UX12Aシングル、ロフチンホワイト型0.25Wモノラル・アンプ

Qct.31, 2010:6SF5を6B6G、6X5を6ZY5Gに変更してオールST管にしてみました。
Sep.30,2010:初 版


はじめに

 昨年、NEC製の通信用直熱三極管104-Dを使って作製した104-Dロフチンホワイト型0.25Wモノラル・アンプの相方としてUX12Aを使った0.25Wモノラル・アンプを試作してしばらく鳴らしていました。同アンプの音は良かったのですが見栄えがイマイチだったので新たに作り直して見ました。主な使用部品は試作品と同じで回路構成も同じですが6SF5の動作点を変更して入力レンジを若干広くしクリップの発生を抑制しました。これに伴い電源周りも変更しました。
 電圧増幅に6SF5のメタル管を用い直熱管のUX12Aと直結するため、立ち上がり時差で過大なグリッド電流が流れるのを防止するために整流管には傍熱型の6X5-GTを用いています。アンプの回路図はこちらです。104-DアンプはA4サイズの板の上に部品を木ネジで留めた「まな板アンプ」でしたが、本アンプでは300mm × 150mmの1mm厚のジュラ版に組み、小物入れの引き出しにネジ止めしてまとめてみました。

ST管タイプに改装

 整流管をSTタイプに変更したいと考えていたので、ついでに、6SF5もSTタイプに交換することとしました。比較的安価に入手可能な球を探したところ、6X5は6ZY5Gと差し替え可能で、6SF5は6B6Gで置き換えられそうなことが分かったので早速入手して交換しましたので、以下では6X5GTを6ZY5G、6SF5を6B6Gに変更して記述します(現在UX-12Aを201Aに交換し、初代型に戻しています)。



回路構成

 出力管UX12Aは、ラジオマニアなら誰でも知っている直熱三極管で並四ラジオのマグネチックスピーカーを鳴らしていた有名な球ですがオーディオ用出力管としては0.28Wの出力は小さすぎるので作例は多くありません。主な定格は、フィラメントが5V250mA、プレート電圧が180V、プレート電流が7.7mA、グリッドバイアス-13.5V、プレート抵抗4.7KΩ、負荷抵抗10.65KΩ、出力0.285W、電圧増幅率8.5です。電圧増幅の6B6Gは6ZDH3や6SQ7と同じラジオの検波増幅用の双二極三極複合管で、三極部は12AX7類似の電圧増幅率100のG管です。電源の整流管は傍熱型全波整流の6ZY5Gです。
 回路構成は104ーDの相方として製作したため、電圧増幅に増幅率100の6B6GとUX12Aを直結するロフチンホワイト形を採用しました。



UX12Aモノラル・アンプの回路図


UX12Aモノラル・アンプの裏と


回路設計の概要

 12Aのデータから動作点を、プレート電圧180V、プレート電流7.7mA、グリッドバイアス-13.5Vに決めます。プレート負荷は10.65KΩですが、手持ちの出力トランス(イチカワITS-2.5WS)の都合で二次側4Ω、一次側5KΩ(後の調整の結果7KΩとした)端子を使用し出力は8Ω負荷の時0.25W RMSとしました。
 以上から、12Aをフルスイングするためにはグリッドに9.5V RMS以上が必要となります。6B6Gはμが100、プレート供給電圧300Vで500KΩ負荷の時、ゲインが80倍程度得られますので入力119mV RMSで12Aをフルスイングできます。アンプの仕上がり出力を8Ω負荷で0.25W RMS、入力を0.5V RMSとすると必要なゲインは9dbとなります。このアンプの裸のゲインは約21.8dbなので12.8dbの負帰還が可能なことが解ります。
 ロフチンホワイト回路では、前段のプレート電位が次段のバイアスとなるため前段のカソードを負に引っ張るか、次段のカソード電圧を嵩上げすることが必要です。本アンプでは6B6Gのカソードを負に引っ張り、12Aのグリッドを0V相当にして自己バイアス方式とし、直流的にも帰還を与え動作を安定させることとしました。この方式のメリットは出力管を変更しても6B6G周りを変更する必要がないことです。
 6B6Gの動作点を、プレート供給電圧300V、負荷抵抗500KΩ、プレート電圧150V、バイアス-1.5Vに決めます。プレート電圧=12Aのグリッド電圧とし、この電位を12Aのプレート供給電圧(=通常の+B=プレート電圧+グリッドバイアス+トランスのドロップ=195V)のマイナス側とします。
 6B6Gのプレート電圧が12Aの基準電圧0Vなのでカソードに−150Vを供給すると相殺できますので別途-150Vの-C電源が必要となります。12Aを基準にした電源は+Bが195V、-Cが-150Vです。しかしながら、電圧増幅管のカソードがグランドより-150Vの電位があると危険なので-150Vをグランドに落とします。これにより、12Aの共通電位は+150Vとなり、+Bは345Vとなります。電源トランスは所用電流がDC20mA以下なのでノグチトランスのPMC-35Eとします。
 傍熱管の6B6Gと直熱管の12Aを直結するため電源にはダイオードや直熱整流管を使えないので傍熱型の6ZY5Gを用い、+B電源電圧が195Vと低いためチョークインプット方式を採用しました。-C電源の容量は数ミリアンペアだけなので1N4007の半波整流ですが+Bとの電位差が500V近くになりますので感電注意です。
 12Aのフィラメントには整流管用の5Vをブリッジ整流して3300uFのケミコンで平滑して与えていますがハムバランスは省略しています。6B6Gと6ZY5Gのヒータは同じ巻き線を使用してグランドから浮いています。しかしながら、アンプのゲインが低く電源電流が少ないため残留ノイズは0.6mV以下でした。
 実際の回路では手持ちの都合で12Aの自己バイアス抵抗を1.75KΩから1.5KΩに変更しました。そのため6B6Gのプレート電圧と12Aの自己バイアス電圧、プレート供給電圧を変更しました。6B6GのバイアスとNFB回路には調整用の半固定抵抗を入れています。


製作と音色などについて

 本アンプをロフチンホワイト形としたのは、以前作成したインターステージトランス方式2A3PPモノラルアンプのドライバー回路の実験でかなり良い音がする方式であることを体験できたからです。UX12Aのプレート抵抗は4.7KΩで高い方の部類ですが高増幅率管との組み合わせでNFBを多くかけることが出来たので締まった音がしています。シングルの出力トランスにとってはプレート電流が少ないことは良いことで思ったより低域も出ています。こんな音の良い球を並四のマグネチックスピーカーを鳴らすためだけに使ってはもったいないですね。
 このアンプは、0.25Wの非力さを感じさせない、これぞ直熱三極管と言う素敵な、決して柔らかいだけではない音で、ビッグバンドは少し力不足ですがパイオニアのPE-16もどきを入れたTQWTスピーカーと組み合わせて十分な音量でイヴォンヌ・ウォルターのコルトレーンを歌ってくれてます。
 初代の写真にはUX12Aの代わりにトリタンフィラメントの201Aを入れているところが写ってます。大昔には12Aが死んだ時この球で代用したと言うエピソードがあったので試して見ました。201Aは規格上電圧増幅用なので12Aと差し替えてはいけないのですが、このご老体は12Aとほぼ同じ動作点でほぼ同じ音となりましたので時々差し替えて明るいフィラメントを眺めて悦に入っています。


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