4月22日

※無断転載を一切禁じます


◆◇現地レポート!◇◆
ロンドン・マラソン
(ロンドン)
午前9時スタート、男子9時30分=日本時間22日午後5時
天候曇、気温7度、南東の風約4メートル

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 海外賞金レースの初挑戦した日本歴代2位の記録を持つ弘山晴美(資生堂)は、スタートから先頭グループにつけ順調に5km(16分33秒)を滑り出した。

 レースのペースメーカーがハーフまでを1時間10分30秒で引っ張るという、2時間20分突破をもターゲットにした最初の5kmで、すでに先頭集団は弘山、ツル、アレム(ともにエチオピア)、シモン(ルーマニア)、チェプチュンバ(ケニア)、ビクタギロワ(ロシア)、フェルナンデス(メキシコ)と実力通リの7人に絞られた。一方、優勝候補の1人で世界最高を持つテグラ・ロルーペ(ケニア)が右太もももの痙攣から脱落、途中で止まってストレッチをするアクシデントも起きた。

 10キロ33分27秒と、ペース的には2000年大阪で2時間22分56秒をマークした際よりも落ち着いたものとなったが、入りの5kmが影響したのか、弘山は15km手前で先頭集団から脱落。1人で第2グループを走り続ける、苦しい展開となった。

 20km過ぎ、後続から追い上げをはかったロルーペが第3集団を抜け出し、第1集団から遅れ単独で走っていた弘山を捉える。弘山はここでロルーペに必死でついて、ロルーペと集団でひとまず落ち着きを取り戻すようにペースをつかんだ。しかし、体が温まって痙攣を克服したのかロルーペが第3集団から2選手を連れて先頭を追いかけたとき、弘山はこれに取り残され、再び単独となる。

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 先頭を遅れ2番手を単独で走っていたシドニー五輪銅メダリストのチェプチュンバ(ケニア)がペースメーカーのいなくなった後ペースの落ちた先頭集団に28km手前で追いつき、先頭は、シモン、ツル、アレムにチェプチュンバを加え、残り10kmを前に激しいデットヒートに入る。さらに32km付近では、ロルーペが驚異的な追い上げで先頭集団に追いつき(オラル、ザカロワと)、先頭が再び7人に増えて、レースはまさに振り出しに戻った。

 レースは2時間24分台と、当初よりも遅くなるペースで展開。集団が7人となってから1kmごとのペースが少しずつ落ちて牽制しあう恰好となり、40km手前、ロルーペが脱落、ロルーペについて先頭に追いついたオラル(ルーマニア)も先頭を離れた。
 40kmからレースは先頭をリードするシモンと、レース前は無名だったザガロワ、それにアレム、ツル、チェプチュンバの5人での優勝争いに絞られた。

 40km過ぎ、ゴールまでの直線に入ったところで、1万メートルのシドニー五輪金メダリスト・ツルがスパート。集団はそのまま縦長に流れ、ツルが2時間23分56秒でマラソン7戦目にして初優勝を果たした。2位はザガロワで2時間24分2秒、3位はチェプチュンバ、4位はシモン、5位がアレムだった。なお、弘山は2時間29分1秒で12位に終わった。

 また、男子は1位エルムージ(モロッコ)2時間7分10秒、2位テルガト(ケニア)2時間8分14、3位ピント(ポルトガル)2時間9分35秒、犬伏は2時間11分41秒で7位と大健闘した。

■ロンドン・マラソン 女子優勝者・ツルのタイム
5km 10km 15km 20km ハーフ 25km 30km 35km 40km ゴール
0:16:33 0:33:27 0:50:09 1:07:35 1:10:20 1:24:35 1:42:05 1:59:29 2:16:47 2:23:56

弘山晴美「15キロ手前から先頭から10メートルくらい遅れ前につくことができなかった。コースの3分の2をほとんど1人で走っているような状態でした。5キロのペース(16分33秒)は今日の体調にしてはきつかった。ただ10キロ過ぎてから楽になったのでもう少し動けるかなと思っていました。足のケガ(左ふくらはぎ)が強化練習を終えたあとにしてしまい、正直不安もありました。ロンドンを目指して走ってきたので、ゴールだけはしようと思っていました。2時間40分ぐらいかかるのではないかと思うほど、リズムが取れないところがあったがやめようとは思いませんでした」

夫でコーチの勉氏「とにかくはやくマラソンを1本走らせたかった。ロンドンマラソンが終わってから、本当の意味でマラソンランナーとしてのスタートができると思っていた。彼女は力があるから、内心は期待していたのでここまで悪いとは思わなかったけれども、コーチとしての計画ミスであって、終わってみれば反省点が多かった。次のことはまだ考えていないが、トラックでまず体をつくり、はやければ秋にもマラソンを走ってみたいと思う」

犬伏孝行「残り2キロになって足がぴくぴくとつりそうになった。レースではあまり経験がないことです。こういうメンバーのなかでレースができたということは、成功しても失敗しても意義のあることだったと思うし、これで(世界マラソンの)流れに入っていけると思う。今回は、両足の故障のために、初めてマラソン練習で40km走ゼロで臨んだ。帳尻を合わせて自己3番目の記録だったことで、自信にはなる。
 レース展開は、20kmくらいから遅れはじめ、ハーフからはほとんどを一人で走り切った。練習してない分、やはり体に来てしまった。今回は13分はさすがにかかりたくないと思ったが、オリンピックとはまったく違う華やかさや緊張感があって、これからはロンドンがマラソンの主流になるのかなと思わせるものがあった。シドニーでの途中棄権はそう簡単にリセットはできないでしょう。でも、あの棄権の次が11分でもこうしてゴールしたことは大きい。5月にもう一度ボルダ−に行き、夏の札幌ハーフ、秋のシカゴには何とか行けるようにしたい」

河野監督「結果は見る角度によって変ると思うが、流れを考えればよく走ったと評価できるし、一方では戦うということを思えば、まだまだやらなければならないことはある。高地トレーニングももう少ししっかりやって、シカゴを狙うことも考えたい」

マラソン初優勝のツル「本当にうれしい。途中は、ペースが速くなったり遅くなったり安定せずに不安もあったが、いつもマラソンでは諦めてしまうので最後まで集中しようと思った。残り2キロでもし先頭にいれば、自分のスピードならみんな振り切れると思った」

男子優勝のエルムージ(モロッコ)「条件は悪かったことを思うと記録は満足できる。ペースメーカーが思ったよりも遅く、勝負はハーフを過ぎてからのサバイバルレースに持ち越されたので、本当にタフなものだった。これで昨年のニューヨーク、ロンドンマラソンを制覇し、シドニーの7位の悔しさをようやく晴らせた気がする」

    犬伏、弘山のラップタイム
      犬伏 弘山
    10km 30:41 33:29
    20km 1:00:48 1:08:01
    ハーフ 1:04:04 1:11:57
    30km 1:32:36 1:43:46
    40km 2:04:37 2:20:45
    ゴール 2:11:41 2:29:01


「シドニー、その後」

 先にゴールした弘山は、少し咳き込みながらもしっかりとした口調でレースを振り返った。もっともコースが思った以上に厳しく、足取りのほうは口調ほどにしっかりとはしていなかったようだ。
「コースを甘く見ていた部分もありました。一緒に走って一番驚いたのは、ツルにしてもロルーペにしてもみなタフなことです。強いというか、……あらためて考えました」
 レース前の調整ではもっとも重要な時期、──それはメンタルにおいての自信の昂揚にとってであるが──この時期にふくらはぎを故障し10日の練習を休まざるを得なかった。
 そうした中で、それでも30分を切るだけの基礎レベルの高さは示したはずだ。
 犬伏も、両足を故障しており、今回、マラソンでは初めて40km走を一度も行なわずにレースに挑むぶっつけ本番となった。
「成功でも失敗でもこれだけのメンバーの中で戦えたことは、自信になる」と話していたが、2人に共通したレースでの収穫だったはずだ。
 マラソンの棄権、一万mも最下位で終わった「シドニー、その後」の再起をロンドンでようやく果たし、犬伏、弘山とも秋に再戦に臨む。



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