8月22日(土) [碇シンジ]


こんにちは。 碇シンジです。



今日、アスカと喧嘩した。



きっかけは些細なことなんだ。

今思うと、なんであんな事で喧嘩したのかって思うくらいの。


アスカも最近は、以前みたいにすぐに怒ったりすることもなかったんだけどね。

まぁ、アスカはやっぱりアスカだから、そんなに変わった訳じゃないけれど。


でも今日は特別だったんだ。



何故かわからないけれど、僕も頭に血が上っちゃって…。

アスカの言葉がカチーンと来たんだよね。



それから僕は、ひたすらアスカを無視した。

アスカの怒鳴り声が聞こえたけど、全部無視した。



今日の気分は最悪だ。






          8月23日(日) [惣流アスカラングレー]


あたしよ。


昨日さ、バカシンジとケンカしたのよね。

今思うとつまんないことなのよ、原因は。

いつもだったらシンジがすぐに謝ってくるから、あたしもそこで勢いが

削がれることが多いんだけど、昨日はシンジのヤツ、全然謝る素振りがなかったのよね。



あたしはもう頭にきちゃって…。

思わずシンジをひっぱたこうとしたわ。

それも思いっきりね。



でも、シンジはあたしの手を掴んであたしに殴らせなかった。

そのとき思ったの。

シンジってやっぱり男の子なんだなって。

だってそのときのシンジの力、あたしの想像以上だったから…。



それからシンジはあたしの顔をじっと見ると、掴んだ手を離して

さっさとあたしから離れていっちゃった。

あたしは一瞬呆気にとられたわ。

今まで見たことのないシンジを見た気がしたから。



あたし、なんだか凄く悔しくなって、思いっきり喚き散らした。

でもシンジはまるで聞こえないみたいに、あたしの方を見ようともしなかった。

部屋に戻るわけでもないのに、さ。



…あたし、なんだか凄く変な気分。

悔しいような、怖いような、悲しいような……。





          8月24日(月) [碇シンジ]


こんにちは。 碇シンジです。



今日もアスカとのケンカは続いてる。



あのケンカ、アスカも悪かったと思うけど、僕も悪かった。

それはそう思う。

そうだよね、ケンカなんてどっちが悪いなんてないんだ。



いつもの僕だったらとっくに謝ってると思うけど、でも今回は

そうじゃないんだ。

どうしてだかわからないけれど、いつもみたいに謝りたくなかったんだ。



そんな訳で、今日もアスカとは口を利いていない。





          8月25日(火) [惣流アスカラングレー]


あたしよ。



…相変わらずばかシンジとのケンカは続いてるのよ。

あいつとケンカするのは良くある事だけど、こんなのは初めて。

いつもはあたしが騒いで、そしてあいつが謝ってなんとなく

終わりになるんだけど、今回は今までとはちょっと違うの。



あたしも悪かったのよね。今回は。

ううん、いつも、あたしが悪い事の方が多いような気がする。

だけどシンジの奴がいつも謝るから、それで済んでたのよね。

あたし、謝る事って出来ないし…。



昨日も今日も、シンジとは口を利かなかった。

一緒にご飯を食べたりTVを見たりはするんだけど、でも一言も口は利かないの。


………やっぱりやだな。





          8月26日(水) [葛城ミサト]


こんにちはー。 ミサトです。


先週の土曜日からずっと、シンちゃんとアスカがケンカしてるのよね。

あの二人がケンカするのは珍しい事じゃないんだけど、今回のはちょっと長いわね。

いつものケンカだったらシンちゃんが謝って、それで収まるっていうのが

お約束になってる感じだったんだけど、今度のはちょっち様子が違う感じ。



でもね、あの二人、面白いのよ?

ケンカしてるはずなのに、一緒にテレビ見たりしてるんだもん。

家事だってちゃんと交代でやってるし。

でも顔は合わせないし、話もしないのよね。



ま、これを見る限り、心配はないわね。

私としてはしっかり見届けるのが、保護者としての役割ってもんでしょ。

さてさて、どうするのかな?二人とも。





          8月27日(木) [碇シンジ]


こんにちは。 碇シンジです。



今日もアスカと口を利かなかった。

いい加減疲れてきたよ。


判ってるんだ、自分でも。

ただ意地を張ってるだけだってこと。

そんなの、早くやめた方がいいってこと。



そうなんだよね…。

いい事なんて何もないんだし……。



アスカはどう思ってるんだろう。

やっぱり怒ってるのかな。

いまさら謝ったってだめかもしれない。



もしかして、僕が謝るのを待ってるとか…。

でもアスカ、そんなに気が長くないか。

やっぱり嫌われたのかな。



どうしよう。

やっぱり早く仲直りしたいよ。

何かきっかけがあればいいんだけど…。





          8月28日(金) [惣流アスカラングレー]


あたしよ。



……楽しくない。

やっぱり楽しくないわ。


こんな毎日だとおかしくなりそう。



アイツ、やっぱり怒ってるのかな。

今までこんな事、なかったもん。

あのばかがこんなに強情張るなんて…。信じられないわよ。



もしかして、あたしのこと、嫌ってるのかしら。

だから口も利きたくないとか…。

まさか、ね。



ふん、もしそうならそれでもいいわよっ。

あたしはばかシンジなんかいなくたって、絶対に平気なんだから!

あんなばか、何とも思ってないわっ。






………ばか。





          8月29日(土) [碇シンジ]


こんにちは。 碇シンジです。


アスカと喧嘩を始めて、今日で一週間が経った。

まさかこんなことになるなんて、思ってなかったよ。



今日、僕は僕なりにいろいろ考えてみたんだ。

喧嘩の原因。

どうして謝るのがいやだったのか。

アスカの態度。

そして、アスカがこの喧嘩のこと、そして僕のこと、どう思っているのか。



でも、よくわからなかった。

一生懸命に考えたんだけどね。

だけど、このままじゃいけないことだけはわかったんだ。



アスカに謝ろうかとも思った。

でも、今さら謝ったって……。

アスカが聞いてくれるかどうかもわからないし、それにどうやって言ったらいいのか

僕にはわからなかった。



だから僕は、手紙を書いたんだ。




   『アスカへ。


    この一週間のこと、いろいろ考えた。

    でも僕はバカだから、考えれば考えるほどわからなかった。

    どうしてこうなったのか、どうしたらいいのか。

    だけど、僕はやっぱりアスカと仲直りしたい。

    勝手な言い分なのはわかってる。

    今までのことを忘れて欲しいなんて言わない。

    でも、僕はやっぱりアスカと仲直りしたいんだ。


    僕は明日、11時に駅前で待ってる。

    もし、アスカが仲直りしてくれるんだったら、来て欲しいんだ。

    もしアスカが良かったら、一緒に映画でも見ようよ。』





          8月30日(日) [惣流アスカラングレー]


あたしよ。



昨日、あのばかから手紙をもらったわ。

まったく、ホントにばかなんだから。

ばかもいいところよね。


でも、このあたしもばか。

ホントにばか。

どうしようもないくらいのばか。



ばか同士よね、あたし達。

まったく、イヤんなっちゃうけどね。



でも、ま、いいか。

こんなのも、ね。





          8月31日(月) [碇シンジ]


こんにちは。 碇シンジです。



昨日、僕は約束の11時よりも30分ばかり早く駅に着くつもりで家を出たんだ。

アスカの様子は分からなかった。

声も掛けなかったし。



僕は駅までの道のりを、ゆっくり歩いたんだ。

時間には余裕があったし、何となく急ぎたくない気分だった。



駅に着いて、僕は凄く驚いた。

何故って?

だってさ……。


あの…。  あのアスカが…。


僕よりも早く来て、待ってたんだ。



僕は思わず時計を見直したよ。もしかして僕の時計、壊れてるのかと思って。

だけど僕の時計は壊れても遅れてもいなかった。



アスカは僕の顔を見るなり、一言だけ言って、歩き出したんだ。

なんて言ったと思う?

   『今日はあんたが誘ったんだからあんたの奢りよ!』

だって。



アスカは結局、喧嘩の事は何も言わなかった。

僕も、言わなかった。




そして今日からまた、アスカを起こす毎朝になったんだ。





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