWhである。

さて電事連および通産省発表の発電単価試算では下表のようになる。

  2003年 キロワット時当たり(円) 2008年 キロワット時当たり(円)
原発 5.3 6.0
石炭火力 5.7 7.0
LNG火力 6.8 9.6
石油火力 10.7 20.1
水力発電 13.6 13.6

表-8 電事連の発電単価試算の推移 (耐用年数40年、稼働率80%) 

原子力は安全を理由に電力負荷変動追従型の運転をしないで負荷変動を化石燃料、水力、揚水発電で吸収している、また遠隔地からの100万ボルト送電線コストと電力損失などはすべて配電コストとされている。結果として大口消費者は12yen/kWh、一般消費者は24yen/kWhを支払っている。配電コストを押し上げている原子力関連のコストは意図的に隠されているのは原子力優先思想のためなのだろう。

原子力は安全を理由に電力負荷変動追従型の運転をしないで負荷変動を化石燃料、水力、揚水発電に押し付けており、遠隔地からの100万ボルト送電線コストと電力損失などあるのでこの表は原子力正当化のまやかしでしかない。これらコストを含め、大口消費者は12yen/kWh、一般消費者は24yen/kWh支払らっているのだ。差が配電コストということになる。

ソーラーセル以外のソーラーエネルギー発電単価は既存の化石燃料や原子力発電に比し高いが、一般消費者に売る価格よりは低い。グリーン電力であるから炭酸ガス排出権取引とか二酸化炭素クレジットなど、何らかの助成メカニズムにより充分コマーシャルベースに乗る数値といえる。特に風力が13.1-9.4yen/kWhで商用として最も普及しているのはNEDO補助金制度が炭酸ガス排出権取引とか二酸化炭素クレジットの代行をしているためである。電力・石油税が道路目的税であるため、グリーン電力奨励のため一部が補助金として風力発電業者に還付されているのだ。総合資源エネルギー調査会はわが国の2010年の風力発電目標を3GWとしているが、ドイツでは2002年までに12GWを実現している。

商用バイオマス発電が普及しないのは林業者が欧米流の森林機械導入に関心をもたないため少量のバイオマスが分散していて集荷コストをまかなえためと おもう。有効な炭酸ガス排出権取引、二酸化炭素クレジットなど、何らかの助成メカニズムの整備がまたれる。

マイクログリッド構想もあるようだが、既得権益者がしばしば駆使する安定供給とか信頼性というお題目で高価なシステムにならぬよういのるばかりである。

これが2004年の現状であるが、化石燃料価格が上昇すれば、ガラリと様相が変わるはずである。ペトロコンサルタント社のキャンベル氏の予測に加えて中国の急速な経済成長をみればその時はマジカにせまっているような予感がする。

February 13, 2004


本試算はもう古くなった。最新のものはグローバル・ヒーティングの黙示録を参照願います。

Rev. July 9, 2008


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