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◆◇◆現地レポート!◆◇◆
レースのペースメーカーがハーフまでを1時間10分30秒で引っ張るという、2時間20分突破をもターゲットにした最初の5kmで、すでに先頭集団は弘山、ツル、アレム(ともにエチオピア)、シモン(ルーマニア)、チェプチュンバ(ケニア)、ビクタギロワ(ロシア)、フェルナンデス(メキシコ)と実力通リの7人に絞られた。一方、優勝候補の1人で世界最高を持つテグラ・ロルーペ(ケニア)が右太もももの痙攣から脱落、途中で止まってストレッチをするアクシデントも起きた。 10キロ33分27秒と、ペース的には2000年大阪で2時間22分56秒をマークした際よりも落ち着いたものとなったが、入りの5kmが影響したのか、弘山は15km手前で先頭集団から脱落。1人で第2グループを走り続ける、苦しい展開となった。 20km過ぎ、後続から追い上げをはかったロルーペが第3集団を抜け出し、第1集団から遅れ単独で走っていた弘山を捉える。弘山はここでロルーペに必死でついて、ロルーペと集団でひとまず落ち着きを取り戻すようにペースをつかんだ。しかし、体が温まって痙攣を克服したのかロルーペが第3集団から2選手を連れて先頭を追いかけたとき、弘山はこれに取り残され、再び単独となる。
レースは2時間24分台と、当初よりも遅くなるペースで展開。集団が7人となってから1kmごとのペースが少しずつ落ちて牽制しあう恰好となり、40km手前、ロルーペが脱落、ロルーペについて先頭に追いついたオラル(ルーマニア)も先頭を離れた。 40km過ぎ、ゴールまでの直線に入ったところで、1万メートルのシドニー五輪金メダリスト・ツルがスパート。集団はそのまま縦長に流れ、ツルが2時間23分56秒でマラソン7戦目にして初優勝を果たした。2位はザガロワで2時間24分2秒、3位はチェプチュンバ、4位はシモン、5位がアレムだった。なお、弘山は2時間29分1秒で12位に終わった。 また、男子は1位エルムージ(モロッコ)2時間7分10秒、2位テルガト(ケニア)2時間8分14、3位ピント(ポルトガル)2時間9分35秒、犬伏は2時間11分41秒で7位と大健闘した。
弘山晴美「15キロ手前から先頭から10メートルくらい遅れ前につくことができなかった。コースの3分の2をほとんど1人で走っているような状態でした。5キロのペース(16分33秒)は今日の体調にしてはきつかった。ただ10キロ過ぎてから楽になったのでもう少し動けるかなと思っていました。足のケガ(左ふくらはぎ)が強化練習を終えたあとにしてしまい、正直不安もありました。ロンドンを目指して走ってきたので、ゴールだけはしようと思っていました。2時間40分ぐらいかかるのではないかと思うほど、リズムが取れないところがあったがやめようとは思いませんでした」 夫でコーチの勉氏「とにかくはやくマラソンを1本走らせたかった。ロンドンマラソンが終わってから、本当の意味でマラソンランナーとしてのスタートができると思っていた。彼女は力があるから、内心は期待していたのでここまで悪いとは思わなかったけれども、コーチとしての計画ミスであって、終わってみれば反省点が多かった。次のことはまだ考えていないが、トラックでまず体をつくり、はやければ秋にもマラソンを走ってみたいと思う」 犬伏孝行「残り2キロになって足がぴくぴくとつりそうになった。レースではあまり経験がないことです。こういうメンバーのなかでレースができたということは、成功しても失敗しても意義のあることだったと思うし、これで(世界マラソンの)流れに入っていけると思う。今回は、両足の故障のために、初めてマラソン練習で40km走ゼロで臨んだ。帳尻を合わせて自己3番目の記録だったことで、自信にはなる。 河野監督「結果は見る角度によって変ると思うが、流れを考えればよく走ったと評価できるし、一方では戦うということを思えば、まだまだやらなければならないことはある。高地トレーニングももう少ししっかりやって、シカゴを狙うことも考えたい」 マラソン初優勝のツル「本当にうれしい。途中は、ペースが速くなったり遅くなったり安定せずに不安もあったが、いつもマラソンでは諦めてしまうので最後まで集中しようと思った。残り2キロでもし先頭にいれば、自分のスピードならみんな振り切れると思った」 男子優勝のエルムージ(モロッコ)「条件は悪かったことを思うと記録は満足できる。ペースメーカーが思ったよりも遅く、勝負はハーフを過ぎてからのサバイバルレースに持ち越されたので、本当にタフなものだった。これで昨年のニューヨーク、ロンドンマラソンを制覇し、シドニーの7位の悔しさをようやく晴らせた気がする」
「シドニー、その後」 先にゴールした弘山は、少し咳き込みながらもしっかりとした口調でレースを振り返った。もっともコースが思った以上に厳しく、足取りのほうは口調ほどにしっかりとはしていなかったようだ。
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