3月17日

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サンフレッチェ広島×ジュビロ磐田
天候:雨、気温:10.3度、湿度:75%
観衆:10,663人、16時05分キックオフ
(広島ビッグアーチ)

広島 磐田
1 前半 0 前半 2 4
後半 1 後半 2
84分:高橋 泰 藤田俊哉:22分
服部年宏:26分
藤田俊哉:72分
高原直泰:88分

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 開幕戦を順調に滑り出し優勝候補筆頭の貫禄を見せた磐田は、この試合も、雨の悪コンディションにもかかわらず試合の主導権を終始握り続けて圧勝した。
 前半22分、この日アウトサイドでありながらボランチ的な動きをしていた服部年宏からのセンタリングを中山雅史がヘディング。このボールがバーに当たって返ったボールを藤田俊哉が左足でゴールを決めて先制した。
 直後には、高原直泰が1対1から強気のドリブルで切り込んで行くと、相手ディフェンダー2人がファール。ペナルティエリアで倒されてPKとなる。これを服部が落ち着いて決めて2-0、試合を決めた。
 後半にも27分、フリーキックをもらった藤田が右足で正確に狙ってゴールを決め3-0。42分には、左サイドをあがった西から、ディフェンダー2人を背負った高原にピンポイントのパスが入り、高原はこれをディフェンダーの一瞬の隙をついて右足を出してゴールに。開幕戦はシュートゼロに終わったフォワードに、待望のゴールも生まれて4-1と開幕戦に続いて得点を量産した。
 39分に得点を許したのが、反省点といえば反省点ではあるが、2節を終わった時点で上位チームの実力を存分に発揮した結果となった。

試合データ
広島   磐田
7 シュート 17
11 GK 6
7 CK 4
17 直接FK 20
4 間接FK 4
0 PK 0
鈴木政一監督
「奥、中山、それぞれインドネシアでのアジアクラブ選手権のために大事を取って交代させたもので大事ではない。本来ならば、中山にも(高原が得点をしたので)一緒に1点ずつ取ってもらっても良かったのだが、(こちらから交代を告げないと)ずっとがんばってしまう選手なので換えた。(高原のシュートについては)あの感覚は凄いものがある。ああいう動きができる選手はそうはいないのではないか。きっとあのシュートでいい感じで代表に行ってくれるんじゃないか。フランスでもがんばって欲しい。2試合とも失点1が問題といえば問題だが、システムうんぬんよりもあれは集中力のほうになる。ここでチームが(代表とクラブ選手権と)2つに別れるが、またいい形でそれぞれが力を出してくれればと思う」

主将・服部「今朝、監督からのモーニングコールで、目が覚めまして(笑)、(金沢が怪我のために)外に出ることを言われた。ただ、単純なアウトサイドという役割ではなくて、アウトでプレーしながらもボランチ的にプレーをするということなんでちょっと複雑ではあった。ここまでジュビロはいい形で開幕から滑りだしたとは思う。チームがしばらく2手に別れるので、またいい形になるよう、自分もフランスでがんばろうと思う。強豪相手だけど、楽しみのほうが大きい」

久々に90分プレーをした大岩剛「久々の90分は(気持ちの上で)疲れたけれど、いい感じでプレーできた。失点の場面は、マークがズレたためで集中力はみなあったと思う。芝が滑るから難しいと思ったんだけれど、みな落ち着いていたし、かえってボールが回ってうちのほうがいいテンポになった。クラブ選手権でがんばりたい」

Jリーグ通算230試合出場達成(歴代13位)で2ゴールの藤田「試合の数なんて特別に意識はしていないし、チームが勝つことが大事。最初のゴールはバーに当たって跳ね返ったところで、ああいう形は練習でもよくあるので気を抜かずに行った。だんだんとやろうとしているサッカーに近づいていると思うし、アジアクラブ選手権や代表の試合などでチームが別れるかたちになるけれど、そういう中でも同じ考え方でやって行くことに価値があると思う。日程は厳しいけれど、がんばりたいね」

腰痛もあり大事を取った中山「大丈夫か? と聞かれると、大丈夫です、と言うに決まっているんで、監督が(交代を)聞いてくれないんですよ(笑)。まあ、このインドネシア(遠征)が終わって帰国して代表のメンバーと合流したところからでしょうね、本当の力が試されるのは。自分も代表に呼んでもらうようにアピールし続けますよ」

広島・ヴァレリー監督「ジュビロは強かった。彼らには経験もあるし準備もできていた。うちはそれに比べてレベルが高くはなかった。しかし、前向きに考えられる。前半は戦術がうまく整っていないために、磐田に好きなように動かれてしまったが、後半は若干よくボールが回るようにもなった。今後は、精神的な強さを求めていきたいと思う。2試合連続で負けたために選手にはショックもあるだろうが、話し合っていきたい。この2試合でJのレベルがよく分かった。1週間置いて、十分な準備をしたいと思う」

■出場メンバー
広島   磐田
下田 崇 GK ヴァン ズワム
沢田謙太郎
上村健一
トゥーリオ
服部公太
DF 鈴木秀人
田中 誠
大岩 剛
桑原裕義
森崎和幸
コリカ
MF 福西崇史
服部年宏
名波 浩
藤田俊哉
奥 大介
藤本主税
梅田直哉
久保竜彦
FW 中山 雅史
高原 直泰
(藤本主税)高橋 泰:45分
(服部公太)川島眞也:45分
(森崎和幸)森保 一:66分
交代 65分:西 紀寛(奥 大介)
80分:川口信男(中山雅史)
84分:佐伯直哉(福西崇史)


「理想のサッカーに前進したい」

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 サイドから崩してこぼれ球を拾い、PKがあって、FKの飛び道具もあり、最後にはサイドから崩して、目の覚めるようなFWの個人技でダメを押す。
 磐田のサッカーは、勝つこと以上に、勝ち方に焦点が当てられているかのようである。この日2得点をあげた藤田は試合後、こんな話をした。
「自分たちには、目指すサッカーというか理想のサッカーというのがあって、それに近づいて行きたいと思う。まだまだ練習でははっきりしない部分なんだけど、試合をやるごとにわかることがあって、きょうもミスがあったけれど開幕よりはずっと良くなっていると思う」
 プレスのかけ方ひとつにしても、磐田がかけることはもう当然のことで、もっとも効率良く、しかももっとも相手を苦しめる形でボールを奪うことができると、藤田は言う。そうすれば、次の攻撃がより優位になる。過去、現在、未来、すべてを一瞬にしてパスや動きでつなぐ、しかもそれを全員の意志統一のもとで行なえることが、理想のひとつであると藤田は丁寧に説明をした。
 攻撃でも、この日視察に来ていたJリーグのクラブ関係者が、「磐田の攻撃は決まりごとがないのに、決まっている、約束してないのに約束を守る、そんな自由さがあって、守りにくい」と評していた。
 的を得た指摘だ。藤田も「攻撃の中で流れるように、全員が次、次を察知して動いていければいいと思う」と話す。
 名波、藤田、福西、奥の中盤がボールを持って動き出すと、高原、中山も自然とバランスを取って動き出す。スタジアムの上のほうでその様子を見ていると悠然とした雰囲気が漂っている。
 クラブ選手権は21日に行われる。このため、代表と10日ほど別々のスケジュールで動くことになるが、それもまた、今の磐田では「糧」に変ってしまうのかもしれない。
 選手は、インドネシアに行くために全員が大荷物を持ってそのまま成田へ移動。この日は、濃霧で広島から羽田便が欠航したため、新幹線で名古屋まで行き、名古屋からチームバスで成田に深夜に入る。そのまま早朝、気温差30度近いインドネシアに入る。チャンピオンチームの宿命である。


「足の長さが伸びたんじゃないか」

 後半残り2分、この日放ったシュート3本の中で、もっとも難しいシュートを決めた高原は、ディフェンダーを前と背中に2人負って、西から出たボールを、体勢を崩しながら右足を精一杯伸ばす格好でゴールに突き出した。
「ピンポイントで来たボールなので、シュートはあの格好しかなかったです。ほかの2本のほうが確かに簡単なシュートでしたね。開幕戦のシュートがゼロでしたので、これでいい形でフランスにいけると思います」
 試合後は、そう言って苦笑いした。
 チーム関係者にも祝福され、荒田社長には「高原、お前、短い足が少し長く伸びたんじゃないか」とからかわれていた。本人は西のパスが良かったと謙遜したが、監督も「あそこでああやって足が出るのはやはりFWの中でも非凡な才能」と称賛する。
 24日のフランス戦について、「やってみたいことは色々あるし、できないこともまた自分にとっての新たなステップ。前を向きたい」と話す。フィジカルコンディションの良さもさることながら、こうした精神状態こそ、今の充実ぶりを物語っている。
 コンビを組む33歳の中山は高原に「21歳、何も怖がることなんてない。フランスにも当たって砕けろでやってきてくれるでしょう」と、暖かな励ましを送っていた。

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