'97年5月


「マイケル」- Michael -

 ジョン・トラボルタ主演で天使役(^^;)。それを取材するタブロイド紙の記者がウシリアム・ハートとアンディ・マクドウェル。
 トラボルタ演じる天使はデブで酒のみ、タバコを吸って、ダンスはするわナンパはするわの性格。
 で、いながら全体はコメディでもなくて、ハート・ウォーミングなストーリになっているのが不思議だけど、ちゃんと成立している。結構楽しめました。

 トラボルタは、大抵の映画でダンス・シーンがあるなあ。20年たっても「サタデー・ナイト・フィーバー」の影響は強い。


「マキシマム・リスク」- Maximum Risk -

 ジャン=クロード・ヴァン・ダム主演、リンゴ・ラム監督。
 去年、「ブロークン・アロー」でジョン・ウーが香港監督の才能を見せつけてくれたので、今回のリンゴ・ラムも期待していたのですが…、残念ながら期待外れ。
 最初と最後のアクションが及第点なぐらいで、途中の展開は退屈でした。どこがどう悪いか指摘するのは難しいけど、パワー不足を感じます。


「八日目」- Le Huitie Me Jour -

 仕事中毒で妻や娘にも愛想をつかされ別居中の銀行員(?)。ひょんな事から連れになった、ダウン症の青年を送り届ける。半分はロードムービーで、やがて二人の心が通いあうパターン。「レインマン」などを連想する映画。

 しかし、最後の最後は納得出来ない。
 日本ダウン症ネットワークが協賛しているみたいだけど、あれでいいんだろうか。
 「トト・ザ・ヒーロー」のジャン・ヴァン・ドルマン監督。映画全体はヒューマニズムの雰囲気だけど、この監督って結局そういう人じゃないのじゃないかな??


「ファースト・ワイフ・クラブ」 - The First Wives Club -

 ベット・ミドラー、ダイアン・キートン、ゴールディ・ホーンというベテラン3人を主演、監督は後で知ったのだけど、「ポリス・アカデミー」(1のみ)の監督のヒューイ・ウィルソン。
 大学時代の親友が再会し、それぞれの夫たちの身勝手さに報復するために結束する。 観ていて、「9時から5時まで」みたいな印象を持ったけど、あそこまでの痛快さは無かった。作戦自体が地味で、あんまり面白くなかった、脚本の力不足かな。  それぞれの女優は、今だにエネルギッシュで演技もいいけど。

 ちなみに、ぴあでは、ヒューイ・ウィルソンを「ポリス・ストーリー」の監督って書いてあった。それは、ジャッキー・チェン(^^;)。


「誘拐」

 試写会で見ました。
 主演は渡哲也、永瀬正敏。ストーリは題名そのまま誘拐。予告編では、犯人が身代金の受け渡しをTV中継させる所が出てくる。そういう誘拐犯との攻防がメインかと予想していたのだけど、予想はちょっと外れてました。とにかく、犯罪自体が面白い。そこが脚本の狙いだと思うけど、犯罪自体が持つ目的と、巧みなミス・ディレクションが見事。脚本は、'95の城戸賞の受賞作、森下直。うまいと思いました。

 この様に、ストーリ自体はいいと思うのだけど、とにかく渡哲也、永瀬正敏のオーバーな演技が鼻につく。永瀬はシンプルな演技だと味があるんだけど。演技自体で映画全体の質を落としてます。

 「大誘拐」という映画はあったけど、そのまま「誘拐」というタイトルが今まで使われてなかったのは意外。


「瀬戸内ムーライト・セレナーデ」

 篠田正浩の少年三部作の完結編。「瀬戸内少年野球団」「少年時代」とも、それぞれにいい映画だったので、それなりに期待してました。
 「少年時代」は最高の出来の映画だと思うので比較すると可哀想かもしれないけど、「瀬戸内少年野球団」ぐらいは楽しめました。

 長男の遺骨を故郷に納骨するために淡路から神戸、宮崎へ旅する一家。少年役もいいけど、父親役の長塚京三の堅い演技、高田純次も使い方がうまく役にはまっていたし、吉川ひなのも全体の中で異質だけど印象的。
 ちょっと盛り上がりに欠ける気はしたけど、楽しみました


「ザ・エージェント」- Jerry Maguire -- ☆

 ここ数年のトム・クルーズの出演映画の中では一番面白かった。いや、もしかしたら初主演の「卒業白書」以降、一番いいかもしれない。やはりベストは「卒業白書」だと思うけど(^^)。

 金にまみれたスポーツ界の大手エージェントのジェリーが主人公のトム・クルーズ。ちょっとした事から会社の方針に対抗する提案書(メモ(^^))をまとめ、クビ、そして独立。独立の苦しみから、秘書との恋。

 ストーリは単純だし、派手さはないけど、それぞれの役者が実にいい味が出ている。ホントにちょっとした端役まで、気がきいている。ジャズ好きの保父とか(^^)。

 特にヒロインのレニー・ゼルウィガー、どこにでもいそうな顔でどんな映画に出ていた観ながら悩んでいたけど、後で調べると実はこれがメジャー・デビュー。それで堂々とトム・クルーズと渡り合う風格は素晴らしい。子役、ジョナサン・リップニッキーも、忘れられない印象を与えるいい演技。
 ちなみに、クルーズの婚約者役のケリー・プレストンはトラボルタの奥さんだそうで…恐いキャラクタだった(^^;)。

 タイトルが「ジ・エージェント」じゃないのは、英語教育上、ちょっと問題かもしれない(^^;)。


「天国の約束」- Two Bits -

 大恐慌の最中が舞台。(多分イタリア系の)一家、死を目前(その割にはかなり元気)とするアル・パチーノとその孫の交流がメインのストーリ。

 わずか一日の間に少年の回りに起こる出来事、それぞれ派手さは無くても、心にしみるエピソードで、その重ね合わせの妙が気持ちいい。
 大作では無いけれど、気に入りました。


「ラジュー出世する」- Raju Ban Gaya Gentleman -

 日本でメジャーに公開するインド映画はそれほど多くないし、社会派か芸術派のものが多い。でも、この「ラジュー出世する」は、完全にエンターテイメント系。パワフルで、かなり面白い。ちょうど香港映画がピークに達する80年代終りより、数年前の登り坂と同じ様なハチャメチャでパワーあふれてる映画。意味なく、ミュージカル場面に突入するのも、香港的(^^)。

 細かいストーリはどうでもよくて、田舎からボンベイに出てきた男が、何故かモテモテで、オマケに出世街道を登り始める。挫折からまた復活するんだけど、もうこの適当さが素晴らしい(^^)。

 2時間39分とインド映画にしては短いかもしれないけど、日本ではかなりの長尺。途中で休憩が入るし(^^;)。それでも、飽きあせない。

 もしかして、インド映画がブレイク?って予感をちょっとさせる。


「恋は舞い降りた」

 どうせ、トレンディ系だと思って期待してなかっただけに、まあ面白かった。間違った死、天使と、再生への条件などなど、古今東西、何度も使われたネタでありながら、まあ、退屈はしない。最後のまとめ方とか、なんか未消化な部分も多い。…考えてみると、ほとんどいい所は無いなあ(^^;)。

 江角マキコは、「幻の光」の味のある演技とはまるで違って、その後のTV的なコミカルなキャラクタ作りでちょっと不満。玉置浩二、唐沢寿明も同じコミカル系のキャラクタかな。

 ま、それほどよくは無いけど、ちょっとしたラブコメとしては及第点。


「イングリッシュ・ペイシェント」 - The English Patient - ☆

 噂通り、面白かったです。アカデミー賞を総なめしただけあります。

 この映画をジャンル分けするのは凄く難しい。背景は第二次世界大戦だけど、戦争映画では無いし、謎解きが面白いのだけどミステリーでは無い、恋愛映画というのが近いかもしれないけどちょっと単純過ぎる気もする。
 飛行機の不時着で記憶を無くした重症患者が語る、6年前の人妻との恋愛物語。美しい映像と謎めいたストーリ展開。これだけでも十分なんだけど、最後で秘密を明らかにしていく畳みかけた語りは、ホント圧倒されました。
 2時間42分の長さはまったく感じさせません。

 豊かな曲線を描く砂漠、また戦争で荒れ果てた教会、アフリカの雑踏、それぞれの映像が実に官能的、計算された美しさです。
 いや、確かに面白いです、この映画は。

 ビノシュは助演で受賞しましたけど、内容的には主演の様な気がする。ちょっとビノシュ贔屓ですけど(^^;)、いい役でした。


「SPACE JAM」

 マイケル・ジョーダンとワーナーのアニメたちが主演(^^;)。

 宇宙人のチームとバックス・バニーらが対決にマイケル・ジョーダンがかりだされるんだけど、まあ、動機も試合も展開も、あんまり面白くない。全体に盛り上がりも、工夫も欠けていて、まあしょうもない映画です(^^;)。
 ちなみに、もうすぐ「フープ・ドリーム」という、やはりバスケットの映画がロードショーされますが、こちらの方が面白そう。


「カーマ・スートラ 愛の教科書」 - KAMA SUTRA -

 シネスイッチ銀座の単館ロードショーとは言え、驚くほど混んでました(^^;)。中年夫婦と見られる観客が9割なんだけど、内容が内容だからか…?何か不思議な現象でした。

 監督は、「サラーム・ボンベイ!」の女流監督ミラ・ナイール。比較的硬派な人だと思ってたので、題材としては意外でした。まあ、題材の割りには比較的おとなしくて、メインとなるストーリは国王と妻と妾と、その愛憎劇。カーマ・スートラの話より、インドの踊りの時の目と手の動きとかそっちの方が色っぽかったです(^^)。

 ちなみに、「カーマ・スートラ」自体は翻訳はされているけど、ホンの少数だけ出版されインド哲学の研究者だけが持っていると、昔読んだ事あります。現在でもそうなんでしょうか?
 ちなみに、画が永井豪、構成が長谷邦夫(徳間書店)というコミック化されたのは読んだ事あります。


 「コーカサスの虜」 - KAVKAZSKI PLENNIK - ☆

 チェチェン紛争の中のコーカサス地方。捕虜になったロシア兵二人、敵の捕虜になっている息子とロシア兵を交換しようとする父、その幼い娘。大きな事件も起こらない、比較的淡々としたストーリ展開。のどかな田舎の風景と戦争というのが逆に、不思議な緊張感を出している。
 ラスト・シーンはかなりショックを受けました。凄く恐い、本質的な恐さを一気に出した様で圧倒されました。

 凄くいい映画でした。お勧めです。


「祝祭」

 もう、これは完全に韓国の「お葬式」です(^^)。パクっている事は明白。設定が凄く似ていて、不倫関係とか、主人公が小説家だとか。それでいながらストーリには儒教的な要素が強くて、特に仲間外れになっている一人の女性をめぐる人間関係の描き方なんか、うまかった。
 最後は、やはり「お葬式」に似ているけど、それなりにまとめてなかなか面白い映画でした。
 監督はイム・グォンテク。


「クルーシブ」 - THe Crucible -

 監督はニコラス・ハイトナー、主演はウィノナ・ライダー。
 魔術の真似事をごまかすために、悪魔にとりつけれた振りをする少女たち。それがやがて魔女狩りに悪夢に発展する。
 比較的真面目な作りで、悪くは無いのだけど、それだけにちょっと面白くなかったです。綺麗だけど、性格悪そうな役にウィノナ・ライダーはよく似合ってました(^^;)。


「MISTY」

 無能な監督の平凡な才能を99分間延々と見せられる覚悟があれば行くのも一興。さもなくば、避けて通るべき映画でしょう。
 黒澤の「羅生門」のリメイク、芥川の「薮の中」が原作。監督三枝健起、この巨匠たちに立ち向かうどころか、並みの映画の足もとにも達してないです。自己満足な映像だけで、ただひたすら退屈。どうしたらこういう企画が出来るのか不思議でしょうがありません。わざわざ屋久島まで行って、こんな下らない映画を撮るとは…。

 音楽が三枝成彰がやっていますが、監督の枝健起って関係あるんでしょうか??

 主演は豊川悦司、天海祐希、金城武。キャスティングの妙はあるんですが、まるで活かされていません。天海祐希は最低の映画「クリスマス黙示録」に続いてまたもこんな映画に出てしまって、三作目はあるんでしょうか(^^;)。彼女自身が悪いとも言えないんですが。


「人間椅子」

 江戸川乱歩の「人間椅子」の中から、"触感の官能"というテーマを取り出し、それをベースにストーリを膨らませて一本に仕上げてます。この創作の仕方自体は結構うまいと思う。やはり、長編にするにはちょっと物足りなくて、やや冗長性を感じる。雰囲気は出てて、なかなかいいんだけど。清水美砂の色っぽさもよい。
 ラストへの持っていき方はちょっと強引だけど、結構好きな映画です。
 監督は水谷俊之。


「失楽園」☆

 面白かった。それが原作の力というよりは、個人的には監督の森田芳光の腕だと思うのだけど。結局は相互にうまく作用してるのかな。

 全編に、初期の森田芳光を思い出させるような、実験的な映像が随所に見られる。唐突な回想の挿入、白黒映像、極端なアップ、不思議なアングルとあるけど、それぞれが効果的に成功している。特にベットシーンに使われている、アップやアングルの使い方はエロティシズムの表現として斬新で効果的、そしてなにより美しい。特に黒木瞳の成熟しているようで純真な姿態が非常に素晴らしいです。女の人が見れば役所広司の方がいいのかもしれないけど(^^;)。

 日経新聞に連載されている頃には、まるで知らなかったのですが、結構話題になっていたとか。渡辺淳一の小説自体は、あまり好きではないのだけど、結構読んでます。これも、いずれ原作を読んでみたくなりました。

 映画自体、ベットシーンの連続だけど、エロティシズムの向こうに隠れているプラトニックな部分が見えないと、単なるエロ映画で終わってしまうかも。じっくり見ましょう(^^)。


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