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サッカー 鹿島アントラーズ×ジュビロ磐田
前半4分、磐田はセットプレーからGKヴァン・ズワムがこぼしたボールを鈴木隆行に押し込まれて先制を許す。しかし、開始直後のしかもディフェンスを割られた格好での失点ではなかったために、この後も慌てずにチャンスを作った。8分には、名波浩がFKを得て、このボールに左サイドに流れるように走り込んだ高原直泰がワントラップから左足でシュート。ゴール隅右にコントロールする狙いすましたシュートで早くも同点として試合を振り出しに戻した。 膠着状態が続いたものの、中盤からの早い潰しに戦意喪失気味となった小笠原、ビスマルクに対して、磐田は藤田俊哉、奥大介が攻守で早い動きを見せ、名波、服部年宏が果敢なスライディングからボールを奪って攻撃に転じるなど、磐田の気迫と、それを表現するプレーが鹿島を追い詰めて行く。 後半9分には、藤田から出たボールに対して、中山雅史がポストとなってこのボールを高原へ。ブラインドになったために、ボールの動きを一瞬見逃し反対に踏み込んだGK高桑大二朗を冷静に見ていた高原が思い切ったシュートを正面から放つ。このボールがポストにはね返ったところへ藤田が飛び込む「トライアングル・プレー」で勝ち越した。 この後も鹿島は流れを変えようと、切り札の本山雅志を投入するが、その直後に守備の中心となるファビアーノが退場。鹿島にとっては後手後手に回る結果となってしまい、磐田は昨年徹底して封じられた鹿島を倒して、リーグ優勝のためにもっとも重要な試合で、今季ベストゲームを果たした。磐田の開幕4連勝は初めて。服部、藤田、福西崇史、名波、奥、高原、中山7人が9日からのスペイン戦に向けた代表候補合宿に参加する。 名波に、『こぼれ球をすべて拾ってくれた。服部さまさまだった』と言わせる活躍を見せた服部「鹿島は、ビスマルクと小笠原のところを抑えれば絶対に勝てると信じていた。徹底して2人を潰してやろうと思って試合に臨んだし、体を張って最後まで止めるサッカーをすれば、きっと勝負の神様は自分たちの方を向いてくれるんじゃないかと……、まあ信じたかったよね。それほど全員が体を張ったゲームだった。まあ、これで終わりじゃないし、キツイ日程も続く。油断はしない」 中盤の高い位置からのプレスを最後まで持続。1点目のアシスト以上に、地味な守備で大活躍の名波「15分の1勝とはまたちょっと違う喜びと重みがある勝利だった。若干気温が上がってきつかったが、それでもみんな最後までよくやったと思う。今までまともに勝てたことのないゲームに、力でねじ伏せて勝てたということがうれしい。とにかく互いにカバーしあって、フォローをしなくてはならないわけで、その点で、オレの(試合中の)声をみんな信頼してくれるしフォローしてくれた。特に服部はすばらしい働きだったんじゃないか。後半は服部さまさまです」 厳しい接触をしながらも耐えたDF大岩剛「非常にいいゲームをしたと思う。確かに先制はされたけれど、それほど負担にはならない時間帯だったし、やられ方でもなかった。あそこでDFがドタバタしなかったのは良かったと思う。後ろで見ていて、あれだけ前から徹底して守備をする中盤は、Jリーグにはないんじゃないかと思った。うちの中盤は本当に強い。守備の面では今季ベストゲームだった」 2点目を奪った藤田「(よく詰めていた、との問いに)ああ、あんなの誰だって入るよ。とにかく今日はモチベーションが高かった。始めはあんまりみんなが飛ばすんで、俺は体がついていかねえのになあ、なんておっかなびっくりだったけど、それでも一人一人がしっかりやっていたからああいう結果で最後まで切れなかったんだろうね。日程うんぬんはもう言っても仕方ない。代表合宿はレベルが高いわけだから、気持ちの高めて刺激になるリフレッシュをしてきたいと思っている」 先制点を奪った高原「1点目は動き出してから、ゴールまでのイメージが完全に出来上がってシュートした。結果を出すことだけが、こういう苦しい日程に勝つ手段だと思います。フランスの教訓というのを忘れたくないし、生かしていかないとならない。開幕4連勝は初めてだそうですが、でも慢心はいけないと思うし、勝ち続けることです。代表では、中山さんも加わるので、いい意味で楽しみたい。(2人でコンビを組めればいいね、の質問に)いや、それは監督が決めることですから」
「ゴンちゃん、この前休んでいるでしょ」
中山は前半開始直後、体を張ってボールに喰らいついて行く仲間の様子を見ながら、「あんまりハイペースなもんですから、俊哉(藤田)と、おい、こんなんで大丈夫なの? って話していたんですよ。あいつはあいつで、やべえよ、オレだけ? こんな疲れてんの、って回りの顔色を見てたらしいんですが、まあ飛ばす飛ばす(笑)。服部には、ゴンちゃん頼むよ、今週休んだんだからね、と言われましたしね」 ナビスコを休養したベテランにも容赦ない叱咤が飛ぶほど、中盤の守備陣にとっては笑いごとではないほど、立ち上がりからの守備こそすべてだった。 服部によれば、「完璧に潰そうと思った」というほど、鹿島のビスマルク、小笠原への早い囲みを徹底させ、流れたボールに対しては名波、藤田、奥、福西が飛び込んで行く。前半10分からは、名波が立て続けにスライディングでボールを奪い、これを服部が拾う。服部がピッチ脇の看板に体当たりしながら、中に戻したボールを奥が転びながら拾って攻撃につなげる。華麗なボール回しと表現されてしまう磐田の、凄まじいばかりの「泥臭さ」に、ビスマルクも、小笠原も棒立ちになるシーンが繰り返された。 「向こうにしてもあんなに早く囲まれてしまうとは思ってなかったと思う。自分の声を信頼してくれて、フォローに入ってくれる。非常にいい連携があった」 名波は試合後そう説明した。前週のゲームで、名波が試合中に怒鳴った声が聞こえたことがあった。自分が囲まれ、そこにフォロー、サポートが遅れた瞬間、「フォローしろ!」と仲間を叱咤した。当たり前のことを、当たり前に続ける磐田の強さは、強靭さを増すばかりだ。 しかし、誰よりも「大丈夫かよ」と話していたFW中山こそ、この日の磐田をリードし、象徴していた。 「先週の試合後、俺は、FWがもっと早く結果を出せばと言ったけど、今日はその通りなった試合」 サッカー 横浜F・マリノス×浦和レッドダイヤモンズ
開幕から3試合で白星のない横浜F・マリノスは、浦和をホームに迎え撃った。前半44分、すでに12分に城彰二へのファールでイエローを受けていた井原正巳が、木島良輔との競り合いからファールをおかしてこの日2枚目のイエローで退場。横浜は早くも数的優位に立って試合を展開することになった。
「一体何が悪いのか」 「FWが機能していなかった」と、試合後アルディレス監督は説明していたが、選手にしてみれば、この日初めて試合に出場、それどころか練習でも一度も合わせたことのなかったFWの起用に、戸惑いのほうが先にあったようだ。事実、中盤の遠藤彰弘、またアウトサイドの木島といったあたりからはボールが上がってはいた。しかし中が攻めきれていない結果が、21本シュートで無得点の要因である。
「だから言っただろう」
ベテラン福田正博は試合前、井原に「いくら古巣とのゲームだからといって燃えるなよ。燃えすぎるとイエローだからな」とクギを指していたそうで、「だからオレが言っただろう。井原のせいでこんな苦しい試合で」と、ロッカーで福田にからかわれていた。 しかし井原は「このチームの結束力にびっくりした」と真摯に話す。本来ならば、プロ同士、あんなところでゲームを潰して、とハーフタイムに批判されてもおかしくはなかった。気まずくロッカーに入った瞬間、「井原のためにもがんばろうぜ」と、全員が手をたたいていた。 「申し分けないです。でも、ああいうムードは初めて味わいました。あれで、人数ではないと思いました。あんなに長い後半はありませんでしたが」 試合後、マリノスの選手と握手を交わしながら、井原を最後まで頭を下げていた。 岡野がひじを脱臼し怪我をしたときも、相手の木島が転倒したときも、浦和の選手が走って駆け寄った。小野も不本意な交代をせざるを得なかったが、少しもふてくさることなく「もともと全部は無理だったから」という。 これで7位。順位以上の収穫があった。
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