作成者 | BON |
更新日 | 2002/05/30 |
微生物の働きにより,水中の溶存物を分解したり酸化したりさせる処理法です。比較的お手軽だけど少し気難しいですね。
![]() |
生物処理 微生物を利用した溶解性有機物等の除去システム。 |
![]() |
高度処理の概要 高度処理の概要に関する情報。 |
【参考】
1)原理
生物処理水道でいう生物処理とは,主に自然環境中に普通に存在する微生物などの働きにより,原水中の栄養塩や有機物,マンガンなどを酸化や分解させて固定化もしくは除去することを図るものです。
アンモニア性窒素,藻類,マンガン,臭気(ジェオスミンや2-MIB),陰イオン界面活性炭など,生物易分解性物質や酸化されやすい物質の除去に効果を発揮します。緩速ろ過と似た原理をもち,除濁はしないものの,溶解性物質に対する効果も似ています。緩速ろ過に比べ,原水の条件がより厳しい場合に生物処理効果を分離して適用すると考えてよいでしょう。
反面,トリハロメタン前駆物質は環境中で十分に生物酸化されているため,効果が期待できなかったり,だんだん除去性能が落ちたり,といった状況が発生する傾向があります。これの除去を目的とした生物処理の導入はお勧めできません。オゾンの導入を検討すべきでしょう。
2)種類
ハニコームチューブ式(曝気洗浄),回転円盤式(導入容易でコスト低い),接触ろ過(効果高いが掃除が大変),接触流動槽(流芥対策が必要)などの方法が研究されており,一長一短があります。
3)生物を使うことによる特徴
原水の環境に応じて生態系が発生するのでエネルギーコストは比較的かからず,その割には適度に効果があり,また人為的な有毒物が発生することも想定しなくていいのが利点です。有機物,窒素,リンなどを目標とし,適正かつ順調に運用できれば,生物処理装置内に微生物よりも高度な原生動物や後生動物,たとえば節足動物や貝類(サカマキガイやシジミなど)が繁殖する場合があり,汚泥の低減や生物相の進化に効果を発揮します。
ただし,なんせ生物まかせなので,制御は困難ですし,季節によって性能が大きく変化します。また,非常に逆説的なのですが,ある程度汚れた原水水質でないとリンなどの不足により,思ったように微生物が繁殖しない場合もあります。水温や栄養塩濃度(アンモニア性窒素など)が安定しないと,貧栄養期に生物層が剥がれ落ちてしまうこともあるようです。
ただ,このあたりは原水の性状や生育している微生物の組成なども大きく影響するようで,ある程度定着していれば大きな問題は発生しないとしている浄水場もあります。
このように,水温,pH,栄養塩類,DO,阻害物質,接触時間の確保など,生物処理をうまく運用するために配慮しなければならない項目は多数あります。
また,貝などが稚貝として装置内に侵入し,装置内で成長したりするので,適当な頻度での装置の掃除が必要になります。管理が悪い場合,生物の死滅による悪臭の発生なども考慮しなければなりません。
汚染度の比較的高い原水の場合は浄水処理の前段で微生物影響対策の塩素を入れ,スカムを防止することがありますが,これも基本的にはできませんので,スカム対策にも注意が必要です。
このほか,生物層は有機物の塊ですからろ床から微生物が漏出することがあります。このあたりが緩速ろ過との大きな相違点です。特に,微生物そのものよりも,微生物の発生する基質や多糖類が漏出すると,後段の急速砂ろ過では捕まえきれないケースがあります。
【参考】