4月24日

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◆現地レポート!◆
サッカー
スペイン代表の試合前日の会見

(スペイン・コルドバ)

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 日本との親善試合に先だって、スペイン代表のカマーチョ監督、ラウル(レアル・マドリー)、パコ(レアル・サラゴサ)ら、宿泊先のコルドバ市内ホテルでが会見行った。
 なお、トルシエ監督の会見はこのあと行われる予定となっている。

カマーチョ監督「(スペイン代表のコンディションについて)今回はフランスを1−2で敗ったあとに、20人のメンバーを選んだが、結局18人になってしまった。今週の月曜日に合流したばかりで、しかもヨーロッパはどこもリーグ、カップ、すべてのタイトルの渦中にあり、選手は非常に高いストレスを感じている状態だ。今回は3日間、とにかく休むこと、体を休息させることに主眼を置いている。
 日本についてはビデオで3試合を観た。フランス戦とアジアカップの試合だが、これらを観て、日本は非常によく走るチーム、よく働くチームだと感じている。フランス同様、日本も開催国としての準備を入念に行っており、私たちが戦う相手として非常に難しく、整頓されているチームだと思う。メンバーを見てもほとんど変わっていない。8割がたがここ1年同じメンバーで戦っており、GKも2人。メンバーの名前については、あまりこまかいことまで指摘をしたくない」

ラウル「(日本の印象について)日本には非常にいい選手が多いと思う。私自身のコンディションは今、非常にいい状態だ。今回は(モリエンテスが故障のために)FWが変わるが、どちらにしても非常にいいFWで、自分は組みやすいと思っている。(スタメンが予想される)サルバは、2部リーグのチームにいながら18得点を奪っており、すばらしい選手だと思う。
 日本は3バックだということは知っている。ただ、サイドのスペースを突けばいいのではないかと思う。(日本のシステムが変わるようだが、と問われて)もしそうならば、それに対応する準備もできている。日本がフランスに0−5で負けたことは、日本にとっては残念なことだったと思う。けれども、それによって私たちスペインのサッカーが変わることはない。自分たちのサッカーをやるだけだ」


トルシエ監督記者会見
(スペイン・コルドバ市内ホテル)
24日午後


 日本代表トルシエ監督が会見を行った。スペインのメディアも出席し、約100人が集まった会見となったためか、質疑応答は迷走、脱線と荒れ模様で、50分の会見のうちスペイン戦に関する話は、トルシエ監督が常々口にする「日本が世界トップと対戦する際の攻撃に割ける割合とボールキープ率」並みに2割程度だった。
 代表はこのあと夜8時半から、試合会場となるスタジオ・エルカンヘルで公開練習を行う。

トルシエ監督の話「サッカーの伝統国なので、ここに来ることができてとてもうれしい。この試合は間違いなく、我々には不可欠な経験となる。これからも素晴らしい相手との対戦が続くことを思うと、これが本当に2002年への準備だと言える。明日の試合については、私は選手の出す答えと、フランス戦からあらゆる点での改善を待っている。
 私の実験室でもあり、この試合でコンビネーション、新しい選手、システムを試していきたいと思う。スペインのサッカーは今、元気だ。チャンピオンズリーグに2チーム残るような状態だが、私は逆に今こそスペインと戦いたいと願ってきた」

    以下、質疑応答:

──監督は選手に対して非常にアグレッシブな姿勢をとっている、たまに暴力的なものもある、と言われているようだが、本当ですか
監督 ええ、本当です。日本の記者に聞いてください。しかし私は、ファンハール(オランダの代表監督)、カペッロ(ASローマの監督)、あるいはまさにスペイン代表のカマーチョ監督らに比べればおとなしいもので、まるで天使のようなものだ。

──今日の練習(公開)では、スペインのメディアを驚かせるようなことが観られるのでしょうか
監督 いえ。今日は準備のひとつ。驚きはないだろう。世界42位のチームと5位(※順位が高い、の意)のスペインとを対戦させなくてはならないわけで、3日間くらいでは魔法のようなことができるわけはない。ただ今後も自分の仕事をやって、2002年まで幸い時間もある。小さい点も修正してレベルアップしていけばいい。私たちは蛇のように何度も皮が変ります(※通訳による表現のまま。脱皮する、の意)

──スペインに対しては、引き分けか勝利でなければダメなのでしょうか
監督 まったく気にしていない。大事なのは内容だ。結果は内容からついてくるもので、シナリオから生まれるものでもある。けれども、日本の記者から見ると、0−0の結果であってもよくはないということになるのではないか。8−3で負けてもその3点を喜ぶのが日本の記者で、3点を取った選手は一生食べていけるくらいのCMに出る。私はそれ(大敗してでも点を取ること)を願うしかないでしょう。すばらしい契約を結んでくれるはずだ。日本はそういう社会なんです。

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──明日は守備的なために攻撃とのバランスが取れないのではないか
監督 ゴールを狙える時間は全体の3割でしかない。Jリーグは半年しか行なっておらず、決してそう理想的なものではない。アジアで通じるチームが攻撃を重視して欧州とやれば、誇張ではなく、7−0で負ける。ディフェンスのカルチャーを身につけてほしい。

──明日はやはり守備を固めるのですか、それとも攻撃をするのですか
監督 心配しないでください。サッカーのいい試合はします。日本選手はちゃんとサッカーはできますので。フランス以上にスペインは攻撃的です。日本の選手のメンタリティは常に攻撃的であって、守備的に、という考えがない。そういう文化を身につけてもらいたいと思っている。

──(初の代表入りを果たした)波戸、戸田らには
監督 試験を受ける前の学生のように緊張するだろう。とにかく最初の試合ということで、寛容さを持って見たい。いずれにしても、明日は明日のための試合なので、これがまたもう一度あるというものではない。これから長い目で見ていきたい。

──監督が言うのは、「6−4で負けてもきれいなサッカーをすれば決勝ラウンドに進めなくてもいい、0−0の引き分けなら決勝ラウンドに進んでも意味がない」ということですか
監督 日本のリーグでは引き分けの文化がない。つい最近、ストイコビッチ(名古屋)のインタビューを読んでいて、日本選手には引き分けがない、と話していた。引き分け3試合で決勝に進むよりも、日本は3試合すべてに6−4(で負け)のほうがいいと思っている。日本はスター文化で、その中でスペクタクルを観たいということで、アクション、エモーションが必要になる。フランスW杯ではジャマイカに2−1で敗れたが、中山の1点に大喜びした。しかし私は、これはサッカーとしては間違っているので、完全に否定する。

──監督は先ほどから、日本のメディアはこう思っているとか、日本の報道はこうだ、とばかり言って批判をしていますが、それほどメディアの批判は気になるものですか
監督 私は日本のメディアが大好きです。これまで話していることはジョークです。そのくらいのユーモアはわかってほしい。

予想される先発メンバー
──キャプテンがここ(会見)にいてほしいと思いますが。
監督 じゃあ、あなた(質問者に向かって)は誰がいいのですか。キャプテン、あるいはリーダーシップに関するものは、日本の文化に深く関わっているので非常に難しいです。西洋で見られるキャプテンは、日本では考えられない。このチームのキャプテンは私です。日本人チームの中におけるキャプテンの役割は、審判と友好的に挨拶を交わし、理想的なキャプテンはほしいと思うが、日本ではそれは無理で、一番年を取っている人を選ぶでしょう。私は、それ(年功序列のこと)はよくないと思う。リーダーというのは、私の目では、日本の社会には存在していない。しかし、典型的なキャプテンがいなくても、それは問題でも悪いことでもない。逆に定義をしてほしいのだが、キャプテンシーの定義とはあなたには何ですか。私はキャプテンの理想はないし、その存在自体を否定している。キャプテンとかキャプテンシーの問題は、非常によく聞かれているが、そのキャプテンというのが、イコール存在感のある人というわけでもないし、キャプテンの大切さは私は感じない。逆にあなた方の大切にしているキャプテンというのは、どういうものか教えてほしい。日本が強くなるには、キャプテンを決めるのではなくて、8割の選手が海外に移籍してくれればいいのではないか。

──明日の試合で得点を奪うにはどうすればいいのか
監督 速攻がカギになる。守備から攻撃への切り替えの速さが重要だ。スペインは今、チャンピオンズリーグなどいろいろとあり、必ずしも代表で集中しているとは思えない。カマーチョ監督は、さまざまなクラブから(選手を連れ出さないでくれという)プレッシャーを受けていて、彼らの雰囲気はあまりよくはないと思う。理想的なサッカーを完全に行うというわけにはいかないだろう。明日の試合は、とても難しい試合になるだろうが、タイミングから見れば(さまざまな状況下で有利な判断ができるために)大きなチャンスだと思っている。本当に大きなチャンスだ。

──昨年のカールスバーグ杯からスタメンだった稲本が今回の代表メンバーから落ちているが、戦術的な問題か、それともコンディションか
監督 いや、新しいフォーメーションを見たい。私の哲学として、競争をしてもらいたい。来月のブラジル戦も同じメンバーだとしてしまうと、競争意識が出てこない。いろいろ試すことが、なかなかできなくなる。競争意識も自然と出てこない。だからこういう形で刺激も必要だ。選手のコンディションはそれぞれだと思うし、これでやるしかない。



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