4月23日

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◆現地レポート!◆
サッカー日本代表スペインとの親善試合に向け練習
(23日スペイン・マルべージャ夜=日本時間24日未明)

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 日本代表は滞在3日目となるこの日、マルべージャで練習を行い対スペイン戦(25日、コルドバ9時45分キックオフ)に向けて「5バック」の確認を入念に繰り返した。練習は市内にあるマルパ・フットボール場で約1時間半行なわれ、練習前には初めてスペイン戦のビデオのダイジェスト版を見たという。その中で監督は、スペインは「直接FKからニアに飛び込め。それが大きな穴だ」と説明。またスペインのムニティスの名前をあげ、サイドに攻撃よりも守備的な意識をもつように発破をかけた。
 午後の練習はすべて守備だけに割かれ(この日午前には、攻撃的なポジションの選手がシュート練習は行なった)右サイドの波戸康広(横浜)、左サイドの服部年宏(磐田)がDFラインに加わった対スペイン戦「フラット5」の完成には、トルシエ監督自身、選手にもまだ戸惑いがあるようだった。
 また、この日の練習から、22日のウディネーゼ戦でパス、シュートともに切れ味鋭い動きを見せてローマの勝利を導いた中田英寿(ASローマ)がミラノ経由で合流。試合明けのこともあって別メニューをこなしたが、ランニングフォームにも軽快な動きが表われていた。
 代表は24日午前、マルべージャからコルドバにバスで移動し、前日練習を行なう。なお、スペイン代表は23日にコルドバ入りし、24日はカマーチョ代表監督が会見を行うことになっている。

名波浩(磐田)「フランス戦の反省を活かしたい。今回の守備的な布陣も、これが日本の戦術というのではなくて、今回のスペインでのオプションだと考え、選手もみな柔軟性を持って対応したいと思う。攻撃に割ける時間は当然減ってくるわけで、少ない人数で少ないチャンスをいかにものにするか、これは、日本サッカーの将来的なテーマでもあるけれど、これが重要になる」

服部年宏(磐田)「正直言って(スペインの攻撃の厚さは)フランスとはまた違うしんどさがあるだろう。こちらも5バックのやり方でまだまだ、頭を使わないといけないし、パニックにならないようにしないといけないと思う」

川口能活(横浜)「特に(5人が守るからといっても)超守備的というわけではないし、最終ラインが5人でサイドを意識して行こうということに過ぎないと思う。バックパスが多くなるので、それを戻って来たボールだと消極的に考えるんではなくて、前に積極的につなげたい」

波戸「今日スペインのビデオをダイジェスト版で見たが、うまくて速くて、もう凄いという感じ。けれども、それに対する形をしっかりやり抜けばいいのだと思う。スペインの得点はどれもすべてワンタッチだった。これに注意し、サイドとしては時には上がってもいい、ということは言われている。初めての代表でどうなるか、今は少しの不安もあるし、期待感もあります」

戸田和幸(清水)「自分の力を出し切りたい。それにはミスをしないことだと思う。結果は気にしない。自分が気にするのは、自分が力を出し切ったといえる試合をすることです」


「負けに来たわけではありません」

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 先発が予想されるFWの高原直泰(磐田)は、フランス戦では後半、大量失点してからの出場となっただけに、今回、もしも先発で出場できたならとFWとして秘めた思いは人一倍強いようだ。こちらに来てから見る報道では、日本が「とてもなめられている」と静かに笑った。事実、この日の練習でも中田が隣のピッチを一人で走っていたために発見することができず、スペインの取材陣は高原を中田だと思って撮影したり、伊東輝悦(清水)を中田だと勘違いしてインタビューをするなど、知名度は当然のことながらない。加えて、0−5でフランスに敗れたことは伝わっており、トルシエ監督がフランス人でチームをつれて凱旋、という一応の動機付けが成立したフランス戦より「何のための親善試合」といった色合いが強い。
「なめられたまま帰ることだけは絶対にしたくありません。ここに負けるために来ているわけではないのですから、ガツンと行きたいと思う」
 完全に守備を重視したシステムの中、それでも、FWにはボールを追うこと、十分な攻撃のためを作っておいて、ビルドアップを楽にすること、といった「縁の下」的役割もかかってくるはずだ。
 前を向いて勝負することを、試合のテーマにするそうだ。

 中田が合流し、中山雅史(磐田)は「何となくうれしいというか、楽しみだよね」と声を弾ませた。練習前には、リフティングやトラップを交えて2人でボールを回しながら笑顔を見せるなど、そこから雰囲気がほぐれていくような空気を作っていた。
「ヒデには、そのトラップじゃあダメダメ、って厳しいんですよ、アイツ。(中田が先日の記者会見をすべてイタリア語で通したことをあげて)俺がイタリア語を教えてやったんだよ、マンマミーアって。まあ、よくやってますよ、イタリアで」
 中山は、ジョークで周囲を笑いに包んだ。ムードメーカーなどと失礼なことは言うつもりはない。常に全力でボールを追っているのはこのベテランといわれる最年長の選手で、若手への小さな心づかいも忘れていない。
 しかし中山の姿勢が、チームにどんな影響をもたらしているかは、おそらく、試合でわかるのではないか。
 Jリーグを3試合こなしたことによって、フランス戦よりは選手それぞれがコンディションの良さを強調しており、気温も高いことで怪我、風邪といった不安の度数が多少減っていることもあるのだろう。チームには、危機感と同じように、フランスのときとは全く違うムードも感じられる。

 トルシエ監督は、練習中に波戸を怒鳴って明神智和(柏)に変え、明神にすぐに変えて稲本潤一(G大阪)を投入したかと思ったら、1プレーもさせずに波戸に変えるといったように、初めて披露するオプションのひとつ、5バックでの守備に戸惑いと混乱が見える。練習中監督は自らに言い聞かせるかのように「この試合で一番重要なのは、これまでのように、自信を取り戻すことだ。自信を持ち直して欲しいし、そのためにボディコンタクトには負けてはだめだ」と、大声を張り上げていた。



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