3月19日

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女子柔道・田村亮子ら、
デイリースポーツ制定、ホワイトベア賞受賞

(東京都内、プレスセンター)

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 昨年のシドニー五輪で、男子柔道でアトランタに続く2連覇を果たした野村忠宏(ミキハウス)、女子柔道48キロ級金メダリストの田村亮子(トヨタ)、女子マラソンの高橋尚子(積水化学)、女子ソフトボール、男子マラソンで昨年の福岡で2時間6分51秒の日本最高をマークした藤田敦史(富士通)が、デイリースポーツ表彰を受け、高橋を除くそれぞれが表彰式に出席した。

 柔道の野村は、今季は休養を宣言しており、5月の挙式後、米国へ留学。一方、田村は今年7月にミュンヘンで行われる世界柔道で前人未到の5連覇に挑むため、20日からは今年最初の全日本合宿に(講道館)参加する。田村は、最大の目標でもあったシドニー五輪後の心境について、初めて具体的に「30歳までは現役でできるような自信が今はあります」と話した。今後は、4月8日に体重別選手権に出場し、5月か6月にはもう一度、世界柔道の会場となるミュンヘンを訪れて下見を十分にすることになっている。


「初めて、先が見えてきた」

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 人生において最大の目標のひとつ、いや全部であったかもしれない五輪の金メダルを獲得した後、田村はこう話していた。
 ひとつは口ではいくら「次」といっても、本当にその気になるのかどうか、本当の意味での「燃え尽き症候群」は、トップアスリートの場合、競技が上手くいかないからではなく、大きな成果をあげた直後こそ襲ってくるものだと、多くの選手は分かっているからだ。
 反対に、金メダルを手にしても尚、何かに突き動かされるという状態だ。
「これだけ忙しい日程をこなしていたら、今本当に自分がどういう気持ちなのかは分からないし、考えられない。すべてが一段落したところで、自分と向き合ってみます」
 そうして、福岡で11連覇を達成し、表彰、講演を50近くこなしてわずかなオフがこの1、2月だった。
 自分と向き合った答えは、後者だった。
 これまでどんな練習やメンタルでの試練を乗り越えてもまったく感じられなかった自信を、自分の競技に対して持てるのだという。


    ◆Short Interview

    ──明日から講道館での合宿ですね。いよいよ本格的なカレンダーが始まりました
    田村 本当に。気合入れて行きますよ。なんだか不思議ですけど、これまではどこか痛いとか、精神的にも不安だとか常に感じていたのに、今はそれがないんですね。ないから油断というのではなくて、またこれまでとは違った上の段階に入った感覚がするんです。

    ──シドニーの前後は、アテネ(2004年=28歳)まで、とか、アテネはわからない、今年の世界柔道で5連覇したら辞めるかもしれない、とか年齢との付き合い方はいろいろな表現でしたが
    田村 そうでしたね。それはやはりちゃんと考えるだけの時間がなかったからでしょうかね。30歳まで、というのは根拠があるというのではなくて、初めて、30歳までの競技歴を想定することができるようになったということなんです。

    ──例えば、5連覇できなかったら、福岡で負けたら、とは考えませんか。負けないうちに辞めてしまおうとか
    田村 思いません。負けることは今、怖くない。そういうことを考えないで柔道に取り組める精神状態になりました。

    ──かなりモチベーションが高い
    田村 自分でもびっくりしています。手にしたらもう死んでもいいと思った金メダルだったのに、今度は記録との戦いなんですが、それを考えている。柔道はほかの女性の競技と違い競技歴はそう長くはないですから誰がお手本というのではありません。欧州でもジュニアクラスから若くていい選手が48キロにはたくさん出てきていると聞いてます。これからが楽しみですね。4月に体重別に出て、ドイツでもう一度下見をして、本番に備えます。5連覇すれば6連覇と思うかもしれないし、負けてももう一度、と思うかもしれない。今は、とにかく実践(稽古)の中で柔道を極めたい。園田先生に(福岡で)毎日、一から絞られています。

 立食会場での立ち話と表彰式の間、田村はにこやかに、ていねいに多くの質問に答えていた。ふと足元を見ると、左右の足を畳の上と同じように、交互に払う動作をじゅうたんの上なのに無意識のうちに続けていた。
「やわらちゃん、その足、変だよ、そのパンプスで」と指摘した。
「いやー、もう癖なのかな、ダメだよね、いつでも柔道のことばっかり。いけない、いけない」
 大笑いした。無意識の臨戦体勢。

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