三浦半島の風力発電

三浦半島の南端にある風力発電装置を見学に鉄馬で出かけた。三崎港で恒例の年末のマグロの売り出しをしていて134号線は武山駐屯地から渋滞していた。取って返し、武山宮田線をゆく。緩やかな丘の上の野菜畑のなかを走るのは心地よい。

お目当ての発電所は城ヶ島が見える三浦市の宮川地区にある。八景原を望む崖の上に発電機が2基ある。駐車場とトイレの完備したパークとなっている。1996年から2000年にかけて三浦市、NEDO、ニチメンが共同して行っているものである。COP3の合意を達成するためにNEDOが30-50%の補助金を出すため、採算に乗るようになった。

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三浦市の風力発電

説明看板によれば、デンマーク・ミーコン(N.E.G Micon)社製の400kWで、直径31mのFRP製ローター3枚羽、ストール型アップウインドとのこと。風速3m/sで発電を開始する。14m/sで定格出力が出る。最大風速は60m/sである。 強風では羽がストール(失速)して回転が増えないような自己平衡設計となっている。発電機を収納したナセルの上に設置した小型の風向計で強制的にヨー制御(風向追従制御)をする。発電機は誘導型のはずである。系統連系をしている。

たまたま1台は停っており、風下の海側を向いていた。近くに行くと羽の風切音に加え増速ギヤの騒音が聞こえる。35メートルの塔を基礎に結合する方式はフランジではなくコンクリートから円周に沿って林立する亜鉛メッキプレートと円筒をボルトで直接締める方式のため、応力集中がなく軽量な構造となっている。

デンマークのFrederik皇太子殿下が October 20, 1997にここを訪れたとある。国産風車のメーカーは1社(三菱重工)のみで、デンマーク、ドイツが風車発電の先進国で競争力あるメーカーが多い。

風車の建設費は風車のローター直径の3乗に比例する。しかし出力はローター直径の2乗に比例する。このため大型化は不利と考えられるが、ウインドシアーがあり、上空の速い風を捕まえられるため大型の方が有利となる。最近では1、000kWを越えようとしている。国の補助が継続される限り、発電機の大型化や設置台数は今後も確実に増えるだろう。

三浦市の場合、近くに容量の多い高圧送電線があるため、送電線コストは少ないが、僻地で大型発電をするとなると近くに容量の大きい特別高圧送電線線がなく、送電コストもバカにならない。

風車はカウルなどの内部に設置することはできず自由に流れる大気の流れに身をまかす、したがって風の半分は羽にふれずに周りに逃げることができる。この限界をベッツの限界 という。

朝日新聞によればMHIなど国産の風車の価格は1MW当たり1億円。(10万円/kW)一方、輸入の風車は2.2万円/kW。

この風車は双眼鏡を使えば、空気が透明度を増す冬季間、七里ガ浜から見ると2個の風車が荒崎の向こうに見える。

1999年12月30日現地取材

Rev. May 1, 2004


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