'99年11月


「ルート9」 - Route 9 -

 デヴィッド・マッケイ監督、カイル・マクラクラン、ウェイド・アンドリュー・ウイリアムス、ピーター・コヨーテ。東京ファンタスティック映画祭にて。
 麻薬取り引きの仲間割れの現場を目撃した二人の警官が、現場を偽装し金を横取りする。嘘が嘘を呼ぶ、という「シンプルプラン」的な展開。主人公が警官というところがポイントではあるのだけど、途中からは中だるみが激しく、退屈だった。ほとんど、意外性が無かった。


「ダークネス&ライト(原題)」 - 黒暗之光 - ☆

 チャン・ツォーチ監督、リー・カンイ、ツァイ・ミンショウ。
 東京国際映画祭コンペテション。結局は東京グランプリ、東京ゴールド賞、アジア映画賞と総なめとなった作品。確かに面白かった。
 
 全盲の両親と知的障害の弟を持つ17歳の少女カンイが主人公。夏休みで帰省していたカイン、やくざの少年アピンの交流を描く…。淡々とした展開ではあるけど、最後まで心にしみていき、素晴らしい余韻を残す映画だった。


「めまい 完全復元版」 - Alfred Hitchcock's Vertigo (Fully Restored) -

 アルフレッド・ヒッチコック、ジェームス・スチュワート、キム・ノヴァック、バーバラ・ベル・ゲデス。ファンタスティック映画祭における、ヒッチコック生誕100年。映像と音声を修復したバージョン。
 修復の度合はよく判らなかった(^^;)。しかし、面白さは変わらず。「めまい」でいつも不思議なのは一番悪いやつの話はどっかに行ってしまっている事(^^;)。


「ナン・ナーク〜ゴースト・イン・ラヴ〜」 - Nang Nak -

 ノンスィー・ニミブット監督、インティラー・ジャルンプラ、ウィナイ・グライブット、プラモート・スックサティット。
 
 タイの古い、有名な幽霊物語、らしい。牡丹灯篭、番町皿屋敷みたい情念の世界。タイの昔の農村の雰囲気が上手く出ていて、映像は美しい。しかし、展開は退屈で盛り上がりもない。眠かった。最後は平凡ではあるが、急に仏教かかってくるところはタイらしく、ちょっと面白い。


「ツイン・フォールズ・アイダホ(原題)」 - Twin Falls Idaho -

 マーク&マイケル・ポーリッシュ兄弟監督脚本出演、ミシェル・ヒックス。
 1999年東京国際映画祭コンペティション部門。
 結合性双生児<シャム双生児>のブレイクとフランシスは、ある日、ホテルの部屋に娼婦ペニーを呼び寄せるのだが…。全体が陰鬱な雰囲気、静かな展開は妙な魅力を持っているけど退屈であった。最後は心に残る部分があったけど。


「シックス・センス」 - The Sixth Sense -

 M.ナイト・シャマラン監督脚本、ブルース・ウィリス、ハーレイ・ジョエル・オスメント、トニ・コレット、オリビア・ウィリアムス。
 
 死者が見えるという8歳の少年コール(ハーレイ・ジョエル・オスメント)。コールの治療をすることになる小児精神科医マルコム・クロウ(ブルース・ウィリス)が主人公。
 (日本だけだと思うが)、最初に入っている"警告"の字幕は止めて欲しかった。全体の謎が簡単に判ってしまって、意外性がまるで無くて退屈だった。
 それでも、洗剤のシーンとかかなり恐く、またジーンと来た。予告編からはホラーっぽい宣伝だったが、実際は違う映画だった。

→ 「シックス・センス」 Official Website


「Who am I?フー・アム・アイ」- 我是誰 -

 ジャッキー・チェン監督脚本武術指導主題歌主演、ミシェル・フェレ、山本未来、ロン・スメルチャク、エド・ネルソン。

 アフリカでの特殊任務からの帰還中、事故にあうが一命を取り留めたジャッキー(ジャッキー・チェン)。すべての記憶を亡くし"フーアムアイ"と名乗る事になる。ジャッキーは、多くの障害を乗り越え、自分の記憶を求めて行く…。
 純粋なジャッキー印として安心して見られる。期待以上では無いが十分な出来。ラストのカンフーも迫力あるし、アクションも凄い。オランダだから木靴でアクション、という単純な発想もジャッキーらしい。
 
「Who am I?フー・アム・アイ」 - MOVIE Watchの紹介ページ


「梟の城」

 篠田正浩監督、司馬遼太郎原作、中井貴一、鶴田真由、葉月里緒菜、川上辰隆也、永澤俊矢、根津甚八、山本 學、火野正平、津村鷹志、マコ・イワマツ、筧利夫、花柳錦之輔、馬渕晴子、田中伸子、小沢昭一、中尾彬、岩下志麻。

 織田信長によって一族を惨殺され生き残り、山中で独り住む伊賀の忍者葛籠重蔵(中井貴一)は、徳川方から豊臣秀吉(マコ・イワマツ)の暗殺を命じられた。京へ向かう重蔵に接近する謎の女小萩(葉月里緒菜)、軽業師のくの一木さる(葉月里緒菜)、奉行所の隠密(風間五平),甲賀の総帥摩利支天洞玄(永澤俊矢)などが絡み合う…。

 部分的には面白い部分もあるのだけど、情けない映画だった。登場人物それぞれは魅力あるし俳優も凄い。演しかし登場はさせながら活躍はしない。結局、ほとんどの人は薄っぺらな役で終わっている。多分小説ならそれぞれが十分に書き込まれていると思うが。
 CG、合成の使い方も情けない。お金が無いから合成というのはあんまりに短絡的。金が無いなら、工夫というモノがあるのでは無いか。
 
「梟の城」 Official Website


「トーマス・クラウン・アフェアー」 - The Thomas Crown Affair -

 ジョン・マクティアナン監督、ピアース・ブロスナン、レネ・ルッソ、デニス・レアリー、ベン・ギャザラ、フェイ・ダナウェイ。

 鮮やかな手口で美術館から盗まれたモネの名画を追う保険調査員キャサリン・バニング(レネ・ルッソ)。彼女が目を着けたのはトーマス・クラウン(ピアース・ブロスナン)。表向きはニューヨークの投資会社社長だが、裏では冒険を好む男。

 1968年スティーブ・マックィーン&フェイ・ダナウェイの「華麗なる賭け」のリメイク。フェイ・ダナウェイは、今回、精神分析医として特別に出演する。
 「黄金の7人」シリーズ、「トプカピ」、「ルパン三世」と怪盗モノは好きではあるのだけど、これは、今ひとつ乗れなかった。最初と最後はいいんだけど、途中はお洒落にお洒落に作ろうとしていて、実際は退屈。マグリッドの絵に象徴される、胸に空いた空虚な穴も嘘っぽいだけな感じがする。

「トーマス・クラウン・アフェアー」Official Website


「アナライズ・ミー」 - Analyze This -

 ハロルド・ライミス監督、ロバート・デ・ニーロ、ビリー・クリスタル、リサ・クードロー。

 ニューヨーク最大のマフィアのボス、ポール・ヴィッティ(ロバート・デ・ニーロ)は、ストレスから突然、感情の起伏が激しくなる発作に悩む。彼は、偶然知り合った気の弱い精神分析医ベン(ビリー・クリスタル)に治療を頼み込むが…。
 精神分析医という職業を使っているのが上手いが、何よりマフィアのボスが涙もろくなり威厳が保てなくなる、この設定が最高に面白い。ビリー・クリスタルも、ぴったりの役柄を上手く演じている。マフィアの前で演説するシーンなんか、なかなか傑作。小品ではあるけど、上手くまとまっていて楽しめる。

「アナライズ・ミー」 Official Website


「黒い家」

 森田芳光監督、貴志祐介原作、内野聖陽、大竹しのぶ、田中美里、西村雅彦。
 「失楽園」「39 刑法第三十九条」と最近、再び冴えた雰囲気の森田芳光であるが、これは半分満足、半分不満足。原作の面白さは出てないし、新しい魅力も出てない。大竹しのぶは魅力的ではあるけど、ボーリングをしているシーンみたいな方がずっと恐い。西村は、演技過剰でスクリーンに収まりが悪い。森田芳光なら、もっと心理的な嫌悪感、人間の中の悪意など、もっともっとリアルに描けたと思うんだけど。

「黒い家」Official Website
原作「黒い家」感想


「将軍の娘エリザベス・キャンベル」- The General's Daughter -

 サイモン・ウェスト監督、ジョン・トラボルタ、マデリーン・ストウ。
 ジョージア州の陸軍基地の中、将軍キャンベル(ジェームズ・クロムウェル)の娘、エリザベス(レスリー・ステファンソン)が全裸の変死体で発見される。その捜査に当たるブレナー陸軍捜査官(ジョン・トラボルタ)とサラ(マデリーン・ストウ)。

 閉鎖された軍隊という社会が捜査の壁になる、というのは「ア・フュー・グッドメン」や「戦火の勇気」でも使わている、目新しい設定でも無い。組織の中の人の描写も上手くないし、親子の愛情が絡み方も下手。結局は、意外な真相ではあるけど、すんなりと納得出来ない。ミステリー仕立てに失敗していると思う。結局、描きたいモノが何も伝わって来ない。

「将軍の娘エリザベス・キャンベル」 Official Website


「映画サラリーマン金太郎」

 三池崇史監督、本宮ひろ志原作、高橋克典、羽田美智子、恵俊彰、山崎務。
 
 元暴走族のサラリーマン矢島金太郎は、ヤマト建設の東北営業所に赴任。日常化している公共事業の談合、不正に立ち向かう…。
 本宮ひろ志原作の古臭い価値観が、今だに通じるのは不思議な気がする。権威に反発していそうで、実は会社や暴走族や権力者をバックに持った権威主義なのが鼻につく。主演の高橋克典は悪くないけど、羽田美智子は最悪の演技。とってつけたような過去の謎までオマケに付いているし。わき役の津川雅彦、野際陽子も存在するだけで馬鹿らしい。

 三池崇史も、「中国の鳥人」や「岸和田少年愚連隊 血煙り純情篇」は面白かったのに、最近は「アンドロメディア」とかコレとかプログラム・ピクチャばかりで可哀想。


「白痴」☆

 手塚眞監督、坂口安吾原作、永瀬正敏、甲田益也子、橋本麗香、草刈正雄。

 過去とも未来とも判らない戦争中の日本のどこか、TV局「MEDIA STATION」で働く伊沢(永瀬正敏)は人生に絶望している。その隣に住む木枯(草刈正雄)とその妻、白痴のサヨ(甲田益也子)。戦意高揚番組ばかりのTVで、カリスマとして君臨するアイドルの銀河(橋本麗香)。部屋に忍び込んできたサヨを伊沢は部屋に匿う…。
 
 長編を作ってなかった手塚眞は、劇場用映画としてはダメだろうと思っていたが、これは意外な程、面白かった。映像は新鮮だし、妙な世界観の演出も上手い、キャラクタも一人一人が実にヘンで面白い。
 原作のテーマが上手く描けているかどうかは、よく判らなかったが、単純に映画として気に入った。 銀河のビデオがオリエンタル・ポップで最高。
 
「白痴」 Official Website


「皆月」

 望月六郎監督、花村萬月原作、奥田瑛二、北村一輝、北村一輝、荻野目慶子。
 
 原作は第19回吉川英治文学新人賞を受賞した花村萬月の小説。「みんな月でした。がまんの限界です。さようなら。」という謎の手紙を残し、妻(荻野目慶子)は全財産を持って疾走。残された夫の諏訪(奥田瑛二)は、チンピラの義理の弟アキラ(北村一輝)と、諏訪を愛するソープ嬢の由美(北村一輝)とともに妻を探す旅に出る…。
 それぞれのキャラクタも面白いし、筋立てもいい。しかし、なんか、古い映画を観ているような印象が強い。これは演出のせいだろうか。見終った後は、妙にいい印象だったが。北村一輝のチンピラぶりが上手い。

「皆月」 - Official Website ? (にっかつ内)


「黒の天使 Vol.2」

 石井隆監督、天海祐希、大和武士、片岡礼子、鶴見辰吾、 伊藤洋三郎、山口祥行 、小林滋央、野村祐人、速水典子、飯島大介、村松恭子。

 「黒の天使Vol.1」とはストーリ的に繋がりは無い。
 "黒の天使"と呼ばれる殺し屋の魔世(天海祐希)は、東陽組組長の暗殺に失敗。巻き添えで夫を失った花屋のすず(片岡礼子)、ボディーガードの山部(大和武士)はかつての魔世の恩人、三人の運命が交錯する…。
 天海祐希は、「クリスマス黙示録」、「MYSTY」といい印象が無かったけど、これはよかった。殺し屋としてはイマイチ迫力に欠けて弱気だけど、過去を背負っている雰囲気がいい。
 「黒の天使」のキーワード、夜、雨、憎しみ、復讐、暴力
 石井隆ワールドとしては、「 」なんかの方が好きだけど。
 
→ 「黒の天使 Vol.2」- @Niftyの記事


「月光の囁き」

 塩田明彦監督脚本、喜国雅彦原作、水橋研二、つぐみ、草野康太、関野吉記、井上晴美。

 紗月(つぐみ)は極普通の少女だが、拓也(水橋研二)はフェティシズム、マゾヒズムな愛情を求めている。「谷崎潤一郎を漫画で」という喜国雅彦の原作の意図は判るけど、なんか今の時代に合わない様な気がした。ショッキングでも無く、単にヘンに感じるだけ。倒錯の愛を越えた向こうにある純愛みたいなモノはまるで見えて来ない。
 映画は、原作のイメージよりは、ずっとまともな感じがする。これは映画向けにスポイルされているのか?原作の方がもっと変態っぽい感じがしたけど。どっちにしろ、あんまり好きになれなかった。

「月光の囁き」映画情報 - 「喜国雅彦のページ」


「君のいた永遠<とき>」

 シルヴィア・チャン監督脚本主演、金城武、ジジ・リョン、カレン・モク。
 舞台は1977年。年上の受験生との恋と破局、思春期の恋愛模様を描いているんだけど、どうも、役者が若く見えないのが気になってしまい、物語に集中出来ない。ストーリ自体は、平凡ではあるけどそれほど悪くは無いのに。カレン・モクが学生に見えないとか、そういう印象ばかり残ってしまった。


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