3月14日

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サッカー

日本代表フランス遠征メンバー発表
(渋谷区・日本サッカー協会)

 日本代表トルシエ監督が14日、24日、サンドニのスタッド・ドゥ・フランスで行われるフランスとの親善試合に向けて22人の代表メンバーを発表した。合宿には参加しなかった小野伸二(浦和)が召集され、中田英寿(ASローマ)、西澤明訓(エスパニョール)の2人も現地で合流する。
 監督は、代表の強化日程約90日のうち半分程度をアウェーでの強化に使う意向を示し、10月に予定される欧州遠征(イングランドなど)では、ロンドンでナイジェリアと、ほかにも遠征中にイングランド、オランダとの親善試合を組みたいとの、監督の考えを明らかにした(詳細は未定)。


 トルシエ監督、メンバー発表に先立って会見(抜粋)

■フランス遠征 日本代表メンバー
GK 川口能活(横浜F・マリノス)
下田 崇(サンフレッチェ広島)
楢崎正剛(名古屋グランパスエイト)
DF 服部年宏(ジュビロ磐田)
森岡隆三(清水エスパルス)
松田直樹(横浜F・マリノス)
中澤祐二(東京ヴェルディ1969)
中田浩二(鹿島アントラーズ)
MF 名波 浩(ジュビロ磐田)
望月重良(ヴィッセル神戸)
三浦淳宏(東京ヴェルディ1969)
伊東輝悦(清水エスパルス)
中田英寿(ASローマ)
明神智和(柏レイソル)
中村俊輔(横浜F・マリノス)
本山雅志(鹿島アントラーズ)
稲本潤一(ガンバ大阪)
小野伸二(浦和レッドダイヤモンズ)
FW 城 彰二(横浜F・マリノス)
西澤明訓(エスパニョール)
柳沢 敦(鹿島アントラーズ)
高原直泰(ジュビロ磐田)
 W杯を前にした最後のシーズンがいよいよ始まった。2001年においては、日本代表は合計90日弱の合宿日程の中でトレーニング、国際試合を行なっていく。その50%は国外、特に欧州での合宿になる。今回のフランス、そして来月のスペイン戦、10月にはイギリスにも行く予定だ。世界のトップ10と戦うかなり野心的なスケジュールとなるだろう。それは大きな経験である。つまり自分たちの力をより引き出すためにはどうしたらいいかを相手との比較の中で考えることができる。また、これまでやってきたことを試すテストの場であり、それが今までの知識をより深めることになる。すべてがW杯への準備として一つ一つ役に立っていくに違いない。

 代表チームとして新しいシーズンを始めるにあたって、このフランスとの初戦は象徴的なものになるだろう。というのも、現在のワールドチャンピオン、そして欧州チャンピオンであるフランスと戦うわけで、それは大いなる名誉であるといえる。そしてW杯の1年半前のこの時期に対戦できるというのは、フランスが日本を認識しているということであり、ポテンシャルを認めているということの現われでもある。さらに、神秘的といわれるスタッド・ドゥ・フランスで戦うことができるといのも、日本選手にとっては自信になる。

 2月から2つの合宿を行ってきたが、日本代表はいい状態だ。選手たちは一緒にやれてうれしいという連帯感を持っている。一方では、プロとしての練習ぶりも見せてくれた。ピッチの上で人の言うことに耳を貸し、その上でテクニカルスタッフのトレーニングをししっかりこなしてきた。そういった男としての力強さが一つの力である。さらに、アジア杯のチャンピオンとしての責任を果たしていこうということがもう1つの力になっている。

 2001年は、人間的な価値を強化していくシーズンである。今回も今までの実績、アジアチャンピオンになったことをしっかり評価した上で、出発ができる。フランスに行くことで、自分たちのサッカーがどういうものかを見せることになる。つまり、日本のサッカーとはアクティブで力強く、ダイナミックなサッカーだ。フランスから学ぼう、そして勝とうと思う。これまで実戦してきたバリュー(価値観)を十分に見せて、強い相手を対戦することで自分たちの力を上げていき、その経験が知識となってさらなる力になり、自信となる。
 今回の代表選手を選ぶにあたっては、心理的な価値観――その選手が何を大切にしているかという個性――を重視した。その意味で、闘争心にあふれた強い性格をもったチームができあがったと思っている。対戦相手にコンプレックスを感じる必要はない。日本代表は、自分たちで仕掛けることができて、そこで自分たちの持っているものをしっかりと出していけるモチベーションの高いチームだと確信している。


メンバー発表後一問一答(要旨抜粋)

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──今回の合宿に呼んでいない小野をなぜ選んだのか

トルシエ監督 前にも申し上げた通り、15人の選手が代表の中心となる。しかし毎回その代表全員を呼ぶことはできないし、60人のエリートによって構成されてもいる(全員の力はわかっているという意味)。一方ではJリーグには約800人のプロ選手がいて、彼ら全員に対して門戸を開いてはいる。小野はそうした中で新しい選手ではないし、彼は日本のサッカーにおいて私の一種の保険的な存在でもある。彼の性格からいって、またリーダーシップからいっても、彼が大きな力であることは、何ら新しい話ではないはずだ。

──中田、西澤の2人について、彼らは現在試合には出ていないようだが、コンディションなどの心配など状を把握しているか

監督 彼らがどうこうというのなら、日本選手のほうが心配といえる。なぜなら、彼らは先週シーズンを開幕してゲームを初めたばかりであるし、一方、彼ら2人はずっとシーズンを通じてプレーをしている。また1月、日本がオフのときにも彼らは休みを取っていないで戦っている。日本選手以上のアドバンテージがあると思うし、彼らは日本サッカーにおいて、フィジカル、メンタルともに大きなものをもたらすだろう。

──先ほど、頭を切り替えて、という表現を使ったが、その真意は

監督 フランスと戦うような状況の中で、新たなるものを糧としたい。また新しいリズムというものを得ることもできるだろう。日本とは違った生活を経験することで、新たな発想も持てる。フランスやドイツ、またオランダのような(世界トップ10のチームと同じような)戦いをするわけではなく、新しい考えや何かを学ぶ姿勢を持って行こうと思う。

──13日までの練習では、プレスを盛んにかけていたが、フランス戦の戦法は

監督 確かにそうなるだろう。私たちはこれまでアジアとの対戦だった。世界と対戦するときにはまた違った戦術が必要になる。これまでボール占有率は恐らく70%ほどと高く、ほとんどのボールを占有できる状態だった。従ってディフェンシブに戦う部分は30%というとこだった。しかし、世界が相手の場合は、自分たちが70%の比率で、ボールを取り戻しに行かねばならない。その中で重要なのは、ディフェンシブな組織的プレーというもので、誰よりも早く走り、判断する、前に出てボールを取りに行く、そのボールを攻撃につなげる、そうした戦術を確認する必要はあった。

──10月の欧州遠征について、決定している部分はあるのか

監督 新聞にもいろいろと出ていますが、感触として得たものと決定したものとは違う。いずれにしてもロンドンでナイジェリアと対戦することは決定していると言っていいでしょう。また、ほかからはオファーをもらってはいるが、ロンドンの場合も、まだ場所、つまりスタジアムが決まっていない。遠征をすれば、イングランド、アムス(テルダム)、ミュンヘン、ローマ、バレンシア(とどこでもいけるという意味)とあるわけで、考えられるところですべて試合ができるはずはなく、今言えるのは、フランス、スペイン、コンフェデレーション、そしてキリンはフィックスされており、後半は心配なく、いい試合を組みますから。

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──(フランステレビ局からの質問)私は率直に申し上げて、フランスと戦おうなんてもの凄い度胸だと思っている。ドイツとの試合でもフランスは危なげなくしっかりと勝っていたわけで、一体どうやってジダンをマーキングしようというのですか

監督 その質問を待っていました! まさにこうした不利な状況での果敢さというのが、日本社会が本来持っている美徳でもある。私たち、私たちのサッカーが持ってりるバリュー(価値)というもの、それは闘争心であり、アグレッシブさであり、前に出るサッカーであり、こうしたものをアジアのチャンピオンとして見せたいと思っている。私たちはフランスの牙城といわれるサンドニで、アジアカップをバッグに持ちながら戦うつもりだ。
 さて、質問の答えはここからだ。ではジダンに中田のマークをしてもらおう。中田だけでなく、中村、本山、稲本、高原……、日本には、攻撃においてすばらしい選手たちがいる、彼らすべてをマークしてもらいたい。なぜならサッカーは理論だけでは決して考えられない。もちろん、フランスは今世界のチャンピオンである。しかし、最初の10分、例えば私たちは世界の40位のチームかもしれない。しかし、次の30分なら20位になれるかもしれないし、その後15位になれるかもしれない。そしてハーフタイムに0-0であれば、トップ10と同じレベルといえるかもしれないし、サッカーがもしも予想できるものならば、つまり日本がフランスに負けるとわかっているのなら、誰もサッカー場には行かないだろう。
 では、ジダンにもしっかり日本選手を止めてもらうように注意してもらいたい。もちろん、私たちは何かを学び、思い切って試してみたいと思う。しかし、自分たちのサッカーのバリューを見せつけるつもりでもある。

──視察の際、フランスはベストメンバーではないと言ったようだが

監督 私が? そんなことは言っていないし、日本の新聞では私が言った、というよりも、何が書かれているか、が重要なようだ。しかし、私が言ったのはあの試合(ドイツとの親善試合、1-0でフランスが勝利)は私にとって視察の意味がないものだったということ。私が知っている以上のものはなく、今ドイツは非常に大変な時期にあるのだということはわかった。フランスは中くらいの力で十分戦っていたわけで、私が彼らにどんなメンバーで戦うかどうか指図するなどということはおこがましいしありえない。


    「三浦淳宏が復帰」

    ハッサン2世杯フランス戦では後半67分、中村俊輔に代わり左サイドに入った。

    同じくハッサン2世杯のジャマイカ戦では後半のはじめから、伊東輝悦に代わり右サイドでプレー。

 昨年12月の日韓戦ではケガのため代表メンバーから外れていた三浦淳宏(東京ヴェルディ1969)が代表に復帰した。三浦は2月に行われたJヴィレッジでの代表候補合宿を右ふくらはぎの故障により途中で離脱。今回も当初は横浜での直前合宿に召集された候補リストのなかに名前がなかったが、鹿島の熊谷浩二がケガで参加を辞退したため、追加で緊急召集されることとなった。

 思い起こせば昨年6月、モロッコで行われたハッサン2世杯のフランス戦で、あの西澤の豪快なボレーを演出するクロスボールを上げたのは三浦だった。後半21分、中村俊輔に替わり左サイドに入ったわずか3分後のことだった。さらに次のモロッコ戦では後半開始から今度は右サイドに入り、2分後に城 彰二の先制ゴールにつながるセンタリングを決めている。

 本職はあくまで左サイドではあるが、右サイドをもこなすユーティリティープレーヤーの三浦が、再びフランス戦で活躍する姿を見せてくれるか。

■参考記事:

2000年6月4日:ハッサン2世杯 フランス戦
 →この日のDaily Newsはこちら

2000年6月6日:ハッサン2世杯 ジャマイカ戦
 →この日のDaily Newsはこちら

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