2003年5月15日

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サッカー

東アジア選手権延期発表会見
(東京・都内ホテル)

レポート・古賀祐一

 東アジアサッカー連盟(岡野俊一郎会長)は15日、都内ホテルで会見を行い、日本、韓国、中国、香港の4チームが参加して28日から横浜国際総合競技場で開催する予定だった第1回東アジア選手権を延期すると発表した。開催地である横浜市の中田 宏市長が、中国、香港などで感染が拡大している新型肺炎(SARS)を懸念し、前日14日夜に岡野会長に延期を要請した。これを受けて、岡野会長はこの日午前、川淵三郎キャプテン、鈴木昌副会長(Jリーグチェアマン)ら日本サッカー協会幹部と緊急会議を開き、延期を決定した。日本代表は、13日に同選手権の予備登録30選手を発表しており、この中から最終登録20選手にバックアップGKを加えた21人で25日から横浜市内で合宿に入る予定だった。延期を受けて、ジーコ監督は日本サッカー協会と日程変更の調整に入り、22日に発表するメンバーで国内合宿を行うことを決め、期間中に1試合テストマッチを行うことを要望した。やはりSARSを懸念したナイジェリアが来日を中止した6月11日のキリン杯第2戦の対戦相手も未定なままで、ジーコ監督の強化プランは大幅修正を余儀なくされる。なお、同選手権の入場券が3日間で合わせて13万2124枚売り出されているが、日本サッカー協会では払い戻しを行う方向で準備を進めている。

岡野俊一郎会長「本来なら参加チームの選手を発表し、我々の準備を披露する会見で極めて残念な発表をせざるを得ない。昨日、中田市長と2人で会談を持ち、大会を延期してほしいと強い要請があった。SARSの問題が取り上げられ、日本国内の競技、海外遠征が延期、中止が報道されている。そこで心配した市民のみなさんが市長、同本部に心配の声をメールで寄せ、議会でもそうした声を取り上げる動きが出ていた。厚生労働省が市に対して延期、中止をする考えはないかと問い合わせもしていた。市長も何とかやりたいとがんばって、SARSが沈静化しないか我慢していた。だが、ここにきて万が一、横浜市からSARSの感染者が出たら社会的責任が大きく、市民を守ることから延期したいと市長は話していた。私は今朝、日本サッカー協会の川淵キャプテン、鈴木チェアマンら幹部と協議し、私から中田市長の話を説明し議論した。大会まで2週間の現時点で、別の会場、開催方法を見つけることは不可能と判断し、中田市長の立場に配慮し、延期を受け入れることにした。東アジア連盟、日本協会はこれまで日本国がやっている以上のSARS対策をやってきた。しかし、市民の懸念は一般観客の中に感染者がいてSARSが広がってしまうことだ。我々の守備範囲を超える問題で延期を受け入れざるを得ない。いつやるのかは極めて難しい。SARSの撲滅はいつになるのか誰も読めない。東アジア連盟、出場国の協会、理事とできるだけ早急に話し合いを持ちたい」

平田竹男GS「本日、東アジア連盟の岡野会長から、横浜市から大会を延期を要請されたという話があり、日本協会ともども話し合い延期を決定した。日本のみならずアジア各国のファン、サポーターのみなさんに申し訳ない。苦労してチケットを入手された人もいるので残念に思う。払い戻しをする方向ですが、本日準備ができていないので、準備でき次第、情報を流したい。ジーコ監督、田嶋技術委員長とも話したが、コンフェデレーションズ杯に向かって一連の強化スケジュールが変更を余儀なくされ心配している。キリン杯の2試合も含め試合を組みたいと思う。空いた日程は、国内で合宿する。メンバー発表は予定通り22日に行う。合宿の日程、場所は再検討する。練習試合など現場の希望があれば検討したい。中止によって東アジアが危険視される懸念は否定できない。ただ、サッカーファミリーの間では、アジアの感染国と日本との違いは理解されている」

川淵三郎キャプテン「ファンに対しても、私自身にとっても非常に残念。横浜市民のみなさんがSARSの心配があって、そういう意見を中田市長が尊宅され延期を要請してきた。我々としては強行するわけにはいかない。我々は関係省庁、横浜市とも話し合い、安全性を考えながら、推進してきた。中国や香港も隔離した中で練習し、健康診断も行い、影響がない形で準備してもらってきた。サポーターも来ないという前提があった。中国、香港の人たちが入国を禁止されている中での延期ならわかるが……。しかし、市民のみなさんの心配も当然。非常に複雑だ。日本と各国の信頼関係に影響を与えないかと思う。各国とも親密に連絡していきたい。中国は新しいチーム、韓国は欧州の選手も来ている。楽しみにしていただけにファンにも申し訳ない。強化面でも多少影響がある。米国遠征も中止して、いろんな問題がありすぎて仕方なのないことだが。W杯に向けてアウェーの試合を今まで以上に準備しなければいけない」

ジーコ監督「残念な形だが、健康上の問題だから仕方ない。1日も早く原因を究明して、ワクチンが開発されることを望むだけだ。前向きに考えたい。流れに任せる。流れに逆らってやろうとしても、いい結果は得られない。数試合なくなることになるが、選手を集めて自分たちのやり方を確認し、次に来る重要な大会に万全な準備に使いたい。世界中にはいろんなことが起こる。何が起こっても動じないことだ。今の時点での考えでは、25日に招集してアルゼンチン戦前に1試合やりたい。ただ、すぐに来てくれるところを探すのは難しいと思う。合宿の参加人数は、試合を組めるかどうかで違う。予備登録の30人の中から選ぶのは当然だが、試合が組めないならキリン杯に招集する23人で練習したい。(やりたい)試合は大学生相手の試合のような調整のための試合ではない。(川口、稲本、鈴木以外の)欧州の選手は6月5日の合宿から呼ぶ予定に変更はない。確かに(米国遠征中止も含め)4試合ができたかもしれないが、後々の結果はわからない。こうなった以上、自分の置かれた状況で何ができるか。選手と一緒になってベストのものを引き出す気持ちがあればいい」



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